──アルバム『EVER GREEN』は収録曲が20曲。今の時代に20曲入りのアルバムってなかなかないですよね。前作『Stupid dog』も17曲入りでしたし、TOOBOEさんにとってアルバムというものはどのようなものなのかということからお伺いしても良いでしょうか?

「シングルでリリースした曲だけでも結構な曲数になっていたので、そこに新曲が2曲くらい加わっただけだとリスナーは寂しいじゃないですか。アルバムが出るなら半分とは言わずとも、たくさん新曲が入っていてほしいですよね。それに、パッケージングするなら豪華なほうがいいと思っていて。今の時代、曲を聴くだけならサブスクで聴けるので、CDを作るならコレクションアイテムとしてとにかく豪華にしたいです。そう思って、容量ギリギリまで入れました」

──なるほど。TOOBOEさんはシングルのカップリング曲でもアルバムに入っていない曲が多いですよね。変な質問で恐縮ですが、すらすら曲が書けるものなのでしょうか?

「さすがに最近は出てこなくなってきました。それこそタイアップのお話をいただいたり、映画を見に行ったり本を読んだりして外部からの刺激がないとなかなか書けないです。でも、シングルにB面(カップリング)の曲も入れているのにも理由があって。ずっとシングル曲だけを作っていると、攻撃力の筋肉以外が衰えてしまうんです。だからB面の曲で、本当はやりたいけどシングル曲だとできないものも作っています。そうやっていろいろな筋肉を鍛えることが、結果的にシングル曲に生かされていると思います」

──今、カップリング曲のことを“B面”と言っていましたが、もともとCDやカセットで音楽を聴いていらっしゃいましたか?

「はい。僕の時代はMDで。CDをレンタルして、MDに入れて聴いていました」

──そのあたりも聞かせてください。さまざまなインタビューで、“スガシカオさんが音楽のルーツになっている”というお話をされていますが、TOOBOEさんの音楽遍歴はどのようなものなのでしょうか?

「音楽遍歴でいうと、最初にやったのはピアノです…“習わされていた”という感じですけど。聴いていた音楽でいうと、家で流れていたのは、それこそスガシカオさんや山崎まさよしさんといったフォークとファンクの間のようなものが主でした。その後、自分でCDを借りるようになって、最初はポルノグラフィティなど流行っていたものを聴いていました。同級生と違うものを聴くようになったなと思うのは、歌謡曲にハマったあたりからですね」

──歌謡曲にハマったのはどうしてだったのでしょうか?

「サザンオールスターズを好きになって。サザンの源流は歌謡曲や少し前のポップスで、桑田さんがそのあたりのカバーをしていたので、そこから“こういう曲があるんだ”と調べていきました。1950年代から90年代までの、その年ごとのトップ30くらいを収録した『青春歌年鑑』というコンピレーションアルバムがあったので、それをほぼ全部レンタルして聴いていました」

──ご自身で音楽を作り始めたのは何がきっかけなのでしょうか?

「中学校を卒業したときに親がパソコンを買ってくれたのですが、そこにGarageBandが入っていたことがきっかけです。曲を作ることにいつからハマり始めたのかは定かではないんですが、GarageBandをいじっているのが好きで、ずっと触っていたんです。自分の好きなミュージシャンの曲を耳コピしたりして」

──パソコンを買ってもらったのは曲を作りたかったからではなかったのですか?

「違います。どうしてだったのかはわからないんですが、当時からニコニコ動画をずっと見ているような子供で。ハードオフで1万円くらいで買ったパソコンをずっと使っていたので、おそらく親が見かねて買ってくれたんだと思います」

──そして、パソコンで音楽を作り始めて、さらにはご自身で歌い始めたんですね。

「はい。それこそニコニコ動画でボカロ曲を聴いて“自分でもやってみようかな”と思って、初音ミクを買って曲を作り始めました」

──ボカロP・johnとしての経験も経て、TOOBOEとしてご自身で歌い始めるわけですが、TOOBOEではどういう音楽を作りたいとか、こういう活動をしていきたいというものは何かあったのでしょうか?

「ボカロPをやっていた頃からいろんな音楽を作ろうと思ってはいたんですが、友人に聞かせたら“お前は人の悪口を言っているときや、上に噛み付いているときが一番イキイキしている”と言われて。だからjohnでは、日常的にムカついていることや不満に思っていることを曲にするという、いわゆる裏アカみたいなことをやっていました。そしたら徐々に聴いてもらえるようになっていって。TOOBOEになっても、ルーザー感というか、自分が負けている状態で、周りに対して歌うということは変わっていません。そこは自分の性根の部分なのでずっと変わらないと思います」

──TOOBOEとして人気や知名度が上がってきている今でも変わらない?

