──“ハンブレッダーズ、こんなに逞しいバンドになってるんだ”という印象の強いアルバムですね!
ムツムロ アキラ「嬉しい(笑)。ありがとうございます。恐縮です」
──これまでは全体のテーマとかはあまり考えずにというか、“コンセプトアルバムを作らない”とおっしゃっていたと記憶していますが。
ムツムロ「言ってましたね(笑)。“作れない”みたいな感じで言っていたと思います」
──そのハンブレッダーズが今回なぜコンセプトアルバム作ることになったのでしょうか? ムツムロさんはこのアルバムのテーマを“地球から銀河系をドライブし、帰ってくるまでの車内で流れるプレイリスト”と設定していますね。
ムツムロ「そもそも今の時代、例えば水曜日に新曲リリースがあって、“このアーティストもあのアーティストも新曲が出ている”となった時にSNSではそれをまとめている人もいて…。アルバムをリリースしてもそのアルバムに統一性や全曲聴いた時に分かるメッセージ性がないとフルアルバムって聴いてもらえないんじゃないかな?と思ったのが動機です」
──皆さんは“コンセプトアルバムで行こう”と聞いた時、どう思いました?
でらし「僕は高校生の頃に好きなアーティストがコンセプトアルバムを出しても、そのアーティストが自分のやりたいことを詰め込んだアルバムが多かったイメージがあって、全然好きじゃなかったんです。改めて聴くと“あのアルバム、最高じゃん”って思うアルバムはたくさんあるんですけど…。だから、“コンセプトアルバムで、”と聞いたとき、最初は心配でした。でも結果的にすごく手応えがあるアルバムになったと思います」
――のちに理解できたコンセプトアルバムがあるんですね。
でらし「僕にとってコンセプトアルバムと言えばアジカンの『サーフ ブンガク カマクラ』なんです。今聴くと“めちゃくちゃいいアルバムだな”ってなるんですけど、当時は、前作『ワールド ワールド ワールド』からいきなり渋くなったな、という印象でした」
ukicaster「初めはピンと来なかったんですけど、もともとハンブレッダーズが持っていた要素の中から抽出して濃縮したものをコンセプトにしている、宇宙というのも実存する宇宙というよりは抽象的な宇宙の感覚の話だと思いました。これまでも<ヘッドホンの中は宇宙>(「DAY DREAM BEAT」の歌詞)とかずっと歌っていることの延長をテーマに沿って広げた形ですし、それは生活と重ねられないものではなくておのおの心の中にあるものなので、“コンセプトアルバムに壁を感じる人にもちゃんと届くだろうな”という手応えが今はあります」
木島「でらしと同じく僕自身はちゃんとコンセプトアルバムを通って来なかったので、自分のドラムを考えた時にどこまで調整できるんだろう?というのも不安でしたけど、最終的に自分らしさが出せたのがよかったと思います」
──ムツムロさんはアルバムテーマに沿って曲を作ったというよりは同時並行的にやりたい曲を書いた感じですか?
ムツムロ「ハンブレッターズでシンプルなドラム、ベース、ボーカル、ギターのバンドをやっているんですけど、そうではない音楽もすごく好きで。それを“ハンブレッダーズナイズド”したというか…“この4人でやりましょう”というのと、“好き放題やってみようかな?”という気持ちもあったので両方ですね」
──好き放題やっても大丈夫と思っていたんですね?
ムツムロ「アルバムを4枚リリースして、ワンマンライブも日本武道館と大阪城ホールでやって、自分たちの主催フェスを大阪城ホールでやれて(『GALAXY PARK』)、“ハンブレッダーズってこうだよね”っていう自信があるのかもしれないです」
ukicaster「リスナーとの信頼関係でもあるし、4人とも“いろいろやり切ったよね”という気持ちにちゃんとなっていたのもあります。」
──1曲目の「プレイリスト」の歌詞の<辿り着くまでは時間がかかるだろうから/暇つぶしがてら選んだよプレイリストを>にあるように、アルバムのテーマは宇宙でもツアー中の機材車みたいな感じもします。
ムツムロ「そうそう。原風景ではあるんですよ。人生って旅ですし、そういうもののメタファーにもしているつもりで、ある種投影しやすいというか、小難しいことを書いてますけど長く聴いてもらえる現実逃避のアルバムであればいいなとも思っています」
──では何曲か具体的にお訊きしていきたいのですが、ムツムロさんの視点以外にもプレイヤーとしてこういうところが面白かった、解釈が難しかったなどを教えてください。まず最初に「アイズワイドシャット」。言葉数の多さがすごい!
一同「ハハハ」
──ムツムロさんの発想はどういうところからだったのですか?
