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――デビュー日である6月23日に日比谷野外大音楽堂で開催された15周年記念ライブでは、10周年からの5年間を振り返って「いい5年だった」って言ってましたよね。

「そうですね。やっぱり、この5年間でやってきたことは、ひとつひとつがすごく大変だった気がしていて。でもこの5年はすごく意味があったんだろうなって思ってます」

――15年前のことを思い出したりはしましたか。

「自分が悩んだり、見失ったりした時は、常に15年前を思い出した。あの時、なんであんなに歌いたかったのか。なんであんなに頑張れたのか。今の自分にはないところ、忘れちゃってるところを思い出すために、けっこう15年前のあの時を思い出します」

――自分がやりたいことをしっかりと実現させてきましたよね。15年後の今の自分としてはどう感じてますか?

「なりたいものになれたからすごいよなって思ってます(笑)。でも、やっぱり夢も恋愛も、追いかけてる時がいちばん楽しいよね」

――あははははは!名言が出ましたね。15年前に、15年後の自分は想像してました?

「いいえ。とにかく10周年を迎えるってことが自分の本当に大きな目標だったから、15年っていうのはまったくの想定外というか、視野の中になかったですね、ついこの間まで」

――ついこの間というのは、アルバムの制作に取り掛かるまでということですよね。前作『PUNKY』から2年9ヵ月ぶり、15周年にして通算10枚目という節目のアルバムはどんな作品にしたいと考えてましたか?

「10枚か……すごいね!でも、今回は15周年にどんなアルバムを作りますか?っていう話になった時に、ベストもあるのかな、セルフカヴァーもあるのかな、みたいな案もあって。でも、なんかねえ……って思ってて。ふと、何かの瞬間に、一から新しいものを作るべきだって降りてきて、すぐにみんなにそれを伝えて。ここ5年間やってきたことの集大成を見せるべきだというのがあったし、新しく変わっていきたいし、もう大人だから、虚勢を張るのはやめようっていう気持ちもどこかにあって。だから、積み上げてきた木村カエラ像はもう気にしなくていいって思ったんですよ。もう成長してしまった今の私を積み上げてきた木村カエラ像が邪魔をすることがあって。それを壊してしまいたかったんですよ。だから、“壊す”ということをテーマに考えてたら、“生きる”と“死ぬ”っていうモードが全部出てきて」

――でも、ポップアイコンになった木村カエラ像を壊してしまうのはもったいないし、勇気がいることでもありますよね。

「今までの自分はいったんさよならして、今までの自分から新しく生まれ変わりましょう!みたいな……同じ人間だから、傍から見たら同じだとは思うんだけど、なんか違うんだよなって」

――そう思うようになったきっかけは何かありました?

「子どもが積み木を積み上げて遊んでても、躊躇なくバンって壊すでしょ。あれを見ててめっちゃ気持ち良くて。大人はあともうちょっと積めたじゃんって思ったりもするけど、子どもはバンって思い切り壊して、また何もなかったかのように積み上げてく。それがある時からずっと自分の頭の中にあって、いつかやらなきゃいけない時が来るんだなって意識があったの。それが、今だなって。すぐに何かがなくなるわけではないんだけど、意識的に壊そうって思ったの」

――じゃあ、木村カエラが木村カエラを壊したアルバムって言っていいんですかね、これは。

「そうだね(笑)。歌詞を書いてる時、私はずっと、“死んでしまう”って思ってたんですよ。だから、後悔のないように感謝の気持ちとか、愛してるって気持ちとか、いろんなものを正直に吐き出さないと絶対あとで後悔するっていうモードに陥って。それが全部出てる。そういう意味では、このアルバムには、“元・木村カエラ”と“新・木村カエラ”っていうふたりの木村カエラがいるの(笑)。壊して壊して!って言ってる木村カエラと、“もう死ぬから最後にひとこと、言わせて……”って言ってる木村カエラが共存してて。で、気づくと、生きてるとか、そういう言葉が入ってしまっていて。やっべーなって思ったんですけど、すごい気持ち良かったですよ。壊せ壊せ!みたいな感じがすっごい良くって」