「変わらないです。多分、これから先も変わらないと思います。結局ずっと上ばっかり見ているんですよ。“もうちょいやれたな”と思いながらずっと生きているので」

──そんな中でTOOBOEとしてのメジャー2ndフルアルバム『EVER GREEN』が完成しました。どんなアルバムにしたいと思って作り始めましたか?

「前作『Stupid dog』は、“テンポが早くて、言葉が詰まっている”みたいな、かなり時代のトレンドにあわせた感じが自分のなかではありました。だから『EVER GREEN』ではトレンドを意識するのではなくて、この先10年、20年聴かれるような、それこそ僕の目指すいわゆる歌謡曲を作りたいと思いました。ありがたいことに、タイアップもあっていろいろな曲がすでに揃っていたので、その間に新曲を入れて一生聴けるアルバムにしようと思いました」

──歌謡曲というお話がありましたが、アルバムを聴かせていただいて、まさに歌心のあるアルバムだと感じました。“TOOBOEの歌心”という点で言うと、シングルとして2025年8月にリリースされた、TVアニメ『光が死んだ夏』のエンディング主題歌「あなたはかいぶつ」が転機だったと思うのですが、ご本人としてはどう感じていますか?

「曲に優劣はつけたくないですが、やっぱり「あなたはかいぶつ」は僕の人生が変わった曲かな?と思います。まず、こういうミディアムチューンで認知されたことが大きくて。それまでは“TOOBOEといえば「錠剤」”というイメージだったと思うので、その殻を破ることができたのがすごくよかったです。そこから、バラードにもちゃんと真正面から向かい合えるマインドになりました」

──それまでは、バラードやミディアムチューンはちょっと不安だったのですか?

「そうですね。ボカロ出身の先人たちも、バラードに振り切ったときにうまくいかなかった人たちがたくさんいて。僕も、バラードを出しても誰も振り向いてくれないんじゃないかと思っていました。そもそもバラードってトレンドになりにくい世の中ですし。そんなときにすごくいい原作(『光が死んだ夏』)に出会って、それを曲にしていいタイミングで世の中に出せたことはすごく良かったと思います」

──“タイミングも良かった”というのは?

「これが1年前や2年前では出せなかったと思います。ライブもそんなにできていなかったので、スキルやメンタルも足りていなくて、自分がバラードに向き合う準備ができていなかったから。それらがようやく備わってきたのが2025年。そのタイミングでいい原作に出会えて、すごくありがたい機会でした」

──この曲の制作についても聞かせてください。『光が死んだ夏』という作品の、どういったところからインスピレーションを受けて作ったのでしょうか?

「原作を読んでいて思ったのは、主人公のよしきくんにとって幼馴染の光はいなきゃいけない存在だということです。光が顔と体しか残っていない正体不明の存在(ヒカル)になっているのに気づきながらも、それでもヒカルがいるだけで良い。そう思ったときにしんどすぎて。漫画を読んでいる人にとっても、アニメを見ている人にとっても、この事実ってしんどいと思うんです。だからエンディングでは、それを肯定してあげたくて。作中でもこの2人のことを認める人はいないので、エンディングで2人を認めてあげる役割を担いたいという想いもありました」

──それがTOOBOEさんが思う、“音楽でこの作品にできること”だったんですね。サウンド面ではどのようなことを意識しましたか?

「田舎の雰囲気を出すために、なるべく生楽器を使ってオーガニックなものにしたいと思いました。とはいえ、田舎の中にヒカルという異形なものがいる瞬間を表現するために電子音も入れています」

──ミディアムチューンだからこそ、ボーカルも今までとは違ったと思いますが、そのあたりはどのような意識でしたか?

「今だから言えるんですが、僕の声って、主張が強くて街中でで流れるぶんには武器なんですけど、アニメに寄り添うという意味では“もう少しやり方があったかな?”と思っていて、実はそこは課題でした。僕としてはうれしいですけど、アニメに集中してもらうためには、もう少し何かできたんじゃないかと思っています。毎回タイアップのたびに課題が生まれるので、また別の機会にこの課題がクリアできたらいいと思います」

──「あなたはかいぶつ」を作ったことで、バラードやミディアムチューンに対する向き合い方が変わってきたとおっしゃっていましたが、「あなたはかいぶつ」以降に作った楽曲で印象的な楽曲があれば教えてください。

「「残陽」という曲は、今じゃないと出せないと思いました。この曲は、僕の中では歌謡曲を作ったつもりです。今、「残陽」が出せたことが自分でもうれしいです。最近って、音楽はサブスクで聴くので、いつ聴いてもいいようにテーマがすごく広くなっているんですよね。そんな中で、この曲は<校舎>とか<沈む太陽>と、時間や場所を特定していて。こういう曲は歌心にも依存するので、「あなたはかいぶつ」を経ていないと生まれなかったと思います」

──意図的に“時間や場所を限定した”とおっしゃっていましたが、この曲の世界観のインスピレーションのもとはどういったものだったのでしょうか?

