──2月7日に初のソロDIGITAL EP『ギリスト!』がリリースされました。そもそも今回新曲をリリースするに当たって、上田くんが最優先に考えていたことってあったんですか?
「「ギリスト!」と「光射す方へ」で実現したんですけど、やっぱり櫻井翔くんと一緒に楽曲を制作したいというのが一番にありましたね。もともと“ソロ曲を出すなら翔くんと”という思いもありましたし、グループを飛び越えてモノづくりをするっていうこともやりたいと思っていたんですよ。それが頭にあって、翔くんにお願いしたら快諾していただけました」
――ソロ楽曲では配信という形も初めてなわけですが、それはより幅広い方に聴いていただきたかったからですか?
「そうです。楽曲制作自体は、ソロツアーが決まっていたので、そこで披露する新曲がほしいというところから始まったんです。でも、それをリリースすることになったとき、やっぱり配信のほうがファンの方に手に取ってもらいやすいじゃないですか?」
――そうですね(笑)。
「だから、そういう今の時代にも合わせつつ、まさに今おっしゃっていたようにいろんな方に聴いていただけるチャンスなんじゃないか?とも思ったんです。もちろんCDという形にすることも大事だとは思っているんですけど、今回は幅広い人に手軽に聴いてもらいたいという意向のほうが強かったんです。それも今は重要なことだと思っていますから」
――櫻井さんと共作した「ギリスト!」には、上田くんと櫻井さんの関係性はもちろん、ここからまた新たなスタートを切るという強い意志も感じられますね。
「俺と翔くんが一緒にやるっていうこと自体、ファンの人は喜んでくれると思うんです。だから、まず2人の関係性を表現しました。でも、それだけじゃなく、今の状況も歌っていて、そこは2人で相談したというよりは俺の要望が大きかったかもしれないです。やっぱりタイミングタイミングであふれ出る言葉ってありますから。だから、聴いてくださる人にも何かを感じていただけたらいいなって思っています」
――リリース時のコメントに“マイクリレーのようにそれぞれの想いを込めている”とありましたが、それも最初から“このブロックは翔くんにお願いします”みたいにリクエストをしたんですか?
「そうです。1Aは翔くん、1Bは俺、みたいな感じで書き出していって、それを翔くんとスタッフを含めて相談した上で、それぞれが持ち帰って歌詞を書きました」
――櫻井くんが出したコメントには上田くんが歌うことを意識して書いたってありましたが、それは感じましたか?
「レコーディングのときにブースから出てきた翔くんが“こういう歌詞は嵐では書かないわ”って言っていたんですよ(笑)。確かに<墓場>とか出てきますからね(笑)。それに「光射す方へ」にも<並のボクサーならば Knock down>ってフレーズがあるんですけど、それも俺とかけてくれたんじゃないかな?って個人的には思っています。だから、“うわっ、俺のこと書いてくれてる!”って思って、最初に読んだとき、すごくテンションが上がりました(笑)」
――嬉しいですよね(笑)。「ギリスト!」にも、上田くんをイメージさせるフレーズがたくさんありますし。
「そうそう。これは不特定多数じゃなく俺のことだな!っていうフレーズがあります。それが完全に翔くんのフロウなので、そこが面白いなって思います。それに対して俺が書いた部分は、完全に俺。こんなにも個性が出るんだなって思いました」
――本当にそれぞれの色が鮮明に出ている印象です。
「それも合わせにいってないからだと思うんです、お互いに。だから、個性が出る。その結果、展開がジェットコースターのように変わっていくので、それこそカラオケとかで歌っても面白いんじゃないかな?って思います。“私は翔くんパートを歌いたい!”っていう人が出てくると思いますよ(笑)」
――曲に関しては、すんなり決まったんですか?
「いやいやいや、めちゃくちゃ悩みました。制作は去年の10月くらいから始まったんですけど、そこで進んでいたものを11月中旬くらいに1回全部壊しましたからね」
――全部!?またゼロから?
「はい。もうどっちがどのパートをやるかまで翔くんと打ち合わせをしていたんですけど、どうしても完成形が想像できなくて。それで“すみません。やっぱり2人でやる以上こだわりたいんで”って翔くんに謝って、そこからまた曲を新たに集めて聴いたんです。そしたら俺の中で“パン!”とハマった曲が4曲くらいあったので、また翔くんとうちのスタッフと話し合って、その中からどの曲にするかを決めました。だから、10月11月は、正直めちゃくちゃ焦っていましたし、病みましたね(笑)。でも、翔くんと2人でやるっていうことは、それだけファンの人の期待値も高いと思いますし、自分としても本当に納得いくものを作りたかったので、絶対に妥協したくなかったんです」
――2曲制作するというのも最初からの予定だったんですか?
