コレクションは、ジャパンレッドとでも呼べそうな赤を用いた直線的なジレと、チェックのブラウスにパンツを合わせたコーディネートでスタートした。デザイナーが描いた絵画作品をジャカードで表現したアニマル柄のコートや、抽象柄とクラシックなチェックが共存するコートなど、日本的なムードやアート性、クラシックなチェックが融合したコシノヒロコならではのスタイル。日本とヨーロッパ、東洋と西洋が交差するデザインだ。モデルのヘアスタイルは、馬に乗った武士の髷(まげ)が風になびいているようにも見えた。

また、ウエストをシェイプしたコートやジレに、円のようなカッティングやシルバーのリングなどを加えたデザイン。タキシード風のジレやジャケットには、スリムパンツやワイドなコンビネゾンを合わせる。グラフィカルなニットは、部屋着やスウェットのようにリラックスしたムード。さらに、直線的な袖をつけたチュニックや、ファーをアクセントにしたコート、前身頃に宇宙ルックのようなカーブを施したワンピースなど、クラシックなオートクチュールと、1960年代の未来派を思わせるディテールやモチーフを組み合わせたデザイン。相反する要素を融合させた提案が続いた。

 黒のジレやジャケット、プルオーバーからドレスやニットまで、暗闇をイメージしたような黒のシリーズも登場。マニッシュとフェミニン、光沢のある素材とマットな素材など、さまざまな質感や対照的な黒を組み合わせている。また、ジレなど、気候変動を意識したかのような袖のないデザインも目を引いた。

コレクション後半は、今回を象徴するゴールドのシリーズ。ヨーロッパのクラシックな服を思わせるゴールドのチェックジャケットや、着物や帯を彷彿とさせるコート、折り紙のようなディテールが印象的な黒のジレに合わせた、金や銀の糸を垂らしたドレスや、金色の絵の具が流れ落ちるような黒のドレスなど、アート作品をそのまま服にしたかのようなルックが披露された。

 一方、ゴールドとカーキを混ぜ合わせたような色のダウンジャケットやドレスなどは、ミリタリーやストリートとオートクチュールの要素を融合させた、いわばハイブリッドデザインと呼べるもの。手仕事を強調したようなレースのドレスも登場した。フィナーレを飾った、富士山や松の木々を思わせるデザインのロングドレスは、「現代の琳派」というイメージでデザイナーが描いた絵画をジャカードで表現したものだという。

 春夏コレクションではショーを行わず、映像作品で幻想的なムードや透明感、軽さを際立たせた「ヒロココシノ コレクション」。今回のショーでは、オートクチュールならではの手仕事や立体感、上質さと、プレタポルテのリアリティや機能性を共存させながら、アート作品の展覧会を見ているかのような気持ちにさせるコレクションを披露した。

「最後のゴールドなどは戦国時代の将軍という感じでしたが、今回はゴールドというゴージャスなものを、カジュアルな感覚で表現してみました。素材もすべてストレッチ素材を使い、着やすいものにしました」とコシノヒロコは語った。

 また、今後については、「来年、東京でアートとファッションを融合させたような展覧会を開催する予定です。詳細はまだ言えませんが、次の時代を担う子どもたちや若者の中からクリエイターが生まれるための刺激になるような展覧会にしたいと思います」と話した。

Courtesy of HIROKO KOSHINO

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