INTERVIEW

どこまでカッコいい姉さんたちなのだろう。8月29日に東京は渋谷のLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて、デビュー35周年の集大成となるライヴ”SHOW-YA 35th Anniversary Live FINAL 『Get Over』”を開催したSHOW-YAが、翌30日にニューアルバム『SHOWDOWN』を“日本先行”リリースした。そう、新進気鋭のギタリスト/ソングライター/プロデューサーであり、自身もバンド、DESTINIAを率いる若井 望とタッグを組んだこのアルバムは、SHOW-YAの記念すべき世界デビュー作なのだ。そして、メンバー5人の覚悟が本気であることは、キャリア初の全編英詞による激しくも切ないボーカルと、ヨーロピアンな陰影に富んだメタルサウンドを聴けば、一目ならぬ一聴瞭然。「もう、ぜ~んぶさらけ出して、これが私たちです、どう?」という意味だと語ってくれたフロントウーマン、寺田恵子への単独リモートインタビュー。

まずは、アニヴァーサリー・ライヴのファイナル公演の感想を聞かせてください。

「デビュー35周年を記念したライヴのファイナルということで、いろんな想いが自分たちの中にもあったんですね。“記念すべき1日になるだろうな”っていう。スペシャル感というか、いつもとはちょっと違う心持ちでしたし、来てくれる人と配信で観てくれる人とも、それを共有したかった。だから、普段のライヴではやらないような曲も盛り込んだ構成にしました。それと、コロナ禍でお客さんが半分しか入場できなくなって、県またぎもできなかったので、チケットを持っていても来られなかった人がいるはずなんですよね。でも、来られたとしても、声を上げることはできない。記念すべき1日に、みんなの声が聞こえないのは寂しいですよね。それで、ペンライトを用意したんです。まさかSHOW-YAのライヴが、アイドルみたいになるとはっていう(笑)。でもみんな、一生懸命振って応えてくれて、ぐっと来ちゃいました」

セットリストは、ずいぶん考えたのですか?

「自分の中では、今回のようなライヴを一度やってみたいと、前々から考えてはいたんです。こういうご時世ということで、タイミング的にいいんじゃないかと思って提案してみました。メンバーからも、“この曲で始めてみたらどう?”とか、ミーティングでいろんなアイディアが出ました。鉄板曲は外せませんけどね」

SHOW-YA 35th Anniversary Live FINAL 『Get Over』2021.8.29@LINE CUBE SHIBUYA
Live Photo by MORISHIMA KOUICHI

そのライヴでも収録曲がお披露目された、ニューアルバム『SHOWDOWN』がリリースされました。初の全編英詞アルバムにして、世界デビュー作という、すごいことになっています。どういう経緯で実現したのでしょうか?

「2018年に、“デビュー35周年のタイミングで何かやろう”という話が出て、“じゃあアルバムを作ろう”ということになったんですね。で、“せっかく作るんだったら、海外を目指してみてはどうか?”という提案をいただいたんです。さあ、どうしようかと。でも実際、海外に進出するのが夢だというメンバーも多々いたし、ちょっと話を聞いてみようということになりまして。そこで、若井君という世界的に活躍している若いアーティストがいるんですけど、“彼をプロデューサーに迎えてやってみるのはどうだろう?”ということになったんです。若井君も事務所に来て、メンバーに熱弁をふるってくれました。“今、海外でガールズ・バンドがすごく人気なのに、そこにSHOW-YAがいないのはおかしいし、もっと海外に出てやるべきだ”って。“日本にこんなバンドがいるんだってことを、自分が知らしめたい”とも言ってくれたので、それなら覚悟を決めてやろうかと」

なるほど。

「実を言うと、27歳の時に“みんなでアメリカに住もう”という話になって、実際に家探しもしていたんです」

そうだったんですか?

「でも、その最中に私がバンドを辞めちゃったんですよ(笑)。やっぱり自分でも思い出すし、みんなもどうしても考えるじゃないですか。“途中でまた恵子が辞めちゃうんじゃないか?”とか。そういうイメージを払拭するために、メンバーだけで話し合いました。“みんな、海外に行きたいですか?”と。そして、“私は絶対に辞めない”と約束したうえで、“でもみんなの協力が必要だから、本気で目指すなら協力してほしい”と、“そしたら私も覚悟を決める”と伝えたんです。そしたら、みんなで“頑張ろう”っていう話になったので、制作が決定しました」

英詞というのは、最初から決めていたことだったのですか?

「最初は、どっちでもいいって言われていました。今は日本語でも、普通に受け入れてもらえるようになりましたからね。でも私の中では、日本語だと何も変わらないというか、何もチャレンジしないのと同じだったんです。27歳の時に、“全編英詞にしてアメリカに行く”ってなっていた途中で、辞めてしまった自分。その続きというか、今度は逃げ出さないでチャレンジしたいという気持ちが強かったので、“英語でやります!”って啖呵を切りました(笑)」

でも実際、発音も声の出し方も、譜割りなんかも違ってきて、大変だったのではないですか?

