7月6日、東京ドームシティ・ホールでGacharic Spin(以下、ガチャピン)が“LIVE 2024「Let It Beat」”を行なった。このライヴは今年の春に行なった、EP『Ace』のリリースに伴う全国ツアーの追加公演にあたるもので、10月に迎える15周年に向かって前進し続ける彼女達の充実した現在の姿が鮮やかに描き出された一夜となった。その模様をレポートしよう。
オープニングSEに導かれ6人がステージに登場、1曲目に披露されたのはこの夜のライヴタイトルでもある「Let It Beat」。
彼女達のライヴに触れていつも感じるが、この日もバンド全体のグルーヴや一体感がすごく、頭から会場を一気に自分達の世界へと作り上げていく。続けざまに、オレオレオナ(以下、オレオ)のリリカルなピアノとアンジェリーナ1/3(以下、アンジー)の切なげな歌から一転ヘヴィに進む「I wish I」へ。曲中では、アンジーがフロア中央に延びた“でべそ”(花道)で歌い上げて、さらに会場全体をまとめあげていく。その勢いは3曲目の「オドリオドレ」でさらに加速。4月のEXシアター六本木公演に負けない、攻め攻めのアッパーなセットリストだ。
アンジーは、
「今日は初めての人もいらっしゃると思いますし、六本木はノンストップなセットリストでしたが、今日は少しだけ優しいセットリストです」
というMCをしていたが、いやいやどこが優しいのか。
その証拠に、「1GAME」や「A LALA」では、はなとTOMO-ZO、そしてKOGAもでべそでプレイ。気が付けばオレオがでべそにいるシーンも。ステージ全体を使ってのパフォーマンス、そして笑顔いっぱいでドラムをプレイするyuri。目を誰に向けていいのかという嬉しい悩みが生まれるのもガチャピンのライヴの魅力だ。
「カチカチ山」は彼女達の音楽的な雑食性が反映されたナンバーだ。展開部で、ドラマーがyuriからはなへチェンジし、そのyuriがアンジーに誘われて一緒にでべそで歌う。しかし、その後のMCコーナーでは、はなにちょっとしたトラブルがあったことも暴露されるも、その原因が、オレオが早く準備を済ませたことでみんながソワソワしたという笑いに変えて、和やかな空気を作りだす。また、yuriも「みんなの顔がよく見えます」「なかなかいい経験をさせていただきました、やりきった」と笑顔でスティックを振りながら客席にMCをし、TOMO-ZOは「元祖かわいい担当、TOMO-ZOちゃんです。幸せファンタジーです」と会場の盛り上がりに笑顔で話す。また、この日のステージングについてKOGAが「ちょっとでもみんなに近づきたいと思います。今日はスペシャルなフォーメーション、セットリストです」と明かし、ファンを喜ばせてくれた。
そのスペシャルなひとつが、新曲「High Grayinbow」だ。この夜、初めて披露された楽曲だが、アップ・テンポなリズムの上で1番ではアンジーとはな、2番ではTOMO-ZOとオレオがヴォーカルを分け合い、また曲全体としてもどんどん表情を変えていく、まさにカラフルでガチャピンらしいナンバーだ。
続いて、ファンにはお馴染みの「MindSet」、そして初期からの代表曲で客席がタオル回しで盛り上がる「ダンガンビート」へ。まるでラスト・ナンバーのような盛り上がりだが、ライヴはまだまだ前半戦。
そして、この後のMCタイムも印象的だった。
7周年のライヴやDOLL$BOXXとガチャピンによるライヴを東京ドームシティ・ホールで行なったこと、そしてアンジーが初めてガチャピンのライヴを観たのが、ここ東京ドームシティ・ホール(2018年4月15日)でその年の秋にKOGAから声をかけられたことなど、メンバーのクロス・トークで展開していく。
アンジーにとって、ここの会場は1回目はガチャピンの観客として、2回目はメンバーとしてステージに立っているというドラマティックなストーリー。そのアンジーは客席を見渡して「この景色を見せたかった人がいます」とMC。そのアンジーが自身の父親に向けて、そして今はファンのみんなに向けて歌うのが「Voice」だ。続く「where you belong」も共に歩む者への優しいメッセージが込められており、彼女達の生む音楽の幅広さも感じさせてくれたひとときだった。
しっとりと曲が終わり、会場が暗転。すると、メンバーからの告知映像が流れ始めた。
まず、KOGAから2024年10月8日にガチャピンが15周年を迎えること、そして10月9日に15周年記念アルバム『Feast』をリリースすることが発表! この新作については「15周年にちなんで15曲入り」(KOGA)、「いちばん初めに出したアルバムが『Delicious』、15周年で『Feast』(ごちそう)という意味も」(アンジー)などに加えて、はなからは「Lock On!!」 と「ブラックサバイバル」というインディーズ期の楽曲のニュー・アレンジ・ヴァージョンが、TOMO-ZOからは新曲「乱心glow」と「High Grayinbow」が、オレオからは7月3日に配信された「ハーフウェイ、その先へ」などが収録されることが発表。
この告知映像に続いては、第5期ガチャピンのヒストリー映像も上映され、ライヴは本編後編へ。
ステージには衣装をチェンジした6人が登場。「TAMASHII」、「Live Every Moment~ヒトヨバナ~」でスタート。ガチャピンの楽曲の中では、比較的ストレートな部類に入ると思われるこの2曲で後半のスタートのつかみはOK。
