──この春、高校を卒業する気持ちから聞かせてください。
「この記事が出てる頃には卒業してると思うんですけど、というのも実は明日が卒業式なんです。前日になりましたが、悲しいぐらいに何も思ってなくて。『卒業なのか。あ、そうか』くらいにしか思ってないですね」
──あみゅりさんにとってはどんな3年間でしたか?
「通信制の高校に行ってたっていうのもあって、学校自体にも、高校の青春ってものにも特に執着や思い出がないんですね。一つ思うことがあるとすれば、小さい頃からずっと、早く大人になりたいなという感覚があって。高校に入った時も、早く終わんないかな、卒業したいな、大人になりたいなと思ってたんですけど、いざ、実際に卒業するってなったら、やっぱもうちょっと子供でいたいかもしれない。ないものねだりというか、矛盾というか、自由になることに対しての恐怖感というか…」
──大人になることが怖い?
「今までは理不尽で変だなと思うルールもあったけど、子供であるからこそ縛られてきたわけで、ある意味、守られてきた部分もあって。親や学校の先生、大人がずっと守ってきてくれたわけですけど、高校が終わったら急に、『はい、子供じゃありません。大人です』ってなるじゃないですか。明日からいきなり大人になるんだという、自由になることへの恐怖はありますね」
──でも、あみゅりさんは同級生より早く社会に出てますよね。2025年、17歳の時に「花いちもんめ」で配信デビューして、昨年はTVアニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマ「Poker Face」やドラマ「死ぬまでバズってろ!!」のエンディング主題歌「死ぬまで愛して!」を担当して話題になってますし。
「そうですよね。間違いなく周りの同級生の子たちよりは大人の方と接すること多かったと思うので、変に大人びてるかもしれないけど、今も甘えてるし、ずっと誰かにしがみついて生きたいし、自分の中ではまだまだ全然子供だと思います」
──周りの同級生たちはどう見てましたか?
「一時期はいいなって思ってたこともあります。制服を着て、学校の帰り道にプリクラを撮って、みたいな。私も全くゼロだったってわけではないですけど、そういう“ザ・青春”みたいなことはほとんどしてないので、もう、ちょっと、遠い目で見てます」
──あははは。薄目で見てる。
「麻辣湯を食べに行きたかったですね。私、この間まで麻辣湯を知らなくて。スタッフさんに『麻辣湯を知らないのはJKじゃないよ』って言われました(笑)。だから、心残りがあるとするなら、麻辣湯を食べに行きたかったですね」
──(笑)そういう青春も過ごしたかったですか?
「うーん、欲を言えば過ごしたかったですけど、自分には音楽の方が合ってるというか、魅力的だったので。高校3年間をどっぷり音楽に捧げたことを後悔してないし、むしろ良かったなって思ってます」

──では、この高校を卒業というタイミングで楽曲を制作するにあたって、どんなことを考えてました?
「ずっと卒業ソングを作ろうっていうのは考えてて。何曲か制作をしてたんですけど、一番最初に作ったのが「Sakura」っていう曲だったんですね。それこそ、一般的な卒業ソングを作ろうという風に考えてて。サビも<桜さよなら/心の中消えないストーリー/いつまでも>みたいなキラキラした感じで。曲としては全然悪くなかったと思うんですけど」
──定番の卒業ソングだったんですね。
「私が送りたかった青春みたいなものを投影させた世界観だったんですけど、自分の中でこれでいいのかな? っていう思いがあって。マネージャーさんとも『あみゅりはこれじゃないよね』という結論になったんですね。締め切りギリギリだったんですけど、『やっぱり作り直させてください』ってお願いして、そこからもう一気に書き直したのがこの「LONELY PRINCESS」っていう曲です。本当に赤裸々に私の青春を綴った曲ですね」
──ご自身の“青春”と向き合ってみて、どんなことを感じましたか?