「私、天才なので」

(笑)。

「ウソウソウソ。まったくのウソ(笑)。たとえば、“サンダー”って、正確には“サンダー”じゃなくて“スァンダー”みたいな発音じゃないですか。それを力を入れて歌おうとすると、“サンダー”になっちゃう。息みたいな音でパワーを出さないといけなかったり、やっぱり日本語とは全然違うんですよね。“デーモン”が“ディーモン”だったり、“イーヴル”の発音とか。飲み込むような音や、顎のほうで鳴らすような音も出さなきゃいけない。大変でしたけど、先生がいてくれたので、事前にしっかり教わりました。それと、ボーカル・パフォーマンスのクオリティを上げるためには、詞の内容をわかっていないといけないし、感情の込め方ですよね。勢いだけでヘヴィ・メタルを歌っている人もいると思うんだけど、SHOW-YAは今までそういう歌を作ってきていないので。抑揚というものを大事にして、切なさとパワーを組み合わせて歌ってきましたからね。そういう寺田恵子がいなくなっちゃうというのは、なしだなと。日本語の寺田と英語の寺田のすり合わせというか、そこも苦労しました。しかも私、基本的に何回も歌うのが嫌いなんですよ。だから、準備をしっかりして、“一発OKにしてやるぞ!”って、覚悟を決めて臨みました」

サウンド面では、全面的にフィーチャーされているシンセが、とても印象的です。これは意図していた方向性だったのですか?

「その通りです。意識していました。そこは、ターゲットがヨーロッパかアメリカかで、変わってくると思うんですよね。今回は、“ヨーロッパに向けてアルバムを作ろう”と。だから、シンセがとても重要なポイントでした。やっぱりハード・ロック/ヘヴィ・メタルのシーンは、ヨーロッパが強いですし、自分たちも納得できる方向性でした」

世界基準のメタル・アルバムというか、SHOW-YAというバンドの芯の強さと骨太さ、懐の深さを実感させてくれる作品だと思います。「TOKYO, I Scream」のような、ジャパニーズ・バンドならではの楽曲もありますし。

「ありがとうございます。今まで以上に苦労しているので、そういう意味では宝物のようなアルバムです。何より、海外の人たちに盤で聴いてもらえるわけだし、気に入ってもらえたらいいですね。でも、まだまだスタートなので。日本では35年というバンドの歴史、キャリアあるけど、海外ではまだオギャーという状態だから、ここから成長していけるように頑張っていきたいと思います。そのいいステップになってほしい1枚ですね」

ほかのメンバーの方も、同じような気持ちなのでしょうか?

「そうですね。向かっているところは、みんな同じなので。海外でライヴもやりたいし、アラ還バンドになっても、まだまだこうやって活動していて、まだまだ光り輝くことできるんだっていうことを知ってほしいと、みんな思っています。あと、それぞれ微妙に好きな曲が違うのが、面白いです。さっき出た「TOKYO, I Scream」なんかは、うちのリズム隊がすごく好きなんです」

アニヴァーサリー・ライヴのファイナルでも、その「TOKYO, I Scream」と「EYE to EYE」「Thunder」の3曲が、今作から披露されましたが、どれもめちゃくちゃライブ映えしますね。

「そうなんですよ。だから、音源を聴いてもらうのも、もちろんいいんだけど、ライヴで動いている私たちを見ることを含めて、聴いてほしいなと思う。実は私、「TOKYO, I Scream」はそこまで眼中になかったんです(笑)。自分としては「DON’T RUNAWAY」推しなんですよ。もちろん全部好きなんだけど、その中でも、リズム隊が書いたあの曲が名曲だと思っていて。ボーカル冥利に尽きるというか、切なく歌って最後に力強く歌い上げる曲というのは、ボーカリストなら絶対歌いたいですから。実際に、歌っていてすごく気持ちがいい。でも、「TOKYO, I Scream」をライヴでやってみたら、めちゃくちゃ楽しくて。レッツ・ダンスの曲ですね」

プロデューサーの若井 望さんは、そもそもはSHOW-YAのダイハード・ファンだったのですか?

「どうなんでしょう?はじめは若井君のほうが先に私たちを知ってくれていました。遠目に見てくれていた感じですかね。別に大ファンというわけじゃないと思いますけど、“SHOW-YAなら、ぜひやりたい!”と。世代は、私に子供がいたら、それくらいなのかなあ。ヴィジュアルはめちゃくちゃカッコいいんですよ。本当にいい男なんですけど、私、いい男はそんなに好みじゃないんで、ときめきはなかったです。聞いてないか(笑)。もうね、メタルを絵に書いたような人なんですよ。長髪に革ジャンみたいな。80年代のメタルに憧れていたらしいんです。そういう意味では、80年代のハードロック/ヘヴィメタルのシーンを実際に体験しているSHOW-YAと、そこに憧れていて、なおかつ今の新しい音楽も聴いている若い感性の融合と言えるかもしれないですね。私たちは、そこまでいろいろなものを掘り下げられないので」

実際、バンドにはどんな貢献をしてくれたと感じていますか?

