──8月23日に開催されたONEMAN LIVE『Continue.』で、メジャーデビューをサプライズ発表しましたが、その瞬間のことは覚えていますか?
SERINA(Ba/Cho)「覚えています。その日のワンマンライブは、少し何かを匂わせるような告知の仕方をしていたんです」
NAGISA(Dr)「ライブタイトルが『Continue.』で、TRiDENTの始まりの曲「Continue」にピリオドを打つ形にしたので、ファンの方たちがちょっとザワザワして…。それで、アンコールでメジャーデビューを発表させていただきました」
ASAKA(Vo/Gt)「映像で発表したんです。私たちは袖からファンの方の反応を見ていたんですけど、“メジャーデビュー”って出た瞬間にすごい歓声が上がって。みんなが喜んでくれていることに感動して、もう涙が止まらなくて…」
NAGISA「ボロボロ泣いていました」

──最後には良い発表が控えているけれど、匂わせながらライブに向かう日々ってかなり緊張しませんでしたか?
ASAKA「そうですね(苦笑)」
SERINA「もう…(苦笑)」
NAGISA「胸が痛くて…。自分たちでやっておきながら(苦笑)」
ASAKA「前身バンドからTRiDENTに変わるタイミングがちょうどコロナの時期で、ライブができなかったので、『100日後に死ぬワニ』みたいに、“100日後に復活する私たち”のようなシリーズの4コマ漫画をXに毎日ポストしていたんです。その第2章を5年越しに、ワンマンの20日前からまた始めて、ファンの人も“いよいよこれは…”という」
NAGISA「“どっちかだな”ってみなさんも思っていたみたいです。メジャーに行くか、解散とか活動休止か…」
ASAKA「当日もすごくドキドキしていたんですけど、私、ライブ本編の1曲目の「JUST FIGHT』でなぜか泣きそうになっちゃって(苦笑)」
SERINA「その感極まっている姿が、お客さんからすると“ああ、終わった…”っていう(笑)」
NAGISA「“ASAKA泣きそうオワタ…”みたいな(笑)」
──確かにそうなりますね(笑)。その後のサプライズ発表で歓喜の声が上がったんですね。
SERINA「そこでアニメタイアップとか、MY FIRST STORYのNobさんからの楽曲提供とか、今回のことを発表したので」
NAGISA「感情が追いつかない(笑)」
──(笑)。
ASAKA(Vo/Gt)──5年前に名前を変えて再始動したときに改めていろんなビジョンを描いたと思いますが、その中にメジャーデビューという目標はありましたか?
ASAKA「ありました。以前はメジャーにこだわって活動していたわけではないんですけど、TRiDENTとして活動していく中で、“メジャーデビュー”が自分たちの目標としても濃くなっていきました」
──そういう意味では、自然と前へ進めている感じなのでしょうか?
ASAKA「結果的にそう思えますけど、やっているときは本当に無我夢中でした。いろんな方からアドバイスをいただいたり、よりたくさんの人に届けるにはどうしたらいいか?…曲の多様性やライブのやり方について考えたり。そういうことに日々向き合っていく中で今回のご縁をいただけたので、今までの悩みはこのためのものだったんだなって、結果的にそう思えています」
──今でこそそう思えているけど、その時は悩み苦しみながらの時期だったのでは?
ASAKA「本当にそうでした。もうダメかも…と思ったタイミングもありましたし、“バンドって難しいなぁ”って、日々苦悩もあった時期でした」
SERINA(Ba/Cho)SERINA「前身バンドも含めるとかなり長いことバンドをやっていて、何回かメジャーデビューできそうなタイミングもあったんですけど、なぜかうまくいかず、ずっと自主レーベルでやっていました。TRiDENTになって事務所はついたものの、やっぱりメジャーデビューの目標は叶わず。“この先どうしたらいいだろう…”という本当に悩みが尽きない日々でした」
NAGISA(Dr)NAGISA「私はTRiDENTになってから加入したんですけど、この5年の間で、本当にもう“終わりかな…”ということが何回もありました。“TRiDENTって何がしたいんだろう?”、“どういうバンドなんだろう?”って、分からなくなってしまったときもあって。バンド活動は楽しくやれてはいましたけど、それでも楽しいだけではやっていけないんだというときに、自分たちには何が足りないのかが本当にわからなかったんです。その度に、“これが最後だと思ってやろう!”、“これがもう本当に最後だと思ってやりますか!”と思って続けてきた先に、こういう機会をいただけたので、本当に続けてきてよかったです」
──今回リリースされるメジャー1st EP『BLUE DAWN』のリード曲「黎明ノ詩」は、まさにそういった感情を表した楽曲になっていますね。本当に様々な想いを抱えながらここまでやってきて、ここから先も歩いていくという今のTRiDENTの決意を歌っていて。先ほどお話に出ましたが、この楽曲はMY FIRST STORYのNobさんが作曲をされていますが、受け取ったときにどう思われましたか?
