今回は、小柄な身体からエネルギッシュなソロを繰り出すところから「リトル・ジャイアント」と愛称されたテナー奏者、ジョニー・グリフィンの名盤をご紹介いたします。

最初のアルバムは、ジョン・コルトレーン、ハンク・モブレイ、そしてグリフィンの3人のテナー奏者が吹きまくる、タイトルどおりのブローイング・セッション。自らリーダーを張っただけあって、テナーの巨人、コルトレーンを向こうに回しまったく吹き負けていないのだから凄い。また、トランペットのリー・モーガンも良いソロをとっており、50年代ハードバップ・セッションの代表作に挙げられる名演です。

イントロデューシング・ジョニー・グリフィンというサブタイトルが付いていることでもわかるとおり、『シカゴ・コーリング』(Blue Note)はグリフィンのブルーノート、デビューアルバム。これを聴くと、彼が最初からずば抜けた演奏技術の持ち主だったことが良くわかる。なかでも、ハイスピードで飛ばす《イッツ・オールライト・ウイズ・ミー》はグリフィンのドライヴ感が発揮された快演。

ジョニー・グリフィンは50年代セロニアス・モンク・カルテットのサイドマンに、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンに次いで採用され、歴代超大物テナー奏者に負けない実力を示した。ファイヴ・スポットでのライヴ作品『ミステリオーソ』(Riverside)は、モンクの代表作に挙げられるアルバムで、グリフィンの活躍が堪能できる。

このように、グリフィンはサイドマンとしても抜群の力を発揮するタイプのジャズマンだが、その能力がもっとも良くわかるのがウエス・モンゴメリーの名盤として知られる『フル・ハウス』(Riverside)だ。ほとんど初顔合わせに近い状況でのライヴで、これだけウエスと息を合わせることが出来るのは、的確な演奏技術に裏打ちされたグリフィンのセンスの良さの賜物だろう。

1970年代、フュージョンが大流行する反面、ベテラン・ミュージシャンのオーソドックスな演奏が見直されるようになった。こうした動きを「ハードバップ・リヴァイバル」というが、ジョニー・グリフィンはそうしたミュージシャンの代表として多くのレコーディングを行った。『リターン・オブ・グリフィン』(Galaxy)は、久しぶりにヨーロッパから帰国したグリフィンの元気いっぱいの《枯葉》が大評判となった、ハードバップ・リヴァイバルの代表的名盤。

デンマークのスティープル・チェースはそうした動きの発端となったレーベルで、ジャッキー・マクリーンやデクスター・ゴードン、そして、このグリフィンの『ブルース・フォー・ハーヴィー』(Steeple Chese)も、ハードバップ・リヴァイバルの火付け役となったアルバムだ。

60年代、グリフィンはヨーロッパで活動していたが、その頃の作品で、彼の代表作とも言われているのが、『ナイト・レディ』(Philips)だ。ケニー・クラークの軽快なドラミングに乗ったグリフィンのノリの良さは、ハードバップ・マニアにはこたえられないだろう。そして、アップテンポばかりがグリフィンの魅力ではないことを教えてくれるのが『ザ・ケリー・ダンサーズ』(Riverside)。とりわけ《ハッシャ・バイ》のゆったりとした黒さは、グリフィンにしか出せない境地といえるだろう。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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