──前回のインタビューで、2025年は“たくさん曲を書く1年にしたい”とおっしゃっていましたが、その言葉通り2025年11月には1st アルバム『愛’sCREAM』をリリースされました。ということで、まずはこの1stアルバム『愛'sCREAM』について聞かせてください。1stアルバムを制作してみていかがでしたか?
「ずっとシングルをリリースし続けてきていたので、1stアルバムは念願でした。リリースしたのは23歳のときですが、制作自体は22歳の間に終わらせていたので、22年間の間に感じてきた様々な愛についての価値観や考え方を表現できるアルバムにしたいと思って制作しました」
──出来上がってみてどんなアルバムになったと思いますか?
「1stアルバムならではのアルバムになったと思います。10代の頃に作った曲も収録していますし、逆に表題曲の「愛‘sCREAM」は23歳になるギリギリに作った曲です。この曲は初めてピアノで作った曲でもあります。そうやってその時々で自分が感じたことを落とし込めたアルバムになっていて。何年後、何十年後に振り返っても“22歳のときはこういう感情で音楽と向き合っていたんだな”と思い出せるようなアルバムになったと感じています」
──表題曲「愛'sCREAM」は初めてピアノで作った曲ということですが、ピアノで作ったのはどうしてなのでしょうか?
「高校生のときにおじいちゃんがキーボードを買ってくれたんです。でも、ずっと弾いていなくて…。だけど部屋にはずっとあったので、ふと“キーボードで作ってみよう”と思ったのがきっかけです」
──ピアノや鍵盤楽器はもともと弾けたのでしょうか?
「いえ。小さい頃に少しだけピアノを習っていたんですけど、つまらなくてすぐにやめてしまいました。その後、ギターを始めてからはギターが楽しくて、ずっとギターばかり弾いていて。だけど“1stアルバムだし、何か挑戦してみたい”と思ったときに、ギターは自分の好みのコード進行とかもわかっているから、手癖が出てしまいますし、“せっかくキーボードがあるなら作ってみよう”って。でも本当にキーボードが弾けなくて…。とりあえずコードを弾いてみたんですけど、手の指だけじゃ足りなかったので、床に置いて足の指も使ったりしながらなんとかコードを決めて…そこで考えたコードをギターに変換して、ギターで弾き語りをしてデモを作っていました」
──すごいことになっていたんですね!? ピアノのコードをギターに変換したとき、動き的に難しいものになっていたりはしなかったんですか?
「とても難しかったです。でも私にとっては、ピアノほど難しくはなかったので。大丈夫でした。アレンジに入っていただいたバンドメンバーのキーボードの方に“このピアノのコード、難しいよ”と言われて、“やっぱり難しいものになっていたんだ”と思いました…“指、足りなかったもんな”って(笑)」
──足の指まで使っていたから…
「はい。だけどギターだったら、難しいとわかっているコードはあえて使わなかったと思うんです。自分で弾き語りする場面が必ずあるから。だけどピアノだと、何もわからないから難しいものも自然と取り入れられました。そういう意味では、普段とはまた違うものができてよかったと思いました」

──先ほどアルバム『愛'sCREAM』には10代の頃に作った曲も収録されているとおっしゃっていましたが、今、当時の楽曲を聴いて変化や成長は何か感じましたか?
「初期の曲は「あなたは懐メロ」なんですけど、今聴くと、アレンジがフレッシュだと思います。あと、最初は“英語を使わない”という自分ルールを設けていたので、歌詞も日本語しか使っていないですし、そこまで韻も踏んでいないです。だから作り方も変わりましたし、音の好みも少し変化していると思いました」
──作り方や音の好みが変わっていったのはどうしてだと思いますか?
「初期はギターとしか向き合っていなかったから。だけどアレンジをしてもらうと、ドラムやベース、ギターもエレキギターが入ってきて…最初はそこの想像力が乏かったと思います。「あなたは懐メロ」は、初めて自分の声とギター以外のものが入ってきた感動が大きくて、それで満足だったんです」
──アレンジされていることに感動したんですね。
「はい。“えっ? アーティストじゃん!”みたいな。今、聴き直してもそのときの感動が蘇ります。だけどその作業を繰り返していくうちに、私自身のドラムやベースの好みなどもわかってきて…それによって作る曲も少しずつ変わっていったと思います」
──楽曲を作るときにバンドアレンジのことも想像して?
