山本彩の全国ツアー「SAYAKA YAMAMOTO TOUR 2023 - & -」のファイナル公演(追加公演)が83日、東京・Zepp Hanedaで開催された。3年ぶりのオリジナルアルバム「&」を携えた今回のツアー。この日のライブで彼女は、観客の熱狂的な歓声を受けながら、アーティストとしての魅力をダイレクトに見せつけた。

オープニングを飾ったのはアルバム「&」の収録曲。ラップを取り入れたボーカルと強靭なバンドサウンドが共鳴する「Don’t hold me back」、私は最強だ!という強いエモーションが突き刺さる「Bring it on」。激しくギターをかき鳴らしながら凛とした歌声を響かせる山本彩のパフォーマンスによって、観客のテンションは一気に上がっていく。アコギに持ち替えて披露されたのは、山本自身が敬愛する阿部真央の書き下ろし曲「喝采」。フロアに伸びる花道に進んだ山本は、オーディエンスとしっかり目を合わせながら、心地よい一体感へとつなげた。

「ツアーファイナルへようこそ、山本彩です!」と挨拶すると、会場全体から凄まじい歓声が沸き起こる。「みんなの声の聞かせてもらっていいですか? 女性(限定)エリアのみんな! 男子負けてないよね!」と観客の高揚感をさらに引き上げた後、「unreachable」へ。ラテンの雰囲気を感じさせるサウンドとともに、官能性を滲ませるボーカルに強く惹きつけられる。ハンドマイクによるセクシーなステージングからは、シンガーとしての魅力がはっきりと伝わってきた。

そして、ライブ前半でもっとも心に残ったのは、「劣等感」だった。マイナスの感情に苦しめられながらも、〈ムカつく程に今日も劣等感に生かされる〉というフレーズにたどり着く。自身のリアルな感情を刻み込んだ楽曲をステージで解き放つ姿は、まさに圧巻だ。

伸びやかな歌声が印象的だった「風の日」を披露した後のMCコーナーでは、山本、バンドメンバーがツアーの思い出を語り合った。バンドメンバーの小名川高弘(Key,Gt)、草刈浩司(Gt)、SATOKODr)、奥野翔太(Ba)、AyasaVn)、asamiCho)は、1stツアーの時期から山本を支えてきたチームSY”。演奏の素晴らしさはもちろん、トークからも気の置けない関係性を感じることができた。

「そんじゃあ、夏っぽい曲をやりたいと思います」という言葉に導かれた「蛍」(山本のギターソロも素敵!)からは、山本彩の多彩なボーカル表現を体感できるシーンが続いた。理想と現実の間で揺れながらも、“きっとなりたい自分になれる”という思い美しいファルセットとともに描いた「ゼロ ユニバース」。大切な存在だったあなたとの別れを抒情的に映し出す「追憶の光」。そして、異国情緒漂うメロディがゆったりと広がった「ラメント」。エモーショナルなロックチューンの印象も強いが、山本の音楽性とボーカリゼーションはきわめて多彩だ。

「まだいけるか、東京!? 後半いくぞ!」というシャウトとともに打ち鳴らされたのは、激しさと切なさを兼ね備えたロックナンバー「JOKER」。さらに「HAPPY HAPPY Party Boy,Happy Happy Party Girl」の大合唱からはじまった「Weeeekend☆」、壁にぶつかっても、自分を信じて突き進めというメッセージが真っ直ぐに伝わる「TRUE BLUE」とアッパーチューンを続け、ライブはクライマックスへ。本編ラストはアルバム「&」収録曲「ドラマチックに乾杯」。山本とオーディエンスがタオルを振り回しながら楽曲を共有し、圧倒的な解放感を生み出した。

“彩コール”に導かれて再びステージに登場した山本彩は、今回のツアーを振り返りながら、観客にゆっくりと語り掛けた。

「“最高のステージだ”と思えるのは、みんなの力のおかげ。こうやって声を出して、騒いで。完璧な相思相愛だなって思います。今日もステージに立たせてくれてありがとう」「前々回のツアー(2020年)、前回のツアー(2021年)は完走できなかったんですよね。すごい悔しかったし、みんなに申し訳なくて。そんな思いも含めて、長かった霧のなかから抜け出せた気持ちがあって。ツアーが始まってからの2か月間、めちゃくちゃ幸せでした」という言葉に、会場からはこの日、いちばん大きい拍手が送られた。

 さらに「自分にはすごいものがあるとか、特別なものがあるなんて一切思ってなくて。そんな自分にもやり遂げられること、自信を持てることが、続けていれば出来るんじゃないかなって。みんなをもっと大きいところに連れていけるように、30代からもやっていきたいと思ってます。長いマラソンになると思うので、みんなもケガしないようについてきてくれたらうれしいです!」と未来に対する決意を口にした。

「これからの旅にピッタリな曲です」という「yonder」、そして、「明日の自分に会いに行こう」というラインが響き渡った「Are You Ready?」でライブはエンディング。彼女の最高の笑顔からは、アルバム「α」と今回のツアーに対する確かな手ごたえが伝わってきた。シンガーソングライターとしての才能、ライブ・パフォーマーとしての魅力をダイレクトに証明した山本彩。この先のさらなるステップアップにつながる、きわめて意義深いツアーだったと思う。

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