「いや、結果的にそうなりました。改めて“どの曲にするか?”っていう打ち合わせをしたとき、1曲に決められなくて…スタッフ内でも意見が割れちゃったんですよね。「ギリスト!」は、“いろいろな人が聴きやすくていいよね”っていう意見が多かった曲で、「光射す方へ」には、“音としてはマニアックだけど、翔くんとコラボする意味がある楽曲だよね”っていう意見が出たんです。確かに「光射す方へ」は、俺のソロでもKAT-TUNでもやらないようなリズムの取り方の曲なので。で、この2曲でずっと悩んでいたら、スタッフさんが“2曲やれば?”って言ってくれたので、翔くんにお願いしたんですよ。そしたら“いいよ!”って言ってくださったので、“やった!結果的に最高の形になった!”って思いました(笑)」
――よかったです(笑)。実際、楽曲のテイストも違いますしね。だったら、歌詞のメッセージも違うものにしようと?
「そうですね。「光射す方へ」ではファンの方への想いを表現しました。応援してくれている人たちに伝えたかったことですから」
――楽曲のセレクトや歌詞の内容はもちろんだと思いますが、レコーディングのときも、いろいろこだわりましたか?
「めちゃくちゃこだわりました。例えば歌詞には載っていないラップのおかずのところも翔くんがつけていってくれましたし、どの発音をどういうふうに言うか?とか、どこでブレスするか?とかも細かくアドバイスしてくださいましたから。それに最後の仕上げに関しても、納品する当日の30分前くらいまでチェックして、“ここちょっとノイズが聴こえるから消して”っていうように細部に向き合ってくださったんですよ。ドラマで忙しい中、そこまで手を抜かずに携わってくださったことが、本当に嬉しかったですね」
――最初にもおっしゃっていたように、配信リリースすることによって、KAT-TUNや上田くんのことをよく知らないというリスナーも聴く曲になると思うんですね。そういう人には、どういうところが刺さったらいいなと思っていますか?
「「ギリスト!」は俺と翔くんが作ったって知って、“じゃあ、ちょっと聴いてみようかな”って思うような人が聴いてくれると思うんです。そのときに、“ああ、いいね!”って思うような聴きやすさがあると思います。それに対して「光射す方へ」は、ちょっとコアな音楽マニアの方にも聴いていただきたい音楽性があるので、聴いてくれた人に、“おお、いい音だね!”って思ってもらえたら嬉しいです」
――「ギリスト!」にも「光射す方へ」にもライブのときに観客とコール&レスポンスできる部分がありますよね。それも上田くんの希望だったんですよね?
「そうです。“ライブでやると楽しいよね!”っていう曲を作るのが大前提だったので。それにはライブで演奏したとき、“来た来た!”って、みんなで楽しめるコール&レスポンスとかがあったほうがいいと思いました。聴くだけじゃなく、ライブに来たら、お客さんも参加できて、ずっとライブで育てていけるような曲に2曲ともしたかったんです」
――その『上⽥⻯也 MOUSE PEACE 2024 〜我⿓転⽣〜』は14年ぶりのソロコンサートになるわけですが、実際、お客さんの反応はいかがですか?(インタビューはツアー中)
「すごいですよ。室内温度を19度に設定しているんですけど、たぶん30度くらいはあると思いますから(笑)。それくらいの熱気と一体感があるので、“みんな元気だな!”って思いますね(笑)。ツアーの最初の頃は、「ギリスト!」も「光射す方へ」も初めてお客さんに聴かせる状態で盛り上がってもらいましたが「ギリスト!」は、ツアー中にYouTubeでLyric Videoも公開して、それでみんなしっかり聴き込んで来てくれたので、(1月31日の)福岡公演からは、よりコール&レスポンスで一つになれましたね」
『上田竜也 MOUSE PEACE 2024 ~我龍転生~』 encoreオリジナルライブレポート >>>
――今回は櫻井さんとでしたが、もし機会があるなら、今後もどなたかとコラボしてみたい気持ちはありますか?
「もちろん。今回やってみて“楽しいな”って思いましたからね。でも、誰でもいいというわけではなく、ちゃんと自分との関係性がある人とコラボしたいです。翔くんと俺がやることはファンの人はみんな納得したと思うんですけど、やっぱりそういう方とやってみたいですね」
――そして今回のEPには「ギリスト!」と「光射す方へ」以外に4曲収録されていますが、「Lollipop」以外の3曲は、どれも上田くん自身が作詞作曲、もしくは作詞に携わっているんですよね。
「そうなんですよ。「Lollipop」は、もう音的にカッコイイですし、俺には出せないクオリティを出してくれている曲なので、もちろんそれはそれでいいんです。でも、やっぱり世に出す以上は、基本的には何かしらの形で自分が関わっていたいなって、この作品を出してみてすごく思いました」
――自分の名前で出すからには、どこかに自分の意志や想いがあったほうがいい?
「はい。そのほうが自信を持てるんです。そこには自分の意志が乗っているっていうのがデカいのかな?…歌わされていない感じというか。だから、愛着が別物なんです。ただ、「Lollipop」はカッコイイ曲だし、今まで音源化されていなかった曲なので、どうしても世に出しておきたかったのが理由で、今回収録することにしました」
――でも、「Lollipop」にしても、上田くんの要望は入っているんですよね?