ASAKA「デモを聴いたときに、シンプルに“すごくかっこいい!”と思ったのと、この1曲でアルバム1枚くらい密度の濃い内容だと思いました。メジャー1作目のリード曲に相応しい曲をNobさんに作っていただけたので、“これはいい歌詞を書かなきゃ!”という気持ちになりました」
──歌詞を書くにあたって自然と言葉が出てきたのか、かなり悩んだのか、どんな感じでしたか?
ASAKA「メジャーからリリースする最初の曲は、自分たちのこれまでのこと、今まで歩んできた中で感じたことを歌詞にしようと思ってはいたんですけど、具体的な言葉までは決めていませんでした。だけど、Nobさんがくださったデモに和のテイストが入っていたので、冒頭の<月の船>とか、少し古風な言葉を入れてみようと思って、そういう言葉遣いではたくさん悩みました」
──メロディラインも哀愁があってグっときますね。
ASAKA「自分たちもたくさんの苦悩があった末のメジャーデビューだったので、この哀愁感とか、明るさも切なさもある曲調は本当にぴったりだと思いました。歌っていても感情を込めやすかったです」
SERINA「作曲してもらうにあたって、Nobさんが私たちそれぞれの音楽のルーツや、どういう曲やフレーズが好きか?とか、たくさん聞いてくれたんです。そこにまず愛を感じましたし、楽曲が届いたときに、Nobさんの色もしっかりありながら、TRiDENTが大事にしているものもそのままにしてくれていることをすごく感じました。そこにASAKAの歌詞が乗ると、これまでずっと一緒にやってきたからこそ、すごくグっとくるものがありましたし、何かに頑張っている人に聴いてほしいと思いました」
──自分たちの物語でもあるし、聴いた方の物語にも響く曲になっていますよね。プレイしてみていかがでした?
SERINA「Nobさんもベーシストで、私とはまた違うプレイスタイルというか…これまでやっていなかった色をつけてくださったのが難しかったですけど、新しくていいと思いました」
NAGISA「Nobさんが他のアーティストに提供している曲が好きで今回直接お願いしたんですけど、Nobさんが想うTRiDENTの“ザ・リード曲”を作ってくださったことが、すごく嬉しかったです。あと、私は2番の頭の歌詞が好きなんです。目標を持ってそこに向かっていても、“何のために私はこの船を漕いでいるんだろう?”と思ってしまうこともあって。でも、そうやって何かに頑張っている人にはすごく届くメッセージがあって。ライブでの爆発力がとんでもない曲なので、すごく楽しみです」
──みなさんが目立つポイントもそれぞれ入ってますし。
NAGISA「そうですね。Nobさんからいただいたフレーズも難易度の高いものが多かったので、レコーディングのときに“難しかったです”という話をしたら、“TRiDENTならできると思って入れちゃったよ!”と言ってくださって…それがすごく嬉しかったです。私たちへの期待値があるからこそ、“まぁできるっしょ!”ってフレーズをガンガン入れてくれたと思うので、これは絶対にライブでしっかり見せたいです」
──リード曲以外もとにかく濃い楽曲揃いな1st EP『BLUE DAWN』ですが、「NEW ERA」は作詞作曲をASAKAさん、編曲はこれまで一緒にTRiDENTを作り上げてきた堀江晶太さんが担当されていますね。
ASAKA「この曲はとにかくブチ上がりソングにしようと思っていました。これまで堀江さんとは「CRY OUT」や「KICKASS」、数々のリード曲を一緒に作ってきたんですけど、それをまたさらにパワーアップさせたような、ファンの人たちにも喜んでもらえる楽曲にしようと思っていました。歌詞は、アルバムのタイトルや他の楽曲が決まっている最中に書いたので、EPで足りない部分を補うように、少し遊び心のある歌詞にしようと思っていました」
NAGISA「堀江さんには絶大な信頼があるので、どう考えてもいい曲になるだろうと思っていましたし、ライブの遊び曲になるだろうなってすごく思いました。EPの5曲の中ではどう化けるのかが一番楽しみな曲です」
SERINA「堀江さんもベーシストなので、毎回、堀江さんの曲は試練を与えてくださるというか(笑)。私のベースの師匠だと思っているので、毎回が修行だと思って、“ありがたいな”と思いながら弾いています。でも、実は堀江さんの曲って弾けたら弾きやすいベースラインなんですよ」
──そうなんですね。堀江さんのベースラインって個性的な印象があるのでかなり意外です。
SERINA「指を覚えさえすれば、かっこよく聴こえるのに、弾いている側からすると不思議なくらい意外といけちゃう感じなんです。それが勉強にもなりますし、今回、一番苦戦した曲ではあったんですけど、その分、自分の成長にも繋がりました。ライブでも楽しみな曲です!」
──「恋のマジックポーション」と「MIRACRAID」は、TVアニメ『ポーション、わが身を助ける』で現在オンエアされていますが、アニメの主題歌をやりたいという目標もかねてからあったのでしょうか?