「イメージは浮かびやすくなっていると思います」

──では恋や愛に対する価値観、考え方に変化は何か感じますか?
「それでいうと10代の頃はそこまで愛について深く考えていなかったです。リリースしているのは恋愛楽曲が多いですけど、作っていたのはそうではない曲のほうが多かったりして。逆に20代に入ってから、愛についてちゃんと考えるようになりました。10代の頃に何なのかがわかっていなかった感情に20代になって向き合って、“自分ってこういう人間なのかも”と気づくようになったというか…」
──その変化がうまく反映されていると思う楽曲を挙げるとしたら、どの曲になりますか?
「「愛 need your love」です。自分の中にある根本的な叫びがこもっているのがこの曲かな?って、曲を聴いても思いますし、ライブで歌っていてもすごく感じます」
──この曲はどのようにできた曲なのでしょうか?
「この曲は「グッバイバイ」をリリースした直後に書いた曲です。“音楽の神様に愛されていない”と思っていた10代の頃の自分の想いを、恋愛のように書いた曲です。だからDメロで<この曲がいつか有名になって / あなたの耳にも届くようになって / その時はわたしは違う場所で / 愛を求めているから / 愛を探しているから>と歌っています」
──「グッバイバイ」の後に作ったということですが、「グッバイバイ」が国内外でかなりたくさん聴かれたからこそ、10代のときの想いを曲にできたりしたのかな?と、お話を伺っていて思いました。
「それはあります。「グッバイバイ」は私にとって、この先の可能性を感じられた大きなターニングポイントでした。だからこそ余計に“アーティストとして愛されたい”とより思うようになった時期でもあったと思います。だからこそ「愛 need your love」を書いたんだと、今振り返ると思います」
──この曲はシンガロングパートもありますが、その想いで作った楽曲を、たくさんのファンの方と歌えるのは嬉しいですね。
「すごく嬉しいです」
──2025年11月に『愛'sCREAM』をリリースしたあと、デラックス版『愛が溶けないうちに』を2026年2月にデジタルリリースしました。
「アルバム『愛'sCREAM』を作り終えた時点で“書き終えた!”となっていたんです。でも、“なにかまだ足りない気がする…”と思ってしまって。そこから“愛の叫び”という意味で作った“アイスクリーム”は、今後どう形を変化させていくのか? 永遠に残り続ける感情はあるのか?と考えるようになって。考えていくうちに、積み上げたものが一瞬にして形を崩してしまう、一瞬にして溶けてしまうことってあるんだというところに辿り着いて、「愛が溶けないうちに」を書き下ろして、『愛'sCREAM』を再構築したアルバム『愛が溶けないうちに』を作りました」
──“なにかまだ足りない気がする…”と思って、そのままにせずに、そこからちゃんとアルバムを作り上げるのが素晴らしいですね。
「“続きが必要だ”と感じてしまったんです」
──今、話してくださったことをきっかけに完成した楽曲「愛が溶けないうちに」は、かなり共感を呼ぶ楽曲だと思いますが、リスナーからの反響はどのように受け取りましたか?
「失恋バラードをシングルとしてリリースするのは久しぶりだったので、“おおー! ここでバラード!”という声もありましたし、“ちょうど恋愛に悩んでいたので共感しました”と言ってくださった人もいれば、仕事面において“キャリアとして積み上げていたものが一瞬に崩れてしまう”と捉えて理解してくださっている方もいて。いろんな意味で捉えてもらえてよかったです」
──今おっしゃったように、シングルとしては久しぶりのバラードとなったわけですが、サウンド面で意識したことはありますか?
