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――今作の楽曲群の完成度には、驚かされました。これらはあなたとプロデューサーのジョン・シャンクスによるものですか?

「ありがとう。メインのソングライターは僕で、ジョン・シャンクスたちとのコラボだね。彼らが僕のアイディアをさらに発展させてくれて、まとめて形にしてくれたという感じ」

――今作で、新たな挑戦や実験だったと思える要素は?

「温故知新、古いものだけど、実は新しい。それがこのアルバムだと思う。みんな集まって、ライブで曲を作り上げていくっていうね。初期のころは、僕とかリッチーがメインで、ティコ(・トーレス)やデヴィッド(・ブライアン)はあまり中心的ではなかった。でも今回は、みんなが同じ部屋でライブをして、エネルギーをぶつけ合って、バンドがひとつになった。一体化したんだ。それぞれが息を吹き込んで、曲がどんどんでき上がっていく。たとえば〈ニュー・イヤーズ・デイ〉は、暦の上での正月という意味ではなくて、新たな誕生のことなんだ。みんなが集まり、僕がアコースティック・ギターをつま弾いて、歌いながら作った。歌詞ができてから、メンバーが参加していくんだ。バンドでライブ演奏をしながら、曲をシェイプ・アップさせていくことは、すごく刺激的だし、もう別世界だよ。本当にエキサイティングなんだ。“僕”から“僕たち”へ移行する感じがね」

――アルバム・タイトルが『ディス・ハウス・イズ・ノット・フォー・セール』なのは、そのフレーズが、今作を象徴しているからでしょうか?

「そうだね。今回、最初にレコーディングしたアルバムと同じスタジオでレコーディングしたというのは、ここが“新たな誕生”にふさわしい場所だと思ったからなんだ。歌詞の中に“この4つの壁に囲まれた家”とあるのは、バンドのメンバーのことを言っている。僕の心、僕の魂、そして僕のこの家は、誰にも売り渡すことなどできないという意味だよ。ここは僕の家。文句があるんだったら、大家に話をつけに来い。そういうこと(笑)」

――アルバムジャケットになっている、あの家は実在しているのですか?

「実は、あの家の写真を見つけたのがきっかけで、このアルバムのコンセプトが浮かび上がったんだよ。写真を見た瞬間、“これだ!”って閃いたんだ。これこそが、自分のレコードのテーマだって思った。自分の探していたイメージそのものだったからね。アルバムのタイトルも、同時に思いついた。確かあの写真って、もう35年くらい前のものなんだよ。雑誌の中から見つけたんだけど、まだPhotoshopなんかないころの写真でね。撮影したフォトグラファーの連絡先を調べて、やっとコンタクトが取れて使わせてもらうことになったんだ。あの家は実在していたんだけど、もう今はないんだよ」

――このアルバムと、ボン・ジョヴィの来日を心待ちにしている日本のファンへ、どんな言葉を送りたいですか?

「このアルバムは、自分の気持ちに本当に正直に作ったアルバムなんだ。だから聴いてくれる人たちも、同じように受け入れてくれたらいいなと思っている。今までのアルバムの中でも、際立ってよくできた作品だと言えるから、感想を早く聞きたいな」

――プロモーションや公演で、もう20回以上は来日されているかと思いますが。

「いや、30回以上は行っているはずだよ(笑)。何度も行っているレストランとかもあるよ。日本とは長い付き合いだし、ファンの人たちも素晴らしい。地方の小さなクラブや劇場でもライブをやったことがあるし、もちろん東京ドームや武道館でも数え切れないほどやった。キャピトル東急やフォー・シーズンズにもよく泊まったし、新幹線にも乗ったしね。ボブ・ディランも参加したアコースティック・フェスティバルでもプレイしたなあ。どこだったっけ、ブッダのあるところ(1994年、奈良の東大寺で開催されたザ・グレート・ミュージック・エクスペリエンス)……。とにかく、いろいろ想い出があり過ぎる。雪の札幌とか……。特に、日本の伝統には感動するね。そういったものを大切にする日本の人たちにも。僕たちバンドに対しても、忠誠心があるし。長年お世話になっているプロモーターや、レコード会社のみんなとのこととか、本当にいい想い出ばかりだよ」

――次回の来日時に行ってみたいところは、ありますか?

「今までと変わらないと思う。僕にとって、場所なんかどうでもいいんだ。大切な友達と過ごすこと、それが一番だね。そういうことが、自分にとってすごく重要なんだよ」

――最近、音楽以外でハマっていることは?

「アメリカン・フットボールの大ファンだよ。あと、ここ2年くらい写真にハマっているんだけど、つくづくヘタクソだなって呆れているよ(笑)。カメラも何台か持っているんだ」

――デビュー当時と変わらない体型を維持されていますが、日ごろ気をつけていることなどがあれば教えてください。

「いや、僕はかなり疲れている。気分は110歳くらいさ(笑)。何も秘密なんてないよ。食事制限もしていないし(笑)」

――近年、さまざまなチャリティーにも積極的に関わっていますね。こうした活動に向かわせる原動力は?

「わからないな。でも、過去10年ほどいろいろな活動をして、どれも自慢できる素晴らしいものだったと思う。残念ながら、世の中には助けを必要とする人たちが、あまりにも多いと思うんだ。どれもうまくいったのは、それが純粋な心からの気持ちだということが理由だと思うよ。うちの奥さんがいつも聞くんだ、“意図は何なの?”って。僕はどうしたら人を助けることができるか知っているから、そうしているだけ。ちっとも難しいことじゃない。お金を出して、人を養う。単純なことだよ。僕にはそれができるんだからね」

(おわり)

取材・文/鈴木宏和



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ジョン・ボン・ジョヴィへのインタビュー前編
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