──2025年1月リリースの「ナンセンス」リリース時以来のインタビューとなります。そのインタビュー時に大島さんは“マシンピラティスを始めた”とおっしゃっていましたが、続いていますか?
大島真帆「続いています! 今はマシンピラティスをやっているんですが、吊られるやつに挑戦してみようかな?と思っているところです」
──おお、着実にレベルアップしていっているんですね。ではまず、Penthouseの2025年を振り返っていただきたいと思います。昨年10月から11月にかけて行ったwacci、レトロリロン、AKASAKIを迎えた対バンツアー『Penthouse presents "Brandnew Dancehall"』は一つ大きなトピックスかと思いますが、この対バンツアーを開催することになった経緯から教えてください。
浪岡真太郎「僕たちはピアノの角野(Cateen)のスケジュールの関係で、どうしてもバンドでのライブが限られてしまうんです。だけど場数を踏みたいですし、もっといろんな人に聴いてもらう機会も作りたいとも思っていました。そこで、対バンツアーという形式だったら、僕たちもやりやすいですし、みんなも来やすいのかな?と思って企画しました。僕たちはアーティストの友達があまり多くないので友達を増やしたいという気持ちもあったので(笑)、好きなアーティストに声をかけさせてもらいました」
──実際にやってみていかがでしたか?
浪岡「楽しかったです」
大島「友達、増えたしね」
浪岡「はい。友達が増えました」
大島「AKASAKIくんとはまだ行けていないですけど、wacciさん、レトロリロンさんとはそれぞれ飲みに行って、曲の作り方だったり、これまでどういう活動をして今に至るのかという話をしたり、対バンしただけでは知ることのできない話もしました。レトロリロンはパートごとに個々で飲みに行ったりもしているよね」
浪岡「そうだね」
大島「そういう個々のつながりもできましたし、ライブを観たり、ライブで一緒に歌わせてもらったりしたことで、それぞれのバンドの魅力を感じ取ることができたツアーだったと思います」
──Penthouseが誰をツアーのゲストに呼ぶかがわかったことで、シーンにおける立ち位置みたいなものが見えた印象もあります。皆さんとしてはそのあたりも意識していたのでしょうか?
浪岡「いえ、そこまでは考えていませんでした。でもそれ以降、対バンライブやイベントに呼ばれることが増えてきているので、あのツアーが何かのきっかけになっていると思います。実際、僕はエゴサをよくするので、例えばレトロリロンを好きな人がPenthouseを聴いてくれることが起こりやすくなるというのは、今回の対バンツアーをしてみて感じました」
大島「Penthouseはシティソウルを提唱しているんですが、“ポップスとは一線を画している音楽”や“ちょっと敷居が高いバンド”として見られている印象があって…それはPenthouseの個性でもあるので良いことでもあるんですが。だけど、今回、ポップスど真ん中のwacciさんや、若者たちに評価されているAKASAKIくん、レトロリロンと一緒にやることによって、“我々はポップスでもあるんだよ”ということを伝えられたと思います。それに、対バンライブだとワンマンライブよりも曲数が限られてくるので、限られた曲数の中でどういうふうにPenthouseを見せるのか?という工夫をすることで、来てくれた方には新たなPenthouseを届けることもできたと思います」

──対バンツアーの他に、2025年印象的だったことはありますか?
大島「これまでもいい曲を作ってきましたけど、去年は「Planetary」や「Minute by Minute」など、“お! いいの作りましたね?”みたいな、デモの時点で“これはさすがに広まるでしょ”と思うような曲がたくさん生まれたのはPenthouseにとって大きな収穫だったと思います」
──ソングライターの浪岡さんとしては、何か意識して変えたことなどはあったのでしょうか?