「バラードではありながらも、完全に楽器を静かにさせたいわけではなくて…“エモーショナルロック”を目指していました。エモーショナルな感情を呼び起こすような強い音は鳴らしているけど、その音がマイナーコードであるとか。切なさが混じる強さは邦ロックの魅力だと思ったので。ボーカルでも、その切なさと強さの両方を出したいと思って歌った記憶があります。あとは…<言葉にすることが下手くそだったあなたの / 不器用なところも愛していたのに>というフレーズがあるんですけど、この“言葉にすることが苦手”というのが、この曲のコンセプトの一つでもあって。言葉にすること、感情を言語化することってすごく難しいですよね。でも大切なことでもあって。歌詞を書いていても、“この歌詞の何%が伝わっているんだろう?”と思うと、“言葉ってすごく脆い”と感じることがあります。そう考えると、言葉にするのが苦手な人って苦しいだろうなと思って、それを歌詞にしました。その感情は、力強く歌うようにしています」
──同じく新録曲「Psycho」についても聞かせてください。この曲は「愛が溶けないうちに」とは雰囲気が異なり、耳障りは軽やかな楽曲ですね。
「そうですね、でも、歌詞は軽やかではないです(笑)」
──こういう恋愛ってありますよね。
「いますよね、こういうサイコパスな人! だから世の中のサイコパス全員に届けばいいのにと思っています(笑)」
──でも、わかっていても、こういう人が魅力的に思えてしまう人の気持ちもよくわかります。
「どうしようもないですよね。以前、母に“傷つきが足りないんだよ”と言われたことがあって。そういう人にずっとハマってしまうのは傷つき足りないからで、“だからどんどん傷ついたらいい”みたいなことを言われたんです。そのときに“確かに”と思いました」
──お母さまが!? お母さんとはよく恋バナをされるんですか?
「すごくします。なんなら母との話を元に曲を作ることもあります」
──いい関係ですね。しかもお母さんが“傷つく恋愛はやめなさい”ではなくて、“傷つき足りないから、どんどん傷つきなさい”と言ってくださるのも素敵ですね。
「母もサイコパスタイプを好きになる傾向にあるんです(笑)。だから気持ちがわかるんだと思います」
──そんな相手に振り回される恋愛を歌った「Psycho」ですが、もっとドロドロした楽曲にしても良いところを、これほど軽やかな楽曲にしたのはどうしてですか?
「これは私の“楽曲あるある”だと思うんですけど、“ポップに歌っていても、内容はポップじゃない”という曲がかなりあって。アルバムで言うと、「ジェラシー」もそうです。そういう曲が私の好みでもあるんですが、その方が良くないですか? 重たい曲とメロディーで<いやらしい 考えばかりで嫌になっちゃうわ>と歌われると、疲れたところにさらに疲れが増すような感覚になってしまいませんか?。そもそも私自身が普段、“えっ!?”と思われるようなことをポップに言うところもあって(笑)。自分の性格がそのまま音楽になっていると思います」
──リスナーとしては、それこそ「ジェラシー」の歌詞のようなドロドロした感情を自分が持っているとき、軽やかに歌い上げてくれるとホッとするところもあります。
「そうですか!? 嬉しい!」
──このまま「ジェラシー」の歌詞にちなんだことを伺いたいのですが、はたからみると、冨岡さんはどちらかと言えば、ジェラシーを感じられる側というか…アーティスト人生はすごく上手にいっているように見えます。でもやはりこの曲で歌っているようなジェラシーを感じたり、もがいていたりするのでしょうか?
「あります、あります! 自分では“遠回りをしている人間だな”と思っています。曲が作れない時期もありましたし、路上ライブをしていた時期は足を止めて聴いてもらえないことに悩んでいましたし。何事においても遠回りをしていると感じます」
──では、現在のアーティストとしてのご自身の現在地はどのように感じていますか?
「登り中ですね。ヒィヒィ言いながら、“何かバズってくれないかな?”と思いながら曲を書いています。もちろんバズることばかり考えているのも良くないですが、やっぱり曲を認知してもらわないと意味がないので。ライブもそうですけど、自分だけが気持ちよくなっていても意味がないと思っています。“じゃあ一人でやっていてください”となるだけって。もちろんバズらせるために何でもやるわけではないですし、曲げたくないところは曲げないですが、できる限り“いい!”と思ってもらえる楽曲を作りたいです」

──そんな中で5月27日には新曲「soulmate」がリリースされることが発表されました。この曲はどのような想いで作った楽曲ですか?