――アルバム1曲目の「Continue」はあいみょんの提供曲ですが、木村カエラが“おばさんになったこと”と歌ってるというインパクトが……。

「それいちばん大事なところですね(笑)。おばさんもおじさんも、歳をとるほどずっと若さを追いかけてるけど、絶対に自分のもとには来ないことはどこかでわかってるじゃないですか。だから、言っちゃえって思ったの」

――“虚勢を張らない”という発言を体現してる曲ですが、それでもこれを言えちゃうのがすごいすよね。しかも、アルバムの1曲目で。

「あははははは!やっぱりすっごい悩みましたけど、あいみょんちゃんとやろうって思ったのも、5年前にたくさんの新しいアーティストが出てきた時に、いいなって思う人がいっぱいいるのに、プライド的に頼めなかったんですよ。ずっと“だっせー、自分!”って思ってたけど、やっぱり頼めなかった。そういうのも全部取っ払ってやれる自分になるまでに5年かかったの。その時には自分はもういわゆる中堅みたいなことになっていて、上の世代にはもっと活躍し続けているCharaさんとかがいて、下の世代にはあいみょんちゃんみたいな才能がある子がいて。今、私が真ん中にいるのならば、両方といっしょに作って、しかも自分が認めたくないことを認めてしまう。それが今、必要なんじゃないかって。で、あいみょんちゃんと会って話をした時に、“おばさんになるってことをカエラさんが言ってたらカッコいい”って言われて。おばさんっていうのが意外とカッコいいことになるんじゃないか、みたいな」

――僕もなかなか自分でおじさんになってることを認められないので、カエラさんが率先して言ってくれると救われる気がします。

「おじさんでーす!おばさんでーす!っていうのが、めちゃカッコいい感じの雰囲気になったらいいなって思います。この言葉を歌うのはすごく勇気がいることだったけど、ひとつ人前で裸になった気分っていうか、おそらくそれをしたかったんだと思う。その感覚がすごく心地いい。で、これは1曲目にしようってずっと決めてたから」

――どうしてですか?

「こんなに衝撃的な歌ないから。で、人を認めるってことも自分が思うカッコいい人のひとつの条件っていうところがあって。カッコいいと思うものは1曲目で、自分の作った曲は最後って言うのも決めてたの。最後は私っていう。すごく大事な曲になりましたね」





――続く「セレンディピティ」は本人出演のダイハツ キャストのCMソングになってます。

「セレンディピティ=偶然に出会う幸せ、っていう言葉を歌にしたくて作りましたね。キャストに合いそうな歌詞にしようと思って浮かんだ言葉がサビに来ていて。車が緑色で、外観がテントウムシみたいなの。クローバーとテントウムシは両方ともセレンディピティのラッキーアイテムだから、めっちゃぴったりだと思って。私は運があるからセレンディピティに出会える、未来へ未来へレッツゴー!みたいな曲。これは新しい木村カエラが歌ってる(笑)」

――映画『ペット2』の日本語版イメージソングになっている「BREAKER」はまさに“壊せ!”っていう曲ですね。

「そう。この曲を書いてる時は積み木をぶっ壊す人になってた。壊してゼロにして、また新しい形になればいいじゃん、みたいな。これが私の今のモードなんだけど、『ペット2』も主人公が自分の殻を破る話だったの」





――Charaさんとのコラボ曲も2曲収録されてます。

「最初にとにかく「ミモザ」っていうタイトルの曲が書きたいですってお願いして。歌詞はまだ決まってなかったんだけど、私の中でのCharaさんのイメージがミモザだったのね。それを伝えてやり取りしてる中で、いろんな曲をガンガン送ってきてくれて。そのうちの1曲が「曖昧me」。やったことのない感じだし、めっちゃ可愛いし、やりたいなと思って。しかも、この時、私が悪い夢の中にいて、抜け出せなかったんですよ」

――それは現実的に?

「現実的に。でも、Charaさんに救われて。Charaさんに、嫌なことがあったって言ったら、家においでよ~っていうメールが来て。で、“すっごい嫌なことがあって、スランプ中なんです。Charaさんの曲の歌詞を書かなきゃいけないのに”って言ったら、吐き出せる状況を作ってくれて。それでバーッとできたし、すごく勉強になった」

――勉強になったというのは?