「未来に対する漠然とした不安や悩みがある中で、誰かにわかってほしい、理解されたいという気持ちがあって。私が抱えてるものに気づいてほしいけど、誰にも助けを求められなかったから、ずっと一人で抱えてた。その気持ちをノートに書き出したりしたんですけど、今、その中身を見返すと、めちゃくちゃグロテスクなんですよね。誰かにわかってほしいんだけど、簡単に理解されたくない。めちゃくちゃ矛盾してるし、わがままでぐちゃぐちゃなものなんですけど、みんなもそういうものってあったんじゃないかなって」

──大人でも子供でもない宙ぶらりんな時期に誰もが一度は陥った経験があると思います。これから始まる本格的な人生のいろいろに思い悩みながらも、全てがあやふやで焦点を結ばないという。
「そうなんですよね。ずっと常に悩んでるというか。解決もしてないかもしれないけど、その傷が癒えてきた頃にまた別の問題にぶち当たって。例えば、誰かと比べて、自分はなんでこんなこともできないんだろうっていう自己否定に走っちゃったりとか。この世界は生きにくいなという葛藤もあったりして、常に頭の中がごちゃごちゃしてる。全く整理もつかないまま、ただひたすらそれを抱えて生きてく、みたいな。やっぱり難しいですよね、10代って」
──あはははは。でも、思春期真っ只中にそう言えるのは、ある意味で俯瞰して見えてる証左でもありますね。
「いや、すごく不安定ですよ。昨日と今日で言ってること違うことも多いですし。他人もそうだけど、自分が一番、自分をコントロールできない。その不安定さに自分で自分が嫌になっちゃいますよね。例えば、一番の私の理解者である母に相談したいと思っても、言葉にして伝えられないんですよ。自分でも何に悩んでるか分かんないし、この感情の正体が分からないから。ただ泣きたいとか、ただ辛いとか。本当に漠然とした不安ですよね」
──その言葉にならない不安定な感情は楽曲を作っていくことで昇華される?
「曲にして、歌詞になって、初めて自分はこんなこと思ってたんだっていう気づきはありましたね」
──どんな気づきがありましたか?
「私はすごく未練がましいというか、常に何かに悩んだり考えたりしてるタイプなんですけど、その悩んでいることって、意外と過去のことだったり、逆に未来のことだったりするんですよね。全然、今、現状の問題にフォーカスできてない。だから、漠然とした不安や問題があるとするとすれば、それを唯一解消できるのは、厳しいけど、何か行動を起こすしかないんだろうなと思って。まだ起きてない未来のことや、変えられない過去に縛られるよりも、それにけじめをちゃんとつけて、今、目の前にあるチャンスに気づけなきゃいけない。過去を手放すことは怖いことだし、勇気もいるけど、必要だなと思って」
──それがサビの<過去にはもう戻らないで/サヨナラして 手放して/私にチャンスをあげて>につながるんですね。
「それが一番の気づきですね。今は過去に全く執着してないかと言われたら嘘になりますけど、少しは心が軽くなりましたし、前向きになりました。5分以上考えて答えが出ないものって、答えがないんですよ。だから、もう考えるのやめた方がいいんじゃないかと思うようになって。それでも悩みますけど、執着するのはやめようって思えるようになりました」
──でも、その過去がないと、きっとこの曲もできてないですよね。
「そうですね。大事なのは、変えられない過去にどう意味を見出せるかだと思うんですよ。私は曲にして昇華できるから、毎回、起きたことに意味を持たせられるし、曲を作ることで、人間としても成長していけているような気がします。ある意味、自己啓発ですよね、作詞作曲が」
──(笑)自分で自分を癒す作業にもなってますね。サビは<ここから 始めようmy life/This is my graduation>と続きますが、あみゅりさんは何から卒業したんでしょうか。
「繰り返しになっちゃうんですけど、漠然とした不安に悩み続ける自分から。過去にとらわれて、まだ起きてない未来に怖がって、チャンスを逃してしまう自分から。今、現状に向き合えていない自分から卒業したいなっていう風に思ってますね」
──また、この曲には“こうあるべき”と説いてくれる大人の存在も見えます。あみゅりさんはこれまでも<なりたい自分>と<求められている自分>の間で揺れ動く心境を歌ってきましたが、今はどうなりたいと考えてますか。
「ここ最近、考え方が変わってきた部分があって。自分のキャッチフレーズにも関係するんですけど」

──<負けヒロインの逆襲>というキャッチフレーズを掲げてます。どうして“負けヒロイン”と名乗るようになりましたか?