「この曲は、“好きにならずにはいられない”というポジティブなラブソングではあるんですが…不健康すぎますよね(笑)。<君の嫌いなあいつのことを僕も 気づけば嫌いになっている>とか<全てを犠牲にできるよ>とか、相手を“好き”ということ以外、自分自身の意見を持っていない、怖いくらいに沼っている恋愛を歌っています。それをまたポップに歌っていて…」
──怖いくらい沼っている状態を曲にしようと思ったのはどうしてなのでしょうか?
「私自身が沼ったら沼ってしまうタイプなので、そういう曲を書いてみたいと思いました。それこそ「Psycho」をリリースしたから書けた曲でもあって。「Psycho」で書いた“サイコな人”に沼り始めたときの曲を作りたいと思って書きました」
──なるほど! それだと、これほど夢中にさせられますよね(笑)。
「ですよね。あと、ライブに向けて作った曲でもあります。“ライブに来てくださるみんなと私は“soulmate”だよ“という想いも伝えられたいと思って書きました。だからライブで楽しくパフォーマンスできる曲になっています」
──もちろん冨岡さんのファンの方は冨岡さんへの想いでもあるでしょうし、いわゆる“推し”がいる方にとっては、推しへの想いとも捉えられそうですよね。
「それも思いました! いろんな推しへの想いにも使ってもらえたら嬉しいです」
──それで言うと、冨岡さんが最近“沼っている”ものは何かありますか? 食べ物でも、音楽や映画でも…。
「私、偏食なので、毎日同じものを食べています。朝昼晩のメニューが毎日一緒なんです。朝はアイスコーヒーと、ブルーベリーとラスベリーと蜂蜜を乗せたグリークヨーグルトと、卵かけご飯の3点。そんな感じで昼、夜も毎日同じものを食べています。この生活が今2〜3週間続いています」
──飽きないんですか!?
「飽きないです。20歳のときは半年間ずっと毎朝お蕎麦を食べていましたし、音楽も“これだ!”と決めたらそれしか聴かない時期があります。基本的に沼りやすいタイプなんだと思います」
──5月9日から『TOMIOKA AI LIVE TOUR 2026 "愛が溶けないうちに”』が始まりました。ツアーへの意気込みを聞かせてください。
「1stアルバム『愛’sCREAM』をリリースしてから初めての国内ツアーになるので、アルバムの曲を届けられるのが楽しみです」
──冨岡さんは昨年、『TOMIOKA AI LIVE TOUR 2025 ”Let's meet on the Dance Floor”』で初めて東名阪ツアーを行いましたが、単発のライブとツアーとではどのような違いを感じましたか?
「私は、単発のライブよりもツアーが好きだと思いました。公演を重ねれば重ねるほど味が出てくる気がして。もちろん単発のライブにもそのライブでしか出せない良さもあるんですけど。そう考えると、ツアーは同じセトリでも、お客さんも違いますし、そのときの感情でそこでしか出ないので全公演が毎回違うライブになります。それが歌い方や表現の仕方にも表れて…だから面白いですし、やればやるほど自分自身のことも知っていける感覚になります。今回のツアーでもまた新たな経験ができるんだと思うと楽しみです」
──ちなみに、ピアノは「愛'sCREAM」以降も弾いていますか?
「実は…それこそツアーで初めてピアノの弾き語りをしようと思っていて(※ツアー開始前にインタビュー)」
──1年前は足の指も使ってなんとかコードを弾いていたところから弾き語りを!? すごいですね。
「今、猛練習中です。ピアノの弾き語りができるようになると、曲作りやライブの幅もまた広がると思うので、頑張ります!」
(おわり)
取材・文/小林千絵
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

TOMIOKA AI LIVE TOUR 2026 "愛が溶けないうちに”
2026年5月9日(土) 福岡 BEAT STATION
2026年5月16日(土) 大阪 心斎橋 BIGCAT
2026年5月17日(日) 愛知 名古屋 DIAMOND HALL
2026年6月6日(土) 東京 LINE CUBE SHIBUYA







