──前作『LIVE IT NOW』からは1年2カ月ぶりのリリースになります。Poppin’ Party(バンドリ!)としての活動も多い中でソロアーティスト活動はどう考えていましたか?
「ありがたいことにいろんなコンテンツでライブをやらせていただいていて。バンドリ!、アイマス、D4DJ…最近はパラライ(Paradox Live)のイベントも増えてきたので、いろいろなキャラクターを背負って世に出るステージがたくさんある中で、愛美のソロ活動も1つのコンテンツとして捉えています」
──そこまで割り切れますか?
「最初からそうだったわけじゃなくて。ソロ活動は、他のキャラクターコンテンツと違って、愛美主導でやっている活動なので、自分の意見をたくさん吸い上げてくださいますし、全力を注げる環境も作ってくださっています。それはとても素敵な反面、自分がしっかりしていないと進まないですし、考え込みすぎちゃうヘヴィーな部分もあって。でも、それを1つのコンテンツとして捉えることによって、少し自分の肩の荷が下りるというか…。私はアイデアがたくさん出てきちゃうタイプなので、それを全部自分でやろうするのではなく、1つのチームとして役割分担ができていけたらいいのかな?って」
──では、1つのコンテンツの中で、新作『A/CODE』はどんなものにしたいと考えていましたか?
「私はずっと、バンドサウンドがやりたくてやってきたんですけど、その中でももっとヘヴィーな音をやりたいと考えていました。今回、ハーフアルバムを作らせていただけるいい機会なので、やりたかった重めなサウンドを表現するアルバムにチャレンジしてみました」
──サウンドだけでなく、歌詞もとてもコンセプチュアルになっていますね。
「そうなんです。私はいつも曲先行で歌詞を書くんですけど、ヘヴィな曲にどんな歌詞が当てはまるかな?って思いながら書いていたら、壮大な世界観になって、1人称も変わりました。完全に曲に影響された歌詞になりました」
──最初にテーマを決めてたわけではないんですね。
「“とにかくライブ映えするようなサウンドの強い曲“ってオーダーをして集まった楽曲をコンペしたんですけど、”ヘヴィな楽曲を集めて、このサウンドでどんな歌詞が書けるかな?“って考えた時に、よりファンの濃度を上げたいと思ったんです。歌詞の世界観をより濃密なものにすることで、”愛美に心酔させたい“、”愛美を崇拝してほしい“という欲が出てきました。全体的にその方向性にしようと思って書き始めました」

──全体としては、<NEO>や<New>、<始まり>…新しい、生まれ変わるといった言葉がちりばめられていますね。
「そうなんです。サウンド面を新しくしたことで、より新しい愛美の姿を見せられるかな?と思って、ここからガラッと、今までとは違うスタイルの愛美を見せたくて。“愛美の新世界が始まるぞ!”というメッセージが込めれています。このハーフアルバムをきっかけに開かれた新しい世界の愛美はリーダーであり、神であり、キングであり、カリスマでもある、みたいな。そういう象徴的な感じにしてみました」
──キングレコードに移籍して、アーティスト活動を再開した「ReSTARTING!!」(2021年リリース)の時とは違う心境なんでしょうか?
「全く違います。「ReSTARTING!!」の時は、夢を叶えるために頑張っている人に向かってエールを送ったり、“一緒に頑張っていこう”というニュアンスの歌詞が書きたかったんです。それは去年くらいまでずっと一貫していて。背中を押せるようなニュアンスの曲が多かったんですけど、アルバム『LIVE IT NOW』を作って、ライブ(『AIMI LIVE TOUR 2024 “LIVE IT NOW”』)が終わった後に、“もっと歩みを大きくしたい”という想いが強まりました。そのためには何が必要なんだろう?と考えて…ゴリゴリなサウンドと世界観、そして、強い愛美が必要だと思ったんです。そういう想いで今回のハーフアルバム制作に挑んだので、歌詞への動機はかなり違います」
──寄り添う位置から、みんなを引っ張っていくキングとして書いてるわけですね。
──ここからは『A/CODE』に収録されている楽曲について詳しく聞かせてください。リード曲「AthisCode」は「アティスコード」と読むんですね。
「造語です。一番最初に作詞した曲で、攻撃的というか…」
──驚きました! ヘヴィーでラウドでメタルだったので。
「曲を聴いた時に、すごく気に入って、“歌いたい!”と思いました。勢いがすごいので、これは新世界の幕開けにぴったりだと感じ、“新しい時代が始まる“ってニュアンスの歌詞にしてみました」
──新世界とはどんなイメージですか?