浪岡「いや、僕は常にいい曲を書いているつもりなので、そこは真帆さんが好きな曲が続いただけじゃないかな?(笑)。むしろ僕は常々大ヒットしたいと思っているので、2025年はそれを叶えられなかったのが残念だと思っているくらいです。2026年は叶えられるように頑張ります」
大島「あと、個人的なことですが、9年半勤めていた会社を辞めたことですね。途中からは雇用形態も変わって正社員ではなくなっていたんですけど、それでも毎日決まった時間に起きてパソコンをつけて決まった時間まで働くという生活ではなくなって…いい意味で居場所が一つなくなった感覚でした」
──“戻る場所がない”という?
大島「そうです。だから“Penthouseの大島真帆として生きていかないといけないんだ”という気持ちにはなりました。それは自分にとってはすごく大きな出来事でした」
──会社を辞める決断をしたきっかけは何かあったのでしょうか?
大島「いろいろあるんですが、一つは夫に“そろそろ辞めたら?”と言われたことです。6月の東京国際フォーラム ホールAでのライブの日の夜に、フォーラムのホールAでライブをしているPenthouseを観て“そろそろ次のステージに行ったらどうですか?”と思ったらしくて。もう一つは、お世話になっている照明スタッフさんに、打ち上げで“まだ会社員をしている”という話をしたら“もう辞めたほうがいいと思う”と言われたことです。“会社員ということは、取引先の人やクライアントと会うわけだけど、本当のスターは会いたくても会えない存在、手が届かない存在でいないとダメだ”と言われて。その言葉にハッとして、夏のツアーが終わってすぐに辞めました」
──ご自身が思っているよりも、周りから見るとバンドの状況が大きくなってきていたんですね。
大島「そうですね。自分では“このままでもいいかな”と思うこともあったんですが、周りがそう思ってくれているうちに辞めたほうがいいのかも…と思って決断しました」

──浪岡さんは印象的な出来事はありますか?
浪岡「何だろう?…海外公演が増えたことですかね。例えば韓国のジャズフェス『SEOUL JAZZ FESTIVAL 2025』ではINCOGNITOのような僕たちが学生の頃に憧れていたアーティストと同じステージに出ないといけなくなって」
──“いけなくなって”(笑)。
浪岡「そういうアーティストと対等に見られるんだとということはすごく意識しましたし、だからこそ“ちゃんとやらなきゃいけない”と強く感じました。INCOGNITOなんて雲の上の存在だと思っていたんですけど、“そんなことも言ってられないんだな、ちゃんと戦えるようにならないといけないんだな”と思った1年だったと思います」
──実際に『SEOUL JAZZ FESTIVAL 2025』でのライブはいかがでしたか?
浪岡「韓国でのライブは初めてだったんですけど予想していた以上に盛り上がってくれてよかったです。大きなステージでしたが、しっかり盛り上がってくれるお客さんがいましたし、それこそきっとお客さんはINCOGNITOとかと対等に見てくれているんだと思ったら、その気持ちに応えないといけないと思いました」
──お二人とも、自分が思っているよりも周りからの見え方でバンドの状況をようやく把握しているというか…。
大島「自分たちはそんなに大きく変わっていないんですけどね。でも『SEOUL JAZZ FESTIVAL 2025』ではすごくラグジュアリーなホテルを用意してくださっていましたし、台湾でもファンのみんなが“待ってたよ!”と迎えてくれたり、日本ではなかなか出来ない経験をさせてもらいました」
──そんな2025年を経て、2026年2月9日にリリースされるのが新曲「青く在れ」です。疾走感あふれる爽やかな楽曲で、“Penthouse、こんな曲も作れるんだ!?”と驚きました。
大島「浪岡は何でも書けるんだよね」
浪岡「そう。こうやっていろいろな曲を作りながら、何がどう世の中に受け入れられるのかを探っています」
──「青く在れ」は住友電工スポーツスペシャル 第6回全国大学対校男女混合駅伝テーマソングですが、楽曲制作はどのように進めていったのでしょうか?