「Charaさんは音の中で生きてるから、歌詞も、聴こえる音を拾ったりするんですよね。意味とか関係なく、すべてが音の中なんだな、めっちゃおもしろいって思って。今まではどっかで辻褄が合ってないといけないのかなって思ってたんだけど、Charaさんのやり方がめちゃくちゃ面白いなって思ったし、また新しい歌詞の生み出し方っていうのも学べたなって思います」

――もう一方のミドルバラード「ミモザ」はCharaさんらしい雰囲気ですよね。こちらはCharaさんのことを書いてますか?

「ううん。本当は女性の強さやかよわさ、美しさを表現できればいいなと思ってたんだけど、この歌を聴いた瞬間に、また“私が死ぬまで”っていう言葉がバンって一瞬で出てきて。“もうダメだ、これは止められない”と思って、上から順番に一気に書いてますね」

――“あなたを愛してる”と歌ってます。

「今までの私だったら、最後に“愛してる”を2回繰り返すことなんてできなかったんですよ。ていうか、今もできないと思ってたんだけど(笑)、Charaさんに“愛してるは2回言ったほうがいい”って言われて。本当は最後英語で締めようとしてたんだけど、Charaさんが“Charaは愛してるのほうがいいと思うよ。ふだん言えないことを歌うんだから”って。で、この“愛してる”が最後、笑っちゃって全然歌えなくて。そしたらCharaさんがブースの中に入ってきて、ここにその人がいるみたいに歌うんだよって。Charaさん、壁のギリギリまで顔を近づけて、“この距離で歌うの。それをイメージしてマイクのところで愛してるって言ったらめっちゃいいから!”って言われてやったら、一発でOK出て。本当にCharaさんすごいね!って思いました」

――愛の伝道師ですからね(笑)。Chara曲に挟まれた「クリオネ」はAAAMYYYの作曲です。

「Charaさんが“AAAMYYY、カエラと合うと思うよ”って言ってくれて。私、今まで女性の曲はあんまりやってこなかったから、女性の人とやるっていうのがこの『いちご』っていうアルバムではすごくいい気がしていて。だから、AAAMYYYちゃんにもお願いして作ってもらいました」

――受け取ってどう感じました?不思議な浮遊感のあるエレクトロになってます。

「どうやって作ってんの?って感じだけど、すごく才能があるよね。しかも、デモよりも歌を入れてみると、すごく曲が化けるんですよ。それを見据えて曲を作ってるんだとしたら、この子も化け物だなって。ただ、歌詞はいちばん難しかったですね。AAAMYYYちゃんは英語をしゃべれるから、英語用の歌詞なんだよね。だから、日本語が全然合わなくてすごい苦労したんですけど……深海魚っぽい深海の生き物をテーマに、とにかく“生きてるだけで切ない”ってことが言いたかった。心が冷たくなってる時に、朝の光とか誰かのやさしい光が心を解かすっていう部分をクリオネの世界で表現した。ただそれだけっていう感じかな」





――このあと、會田茂一(アイゴン)、A×S×E、渡邊 忍(しのっぴ)というおなじみのメンバーによる楽曲が続きます。まず、アイゴンによる「ストレスポンジー」は?

「夢を見たんですよ。街を歩いている人が背中に黒いストレスの妖気を抱えて、赤い目になってゾンビのようにうろついてて。そこで私がスポンジでみんなのストレスを吸収していくんですね。そんな夢を見たっていう話をアイゴンさんにしたら、この曲を作ってくれた(笑)。アルバムの最後の方に作った曲だから思い切りふざけてますね。5人組のスポンジマンのグッズも作りたいです!」