「分かりやすく言うと、国によってヒロイン像って違うじゃないですか。アメリカや韓国は割と強くて自立した女性がヒロインだけど、日本は古くからある大和撫子みたいな、守ってあげたくなる優しい女の子。清く優しい女の子たちがヒロインであることが多い。一方、負けヒロインというのは、例えば恋愛ものだったら、同じ男の子を好きになっちゃう恋のライバル。ちょっと意地悪で強いイメージがあるかもしれないけど、実際に強いわけじゃなくて。本当は彼女たちも一途で繊細で純粋なんだけど、ただ不器用だったりするんじゃないかって。負けヒロインにも負けヒロインなりの正義があると思っていて。私はそっちの負けヒロインに感情移入しちゃうタイプなんですね。私みたいなタイプがたどる運命は負けヒロインしかない。だったら、時には主人公を喰ってしまうぐらいの存在感のある負けヒロインとして、そっちの道を極めていきたい。悪役って言われても、勝って勝って勝ちまくる、絶対的な女王になるしかないんだろうなって。これが私の生きてく道だし、それが負けヒロインの逆襲ですね」
──あみゅりさんは負けヒロインタイプ? それが、さっきの「どう見られてるか」の質問の答えにつながってるわけですよね。
「そうですね。私は努力しないで淡々とこなしてるように見られがちなんですよ。例えば、誰かと競い事をして、自分が勝ったとしても、勝ったのに負けてるって思うことが多くて。その場合の相手は、すごく愛嬌があって、頑張り屋さんで、その頑張ってる姿を応援したくなるような人。私は、結果や実力では勝ってたとしても、世間一般的に見たら、その人を輝かせるための悪役に見えてしまうんじゃないかって。でも、私もみんなが応援したくなるような主人公タイプになりたいんですよ。だから、さっき、考え方が少し変わったというのはその部分で。『自分は負けヒロインだ』ってネガティブな意味で捉えてたんです。私みたいなタイプの人間は負けヒロインとしての運命をたどるしかない。それなら、徹底的に勝って勝って勝って勝って勝ちまくって、そっちで認められていこうって。圧倒的な存在感や実力で勝っていくしかないんだろうなっていう風に思い始めました。それが多分、私がたどる運命というか、宿命なんだなって思いました」
──ヴィランに見られたとしても、ヒロインなんですよね。
「他人にどう見られるかはわからないですけど、この世界に一人、自分にとっては自分がヒロインなので、自分の物語の中では私がヒロインだと思います。他の人が介入してくると、それが負けヒロインに変わるかもしれないけど、私の人生の中で私はヒロインです」
──新曲もプリンセスになってます。「LONELY PRINCESS」というタイトルにはどんな想いを込めました?