「みんなが覚醒した状態…カッと目を見開いたような熱いイメージです。でも、実際に自分が望む理想の新世界ってなんだろう?と考えてみると、それはすごく平和的で、美味しいご飯が食べたい時に食べられるような世界だったらいいなって思うんですけど(笑)」
──でも、こういう攻撃的な曲で、“生まれ変われ!”って歌っているんですよね?
「そうですね。書いている時は、 “腐った世の中から抜け出して、理想の世界をにみんなで造るんだ!”みたいな熱い気持ちで書いていました」
──革命ですよね。造語のタイトル「AthisCode」はどんな意味なんでしょうか?
「いろんな意味合いが含まれています。“A”は愛美、はじまり、Answerなど。“Code”は音楽的な意味のコードとか、メッセージ、暗号。“this”は接続の意味合いの“の”もありつつ、強調の意味でもあって。“この音を聴け”とか、“このメッセージを受け取れ”とか、“答えはこの音”みたいな意味合いもあります。それをギュッとして、「アティスコード」って読むことにしました。でも、歌の中では、“A”にも、“this”にも“Code”にも意味があるってことを強調したくて分割して歌っています」
──『A/CODE』(エーコード)というハーフアルバムのタイトルにも繋がっています。
「このハーフアルバム全体が愛美(A)のメッセージ(CODE)であり、“始まり(A)の音楽(CODE)”として捉えられるようにつけました。愛美のハーフアルバムをきっかけに世界が生まれ変わる。新時代の訪れというような熱い気持ちを込めているので、それを音で受け取っていただきたいです」
──オープニングナンバー「NEO ELDORADO」はまさに新世界の幕開けを告げるような曲になっていますね。
「“愛美の新章じゃん!”、“新しい愛美じゃん!”と1曲目でわかってもらえたらいいなと思って。イントロで“おお、これは!!”ってなるじゃないですか。それが狙いです。歌詞はダ・ヴィンチ・コードの「最後の晩餐」がイメージです。“裏切り者って近くにいるかもしれないよね“みたいな…あとは、天国か地獄か分からないですけど、“愛美と一緒にネオエルドラドに堕ちましょう”っていう…。より愛美の深みにはまっていただく、沼に落ちていただくべく作詞した楽曲です」
──リード曲を挟んで、3曲目の「What's up FIRE!」はどんな立ち位置ですか?
「この曲は、“ライブが盛り上がったら嬉しいな“と思って作詞した楽曲です。夏にリリースなので、ちょっと花火の要素を入れてみたりして。”俺らで新世界の扉を開けんだ!“みたいなニュアンスを引き継ぎつつ、”盛大に一花咲かせようぜ!“みたいな曲にしてみました。これは今までの作詞方法に近いというか…ファンの方も安心して聴ける曲だと思います」

──ライブで盛り上がりそうなシンセポップに続いて、「STARS」ではファンの方が“Hey!”と声を上げて、ヘドバンしている光景が浮かびます。
「この曲はデモを聴いた時に、サビでみんなが拳を突き上げているようなイメージが浮かんだので、そういうライブになったらいいなと思って作詞しました。だから、サビ直前に<手をかざぜ>って入れてみたりして。これはバンドリ!の日本武道館公演が終わったタイミングで書いた曲なんです。バンドリ!の10周年のライブで感じるものがあって…」
──三度目の日本武道館公演を行ったのは5月20日でしたよね。
「そうです。その翌週には〆切が迫っていたので、そこからヒントを得て書きました。初めて夢を描いた時の初期衝動だったり、あの時に感じていた希望や期待を忘れちゃいけないって改めて感じて。私、デビュー当時から”スターになりたい“って言っていたんです。この曲には、いろんなスターを込めています。“今一度、あの星のように輝こうぜ!”、“思い出そうぜ! あの時の気持ち”って曲です」
──スターになりかった原点に立ち返った後が「キャンセルさせて人生」です。
「リズムがいい曲って言葉をはめるのが楽しいので、作詞が楽しかったです。サウンド的には明るいんですけど、歌詞は人生キャンセル界隈的な感じで、実はダークだったり。“こんな世界で生きるのはあほらしい”って嘆いています。」
──“こんな世界”ってどんな世界ですか?