――(笑)。A×S×Eさんの「戦闘的ファンタジー」は意外にも四つ打ち曲になってます。

「A×S×Eさんに無茶振りして、打ち込みの曲を作ってもらいました。サビにglobeやtrfが入ってきて、AメロやDメロにきゃりーぱみゅぱみゅちゃんとかももクロが入ってくる。平成を代表するような曲になってて、めっちゃカッコいい。歌詞は「セレンディピティ」に続く、運の強さを持ってる人シリーズで、モチーフはシンデレラ。持ってる人は自分と未来と思考と行動、つまり変えられるものしか見てない。変えられないものは他人と過去と感情だ、と。それを歌詞にしてますね」

――「ハイドとシーク」はデビューからの盟友、しのっぴです。

「アルバムのいちばん最後、15周年記念の野音ライブが終わった後にできました。私は変わってるものが好きで、その人しか作れないものに触れるのが好きなんですよね。この曲はテンポがどんどん変わっていって、最終的にはバンドのみんなでわーっとかき鳴らすようなアレンジになってる。歌は符割りが難しったけど、ライブで盛り上がりそうだなと思っていて」

――(笑)。最後に作詞作曲を手がけた「いちご」が収録されてます。カエラさんが作曲はするのは2007年の「Scratch」以来ですよね。

「そうかもしれない。でも、「Scratch」は、私が最初にメロディを考えてそれに、toeの美濃さんにコードをつけてもらったから。この曲みたいに自分で全部1からやったのは初めてだったかも」

――どんな曲を作りたいと思ってました?

「とにかくアルバムのタイトル曲は自分でって決めてたので、15年間で見てきたこと、考えてきたこと、感じたことを感謝の気持ちを込めて書ければいいかなって思ってましたね。嬉しいことも悲しいこともあるけど、それがその先につながるから、ひとつひとつをちゃんと受け取って、感じて、認めることで次につながっていく感じかな。それが、15年でやってきたことのような気がしてて。だから、嘘ついちゃいけないっていうか」

――この曲でも優しく、美しく生きていきたいと歌ってますね。

「この時も死ぬことを考えてたから、すごくせつない感じになってますね。だから、これは、元・木村カエラが書いてる。「ストレスポンジー」や「戦闘的ファンタジー」、「ミモザ」は新・木村カエラが書いてるけど、「クリオネ」は元・木村カエラですよね。そういうふうに、死んでしまう!みたいなモードは元・木村さんカエラが書いてる」

――元・木村カエラがここでひとつの終わりを告げてます。

「そう。でも、すごくいいし、すごく好きです。メロディはポップだったから、「Magic Music」みたいにしようと思ってたんだけど、死んでしまうっていうモードに入ってるから、私の息やアコギをスライドする指の音まで生々しく聴こえる――生きてるっていうこと、そこにいるってことがわかる音にしたかったの――だから、激しいエレキじゃなくて、3人でやるシンプルなものにしたいって言って。で、クリックもなしで一発録りで録って」

――あはははは!そうしてアルバムが完成してどんな未来が見えましたか?

「このままでいいって感じたかな。ひとつずつ歳をとっていくことだったり、自分が自然と変化していく気持ちに逆らうのはやめようっていうことを受け入れられて、すごく清々しいし、フラットな感じになった。今は、それがとても心地がいいし、これからカッコいいおばさんになって、カッコいいおばあちゃんになっていけたらいいなと思います」

――秋からはライブハウスツアーも決まってます。

「野音でやったような感じではないけれども、ベスト的な内容にはなると思います。セットリストで15年を振り返られるようなものになるといいなって思ってて。『いちご』の曲もやりつつ。感謝の気持ちを込めたライヴにしたいなと思ってますね。もうカッコつけずにやるので、ぜひ遊びにきてください!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/太田好治、立脇 卓



■木村カエラ LIVE 2019 全国「いちご狩り」ツアー
10月17日(木) 札幌cube garden
10月26日(土) 広島CLUB QUATTRO
10月27日(日) DRUM LOGOS
11月2日(土) Zepp DiverCity
11月6日(水) 高松オリーブホール
11月7日(木) 名古屋DIAMOND HALL
11月9日(土) なんばHatch
11月17日(日) 仙台GIGS





木村カエラ『いちご』
2019年7月31日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/VIZL-1610/3,700円(税別)
Colourful Records
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2019年7月31日(水)発売
通常盤(CD)/VICL-65218/3,000円(税別)
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