「ロンリーとプリンセスって相反する言葉だと思うんですけど、私の人生の中ではイコールなんですよね。タイトルをつける時に迷うことがあんまりなくて。曲を書き始めたら、そのタイトルがパッと出てくる。今回も、卒業ソングを書き直そうと思って。本当の私の生々しい青春ってどうだったかなって思った時に、パッと思いついたのが<ロンリープリンセス>っていう言葉だったんです。女の子ってみんなプリンセスだと思うし。必ずしもそれが煌びやかなお姫様とは限らない。どちらかというと戦士に近いようなプリンセスというか。別に王子様の助けがなくても、私は一人で剣を持って戦っていく、みたいなすごく強い言葉になったかなっていう風に思います」
──サウンドもハードボイルドですよね。傷だらけのままで新たなステージに進んでいくプリンセスが浮かび上がってくるようです。
「すごくこだわって作りました。アレンジのイメージが、シンプルでありながらも、青春の傷の生々しさや尖ったものにしたいっていうのがあって。マネージャーさんにお願いをして、どうしても全部生演奏にしたい、生の音で表現したいという風に頼んで。日本のトップミュージシャンの方たちに集まっていただいたんですけど」
──すごいメンツですよね。フュージョンバンド・DIMENSIONの増崎孝司(Gt)をはじめ、Mrs. GREEN APPLEのサポートでも知られる二家本亮介(Ba)、THE ALFEEのサポートドラムをやってる吉田太郎(Ds)という編成です。
「今までのあみゅりにはない、ロックでありながら、フォーキーでありながら、ソウルフルなサウンドになっていて。すごく尖ってるし、でも、繊細だし、すごく感情の揺れが表現されてて。すごく感動しましたし、個人的にいい作品になったなと思います。何もなかったものかもしれないけど、自分の青春を形にできた。言葉にも音にもとことんリアルを追求して、曲としてずっと残り続けるものとして形に残せた、何か意味をつけられたっていうのがすごく嬉しかったです」

──改めて、何もなかったという青春を形に残したあみゅりにとっての“青春”とは何でしたか?どんな意味がありましたか。
「すごく難しいけど、自分がこの曲を聴きながら思い浮かぶのはトンネルの中なんですよね。光が見えないけど、意外としがらみもあって動けない。早く先が見たいのに、走っても、もがいても、ツタが自分の足に絡んできて行かせてくれない。ずっと暗闇の中だったんですけど、自分に巻きついてきてるもの、自分を引き止めるものって、やっぱり自分だったんですよね。それを手放して初めて、次のステージに進める。だから、私にとっての青春は“トンネルの中”だったけど、光を見出していくのは、誰かじゃなくて、やっぱり自分なんだなって思いました。自分の未来は自分で切り開くっていう。この先、光に出たとしても、また暗闇に戻ることだってあるだろうし、次々と試練は襲ってくるし、一生、壁にぶち当たり続けるわけで。この長い長いトンネルはそのための助走期間というか、自分を鍛え上げるための時間にもなったかなと思います。本当に自分との戦いだったので、この先もずっとトンネルは待ってるかもしれないけれど、少しは強くなれたんじゃないかなって思います」
──リスナーにはどう届くといいなと思います?
「この春に卒業した方や環境が変わる方はもちろん、今、リアルタイムでトンネルの中にいて、先が見えなくて苦しい人たちもいると思うんですね。もうトンネルを抜けてしまって、あの頃を思い出したい人たちもそうだけど、きっと皆さんが絶対に通ってきたトンネルだと思うんですよ。だから、漠然とした悩みや不安を抱えている人に届いて、少しでも背中を押せるきっかけになれたらいいなって思います。そして、きっかけをくれるのは自分以外の誰かかもしれないけど、チャンスを掴むのは誰かじゃなく、あなたしかいない。あなたがあなたにチャンスをあげてくださいって心から思いますね」
──最後に今後の目標を聞かせてください。このインタビューを経て、未来の話をするのは恐縮ですが、これからはどう生きていきたいですか?
「この悩みが消えたとて、また新しい悩みや不安にはぶち当たるかもしれないけど、その度に自分なりに答えを見つけて、ちょっとずつでいいから成長して強くなって。最終的には、自分が自分を幸せにできるような人間に、死ぬ時に生まれてきてよかったって思えるような人生を歩んでいけたら超最高ですね。ちょっとずつですけど、痛みを伴いつつ、大人になっていけたらいいなと思います」
──18歳、現時点でのアーティストとしての目標も聞かせてください。
「東京ドームに立てるアーティストになりたいっていう夢はずっと変わらずに持っています。長期的ではなく、近い目標としては、曲を通して、自分の気づきや言葉をもっと発信していきたい。今、考えすぎちゃう人って多いだろうし、実際問題、生きにくい世の中だと思うんですよね。その中でも、こういう風に考えたら少しは生きやすくなるんじゃないかっていう自分の意見を今後はもっと発信したい。今、リアルタイムで悩んでる人たちに向けて、自分はこういう風に思うよ、こういう風に考えたらもうちょっと生きやすいんじゃない? っていう想いを曲を通して伝えていけたらいいなって思っています」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ

