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2021.04.21

Crystal Kay『I SING』インタビュー――初のカバーアルバムに込めた特別な思いを語る

Crystal Kayが20周年を経て特別な機会にリリースしたいと語っていた初のカバーアルバム『I SING』をリリースした。平成初期から令和にかけてのヒット曲を、“クリスタル・ケイ・ワールド”へと昇華させた過程を探るインタビュー。

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――昨年デビュー20周年を迎えたクリスタル・ケイさん。今作はそのキャリアの中でも初のカバーアルバムとなりますが、今回制作することになった大きなきっかけは何だったのでしょうか。

「やっぱり20周年を迎えたことが大きかったですね。私のアコースティックライブ「Crystal Café」ではカバーコーナーをやっていて、ありがたいことに好評をいただいていたんですけど、カバーは本当、そのときくらいしかやっていなくて」


――クリスタル・ケイさん自身、カバーアルバムは“特別な機会にリリースしたい”という想いがあったそうですね。

「そうなんです。実はこれまでもカバーアルバムの話がなかったわけじゃないんですけど、スペシャルな機会がないと絶対にイヤだなと思っていて(笑)。20周年のタイミングだったらやる意味があるし、面白いことができるかもと思って制作することにしました」

――選曲された楽曲がすべて邦楽だったのは意外でした。

「洋楽も考えたんですけど、そのまんまというか、意外性がないだろうなと思ったんですよね(笑)。邦楽のほうがみんな歌えるし、私が歌う面白さもあるかなって。ただ、邦楽にすると決めたはいいものの、最初は何を歌うか、どこから始めたらいいのか、まったくわからなくて……」

――それで、ファンの方たちからリクエストを募ったんですよね。

「“私がカバーアルバムを作るとしたら、何を歌ってほしい?”というお題で、ファンのみんなにTwitterとInstagramで問いかけました。さらに、レコード会社と事務所のスタッフにも聞いたりしましたね。そうやって集まった曲たちは、最初は原曲を聴きながら選曲を進めていたんですけど、歌ってみないとわからないよねっていうことで、1コーラスだけでも実際に歌ってみる作業をすることにしたんです」

――ものすごい数のリクエストが届いたのでは……?

「めちゃめちゃ来ました(笑)。実際に歌ってみる作業も100曲近くやったと思います。歌ってみることで、思ったより合わないなとか、逆に意外と合うねとか、いろんな発見ありました」

――ちなみに、意外と合うねとなった楽曲はどれですか?

「BUMP OF CHICKENの「天体観測」は、歌ってほしいと言われたのもだし、実際に歌ってみて合うとなったのも意外でした。スタッフのみんなが“絶対歌ったほうがいい!”って言ってくれたんですけど、普段の私の音楽からは遠いというか。なので、これは第三者の目線がなければ(カバーすると)決められなかったかもしれません」

――一方、自分的にどうしても歌いたいと思った楽曲は?

「DREAMS COME TRUEの「す き」、それからRADWIMPSの「なんでもないや(movie ver.)」ですね。「す き」は、私が小学校4年生のときに叔母がドリカムのアルバムを聴いているのを一緒に耳にしていて。その中でも好きな曲だったので、絶対日本一歌えると思ったんですよね(笑)。「なんでもないや(movie ver.)」は、曲が本当に美しくて好きなんです。ライブのカバーコーナーでも歌っていて、いつか音源化したいなと思っていた曲でした」

――収録曲の中だと「す き」だけが女性ボーカルで、他はすべて男性ボーカルの楽曲なんですよね。そこにも何か意味があるんですか?

「実際に歌ってみる作業の中で、女性ボーカルの曲を女性の私が歌っても、そんなに変わらないんじゃない?ってなったんです(笑)。男性ボーカルの曲なら、キーが変わるだけでも雰囲気が変わるし、男性目線の歌詞を女性が歌うっていう変化もあるし、いいかなって。あと、私の声には、ちょっと男臭い感じの歌詞が合うっていう意外なマッチングもあって、ほとんどが男性ボーカルの曲になりました。でも、選曲に関しては、もともと幅広い年齢層の人に楽しく聴いてもらいたかったので、私世代はもちろん、若い人にも、ちょっと上の世代の人にも聴いてもらえるようなラインナップになったかなと思ってます」


――また、今回参加されている10名のプロデューサー陣もかなり豪華です。どなたにどの曲をお願いするかというのも大変だったのでは?