SERINA「ありました。私たちも日本の文化であるアニメのタイアップをやりたいという想いがずっとありましたし、周りからも“やってほしい”と言われ続けていたので…」
NAGISA「「Continue」をYouTubeにアップしたときから、コメント欄に“アニメソング”、“アニメソング”、“アニメソング”って、日本語だけではなくそれ以外の国も言葉でも書かれていましたし、新曲をリリースするたびに“アニメソングをやってほしい”という声がたくさん届いていました。私たちもアニメが好きなので、どこかのタイミングでは絶対にやりたいと思って、目標のひとつにしていたので念願が叶いました」
──エンディング主題歌の「MIRACRAID」は、Koji Hirachiさんが編曲をされていますが、NAGISAさんが初めて作曲を担当されています。以前からトライされていたんですか?
NAGISA「高校生の頃に鼻歌で作ってみた程度で…それからは全くしていなかったです。でも、メジャーデビューが決まったときに、“全員、それぞれが曲を作ってみよう”ということになって。知識もあまりなかったので、とりあえずメロディとドラムを打ち込んで、それをアレンジしていただきました」
──SERINAさんも今回のタイミングで作曲されていたんですか?
SERINA「やってみました。私も作ったことがほぼなかったんですけど、“意外とできるもんだなぁ”という気付きもありましたけど、やっぱり難しさも感じました。新たな発見でした」
──となると、今後お2人の曲もどんどん聴けそうな予感が…。
SERINA「そんなことも…あったらいいなぁって(笑)」
NAGISA「(笑)。いつタイミングが来てもいいように準備しておきます」
──今、となりでASAKAさんがすごい勢いで首を縦に振っていましたけど?
ASAKA「もうありがたいですよ!」
NAGISA「今までもう何十曲も作ってきてくれているので」
ASAKA「本当に助かりました(笑)」
──NAGISAさんのメロディーを歌ってみてどんな感覚がありました?
ASAKA「メロディって作った人の特徴が出ているって思いました。これまで楽曲提供していただいたこともあったんですけど、あまりそういうことを考えずに何気なく歌っていて…でも、レコーディングのときに、NAGISAちゃんが“J-POPを意識した”と言っていて、それをより実感できるようなメロディでもあるし、そこにNAGISAちゃんらしさがあって、“いいな”って思いました」
──そのメロディに乗せる歌詞を書くにあたって、『ポーション、わが身を助ける』の世界観に寄り添いつつも、またいつもとは違う言葉が出てきやすかったりもしましたか?
ASAKA「確かに、内容は完全にTVアニメに寄り添っているんですけど、サビの<誰かを>とか、このメロディだからこそつけれた歌詞もたくさんあります。言葉選びの幅もそうですけど、メロディも自分から生み出すものって、どうしても“これは何かと似ているかも…”ということがあって。でも、そこに新しいエッセンスが加わったので、すごくよかったです」
──オープニング主題歌の「恋のマジックポーション」は、すかんちのカバーで、ROLLYさんが演奏・プロデュースに参加されています。レコーディングはどう進めていったんですか?
NAGISA「まずは3人一発でドーン!って録って、歌まで録り終わった後にROLLYさんがギターをつけてくださって…」
SERINA「別日にリードギターとコーラスを入れてくださいました」
──3人でドーン!と録ることってこれまでもあったんですか?
ASAKA「これが2回目かな?」
SERINA「いつもは別々で録るので、大丈夫かな?と思っていたんですけど…」
NAGISA「意外とスムーズに録れました」
SERINA「このテンポの曲だからこそのグルーヴ感が出せました」
──それもあって、みなさんが楽しそうに演奏している姿がすごく見えるんですよね。
ASAKA「ROLLYさんは本当に気さくで、ユーモア溢れる方で、現場の雰囲気もすごく良くて。私たちからすると、もう大レジェンドなんですけど、本当に優しく接してくださって、レコーディングも楽しかったです」
──ギタリスト視点で見たROLLYさんはいかがでした?
ASAKA「何テイクかいろんなパターンを録って、“ここはさっきのやつがいいね”とか、“これはこっちでいこう”とか、すべてアドリブで進めていくのがすごかったです。引き出しもものすごく多いですし、いろんなエフェクターを駆使して、“こんな音出るんだ!?”とか、そういう発見もあってすごく楽しかったです」
SERINA「パッションがすごかったしね」
──途中、ギターが途切れずにずっと繋がっているところありますよね?
