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“ヴィジュアル系”バンドの相違点と共通点

「当時は音楽誌がたくさんあったのと同時に、TVの音楽番組も多くて、ミュージックビデオも当たり前のように作られるようになった時代です。だから、どうしても外見を気にしなきゃいけないようになったんですよね。もともとビジュアル系には、“違うキャラクターが混在する面白さ”があったと思うんです。その先駆者と言えるのが、たとえばDEAD END。ある程度統一された中でも違いがあるっていうイメージで出てきたのがX JAPAN(当時はX)。今では当たり前になった原稿チェックも、X JAPANが始まりだったという説がありますよね。しかも『BLUE BLOOD』(89年)が爆発的に売れた後からです。それまではX JAPANも含め、いわゆる原稿チェックを要求された記憶はありません。ただ、仕方のない部分もあって。事実関係さえ間違えなければチェックなしでも基本的に問題は起こらないわけですが、X JAPANはあそこまで一気に巨大化してしまった時、誤解の幅が大きかったと思うんです。バンドに対する世の中のイメージが “正統派メタルを受け継ぐ5人組”と思う人もいれば、“『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』に出てる人たち”と思う人もいるわけで、当然のことなんですけどバンド側にとっては、こんなこと書かれたらたまんねぇってことがすごく増えたんだと思うんです。だから記事の内容もビジュアルも、あわよくばデザインも、自分たちでコントロールしたいと思うようになった。その影響を受けて、多くのヴィジュアル系バンドは、メディアのコントロールを含めたトータルプロデュースをするという道を進むことになったんだと思います」

そんな中、同時期に活躍したTHE YELLOW MONKEYは、また異なる立ち位置だったようだ。

「THE YELLOW MONKEYの背景にあるものは、ヴィジュアル系バンドと重なる部分が大きいと思うんですけど、音楽シーンの中での居場所みたいなものは、ちょっと違うんだろうなっていう気はします。たとえば、当時の音楽誌はTHE YELLOW MONKEYをどう扱えばいいのか、迷っていた記憶があります。特に彼らのデビュー当時は、悪く言えばどっちつかずに見えた。まぁ、当時ロック色の強かったコロムビアからデビューしたという時点で、バンド側が目指しているところがヴィジュアル系ではなかったと言えるんですが。また、彼らがヴィジュアル系と異なるのは、グラム・ロック的なものと歌謡曲的なものが同時に根底にあることと、それを隠さなかったということ。本当は王道のロックバンドとして、真っ直ぐ扱えば良かったはずなんですよ。実際、デビュー当時の彼らはイロモノとかキワモノと言われたりもして。そういう形容が逆にバンドのド真ん中のところを見えにくくしていたような気がしますね」

振り返ってみると、90年代という時代はX JAPANやTHE YELLOW MONKEYのほか、LUNA SEAが活躍し、大きな足跡を残す過程で、それぞれのバンドがそれぞれのスタイルを形づくっていった豊潤な時代だった。改めて、あの時代が持つ意味とは何だったのだろう。

「今のヴィジュアル系って二極化してると思うんですよね。ひとつは今の主流である、かわいらしかったり、ポップだったりするもの。それは、あの頃メインストリームたり得たヴィジュアル系のポップなところだけを抽出した流れだと思います。でも、片やthe GazettEのようなヴィジュアル系の王道を継承しながら深化しているバンドもちゃんといるわけで。音楽的に言えば、どんなにエクストリームなことをしていても、サビがちゃんとあったりするのも特徴のひとつですよね。かわいらしくてポップなイメージのヴィジュアル系バンドの音楽の中にも、90年代のヴィジュアル系ロックバンドがルーツだと思える人たちはたくさんいるし、そうかと思えば、そこにデス声のパートが入ってきたり、ブラストビートが入ったりっていうのも最近では普通にあるわけで、“ヴィジュアル系”というのは、決して音楽性を絞れない言葉でもあると思います。
ただ、今思うのは、かつてヴィジュアル系とされたもの、ヴィジュアル系の創始者と言われる人たちをルーツとするアーティストは、けっこう広がりを持っていて、全然違う領域に行ってたりする。その広さは、昨年開催された『LUNATIC FEST.』の出演者の顔ぶれにも現れてると思います。coldrainもいればROTTENGRAFFTYもいれば9mm Parabellum Bulletもいれば[Alexandros]もいて……そういった人たちが本当にLUNA SEA好きだったり、彼らからの影響を認めていたりするわけですから。それと同じように、THE YELLOW MONKEYを好きだと言ってるアーティストも広い幅を持っているんですね」

1990年代のヴィジュアル系ロックバンドの時代が何だったのか、再び問う時代が訪れているのかもしれない。

2月の特集、後半はミュージシャンサイドから見た“ヴィジュアル系”について、LM.Cのギタリスト・Aijiさんに話を伺います。お楽しみに。
(つづく)

文/片貝久美子

増田勇一(ますだ・ゆういち)
音楽雑誌『BURRN!』副編集長、『MUSIC LIFE』編集長を経て、現在フリーライターとして活躍中。制作を手掛ける雑誌『MASSIVE』Vol.21(表紙巻頭特集=清春)が発売中。



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X『BLUE BLOOD』

X『BLUE BLOOD』
(ソニー・ミュージックレコーズ)
X JAPAN(当時X)のメジャーデビュー作。ジャケットに書かれた「PSYCHEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK」のフレーズから「ヴィジュアル系」という言葉がとられたという説がある(オリジナルリリース:1989年)。

X『Jelousy』

X『Jelousy』
(ソニー・ミュージックレコーズ)
前作より2年のインターバルを経て発表されたメジャー第2作。大ヒットした本作のリリースをへて翌1992年1月に初の東京ドーム公演3DAYSを成功させた(オリジナルリリース:1991年)



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