「普段の自分だったら、多分、こういう曲をアルバムに入れないです。それくらい少年時代のちょっと甘酸っぱい思い出を書いてみました…一度はこういう曲を恥じらいなくやってみないと自分が変われないと思ったので。これまで、電子音とかガチャガチャした音がTOOBOEの個性だと思われていたと思います。それを排除したときにTOOBOEの音楽は何が残るのか? それを試していたのが『Stupid dog』からの2年間だったと思います」

──その結果、「あなたはかいぶつ」や「残陽」のような曲が生まれたんですね。

「はい。電子音に頼らなくても、メロディや歌の中にTOOBOEが存在している。それを証明する2年間でした」

──「jewel」はフィーチャリングゲストに紫 今さんを迎えた楽曲ですが、紫 今さんをフィーチャリングゲストに迎えた経緯を教えてください。

「紫 今さんには2024年の対バンイベント『交遊録Ⅲ』に出てもらったんですが、もともと僕は紫 今さんがTikTokで1曲目を出したときからずっと注目していて、当時やっていたラジオでも流させてもらったりしていました。すごく良いライブをするし、いい曲も作るし、いいボーカリストなので。今回のアルバム、実はどの曲もそれぞれ原作になっているものがあって…全部は説明しないですが、この曲にも原作があります。性別のない世界の話を元にした曲で、男性と女性で掛け合いができたら面白いと思って、この曲を紫 今さんと一緒に歌うことにしました」

──レコーディングはいかがでしたか?

「オーダー通りにいろんなテイクを出してくださって、すごく器用な方でした。“ちょっと悪い感じで”とか“ちょっとダウナーな感じ”、“ここは明るく”と言うと、それぞれオーダー通りにやってくれました」

──お二人の歌いわけはどのようなイメージだったのでしょうか?

「2番のAメロに少しヒップホップのようなノリがあって、自分で歌ってみたらあまりうまくいかなくて…だったら紫 今さんにやってもらったほうが絶対にいいと思いました。そこから、2番は紫 今さんにお願いして、最後に2人で掛け合いする形に決まりました」

──すごく良いバランスになりましたね。

「はい。ちなみに、今、「GUN POWDER」で第1クールオープニングテーマを担当しているTVアニメ『勇者のクズ』のエンディングテーマが紫今さんです(「メンタルレンタル」)。この曲に参加してもらうことになったあとに決まった話なので僕も驚きました。3月には、彼女のライブ(『MULASAKI IMA presents."MICELLE"』)にも呼んでいただいているので、どこかで「jewel」も披露したいと思っています」

──その他の収録曲で、ご自身として挑戦的だったと思う曲はありますか?

「「世界の終わり」は、もともといつも通りの手癖っぽい曲だったのが、アレンジャーの田口くん(田口悟 / RED in BLUE)がかなりぶっ壊してくれました」

──“ぶっ壊してくれた”とおっしゃっいましたが、つまりTOOBOEさんのイメージはこうではなかったのでしょうか?

「はい。僕としては「心臓」のような、いつものハイテンポな曲というイメージで作った曲でした。そしたら僕では到底思い付かないアレンジで返ってきて。田口くんと僕はルーツが全然違うんです。だから、“ボカロや歌謡曲がルーツにない人がアレンジするとこうなるんだ”と驚きました。すごく楽しかったです」

──内容としては、ライブを歌った曲なのかな?と勝手に推測してしまいました。

「あー、そういう考え方もありますね。でもこの曲にも原作があって。作品名は明かしませんが、人類と種族が異なるものの友情を描いた作品をテーマにした曲です。“バディもののような曲が書けたらいいな”というイメージでした」

──種族が違う2人の友情を描いた曲を、ルーツが違うお2人で作り上げたんですね。

「そうですね。だからこそ僕もアレンジでの破壊を求めていたのかもしれないです」

──さらにアルバム『EVER GREEN』の完全生産限定盤には『TOOBOE×gurasanpark SPECIAL LIVE』を収録したBlu-rayが付属します。これはどのようなライブなのでしょうか?