そこから、一転してモダンな空気感も柔軟に取り入れた「ナンマイダ」へ。ガチャピンの楽曲にはテクニカルなプレイや1曲の中でさまざまな表情を持たせている曲も多いが、音楽的な難しさやすごさよりも楽しさが伝わってくる。この「ナンマイダ」、そして前半にプレイされた「カチカチ山」などはその代表として言ってもいいだろう。
さらにTOMO-ZOがメイン・ヴォーカルを務める「S・w・e・e・t」では、会場がピンク色に染まり、優しい空気感に包まれていく。
そして、ガチャピンのライヴに欠かせないのが“TOMO-ZOちゃんのおしゃべりコーナー”。
TOMO-ZOがビームを放ちファンを着席させ、メンバーの隠れた一面を暴露していくというゆるーいコーナーだが、この日は東京ドームシティ・ホールにちなんで、東京ドームで伝説のライヴを行なったBOØWYの氷室京介ならぬ氷室TOMO介として「MARIONETTE」を歌いビームを。しかも、ファンの声をもっと聴きたいということでもう1度「MARIONETTE」を歌いビームを放ち、「センキュー、ロックン・ロール」。なかなかレアなシーンだが、著作権の問題から映像作品として残せないため、東京ドームシティの頭文字TDCに絡めてTOMO-ZO DANTOTSU CHAMPIONビームを発射。なんと3回もビームを浴びることとなった。
また、メンバー紹介ではいろいろな暴露話も披露されたが、その詳細を記すだけでかなりの文字数になるので、ここは残念ながら割愛させていただこう。
「ここから後半戦です、さらに盛り上がっていきましょう!」というアンジーの力強いMCに続いて、まずは「Ace」から「ストロボシューター」が披露される。曲中で光るさまざまな変化と表情、そしてヘヴィさに第5期ガチャピンらしさを感じさせる1曲だ。続いて、でべそに進んだKOGAのスラップからメジャー・デビュー曲の「赤裸ライアー」へ。こちらも長くライヴの定番曲としてプレイされているが、第5期になって、より攻めの楽曲になっている印象を受ける。また、未音源化の楽曲「乱心glow」ははなとアンジーのツイン・ヴォーカルが耳を奪う。
そして、攻めの手を緩めることなく、2023年11月にリリースされたシングル「BakuBaku」、最後は「ラスト!今日イチ、みんなの声を聴かせてください。一緒に歌いましょう!」というアンジーのMCから「Lin-Lin-Lan」へ。ファンへの感謝、そしてライヴ讃歌と言えるこの1曲で本編を締め括ってくれた。
この本編最後のブロックは、5曲中4曲がEP『Ace』からの楽曲や未音源化の楽曲で構成され、この選曲にも前に進み続けるという意志を感じることができた。
アンコールではメンバーからさらなる発表が。
10月8日の名古屋でのライヴ、そして10月14日の渋谷でのニュー・アルバム全曲+αライヴなどの告知がなされ、続いて、KOGAが15年間を振り返ってくれた。
最初、2009年の夏ぐらいにシークレット・ライヴを行なったこと、TOMO-ZOが加入した当時はお立ち台でギターが弾けなかったこと、オレオがKOGAの実家の洗面台のところで加入すると話してくれたことなどを話していると彼女の涙腺が崩壊。さらに、女子高生だったアンジーが入り、最初のライヴがいきなり恵比寿リキッドルームだったこと、はなというドラマーがいるのにコンバートしてyuriを新ドラマーとして迎えたことなど、波瀾万丈なヒストリーを涙ながらに語っていく。さらにいろいろ思い返すと、機材車に揺られながら窓から見た高速道路の景色などの日常が蘇ってくると話し、そうした日常や歩んできた歴史、感情などのすべてが曲やライヴに詰まっていると語る。
また、まわりからはガチャピンは強いね、無敵だねと言われるけど、この6人だからこそ助け合えるし、この6人、そしてファンのみんなで15周年を迎えられることが本当に嬉しいとファンへ感謝を伝える。「感極まって、長くなっちゃった」とKOGAは締めくくったが、それだけ彼女の、そして6人の思いが本物であるということだ。
そして披露されたのは、7月3日に配信されたばかりの新曲「ハーフウェイ、その先へ」。メッセージが込められた歌からは、彼女達自身も15周年、そしてその先も止まることがないだろうという未来を感じることができただろう。
最後の最後は「すごいこのバンド、大好きです。そして、恩返しするためにもっともっと強くなっていくから」というアンジーの決意表明に続いて披露された「シャキシャキして!!」だ。
後方の画面には、ステージに上がったカメラマンが映すメンバーの表情が大写しになり、その笑顔に観ているこちらも笑顔になる。
曲が終わり「この空気とか熱量、忘れたくない。全力で走っていくので、みなさんもついてきてください!」とオレオが叫ぶ。
しかし彼女達の全力疾走についていくのは大変だ。だって、彼女達の進化はいつも予想を超えてくるのだから。15周年アルバムの『Feast』でも、それは明らかになるはずだ。
【セットリスト】
Gacharic Spin LIVE 2024「Let It Beat」
2024.7.6(sat)@TOKYO DOME CITY HALL
OPENING SE
01.Let It Beat
02.I wish I
03.オドリオドレ
04.1GAME
05.A LALA
06.カチカチ山
07.High Grayinbow
08.MindSet
09.ダンガンビート
10.Voice
11.where you belong
12.TAMASHII
13.Live Every Moment~ヒトヨバナ~
14.ナンマイダ
15.S·w·e·e·t
16.ストロボシューター
17.赤裸ライアー
18.乱心glow
19.BakuBaku
20.Lin-Lin-Lan
<ENCORE>
21.ハーフウェイ、その先へ
22.シャキシャキして!!