ステージ上のモニターに空を泳ぐ龍の姿が映し出される。すると次の瞬間、スモークと共に突然Zepp DiverCityの中を巨大な龍のバルーンが泳ぎ出した!度肝を抜く演出に早くも満員のフロアは興奮状態。そして、そんなファンの前に「お待たせしました!」と上田がポップアップで登場!実はこの日、ダイバーシティ東京プラザで停電が発生し、安全確認のためにスタートが20分ほど遅れたのだ。そのアクシデントを詫びつつも、「お前らの声で電気落とそうぜ!」とあおるところが、とても上田らしかった。
オープニングチューンは、ただでさえ熱い会場をさらに熱くする「ヤンキー片想い中」。黒字に金で龍の刺繍が施されたワイルドな衣装で上田がファンを盛り上げると、観客もぺンライトを力強く振って、それに応える。最初から全力でライブを楽しむファンの姿に上田も嬉しそうな笑顔を見せていた。
配信でリリースされた初のソロDIGITAL EP『ギリスト!』にも上田は異なるテイストの6曲を収録していたが、このライブでもその幅広さは健在。2曲目のせつないラブソング「~again」ではエモーショナルなボーカルを聴かせたかと思えば、続く「BUTTERFLY」はスリリングな世界観に。会場には赤と青のレーザーが飛び交い、観客をよりいっそう高揚させていく。さらに「よう、東京!まだまだこんなもんじゃねーよな!最強に盛り上がって行け!」とファンに向かって叫び、上田の危険な魅力がさく裂する「百花繚乱」へ。ライブにピッタリな熱いナンバーで観客を熱狂させたのだ。
開演が遅れたことを「俺のじらしプレイじゃありません(笑)」とMCで笑わせつつ、「夢の世界へご案内したいと思います」と次のブロックへ。「Lollipop」は男女4人のダンサーと一緒にセクシーに展開し、「LOST」でもダンスパフォーマンスで魅了。ドラマチックな楽曲「ユダ」では、ヘビーなサウンドの中で主人公の苦悩や悲しみを表現してみせる。圧巻の演出に目を奪われがちだが、実は上田のボーカルも説得力抜群。その歌声が楽曲の世界に深みを持たせていることは間違いない。
今回のライブでひとつのハイライトだったのが「MONSTER NIGHT」。ダンサーがフランケンシュタインやウサギに扮して出てきたファンタジックな世界に上田もモンスターの扮装で登場。その衣装は、この楽曲が制作された当時にMVの中で上田が身に着けていたものを再現したものだったのだ。これに観客が大喜びしたことはもちろんだが、そのうえ会場に立ち込めた煙からはチョコレートの香りが漂うというこだわりぶり。その後のMCで上田も、このチョコレートの香りを発生させる装置には「すごくお金がかかっている」と暴露していたが、それも全てファンにライブを楽しんでもらいたいという気持ちの表れなのだろう。
後半は「カラオケとして、みなさん歌ってください」と上田自らがピアノを演奏し、観客に「カンタービレ」の歌唱を促してスタート。さらに「ギリスト!」のコール&レスポンスや曲の中にある振付をレクチャーし、ファンと交流ながら今後の楽曲の準備をしていた。だが、上田自身も「あちーんだよ、この会場。こんなにも外の気温と中の気温が違うのってすごいよね」と言っていたほどの熱気だったため、当然ギュウギュウ詰めのファンも汗だくだったはず。このインターバルには、そんな観客を一瞬クールダウンさせようという上田の優しさも感じされたのだ。
そして、ひと休みしたあとは「初めて作詞作曲した曲」だという「Love in snow」を披露。上田も「いいタイミングで雪が降ってくれました」と言っていたが、この前日、東京は久しぶりに降雪し雪景色に。美しいメロディに乗せ、しっとりと歌い上げる上田の上にも雪が降りかかり、なんともロマンチックな空間を作り上げていた。
ここからはKAT-TUNコーナーへ。深紅の衣装にチェンジした上田がKAT-TUNの大ヒット曲「Keep the faith」をダイナミックに熱唱する。次の「WHITE WORLD」は中丸雄一のソロ曲。ここではミラーボールが回る中、やわらかい歌声で聴かせてくれた。そして、亀梨和也のソロ曲「1582」では、一転“和”のテイストに。上田の衣装もあでやかな着物風なら、ダンサーは扇や傘を使って踊るという趣向。さらに上田には刀を手に踊る場面もあり観客の目をステージに引き付けたのだ。
KAT-TUNコーナーの最後に上田が選んだ「RESCUE」では、嬉しいサプライズが!
突然中丸がステージに姿を見せ、上田の隣でボイスパーカッションを披露したのだ。中丸は自身のYouTube“中丸銀河ちゃんねる”のために「ずっと2階で見ていた」そうなのだが、「だったらボイパやってくれよ」と上田が提案。ギブアンドテイクが成立したらしい。「エモい!よう頑張ってるよ!」とねぎらう中丸に「なんか上から目線ですけど、ありがとうございます」と答える上田。この2人ならではのやりとりに観客は、誰もが笑顔になっていた。
本編終盤は、中盤でコール&レスポンスを練習した「ギリスト!」をファンと共に楽しみ、続けてファンへのメッセージをつづった「光射す方へ」を演奏。この2曲は、上田が敬愛する先輩・櫻井翔と共作したもの。2人が書いた歌詞は彼らの本当の気持ち。それはきっとこの日詰めかけたファンの心にもダイレクトに響いたことだろう。
上田が「これが声を出せる最後の曲だ!全身全霊で思い残すことなく叫んでくれ!」と呼びかけた「俺メロディ」で会場は、ますますヒートアップ!思いを込めて上田が歌った「愛の華」で本編を締めくくったあと、アンコールでは先ほど観客みんなで合唱した「カンタービレ」を。歌詞に出てくる通り、ステージには花びらが舞い落ち、とても美しいエンディングになっていた。
ツアーが行われていた1ヶ月を「濃厚だった。同じ熱量と一体感で過ごせるのは宝物」だと語っていた上田。14年ぶりのソロコンサートを味わえたファンたちにとっても、この思い出は宝物になっていくはずだ。
(おわり)
取材・文/高橋栄理子
- 上田竜也『ギリスト!』インタビュー
- 近日公開!
約14 年ぶりとなった上田竜也ソロコンサート『MOUSE PEACE 2024~我龍転生~』。このコンサートのために制作された新曲「ギリスト!」、「光射す方へ」は嵐・櫻井翔が共同制作に参加。その真意は?…EPに収録された楽曲についても上田竜也にじっくり聞いたインタビュー!