gurasanparkというのは、僕のライブでベースをやってくれているParkさんのソロプロジェクトです。昨年9月にやったライブツアー『残夏の怪物』の裏ファイナルとして、普段とは違うライブをしたくてgurasanparkと一緒にライブをしたんです。その手触りがすごく良くて。だけどそのときはキャパシティも小さくて全員が来られたわけではないので、ちゃんと形に残したいと思って、そのときとほぼ同じセトリで、スタジオで撮り直しました」

──どのような内容になっているのか、少し教えてください。

「いわゆるシーケンスと呼ばれる電子音はなくて、ベースとドラムとギターと僕だけ。音数の多い原曲たちもgurasanparkの解釈でファンクっぽくしてくれていて、かなり面白いものになっています」

──そんな『EVER GREEN』というアルバムですが、ご自身ではどんな1枚になったと思いますか?

100年後も誰かが聴いてくれていたら嬉しいです。そう思えるくらい、色褪せないアルバムになったと思います。歌謡曲って、ジャンルとしてあるわけではなくて、ざっくりとした概念として今日まで残っているものだと思うんです。『EVER GREEN』も、僕たち世代の人に子供が生まれて、その子供が生まれたときに、僕たちが山崎まさよしさんやスガシカオさんを聴いていたように車の中でかかっていたら嬉しいですね」

──TOOBOEさんの楽曲の根源には怒りがあることが多いとおっしゃっていましたが、『EVER GREEN』では光を感じさせる曲や希望を託している楽曲が多い印象を受けました。そのあたりはご自身ではどのように感じていますか?

「ルーザー感は変わらないですけど、年々ポジティブにはなっていると思います。聴いてくれる人、認知してくれる人が増えていくことに伴い、ただ“嫌なことがあった”というだけではなくて、“クソな人生の中でも俺が頑張っているのを見てくれよ”という気持ちになってきているのかも…。曲を通して僕の生き方や人生を見た人が“自分と同じような人間が頑張っているなら、自分もちょっと頑張ってみるか”と思ってくれればいいな。そういいうマインドは濃くなっているのかもしれないです」

──4月にはワンマンツアー『TOOBOE ONE MAN TOUR 2026 〜銃爪は視線〜』が控えています。どんなツアーになりそうですか?

「『銃爪は視線』というタイトルは『勇者のクズ』にちなんだものです。出会いや言葉といった些細なものが引き金になって物語が動き出すというのが『勇者のクズ』の魅力だと思ったので、そこから言葉をいただきました。僕からお客さんに向ける視線だったり、逆にお客さんから受ける視線だったり、言葉や音楽が引き金になって、次の日からの人生が何か一つでも変わったらいいと思ってこのタイトルにしました。内容については、まだ詰めているところですが、そのテーマに沿ったライブをしたいと思っています」

──「あなたはかいぶつ」の話を伺った際に、“1年前、2年前だったらライブもそんなにやっていなかったから「あなたはかいぶつ」みたいなものは作れなかったと思う”というお話をされていましたよね。ライブを重ねた今、TOOBOEさんにとってライブはどういうものになっているのでしょうか?

「最初の頃は“間違えたくない”とか“恥をかきたくない”と思ってガチガチだったんですけど、今はすごく力を抜いてライブができるようになりました。そのぶん、コミュニケーションやパフォーマンスにもう少し余裕を持たせられたらいいなと思っています。ソロシンガーってリリースした音源がすべてで、そこにすべてが詰まっているんです。でもバンドは音源よりもライブにすべてが詰まっているじゃないですか。今年は僕としてもそういうライブにも挑戦したいです。ライブはライブで、音源とは別に自分のクリエイティブを詰め込めていきたいと思っています」

(おわり)

取材・文/小林千絵
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFORMATION

TOOBOE『EVER GREEN』

2026年2月11日(水)発売
完全生産限定盤(CD+BD+ぬいぐるみ)/SRCL-13556〜13558/9,600円(税込)
※TOOBOE書き下ろしジャケット
※スペシャルボックス仕様
※グッズとしてTOOBOEデザインのオリジナルキャラクター“ダメヒマワリ”ぬいぐるみ付属
通常盤(CD only)/SRCL-13559/3,300円(税込)

TOOBOE『EVER GREEN』

LIVE INFORMATION

TOOBOE ONE MAN TOUR 2026 〜銃爪は視線〜

2026年4月11日(土) 愛知 Electric Lady Land
2026年4月12日(日) 大阪 BIGCAT
2026年4月17日(金) 福岡 DRUM Be-1
2026年4月24日(金) 東京 Zepp DiverCity

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