――新番組の「中澤卓也のオレん家集合!」始まりました。このオファーをもらった時の気持ちを聞かせてください。

「素直にうれしかったですね。決まった時間にファンの皆さんに僕の声を聴いていただける機会が増えて、それも30分という長い時間ですから、喜んでくださる方が多いだろうなあと思うと、とてもありがたい気持ちになりました。それからスタッフの皆さんが実によく企画を練ってくださっていて、この番組でしかできない内容になりそうなので、どんな風に盛り上がっていくのか考えると、とても楽しみです」

――と、言いつつ、初回の収録では若干面食らっているシーンもありました(笑)。

「そうですね……若干(笑)。でも、僕自身はじめてのことに挑戦するのは好きな方ですし、番組の趣旨がとにかくリスナーの皆さんに楽しんでいただくということなので、僕自身がいろいろなことを楽しみながら番組作りをしていきたいと思ってます。同じ新潟出身のスタッフもいて、それだから起きる化学反応もあるんじゃないか……なんて期待しているところもありますし」

――その同郷ならではのこだわりはタイトルのイントネーションでわかりますね。

「“オレん家”のアクセントですね(笑)。新潟弁だと”オ”にアクセントなので、かなり新潟色が出ていると思います」

――そこを正されるディレクションがありましたが、あれはつまり中澤さんが東京に染まって本来の発音を忘れてしまったと?

「いやいや!そうじゃなくて(笑)。たまたまです、たまたま。故郷は大事にしてますから」

――いろんな番組のトークやステージのMCで、すでに定評を得ている中澤さんですが“「オレん家集合!」では、それらとはまた違った一面を見せてもらえそうですね。

「タイトルがタイトルですから、あまりカッコをつけずに、ふだんの自分に近い感覚でしゃべって楽しんでいただけたらいいなと思ってます」

――公式YouTubeチャンネルで配信中の「どたく。」ではTVなどでは見られない素の表情に、ファンの皆さんがとても喜んでいますが、そのUSEN版のような感じになると考えていいでしょうか?

「そうですね、実際気負わずにしゃべった方が、自分の気持ちは伝わるのかなと思いますし、それができたら仕事ではあるんだけれど、仕事っぽくない中澤卓也の素に近い部分に触れていただけるんじゃないかなという気がします」

――その、素に近い部分に触れてもらいたいという意識が、タイトルには込められているんですね?

「新潟弁が入っての“オレん家”ですから、新潟の実家に遊びに来てもらうような、そんな本当にリラックスした感覚でお届けしたいという気持ちですね。そして、この番組を聴いて、ほっと寛げたり、何か嫌なことがあったのもクスッと笑って忘れられたりする、みんなが落ち着けるような場所になったらいいなと思ってます」

――何かつまずくようなことがあっても、癒しや励ましによって再び進み始める力を与えられるようなもの、という点では2月14日にタイプB盤がリリースされた「陽はまた昇る」との共通点があるように感じます。

「おっしゃるとおりですね。「陽はまた昇る」は2022年の9月に発売した曲で、そろそろ新曲を出すことを考えてもいいんじゃないかということで昨年の秋にスタッフとミーティングをしたんです。でも僕の中にはこの歌に込めたメッセージを必要としてくれる人がまだまだ沢山いると思うし、一人でも多くの人に届けていきたいという気持ちが強かったので、新曲に切り替えずに引き続き歌っていきたいって話したんです。そこで、ずっと応援してくださっている方たちに、何か新しいものをお届けしようっていう気持ちもありましたし、発売当初から僕自身変化した部分もあると思うので、その辺も感じ取っていただけたらということでジャケットとカップリング曲を替えることにしました」

――カップリングの「Love Letter」は、真っ直ぐな愛のメッセージが爽やかな楽曲ですが、タイプB盤収録のための書き下ろし曲で、作詞作曲それから編曲もご自身が手掛けました。

「すでに作ってあったストックの中から選んでもよかったんですけど、何か新しいものを届けたいっていう気持ちが強かったので、急いで作りました。テーマについては、たまたまリリース日が2月14日に決まったので、バレンタインデーに関連するような曲にしようということで「Love Letter」になって」

――新曲を収録しようと決めてから作品が出来上がるまではどれくらい?