「嘘も本当になる世界です。どれだけ頑張って生きても、真実ではない嘘の話で人生が終わったり。全部意味ないんだ”って気持ちになるというか、“アホらしい”ってなるじゃないですか。SNSには根も葉もない噂話が蔓延していて。私は火のないところにも煙が立つ世の中だと思っていますそことは別に、“バズりだけを意識したのかな?”みたいなものもあるじゃないですか? それを素直に楽しめない反面、“バズりを意識してしまうのもすごくわかる”みたいな皮肉さも入っています」
──人生をキャンセルしそうになったら、どうしたらいいですか?
「SNSが原因の場合は、SNSをリセットすればいいかもです。そこに住んでいると、“そこが命”になって、そこで否定されたら自分ごと否定されたようになってしまう…。現代はリアルとバーチャルがひもづきすぎちゃっているから、リアルの自分まで否定されているような感覚になっちゃいますけど、そこを分離させれば、なんとかなるはず。でも、そんな簡単な話ではないことも分かります。人間の心は複雑です。」
──ありがとうございます。
──そして、「CROWNED」で王冠をかぶりますね。
「最後を<CROWNED&ALIVE>か<CROWNED&DIE>かで迷いました。“もうこんなに苦しいところから抜け出して、冠をかぶったまま死んでいくわ“みたいな…。そういうニュアンスにしようか、迷ったんです。私は、調和や平和を保つには、裏で必ずと言っていいほど毒を飲んでいる人がいると思っていて…”その苦みを味わっているのは誰ですか?“と。私は「CROWNED」をその対象に当てはめてみたんですけど」
──最後が<DIE>だと全然違う結末になりますよね。
「そうなんです、私も毒を飲みがちというか…。“ヒールになってもいい”と思っちゃいがちなんです。でも、それに苦しみながら死んでいくのって悔しいじゃないですか。だから、“生きてやろう”と思ったんです。それで<ALIVE>にしました」
──新しい理想郷を作るためには、自分が呪われた運命を受け入れて、悪役になる覚悟も込めているんですね。
「はい。毒を飲んでいる人って、あまり誰にも言わないというか…孤高の存在でもあると思うんです。だから、「NEO ELDORADO」とはまたちょっと違う、堕落のニュアンスも使っています。本当は自分も甘い世界で、平和の民として生きていきたい。でも、それを保つために苦い思いをしなきゃいけない人がいるとしたならば、私はその役目を選ぶよという意思が入っています。<長い長い長い長い夜を/越えなければ赦されるでしょうか>というサビは、例えば、“長い夜を越えずに命を絶つと、やっと許されるのかな?“みたいな。”ここから解放されるのかな?“みたいなニュアンスを入れています。でも、死ぬのは悔しいから<ALIVE>にしたんです」
──生きる方を選択してよかったですが…。
「そんな今の世界を嘆きつつ、“NEW WOLRDで会いましょう”ということです。NEW WOLRDではもう嘆く必要はありません。というワンマンライブが11月に行われます!」
──(笑)とてもスムーズが流れですが、11月に行われるライブツアー『AIMI LIVE TOUR 2025 “NEW WORLD”』はどんなツアーになりそうですか?
「今までのライブとは全く違う世界観でお届けしたくて、今、いろいろ演出を考えているところです。生バンドでゴリゴリに歌うので楽しみです!」
──これからの“愛美”はどうなっていきますか?
「このハーフアルバムがファンの皆さんからどんな反響があるのか…まだ私も分からないので、それ次第です。皆さんの覚醒状況次第で今後の方針を定めていきたいです」

(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/中村功
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

AIMI LIVE TOUR 2025 “NEW WORLD”
2025年11月1日(土) 神奈川 YOKOHAMA Bay Hall
2025年11月3日(月祝) 大阪 なんばHatch
2025年11月29日(土) 愛知 ダイアモンドホール