ASAKA「ああ! 後半ですね。あれは確かに考えてできるものじゃないですよね。もう本当にパッションで弾いていらっしゃって。すごく素敵な作品にしていただけました」
──もう1曲、「カントリー・ロード」をカバーされていますが、どうしてこの曲をチョイスされたんですか?
NAGISA「最後の1曲でカバーを収録することになって、何曲か候補を出したんですけど、メンバー全員が思い入れのある楽曲だったのが「カントリー・ロード」でした」
SERINA「私たちの青春の一曲です。私は『耳をすませば』がジブリ作品の中でも一番好きで。セリフも言えるくらい愛がありますし、小学生の頃にリコーダーで吹いたこともあります。もちろん、歌詞も完璧に覚えていました」
ASAKA「この曲、SERINAのリコーダー始まりにすればよかったなぁ(笑)」
SERINA「ヤバいよ、それ(笑)」
ASAKA「素敵な“ふるさと感”が出る気がするよ」
──これはライブでの披露が決まりましたね。
SERINA「ははははは(笑)。ライブアレンジで」
NAGISA「スポットライトを浴びながらリコーダー(笑)」
ASAKA「ちょっと匂わせる感じで(笑)。私も『耳をすませば』は大好きな作品で、「カントリー・ロード」も小さい頃から英才教育かのように刷り込まれてきた曲でした。しかもクレジットに宮崎駿さんが載っていらっしゃるという! もう何もかも嬉しいです」
──確かに、自分たちの作品に宮崎監督の名前がクレジットされることってまずないですもんね(笑)。
NAGISA「しかも“日本語詞:鈴木麻実子/補作:宮崎駿 編曲:TRiDENT”って横に載っているし(笑)」
ASAKA「隣に並ばせてもらえました(笑)」
NAGISA「はははは(笑)。私もすごく好きな曲ので、“カバーして収録しちゃって、いいんですか!?”って感じでした。「カントリー・ロード」は後ろの笛の裏メロも自然と頭の中で流れてくるくらい、大好きなので」
NAGISA「わかる! バイオリンとかね」
──アレンジはメロディックパンクな感じになっていますね。
ASAKA「“ロックバージョンで「カントリー・ロード」をアレンジするならこれ!“っていうのがパっと思い浮かびました。それをみんなに渡して、最後のラララのパートはメンバーのアイデアだったりと、みんなでいろいろ話し合って完成させました」
NAGISA「共同アレンジとかはあったけど、編曲のクレジットがTRiDENTになっているのは、これが初めて?」
ASAKA「確かに。初めてかも。最初はラスサビを転調させてたんですけど、今回、そういう曲が多かったのもあって、ちょっと別の方法にしようって」
SERINA「ちょっとテンポを落として」
NAGISA「みんなで肩を組んで歌おうみたいな」
──メジャー初作品にして、自分たちができることがさらに広がっている感じがありますね。
NAGISA「そうですね。まさか最後の最後で自分たちでアレンジするとは思わなかったですけど」
──未来に繋がる1枚になりましたが、リリース後は全国11ヶ所を回る全国ツアー『TRiDENT BLUE DAWN TOUR 25-26』も決定しています。最後にバンドを代表してASAKAさんから、ここからどんな活動をしていきたいのか、意気込みをいただけますか。
ASAKA「念願のメジャーデビューですが、ここからが新たなスタートだと思っています。キングレコードもそうですけど、今まで二人三脚でやってきた事務所とも、そして、一番はファンのみんなと一緒にもっともっと大きなステージに行きたいです。私たちは東京ドームを目標に掲げています。そこに近づくべく、日本国内はもちろん、世界中に、ひとりでもより多くの人に届く音楽、ライブをこれからも模索して、パワーアップしていきます!」
(おわり)
取材・文/山口哲生
写真/中村功
RELEASE INFROMATION
LIVE INFORMATION

TRiDENT BLUE DAWN TOUR 25-26
2025年11月8日(土) 福岡 CB
2025年11月9日(日) 岡山 CRAZY MAMA 2nd Room
2025年11月13日(木) 香川 高松TOONICE
2025年11月14日(金) 大阪 阿倍野ロックタウン
2025年11月23日(日) 新潟 CLUB RIVERST
2025年11月30日(日) 神奈川 横浜BuzzFront
2025年12月5日(金) 兵庫 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
2025年12月13日(土) 北海道 Klub Counter Action
2025年12月14日(日) 宮城 仙台ROCKATERIA
2025年12月28日(日) 愛知 名古屋SPADE BOX
2026年1月23日(金) 東京 WWWX