「1ヵ月くらいでした。本当に時間が足りなくて、バンドアレンジは間に合わなかったので今回はギターの弾き語りバージョンにしたんです」

――そういうことだったんですか!しかし、その短い時間の中で求められる作品を作り上げてしまったんですから、ソングライターとしても大いに成長していたということですね。

「どうなんでしょう……詞の断片はいくつか書き留めてはいたんですけどギリギリまで書けなかったのが、ある時ふとサビのフレーズが浮かんで“これならいけるかな”と思ったところから一気に完成まで進んだ感じで、まあ、出来はしましたけど、余裕とかは全然なくて、これは成長したと言えるのかどうか」

――本格的に曲作りに取り組むようになったのが2022年ですよね?それでここまでの作品を、限られた期間内に作れるようになったんですから大したものだと思いますが、曲作りのためのアイデアなどは日頃から書き貯めているんでしょうか?

「貯めてますね」

――同時に喉や身体のコンディションにも気を配り、ステージのアイデアを練ったりもしつつ、並行してレースの準備もされている。自分の容量が足りなくなるようなことはないんでしょうか?

「たまにありますけど、結局レースを通して身についたものが音楽に活かせたり、その逆があったりして、どこかで収拾がついているような気がしますね」

――歌手とレーサーを両立させるという稀有なことをとても涼しい顔でされていますよね?

「いや、涼しいとは思いませんけど(笑)、僕自身がどうこうと言うより、それを認めてくれる環境に恵まれたことが大きいと思います」

――聞くところでは今年は今まで以上に積極的にレースに参加される予定だとか?

「以前は富士スピードウェイで開かれるレースにだけ出ていたんですけど、今年は全国各地のサーキットを転戦することになっています」

――それはチャレンジの好きな中澤さんにとっては胸の弾むことでしょうけれど、歌手として全国ツアーを行いながら、同時にレーサーとして各地を転戦するのは、とても過酷なことのように思えます。そのスリムな身体のどこに、それほどのエネルギーが詰まっているんでしょう?

「どうなっているんでしょう?僕も知りたいです(笑)」

――子供の頃からいろいろなことに積極的に取り組む人でしたか?

「いや、そうではなかったですし、どちらかと言えば引っ込み思案で、決してアクティブなタイプではありませんでしたけど、自分が好きなことには集中していつまででもやっていられるというところはありました。そこは変わっていないと思いますね」

――すると、そういう人が歌とレースという2つの好きなことと出会ってしまったわけですが、今後3つ目4つ目が見つかってしまう可能性もありますね?

「どうでしょう?歌とレースほどの熱量ではまれるものが現れるかどうか」

――先ほどは番組内のプレゼント企画用に書をしたためていましたが、想定外に上手く書けてしまったとか。書道家として覚醒するかもしれませんよ(笑)。

「本当は習字とか苦手なはずなんですけど、なんだかそれなりに書けてしまって、次からはもっと気を抜かなければいけないかな?なんて思ってますけど(笑)」

――中澤さん的には気を抜けない仕事が続いています。すでに2024年の全国ツアーが始まっていますが、2023年に続き、バンドツアー、演歌・歌謡曲ツアー、弾き語りツアーという3つの異なる形態での公演です。

「すでにバンドツアーは始まっているんですが、メンバーとの結束やバンドとしての見せ方をより強めたものにしようという内容になっていると思います。中澤卓也と他のメンバーではなく、僕もバンドの一員という感覚で歌ったりギターを弾いたりして、このツアーならではの楽しさを感じてもらえたら。ファンの方が作ってくださる応援グッズのナンバーワンを決めるG-1グランプリなんていう企画も始めまして、ステージ上の僕たちだけでなく、客席の皆さんにも参加していただいて、みんなでコンサートを作って楽しんでいただけたらと考えてます。演歌・歌謡曲ツアーに関しては少人数の楽器編成で奥の深い演歌・歌謡曲の世界をどこまで表現できるかということにチャレンジしつつ、選曲や構成にストーリー性を持たせて……なんてスタッフと話していますね。それから弾き語りツアーは二部に分けて、前半はストーリーに沿った進行で、後半はオリジナルで構成するといった内容を考えてます」

――いろんなチャレンジをしながら変化と成長を続けている中澤さんですが、3形態のツアーという敢えて大変なことを選んだその根本にあるものは?