「もちろん!こういうタイプのラップにチャレンジしたかったんです。それに制作期間が「カンタービレ」とかぶっていて、俺はそっちで手一杯で、「Lollipop」に携われなかったんですよ。いつもだったら、例えばラップ詞とか“俺にもちょっと書かせてくれ”って言っていたはずなので」
――「カンタービレ」の作詞に苦戦したんですか?
「しましたね。俺って、そもそもストイックな性格じゃないですか?だから、「カンタービレ」みたいな人を甘やかすような思考はないんです(笑)。でも、今の時代って“頑張れ”とも言ってほしくないような人がいるでしょ?これはそういう人に向けた曲なんですよ」
――わかります。「カンタービレ」の歌詞って、背中を押すこともしてないですよね。
「そう。“大丈夫だよ。いるから”って、ただ寄り添っているだけ(笑)。でも、俺自身がそういうタイプじゃないから(笑)、めちゃくちゃ苦戦したんです。とはいえ、やっぱり自分で書いているから、なぜ、ここにこういう言葉を使ったのかとかが納得できるんです。その結果、当然気持ちも込めやすい。それはすごく大きいです」
――アレンジに関しても、こだわりはあるんですか?
「めちゃくちゃあります。特に「カンタービレ」はストリングスのアレンジにこだわりまくりました。それでラップ終わりのストリングスのメロディとかは何パターンも用意してもらったんです。そこで変な気を遣って妥協するよりは、聴いてくれる人にいいと思ってもらうほうが大切ですから」
――そういう意味でも「ヤンキー片想い中」は最高ですよね(笑)。世界観もしっかりあるし、情景も目に見えるし、遊び心満載のアレンジもとても楽しいので。
「完璧な曲です(笑)。歌詞は2~3分で書いたんですけど(笑)」
――でも、いつ聴いてもアガるので、時代を超越すると思いますよ。
「この曲を作ったの16年前ですから(笑)。でも、楽しい曲やいい曲って時代とか関係ないんだと思います」
――うって変わってせつないのが「花の舞う街」。ただ、個人的にこの曲のモチーフが上田くんが主演した舞台『ロミオとジュリエット』だと知っているのでせつなく感じますけど、そういう先入観なしに聴いたら、幸せな恋人同士の曲にも思えますよね。
「そうなんです。みんな“いい曲だね”って言ってくれるんです。でも、“実は現世で幸せになれなかったロミオとジュリエットが、来世で花の舞う街を2人で歩こうというということを表現しているんだよ”って説明すると驚くし、そこでまたグッと深みが増すんです。そのギャップが面白いと思います」
――6曲全部色が異なる楽曲になっているので、そこも聴き応えがあるDIGITAL EP『ギリスト!』ですが、今後もグループとしてだけではなく、ソロの音楽制作、音楽活動も、折に触れてやっていこうと考えていますか?
「考えています。ソロとして面白いことややりたいことを思いついたとき、それが叶いやすい状況にあります。だから、ライブに限らず、歌に限らず、ファンの人と交流できるような場をグループ活動と並行して走らせるのもありかな?って思っています。自分の中で最優先なのはKAT-TUNなんです。でも、グループ活動がないときに、“じゃあ、ソロでこういうことをやろうか?”っていうのを実行に移せる。そういう道が今は出来始めています」
――その際は、やっぱりできる限りご自身で楽曲制作や演出、ステージングなどに関わっていきたいと思っていますか?
「もちろんです。KAT-TUNの場合、ずっと自分たちのことは自分たちで考えていくっていうのが当たり前だったんです。だから、“ライブをやります!”ってなって、“こういう演出です”って決められても100%納得できない気がしていて。少しでも、“ん?”ってなるなら、全面的にではなくても俺自身が参加してやったほうがよくないか?ってなると思います。別に俺が全部やりたいということではなく、脳みそっていっぱいあったほうがいろんな意見が出ていいと思うんです」
――多方面で活躍している上田くんですが、その中で音楽活動は、やっぱりご自身にとって大切な場所なんですか?
「基盤です。ライブをやるというのは、うちの事務所の基本スタイル。そこから“芝居をやりたい”とか“バラエティやりたい”って、それぞれの方向性を見つけていくんだと思うので、音楽が大前提なんです。だから、俺も音楽だけがやりたいわけじゃなく、芝居もやっていきたいんですけど、音楽はなくしちゃダメなんです。それをやらずに、例えば芝居だけとかバラエティだけっていうのは、1年のルーティンとして俺は嫌なんです。むしろ、俺の場合は1年を通してライブをやってもいいくらいなので(笑)」
――1年を通して!?(笑)
「週末だけライブをやって、平日は違う仕事をするっていうのも可能じゃないですか(笑)。それくらいライブはやっていたいです。やっぱりライブにはライブにしか得られないものがあるので」
――それは何だと思いますか?
「刺激かな?…終わったあとの高揚感もそうですけど、あそこまで達成感があるものって、なかなかないです。だから、終わって2~3日経つと、また刺激を求め始めるんですよ(笑)。特に今回のライブには、自分が得たかったものややりたかったことが全部集約できた気がしています。本当にやってよかったと思います」
(おわり)
取材・文/高橋栄理子