浪岡「もともと曲のアイデアはあって寝かせていたところにタイアップのお話をいただいて。別の曲をレコーディングしようとしていたタイミングだったので、慌ててこっちに切り替えて、急いで歌詞を付けてレコーディングしました」
──もともと曲のアイデアとしてはあったということですが、そのときはどのようなイメージで作っていた楽曲だったのでしょうか?
浪岡「歌詞は最後に付けるスタイルなので、極力最初に曲のイメージは付けないようにしているんですが、“疾走感があって爽やかでちょっとだけPenthouseらしい捻くれた感じもある”という曲通りのイメージは持っていました」
──では『全国大学対校男女混合駅伝』のテーマソングとして歌詞を含めて曲を詰めるときにはどのようなことを考えましたか?
浪岡「歌詞は大原(拓真/ Ba)が書いたので詳しいところはわからないですが、大会や受験、もしかしたら恋愛もそうかもしれないですが、“今までの経験を最後にぶつける”というのがテーマになっている曲だと思います」
──大島さんは楽曲を受け取ったときにどのような印象を受けましたか?
大島「Penthouseの中でもかなり上位に入る爽やか疾走感あふれる曲で、万人に刺さる曲だと思いました。誰もが青春時代を送っただろうし、そんな青春時代は戻りたくても戻れないから、青春を取り戻せる感じもあって、背中を押せる応援ソングで、多くの人に届くといいなと思いました」
──入りが優しくて、サビは力強いというボーカルも印象的ですが、歌う上ではどのようなことを意識しましたか?
浪岡「まさに、静かに入ってサビで爆発させるような流れは意識しました。サビの頭が意外と低いので難しいですが、そこで勢いを殺さずに歌っていければと思っています」
大島「今回は気持ちよく鳴らせる音域の曲だったので、本当に勢いそのままに歌いました。レコーディングは浪岡の後なので、今回も浪岡の歌っている雰囲気や声の感じをそのまま引き継いで表現しました」
──サビでは浪岡さんから大島さんに切り替わるところがものすごく自然ですよね。一瞬どこで切り替わったのか気づきませんでした。
大島「確かに。シームレスですよね。“ユニゾンから急に大島選手出てきた!”みたいな。あれ? そこはちょっと駅伝っぽいのかも」
──駅伝の“襷をつなぐ”ということから連想した意図があったのかと思いました。
浪岡「そういうことにしておきましょう(笑)。ミックスがかなり上手くいきました」
──サウンド面でのこだわりも教えてください。
浪岡「Penthouseはギターを歪ませることがあまりないのですが、今回はかなりギターが歪んでいて。ワウも使って、ロック寄りにしました。そこで駅伝っぽさは出せたと思います」
──その他に特に好きなところや聴いてほしいポイントを教えてください。
浪岡「Aメロのメロディは自分でもうまくできたと思います。さらっと流れる自然なメロディだけど跳躍もあって、その塩梅が気に入っています。同じAメロでも1番と2番で歌い方が違うので、そこにも注目して聴いてもらえると面白いと思います」
大島「私はすごく細かいんですけど…Bメロの浪岡の<向かい風に乱した呼吸>の<みだ〜>がすごく好きです。ここは聴いてほしいです! 自分も歌っているところで言うと、ラスサビです。浪岡から入って、ユニゾンになって、最後に私が出てくるという入れ替わり立ち替わりの感じは、声の駆け引きもよくできていますし、ツインボーカル感が1番出ていて気に入っています。今回はミックスもかなり良い感じで、楽器の音もバランスよく聴こえると思うので、そういうところも味わっていただけると嬉しいです」
──「青く在れ」というタイトルに込めた想いを聞かせてください。
浪岡「タイトルは大原が付けたので、これもちゃんとした意図はわからないのですが、僕の解釈だと、最近“冷笑界隈”という言葉が生まれたりしていますけど、そんなメタ視点で見ていないで、渦中で一生懸命やることに人生の意味がある、そういうことなんだと思っています」
大島「大原さん自身が、そもそもそういう何事にも熱い人間だからね。でも浪岡もそうじゃない? “ジャンプ人間”というか…友情・努力・勝利を描いた『週刊少年ジャンプ』の漫画のような人間。Penthouseのメンバーってみんな冷笑しているタイプに見えて、実は内には熱いものを持っているので、曲を通してそういうものが伝わるといいですね」
──ちなみにお二人は、学生時代、何か夢中になっていましたか?