「難しかったですね〜。そこはもう、それぞれのプロデューサーの方がこれまで作ってこられたサウンドや世界観をちゃんと聴いて。私の中でも、この曲はこういうサウンドにしたいっていうイメージがあったので、1曲1曲、この方にはこれが合うかなとか、この方はこういうのが得意だからいいかもとか、ディレクターさんの意見も聞きながら決めていきました。でも、それが本当に難しくて! アレンジしてもらう前も、アレンジが上がってきてからも、何回もミーティングしてって作り上げていくって感じでしたね」

――今回、はじめましての方も多いんですよね。

「島田昌典さんやYaffleさん、松浦晃久さん、笹路正徳さんなどがそうですね。他の方も含め、みなさん揃って日本のヒット曲、代表曲を作ってきている人たちばかり。J-POPの王道な感じをちゃんと持っているっていうのも、アレンジをお願いする上で重要なポイントだったと思います。私にとって初めてのカバーアルバムだし、J-POPをカバーするのであれば、それを聴く人たちに馴染みやすいアレンジにしたいという想いがあったんですよね」

――アルバム全体の印象として、イントロからガラリと変わっているなど割と攻めたアレンジが施されているというのがありました。馴染みやすいこと以外に、クリスタル・ケイさんが大切にしていたことは何ですか?

「絶対に避けたかったのが、たくさんあるカバーアルバムの中に埋もれたくないなっていうのがありました。あと、ただのカラオケみたいにはしたくなかったんですよね。やっぱり、“オリジナルより良くない!?”って言われるくらいの勢いでないと、カバーする意味がないと思うから。でも、オリジナルを壊すことも絶対にしたくなかったので、原曲が持つ世界観はきちんと残して、そこにどうしたらクリスタル・ケイっぽさが入れられるかなっていう。一番大切に考えていたのは、原曲のメロディと歌詞、そして私の声っていう3つの要素を、どれだけシンプルに届けられるかということでした」

――特にお気に入りのアレンジはありますか?

「前田和彦さんにアレンジしていただいたスピッツの「楓」です。この曲はエレクトロっぽさ、ダンスミュージックっぽさが入ってるんですけど、カバーアルバム全体として目指していたのは温かみだったんです。だから、他の曲では結構生楽器を取り入れてもらっていて。ただ、この「楓」はシンセがメインで、生はギターだけなんですけど、ちゃんと温かみが感じられる仕上がりになっていて、いいミックスだなぁと思って好きなんです。収録曲の中で一番私っぽいかも……いや、わかんない(笑)。でも、グルーヴがあって洋楽っぽいのは「楓」かなと思います。あと、「なんでもないや(movie ver.)」も島田さんのストリングスアレンジが素晴らし過ぎて泣きました。それから、Yaffleさんアレンジのレミオロメン「3月9日」も好きだし……って、全部ですね(笑)」

――そうですよね。酷な質問だと思いつつ、聞いてしまいました(笑)。

「あとは川口大輔さんがアレンジしてくださったOfficial髭男dismの「I LOVE…」は、“もう、ありがとうございます!!”って感じでした。「I LOVE…」は大ヒット曲だし、収録曲の中では一番最近の曲だし。聞くところによると、まだ誰もカバーしていないみたいなんですよ」

――第一人者なんですね。

「そうなんです。なので、そのプレッシャーは大きかったですね。どうしたら私なりのものができるかな?と思って。そしたら、川口さんが素晴らしいアレンジをしてくださって……。この曲も好きです」


――カバーって、自分のオリジナルを歌うのとはまた違った難しさがあると思うんですけど、レコーディング前はどんな準備をするんですか?

「曲をなるべくいっぱい聴いて、歌う。単純なことなんですけど(笑)。でも、そうしているうちに、どんどん歌詞とかが自分の中にすり込まれていって、“こういうことだったんだ!”っていう新しい見え方ができたり、理解が深まったりするんです。それをすべて入れた上で歌うんですけど、どの曲も難しかったですね。「す き」は、それこそ子供の頃から歌っているから歌えるのであって、今初めて歌ったら歌えないと思うし、それ以外も本当、めちゃくちゃ難しい」

――なかでも苦労した曲は?

「「I LOVE…」もだし、「なんでもないや(movie ver.)」もだし、「天体観測」もだし……。「天体観測」って、原曲だと結構畳み掛ける感じの歌じゃないですか。それがロックの良さだと思うんですけど、今回のアレンジではテンポも下げているので、メロディも歌詞もはっきり歌わなきゃいけなくて。それをどういうふうに収めたらいいかだけでも難しいのに、メロディ自体がすごく動くので歌うのに苦戦しました」

――もう一つ、今作ではコーラスやフェイクも聴きどころだと思います。先ほど、レコーディング前はとにかく歌うとおっしゃっていましたが、どこでどういうコーラスをする、フェイクを入れるっていうのも、そこで決めているんですか?