「SHOW-YAが新しい扉を開くきっかけを作ってくれたことは、間違いないですね。そもそもの世界デビューの話にしても、「HEAVY METAL FEMINITY」でドロ(・ペッシュ:ドイツを代表する女性メタル・シンガー)と一緒に歌うことになったのも、全部若井君が繋いでくれているので。若井君と出会わなければ、こうはなっていなかったと思います。エンジニアのヤコブ・ハンセンにしても、そうです。彼の音作りは、“すごい!”と思いました。これといってメンバーはリクエストしているわけじゃないんだけど、できあがった音を聴くと、“お~っ!”てなる。若井君に感謝ですね」

ドロさんとは、親交はあったのですか?

「なかったんですよ」

同世代ですよね?

「ドロがひとつ下なんですよね。“いやだ~!”と思いました。“向こうのほうが上に見えるんですけど”って(笑)。大人になれない自分の不甲斐なさというか」

いえいえ、十分に大人でいらっしゃいます。アルバムのラストを、「私は嵐」の英詞セルフカヴァー「I am the storm/WATASHI WA ARASHI」が飾っているところにも、こだわりを感じました。

「候補曲が何曲かあったけど、“嵐”がいいんじゃないかということになりまして」

英語で歌うのは、どうでしたか?

「実を言うと、この曲がいちばん苦労しました。わりと日本語詞を直訳した感じの英詞が上がってきたんですね。言葉数が、すごく多かった。テンポが速くて、サビ以外には言葉がたくさん詰め込んであるところに、ひとつずつ英語の単語が入ってくると、とてもじゃないけど、もう「生麦生米生卵」レヴェルなんですよ(笑)。だから、スタジオの英語の先生と、“同じ意味で違う単語や言い回しはないか?”とか、“どれかを間引いても成立するか?”とか、そういう話をしながらレコーディングしました。実際に英語を話せる人でも、“これは歌い切れない”って言ってましたからね。“じゃあ、私はどうなんだ!?”と(笑)。結局、部分部分を変えさせてもらって、歌いやすくしました。と言っても、歌い方も呼吸法も変えないといけないので、日本語詞が染み込んでしまっているだけに苦労しました」

11月には、いよいよ海外リリースですね。

「そうですね。まあ、不安もあるし、わくわく感もあります。でも、公開された「EYE to EYE」のミュージック・ヴィデオに、早くも書き込んでくれている海外の人もいたりするので、嬉しいですね。“Legend!”と書いてくれている人がいたり」

間違いなく日本のレジェンドですから、海外でも暴れてほしいです。

「そうだねえ。頑張らないとだね(笑)」

世の中の状況次第ではありますが、このアルバムを引っさげたツアーというのも、期待していていいですよね?

「もちろん、状況が変わればやりたいと思っていますけど、本当に今、先がまったく見えないので。ちなみに私、明日ワクチンを打ちます。かからないわけではなくとも、重症化しづらいというのが大事ですからね。特に肺の病気は、ボーカリストにとって致命的なので、常に細かいところまで気を遣っています。歌えなくなったら、メンバーにもスタッフにも迷惑をかけちゃいますから。私だって本当は、打たなくて済むなら打ちたくないですよ。でも、こういう仕事をしている以上は、打とうと」

一日でも早く、お客さんが声を出せるライヴができるようになればいいですね。

「なんか、もどかしいですよね。こっちも“声出せ〜!”ってやりそうになるんだけど、そこは“拳を上げろ〜!”にしないといけなかったり。“『1、2、3、4』とご唱和ください!”というところも、“心の中で叫んでください”とか“拳を4回、天に突き上げて!”になってしまう。MCでも、“ここ笑うとこなんだけどな〜”みたいなことがあるし。ストレスがかかっている日常なので、発散できるはずのライヴで発散できないっていうのが、苦しいだろうな、って思うと申し訳なく思います。それでもみんな、ああやって足を運んでくれて、ペンライトを振ってくれるのがありがたいし、今回改めてお客さんの力を感じましたね。お客さん一人ひとりのパワーによって、メンバーが自分の限界を超えていけているところを、目の当たりにしたので」

今日はありがとうございました。ワクチンの副反応が軽いことを願っております。

「ありがとうございます(笑)。今度は実際に会って、お話できたらいいですね!」

取材・文/鈴木宏和

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RELEASE INFORMATION

SHOW-YA『SHOWDOWN』

2021年8月30日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/MUCD-8150/1/3,850円(税込)
通常盤(CD)/MUCD-1472/3,300円(税込)
ドリーミュージック

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