ムツムロ「最近耳触りのいい曲が世の中に多い気がして…。“チルい気持ちになる”とか“聴いていて心地よくなる”ような曲ではなくて、そもそも僕らは“ヤバ!”と思ってバンドを始めているから、そう思わせる曲を作らないと、というのがあったんです。なので音もかなり歪んでて聴き心地がいいか?と言われるとそうでもない曲です。マイナー調でみんなが休みなく演奏しているような曲を作りたかったんです」
でらし「昔のハンブレッダーズを聴いたときの感覚って“ヤバ!”だったんです。この曲ができた時にその感覚がまた戻って来たというか…ちゃんと“あの頃を忘れてねえよ”ということがこの曲で言えたと思いました」
──ではヤバい系(笑)第2弾の「SUPER TOMODACHI」。このアレンジと歌われていることのギャップが超面白かったです。
ムツムロ「嬉しいです。笑ってほしかったので」
──印象としてはレッチリとトリプルファイヤーが浮かびました。
ムツムロ「あー! ほんとうにトリプルファイヤーのイメージですよね。めちゃめちゃ大好きなので。吉田さんは本当にリアルというか、Base Ball Bearの小出さんが以前、“トリプルファイヤーとペトロールズさえいたら日本のバンドの他全部なくなってもいい”みたいなことを言っていて、“ほんと、その通りだ”と思っていて」
──極端な(笑)。
ムツムロ「歌詞も“みんな大丈夫だよ、元気出して”とかよりも“3時間の映画、長い”って言った方が刺さる人はいるんじゃないかな?というところを歌った曲です」
──急にここに来て年齢感が出ているという…。
ムツムロ「(笑)。いや、でも30過ぎているので、みんな健康の話していますし。リアルな自分たちなりのヒップホップというか」
──アレンジもいいですね。
ムツムロ「去年めっちゃ好きで聴いていたTURNSTILEみたいにしたいなと思っていました」
──この曲に関してどんな印象を?
でらし「このアルバムで一番共感できるかもしれないです」
一同「ハハハ」
──では、少し方向性の違う「わっか」。全編、押韻がいいですね。歌詞の軸には何があったのですか?
ムツムロ「大切な人との別れの曲を書こうと思ったときに、<君が笑った時 頭にわっかがついてた>というフレーズがパッと出てきて。それで、“わっか”をモチーフにして、ターンテーブルとか洗濯槽の丸、洗い物のお皿とか“わっか”をモチーフにした歌詞を遊び心で作っていきました。生活の循環から外れていることを敢えて“わっか”で歌っています」
ukicaster「デモの時点では音像がかなりパンキッシュで、それこそ銀杏BOYZを意図していたような感じだったんです。でも、アレンジを詰めていく段階でムツムロが“もうちょっと寂しい感じで”としきりに言っていて、だったら素朴な音像にした方がいいし、こういう日常感とか身近な視点のモチーフの曲をリスナーにより深く届けるには現実離れした音ではない方がいいので、そこはチューニングしました」
──青春パンクが持ってるフォーキーさを感じます。
ムツムロ「そうですそうです。そこだけを取ってきて、エレピやオルガンをピアニストの方に入れていただいて、あまり聴いたことのない曲になったと思います」
──そしてムツムロさんの打ち込みから始まったという「MUSIC」は?
ムツムロ「毎日打ち込みをやって一番大変でした。音色選びをしている時間ってあまり音楽っぽくなくて…。例えばサンプルのサイトを見ると“ピコン”って音が何100種類もあって、それを聴く時間って事務的というか(笑)、クリエイティブではないので、その時間がかなり長くて大変でした」
──データ入力をやっているみたいな?
ムツムロ「はい。もちろん楽しいんですけど、その工程は自分には向いていないことがこの曲を通して分かりました(笑)」
──(笑)。音源ではムツムロさんのデモを人力に変換したわけですよね。
ukicaster「どこまで有機的にしていいのか?というのも言葉で会話を交わしてもそんなに分からないじゃないですか。ロックバンドでやるならスタジオ入ってドーンってやってみたり、“ジャカジャカやった方がいいの?”って会話はできますけど、この曲はマジで会話ができなかったので(笑)まず“ここまで入れました”というのを送って…」
ムツムロ「それを僕が引き算するような…みんな十何年バンドマンですから。こんな音源を送っておいて(木島から)“叩いた方がいい?”と言われて僕が“いいに決まってるやろ!”と(笑)」
木島「ライブでそう言われるなら分かりますけど音源はちょっと話が違うかな?って(笑)」
ムツムロ「音像は変わっているけど本質はそのままなので、ずっと聴いてくれているお客さんには伝わると思います」
──アルバム終盤の「着陸」のポエトリーのインスピレーションは何かありましたか?