「ずっと同じことを続けていると自分自身が楽しくないっていうのもありますけど、同じことしかできないと思われたくないということもあるかも知れません。次は何をするんだろう?ってファンの方に楽しみにしていただける存在でありたいし、そのためにいろいろ考えるのが好きなんです。最近はいろいろな方のライブ映像を観ることが多いですね。桑田佳祐さんとかJUJUさん、それから玉置浩二さんも」

――ジャンルとしてはJ-POPのアーティストさんですが、いわゆる歌謡曲の色合いを感じさせるアーティストでもあります。やはり、そこが中澤さんが進もうとしている方向なんでしょうか?

「そうだと思います。歌謡曲って、これが歌謡曲ですって誰も言い切れないものだと思うんですよ、幅が広いし可能性もたくさんあって。そういうものだから、自分らしい音楽を見つけようとする中では、いろいろなことを試せる、とても適したものだという気がするんです。元々は主にJ-POPを歌っていた僕が、デビューして演歌・歌謡曲も勉強するようになって、その中で気付いたことやわかったことがありますから、そういうものを織り交ぜながら中澤卓也っていうジャンルを創っていけたらと思っています」

――中澤さんの3形態のツアーにも、中澤卓也を追求しよう、創造しようという意図が感じられます。

「確かにそれはありますね。演歌・歌謡曲に触れることによって、日本語の美しさとか言葉というものの大切さみたいなものを勉強できたと思っていて、今はどんなジャンルの曲を歌う時も、それを活かせてる気はするんです」

――それが中澤さんの個性だし強みですね。

「個性的ではありたいですよね。もちろん皆さんに楽しんでいただくことも大事なんですけど、いろいろな歌を歌っているのは、自分が何ものなのかを探っていることなのかもしれないとも思っていて。最後まで明確な答えは見つからない気もしますけど、見つけるためにはいろいろな角度から見た方がいいでしょうから、そのためにはできるだけいろいろなタイプの歌をうたった方がいいじゃないですか?今はそれを実践している過程なのかなと思います」

――YouTubeでさまざまなカバー曲を歌っていましたが、海外の方もたくさん視聴されているそうですね。

「実際、今は公演を観るために何度も来日してくださっている熱心な中国のファンの方がいらっしゃってくれたりして、少しずつではありますけど、音楽の幅と同時にファン層も広がっているように思います」

――今回「オレん家集合!」のリスナープレゼント用に書かれた色紙の文字は“初”と“創”でした。自分らしさを追求しながら独自の音楽を生み出そうとする中澤さんにはとても似合っているなと思いました。

「確かにそうですね(笑)。“初心”は忘れたくないし“創造”する意欲も大事にしたいですからね」

――「オレん家集合!」というくらいですから、たとえばどんなゲストに集合してもらいましょう?

「これは番組に限らずステージでコラボするなんてことを考えてもふだん交わることのない演歌・歌謡曲以外のロックバンドとかアイドルのアーティストさんと話したり、一緒に何かしてみたりできたら面白そうだなとは思います」

――ぜひ実現させて、番組リスナーや中澤卓也ファンに楽しんでもらいましょう。

「ありがとうございます。コンサートツアーもレースも一生懸命やって、「オレん家集合!」もたくさんの人が集合したくなる番組にできるよう頑張っていきますので、どうぞ応援してください」

(おわり)

取材・文/永井 淳
写真/いのうえようへい

中澤卓也 コンサートツアー2024LIVE INFO

バンドツアー
2024年3月10日(日)Zepp DiverCity(TOKYO)(東京)
3月23日(土)神戸朝日ホール
4月6日(土)長岡市立劇場(新潟)

演歌・歌謡曲ツアー
2024年8月31日(土)エル・シアター(大阪)
9月4日(水)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
9月9日(月)共済ホール(札幌)
9月16日(月)かごしま県民交流センター 県民ホール
9月17日(火)くまもと森都心プラザ
9月23日(月)島根県芸術文化センター グラントワ 小ホール
9月30日(月)北とぴあ さくらホール

弾き語りツアー
2024年11月30日(土)新潟県民会館 大ホール12月6日(金)横浜関内ホール
12月14日(土)ロームシアター京都 サウスホール

中澤卓也「陽はまた昇る」 (タイプ B)DISC INFO

2024年2月14日(水)発売
OPCN-0004/1,400円(税込)
タクミレコード

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