「いや、コーラスやフェイクはその場でですね」

――そうなんですか! ということは、テイクのたびに全然違うものになったり?

「そうです、そうです。フェイクは歌いながらやるときもあるし、全部録り終わった後に頭から流して入れていくパターンもあります。コーラスの場合は、ちょっと重ねてみるから録音してくださいって。そうやって重ねてみて、“あ、違った。じゃあ、別の音で重ねるからまた録音してください”とか、そういう感じです(笑)。でも、声を重ねたりするのは大好きなので、楽しみながらやってましたね」


――ところで、クリスタル・ケイさんは2019年にミュージカル『ピピン』で初舞台を経験されています。そこでの経験が、今作の歌唱であったり、自身の歌だったりに影響を与えたと思いますか?

「あ~、どうなんだろう? 無意識には出ているのかもしれないです。まったく別物だから、ミュージカルの歌い方を自分の歌に使おうとはしてないんですけど、もしかしたら、音の強弱とか言葉の乗せ方っていうのはちょっと出てるのかもしれないですね。でも本当、考えたこともなかった。ただ、ミュージカルとこのカバーアルバムで共通するところとして、上手いとかテクニックとかじゃなく、どれだけ気持ちや感情を伝えられるかっていうのはあるかもしれません。斉藤和義さんの「歌うたいのバラッド」をプロデュースしてくださった松浦さんは、そういったボーカル指導が多かった気がします。歌詞を自分に置き換えてというか、相手が目の前にいると思って歌ってみて、とか。テクニックは置いておいて、感情や気持ちをそのまま素直に出すことにフォーカスしたアドバイスをしてくださって。私自身、ストレートに歌えば届くんだなっていう学びがありました」

――もし、これが自分のオリジナル曲だとしたら、もっとテクニカルな部分を意識するようになったりしますか?

「やっぱり、若い頃はそっちのほうに走ってると思います。最近やっと、テクニックがどうとか、上手く歌おうっていう気持ちは捨てようって感じになりました」

――肩の力が抜けてきたんですね。

「そうですね。実際のところ、小さいときからスタジオに入っているから、スタジオワークは任せてって感じなんですよ。でも、そのせいでちょっと機械的になって人間味がなくなってしまう部分があったりして。それが歳を重ねていくうちに、やっと感情とかリアルの良さに気付けるようになったんですよね。だから、ちょっとくらい音が外れてても気にしない。むしろ、それがリアルでいいんだよねっていうのを大切にできるようになってきました」


――そうしたリアルな歌声をぜひ聴きたいところなのですが、『I SING』を引っ提げたツアーは予定されているんですか?

「それが、今のところ予定はないんです。やりたいんですけどね……。ピアノと歌だけのこぢんまりした感じもいいし、自然の中、屋外でやるのもいいなとか。あと、今回、ストリングスとかホーンセクションとかのレコーディングもあったりしたので、カバーアルバムのツアーでなくとも、バンドサウンドでパフォーマンスをする私のステージをもっとたくさんの人に見てもらいたいなって思いました。普段のライブはほぼバンドサウンドなんですけど、多分若い人たちにはあまり知られてないような気がして。なので、これからは積極的にフェスとかにも出演していけたらと思っています」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/柴田ひろあき





Crystal Kay

Crystal Kay(クリスタル・ケイ)――1999年「Eternal Memories」でデビュー。「Boyfriend -partⅡ-」「恋におちたら」などのヒット曲で⼤ブレイク。2015年にCrystal Kay feat. 安室奈美恵「REVOLUTION」、「何度でも」(フジテレビ系⽊曜劇場「オトナ⼥⼦」挿⼊歌)を含むロングヒットアルバム『Shine』のリリース後も、LIVEなど精⼒的な活動を続けている。2019年アーティスト活動20周年を迎えたCrystal Kayは、トニー賞4部⾨受賞のブロードウェイミュージカル『PIPPIN』の⽇本版にも出演。読売演劇⼤賞優秀⼥優賞を受賞。2020年、キャリア初となる待望のカバーアルバムからの先⾏配信「3⽉9⽇」、「歌うたいのバラッド」、「I LOVE…」をリリース。







Crystal Kay
Crystal Kay『I SING』
2021年4月21日(水)発売
UICV-1113/3,000円(税込)
ユニバーサルミュージック




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