ムツムロ「えっとですね…ラッパーではTHA BLUE HERBが一番好きなんです。でもポエトリーやラップも好きなので聴いていて、“別にやってもいいよな”と思っていて。今回はコンセプトアルバムなので、だったら最後に壮大な曲があってほしくて“こういうアプローチもいいんじゃないかな?”と思ってねじ込んだ曲です」
──終盤にバンドサウンドが入ってくるところがいいですね。
ムツムロ「これこそ一番せーの!でやってよかったね?」
でらし「うん。クリックからもずれまくって、勢いに任せてガーって行くのがパッケージされているよね」
──歌詞は宇宙旅行から戻って着陸する場面ですしね。
ムツムロ「そうです。アルバムの中でもそうですし、今まで生きてきた人生という旅の中で見てきたことを全部吐き出す曲にしようと思いました。自分がおじいさんになって“バンドをもうやめよう”ってなったときに思ってそうなことを書きました」
──思ってそうなことが書けるのがすごいですね(笑)。この曲があることによって今までのハンブレッダーズに対する信頼のさらにその先があると思いました。そしてムツムロさんのセルフライナーによると“この歌詞を書くために生まれてきたのでは?”という「恋の段落」。これは人のために書いているからそう思えたのでしょうか?
ムツムロ「はい。大切な人の結婚式で演奏するために作った曲です。なのでウェディングソングで、アルバムでは「着陸」が終わって現実に戻ってきたタイミングに“現実を歌おう”という位置に収録している流れを意識して作っています」
──ソングライターとして一つ大きな成果ですね。
ムツムロ「素晴らしい歌詞には無駄がないというか、必要な言葉がそこに存在している歌詞だと思っていて。「恋の段落」は一行たりとも無駄がないです。言葉数は「着陸」の方が多くて、「恋の段落」では面白い言葉遣いもそんなにしていないけど、メロディや曲に必要だった歌詞を添えられたイメージです。一番いい歌詞を書けたと思いました」
──普遍的な曲ですからね。
ukicaster「ロックバンドテイストの曲は4人とも“自分が主人公だ”というような人格を持ちながらアレンジしていて、それがロックバンドの良さですし、少なくともうちの良さではあると思っています。でも、それをこの曲でやってしまうのは絶対に違うというのが最初からみんなにありました。いい歌詞と歌という素材をどう美味しくしよう?って。ちょっと大人になったなっていうか(笑)」
ムツムロ「確かにね」
ukicaster「“誰かの人生に重なるなら、主人公ヅラしてギターを弾いてるだけのやつがそこにいたらアカンでしょ”という考え方にはなりました。一歩引いたというか…」
でらし「そういうことです。全部言ってくれました(笑)」
──アルバムが出来上がってみてどうですか? ハンブレッダーズにとってより自由になれる感じですか?
でらし「自由であった上でこれまでで一番強度の高いアルバムになったと思っているので、“これができるんだったら大丈夫でしょ!”という気もします」
ukicaster「まだまだ全然できる気がします。ギタリストとしてもバンドとしてもこれからの可能性にもなると思いました」
ムツムロ「この世にある音楽、全ジャンルをハンブレッダーズで補完したいよね(笑)」
ukicaster「ノアの方舟になる、俺ら(笑)」
ムツムロ「30年ゆっくり(笑)、全部やりたい」
──2月からは『ワンマンツアー “2026年 銀河の旅”』も始まりますね。
でらし「初めての全国ホールツアーです」
──アルバムが全方位的な内容でもありますし、ホールツアーとなるとコンセプチュアルなツアーになるのかな?って思ってしまうのですが。
ムツムロ「そうですね。ホールツアーということもあって演出も使えそうですし。このツアーが決まったことで、より“コンセプトアルバムしよう”と思ったのもあります」
──聴く人も刺激を受けると思います。
ムツムロ「だといいですね。僕たちはほんとうにアルバムを楽しく作ったのでどう聴かれても“自由にしてください”という気持ちです。でも、ね…宇宙を感じてくれたらいいですね」
(おわり)
取材・文/石角友香
RELEASE INFORMATION

ハンブレッダーズ『GALAXY DRIVE』初回生産限定盤
2026年1月28日(水)発売
CD + Blu-ray(プレイパス対応) +短歌集+すごろくポスター
SRCL-13516〜13517/7,500円(税込)

ハンブレッダーズ『GALAXY DRIVE』通常盤
2026年1月28日(水)発売
CD Only
SRCL-13518/3,750円(税込)
配信:『GALAXY DRIVE 水金地火木土天海冥ver』
※配信(サブスク、DL)は9曲入りになります。
LIVE INFORMATION

ワンマンツアー “2026年 銀河の旅”
2026年2月7日(土) 栃木 栃木県総合文化センター
2026年2月8日(日) 宮城 トークネットホール仙台
2026年2月13日(金) 福岡 福岡市民ホール大ホール
2026年2月14日(土) 広島 JMSアステールプラザ大ホール
2026年2月22日(日) 北海道 札幌カナモトホール
2026年2月28日(土) 京都 ロームシアター京都メインホール
2026年3月1日(日) 香川 サンポートホール高松
2026年3月4日(水) 愛知 Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
2026年3月7日(土) 石川 金沢市文化ホール
2026年3月18日(水) 東京 東京ガーデンシアター有明

ハンブレッダーズ主催フェス「GALAXY PARK in EXPO」
2026年5月24日(日) 大阪府吹田市 万博記念公園 自然文化園「もみじ川広場」





