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6月15日、ドイツはデュッセルドルフでの追加公演をもって、AC/DCの欧州ツアーが終了した。日本時間でいえば16日早朝のことである。これをもってアクセル・ローズの、ブライアン・ジョンソンのピンチヒッターとしての役割がひとまず終了した。とはいえ前回お伝えしたように、バンドは8月27日には、延期措置となっていた北米ツアーの振り替え公演(全10本)をスタートすることになっており、こちらにもアクセルは出演する予定だ。
筆者がAC/DCのライヴを目撃したのは去る5月26日、ドイツはハンブルクでのこと。人、人、人で埋め尽くされたサッカー・スタジアムの風景はそれだけでも壮観だが、そこにAC/DCならではのあのシンプルかつ豪快なギター・リフが爆音で鳴り響き続けるのだから、強烈と言うしかない。しかも音楽史に残る怪物アルバム『BACK IN BLACK』(1980年)からの楽曲群をはじめとする往年の代表曲の数々から、最新作『ROCK OR BUST』(2014年)の収録曲に至るまでを、アクセルは違和感なく歌い切ってみせた。なお、このツアー開幕当初、足の骨折が完治しておらず着席での歌唱を強いられていた彼も、この頃になると椅子を使用しなくなっており、広いステージを悠然と歩きながら迫力満点のシャウトを聴かせていた。
今やお馴染みのメンバーはアンガス・ヤング(g)とクリフ・ウィリアムズ(b)のみとなり、マルコム・ヤング(g)が認知症のため離脱を余儀なくされた穴は、彼とアンガスの甥にあたるスティーヴ・ヤングが埋め、さらにフィル・ラッドではなくクリス・スレイドがドラマーを務めているAC/DC。皮肉な見方をすれば、アクセルを含む3人が“代役”ということになる。が、それでもAC/DCはAC/DC以外の何物でもない。そう言い切れるだけの素晴らしいライヴだった。ブライアンの不参加決定に伴って公演チケットの払い戻しをしたファンの数というのも少なくないはずだが、その人たちはAC/DCの歴史におけるとても重要な場面を見逃したと言わざるを得ないだろう。なお、この公演の模様は7月5日発売の『BURRN!』誌8月号にてたっぷりとレポートすることになっているので、ご興味のある方はそちらも併せてご覧いただきたい。
そしてこのツアーを経たアクセルは、GUNS N' ROSESとしての日常に戻り、6月23日のデトロイト公演を皮切りに、『NOT IN THIS LIFETIME』と銘打たれた北米スタジアム・ツアーを開始することになる。このツアーの序盤4公演においてスペシャル・ゲストとして登場するのは、去る4月のラスヴェガス公演にも出演していたALICE IN CHAINS。さらに、7月後半に組まれている東海岸地区での4公演には、レニー・クラヴィッツの出演も確定している。それら以外の16公演に伴う共演者については6月16日現在において公表されていないが、ここで誰の名前が飛び出すことになるかはとても楽しみなところだ。余談ながらALICE IN CHAINSはシアトル出身のダフ・マッケイガンにとっては同郷の仲間たち、レニー・クラヴィッツはスラッシュにとってハイスクール時代の同級生だったりもする。
それはさておき、筆者が目撃した4月8日、9日のラスヴェガス公演の話である。双方の夜を通じて印象的だったのは、やはりこうして役者が揃った状態にあるGN’Rのインパクトにはすさまじいものがある、という事実だ。僕自身は、アクセル以外のオリジナル・メンバー不在で作られた『CHINESE DEMOCRACY』(2008年)にも深い思い入れを抱いているし、その“21世紀型GN'R”の未来にも期待していたのだが、ステージ上にアクセル、スラッシュ、ダフの3人が並ぶ図を目撃してしまうと、それだけでやはり「待ってました!」と声をあげたくなってくるというもの。しかも当然のように演奏はタイトで、アクセルの歌唱にもかつて以上に安定感があった。もしかするとそれは、着席での歌唱がもたらした思いがけないプラス作用でもあったのかもしれないが、逆に、座ったままあれほどの声量で歌うことができるというのも尋常ではないことのように思えた。加えて、前述の『CHINESE DEMOCRACY』からセレクトされた数曲が、スラッシュとダフを擁する現在の布陣により演奏された事実にも感慨味深いものがあった。ことにそのうちの1曲、「Better」には新たにアレンジされたイントロが加わり、これまで以上に印象深いヴァージョンに更新されていた。
また、アクセルの話をすると大概の人たちは「で、開演は何時間遅れたの?」といったことを言いたがるものだが、GN’Rのラスヴェガス公演でも、AC/DCのハンブルク公演でも、取り立てて言うほどの遅延はなかったし、僕自身が観ていない公演についても、いわゆる“事件”めいた報道は今のところ特に聞こえてきていない。もちろんこれから始まるGN'Rのツアーについて報じられていくなかで、さまざまなことが書き立てられることにはなるだろう。が、根も葉もない噂とデマしか聞こえてこない、ファンにとっての暗黒時期はもう終わった。これからは根拠のあるGN’Rのニュースが次々と届けられることになるはずだ。そして、何よりも来日決定の朗報を心待ちにしていたいところである。
(おわり)
文/増田勇一
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