──昨年12月のSKE48卒業後、“江籠裕奈”としてソロ活動初となるシングル「はじまる」が完成しました。まずは、本格的にソロ活動をスタートさせることについて、今の心境を教えてください。
「去年から準備をしてきたので、やっと本格的にソロ活動をスタートさせられるというワクワク感が大きいです。私はSKE48にいたときにもソロシングルをリリースさせていただいたり、ソロコンサートも開催させていただいていたので、そのおかげもあってあまり不安はありませんでした。過去にソロ曲をリリースしていて、1人で歌う姿も見ていただいているという部分では、これからの活動もファンの方に受け入れてもらいやすいんじゃないかなと思います」
──まずは、表題曲の「はじまる」から話を聞ければと思います。「はじまる」は、共作詞という形で歌詞を手がけていますね。
「私が大好きで、すごく大事に思っていたSKE48 Team KIIの楽曲「君は未来に試されている」の繋がりから生まれた曲です。共作詞でクレジットされているkazueiさんは、「君は未来に試されている」の歌詞を書いてくださった方なんです。そのkazueiさんがステージでの私を見て書いてくださった歌詞がベースにあって、そこに私が言葉を加えて、最終的な歌詞ができました。グループを卒業して最初のソロ曲って、すごく大事じゃないですか。それにふさわしい曲になったと思いますし、このタイミングじゃなかったら歌えない歌になったなと感じています」
──曲調的には王道のアイドルソングですが、強い思いが込められているんですね。
「新しい夢に挑戦する歌詞にはなっているんですけど、過去の自分を認めてあげる、過去があるから今があるんだよって歌っています。私は自分を肯定してくれる歌詞が好きなんですが、「はじまる」は聴いてくれた人に寄り添いつつ、背中を押してくれる曲になったと思います」
──カップリング曲の「思い出」と「キミと逃避行☆」は、共作詞ではなく江籠さん単独での作詞曲になります。「思い出」は、かなりストレートに思いが伝わってくるバラードナンバーですね。
「「思い出」の歌詞を書くときは、めちゃくちゃ時間がなくて(笑)。去年の12月、SKE48からの卒業がどんどん迫ってきていて、ずっと忙しくしていたんですけど、今回の3曲でシングルを作ろうって決まったのが12月18日なんです。それなのに、「思い出」の歌詞の締切が26日だったんですよ!私の卒業公演は23日だったので、“終わったあとじゃないと、忙しすぎて歌詞を書けません!”って(笑)。だから、「思い出」の歌詞は卒業公演の次の日に書いたんです。時間がなかったからこそ、いろんな思いが重なってあの日に書けたのは良かったかな?って結果的には思っています」
──卒業公演の翌日に書いた歌詞だと聞くと、歌詞により深みや重みを感じます。
「でも、卒業した直後の感情だけで書いたわけじゃなくて、SKE48で過ごした12年間を振り返って、“あれが最後だったな”って瞬間が気づいたらたくさんあるなと思ったんです。ファンだった方、卒業していったメンバー、たくさんの出会いと別れを繰り返していく中でもらったやさしさだったり、後悔している思いなどを加えて書きました。今までの12年間、当たり前だった劇場公演がもうなくなったんだと思ったときに、こういう歌詞を書きたいと思ったんです」
──江籠さんも歌っていていろんな感情が呼び起こされるでしょうし、ファンの方も様々な光景を思い出すんでしょうね。
「そうですね。実際に届くかどうかわからないけど、過去に応援してくれていた人たちに向けて書いた歌詞でもあるんです。冒頭の<元気にしてる? 笑って過ごせてる?>という歌詞とかは、特にそういう思いが強いです」
──それにしても、1日でこの歌詞を書きあげたってすごいですね。
「でも、時間をいただけることに越したことはないし、今回書けたからって、“あのときできたよね?”みたいな感じで次も時間がないのは困るな…(笑)。今回は自分でも信じられないぐらいの集中力を発揮して、書けたから良かったけど(笑)」
──「キミと逃避行☆」はロックテイストを取り入れた、ライブで盛り上がる光景が想像できる楽曲に仕上がっています。
「「キミと逃避行☆」はとにかくライブを意識して作った曲で、歌詞の内容は“逃げることは、悪いことじゃないよ”っていうポジティブ現実逃避です」
──作詞を手がけているということから考えると、それは自分自身の考えでもあるんですよね。
「つらい思いをしているときでも何とか立っていなきゃいけないとき、そういう瞬間もこれまでアイドル活動をしてきてたくさんありました。でも、本当はそういうときに逃げたっていいし、無理に笑顔でいる必要もない。だから、「キミと逃避行☆」では<笑えなくてもちゃんと可愛い!>という歌詞が大好きです。今はつらいかもしれないけど、それでも必死に頑張っている。そんなあなたも素敵だよって。認めてくれるような歌になっています」
──グループ卒業後、初のソロ曲を3曲完成させた今は、歌うことに関してどんな思いを抱いていますか?
「歌って、歌えば歌うほど、知れば知るほど深すぎて、好きだけど好きじゃなくなる瞬間もあるんです。でも、“もっといろんなことができるようになったら楽しいだろうな”って思いながら、今は歌っています。自分が歌いたい歌、やりたい音楽にこれまで以上にまっすぐ向かっていけるのがソロの醍醐味の1つだと思うので、もっといろんな歌に挑戦するためにも自分の幅をこれからどんどん広げていきたいんです!」
──歌の深さを感じるのは、どんな部分ですか?
「歌い方にしてもメロディを重視してしっかり乗せて歌うのか、言葉を強調して歌うのか、感情を込めるのか、こだわり出したらキリがないところです。でも、今は突き詰めたときの歌の楽しさを知ることができているので、“これからもっとできるなー”って思っています」
──今後、“こんなシンガーになっていきたい”というイメージを教えてください。
「音楽的にもシンガーとしても幅は広げていきたいんですけど、自分の軸でファンの方も私に求めてくださっているのは、“アイドル”としての江籠裕奈だと思うんです。なので、“アイドル”に軸を置きつつ、どこまで幅を広げられるかが大事だと思っています。ロックをただかっこよく歌うんじゃなく、アイドルとしてロックをかっこよく歌うというか…私はアイドルが好きで今まで活動を続けてきたし、そこはこだわりたいという特別な思いが強いです」
──幅を広げるという意味では、どんなことがしてみたいですか?
「バンドとのライブもすごく楽しそうだなと思うし、Night Tempoさんのライブにゲスト出演して歌わせていただいたときも好評だったので、ご本人とも“また一緒に音楽ができたらいいですね!”ってお話をしています。Night Tempoさんとは、SKE48 Team KIIの劇場公演曲をプロデュースしていただいたことがきっかけでご縁が生まれましたけど、これからもグループ時代からの人間関係も含めて、いろんな繋がりを大事に活動していきたいです」
──これからのソロ活動に期待しています。
「ソロでもアイドルフェスに出演したいですし、音楽活動以外ではラジオもまたやらせていただきたいと思っています。かわいいものが大好きなので、そういったものにまつわる撮影に携わらせていただいたり、やってみたいことは本当にたくさんあります!」
(おわり)
取材・文/大久保和則
写真/野﨑 慧嗣