浪岡「僕は基本、何かに夢中になってきています。小学生のときはペン回しの世界大会で優勝しましたし」
──え!? ペン回しに世界大会があるんですね。
浪岡「そうなんですよ。その後はバンドに夢中になって、勉強もちゃんとしていましたし。基本、熱中しています」
大島「私も基本的に熱中人間で、中学のときはミュージカル部で部活に熱中して、高校時代は運動会の応援団に熱中して。大学に入ってからはバンド。そこからは現在までずっとバンドが生活の中心にあります」
──「青く在れ」から始まる2026年はPenthouseにとってどんな1年になりそうですか?
浪岡「3月には東京・日本武道館公演『Penthouse ONE MAN LIVE in 日本武道館 "By The Fireplace"』があるので、それを皮切りにもう一段階、二段階、知名度を上げていけるようにしたいです。ヒット曲を出せるように頑張ります」
大島「やっぱり日本武道館公演をすると“日本武道館をやったバンド”として見え方も変わると思うので、それをいい意味で踏み台にするというか…日本武道館を一つの通過点にしていけるような2026年になればいいなと思います」
──今お話にもありましたが、3月16日の日本武道館公演はどういうライブになりそうですか?
浪岡「“日本武道館でライブをするPenthouseというバンドがいるらしい”、“Penthouseが日本武道館でライブをするらしい”と、世の中に認識してもらいたいです。そういう狼煙をあげるようなライブになったらいいと思います。今までやってきたすべてを出し切れるような、いいライブにしたいです」
──先ほど“日本武道館を一つの通過点に”というお話もありましたが、日本武道館の先にはどのような活動や展望を考えていらっしゃいますか?
大島「大晦日の『NHK紅白歌合戦』」ですか?」
浪岡「『紅白』か〜。『紅白』でなくてもいいですけど、大きなところでやりたいです。でも、“僕たちの目標はヒット曲”と考えると、『紅白』に出られるということはヒット曲があるということになると思うので、目標としてはいいのかも」
大島「あとはアリーナツアーですね。日本武道館公演は1日だけなので、全国から来てくださると思うんです。でもツアーは全国各地に行くことになるので、それでもチケットがソールドアウトするのか?って、日本武道館公演をソールドアウトさせるのとは次元が違う話だと思っていて。皆さんのおかげで、デビューから着実にライブの規模を大きくしていくことができているので、この先もちゃんとステップアップしていきたいです」
──では最後に、最近感銘を受けたカルチャーや、最近ハマっているものを教えてください。
浪岡「僕はYouTubeの『積読チャンネル』です。いい感じに聞き流せる、Podcast的なチャンネルでよく見ています。最近だと特に差別についての動画が良かったです」
大島「私はNetflixの『白と黒のスプーン ~料理階級戦争~』という韓国の番組です。ミシュランなど業界で名の知れた白さじ料理人と、無名だけど実力のある黒さじ料理人が戦って1位を決めるという大会なんですが、料理は無名だろうが有名だろうが実力がある人が評価される舞台なんだと感じましたし、それは自分自身にもつながるところがあると思って。韓国語を勉強し始めたということもあって見始めたのですが、シンプルに面白くてハマりました」
(おわり)
取材・文/小林千絵
LIVE Photo/雨宮 透貴
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

Penthouse ONE MAN LIVE in 日本武道館 “By The Fireplace”
2026年3月16日(月)
会場:東京 日本武道館 ※THANK YOU SOLD OUT!!!

