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高崎駅から徒歩10分、34度をこえる真夏日の晴れた空の下。会場の高崎市もてなし広場にはイベント全体で2万5千人を超えるオーディエンスが集まった。布袋は、様々な伝説を積み重ねながら、ギタリストとしての夢をスタートした原点の地に帰ってきたのだ。思えば、6年間の活動だったBO?WY時代、高崎出身とはゆえ、活動の場を東京へ移していたこともあり、ライブを直に観れた高崎市民は多くは無かったはず。初のフリーライブは故郷に錦を飾るべく、恩返しともいえる高崎での開催となった。
なお、このフリーライブは高崎市営のレコーディングスタジオTAGO STUDIO TAKASAKIが主催する音楽イベント『TAGO STUDIO TAKASAKI MUSIC FESTIVAL 2016』のスペシャル・ライブとして行われた。同イベントではアマチュア・ミュージシャンのオーディションも開催され、審査員には多胡邦夫、INORAN(LUNA SEA)、香川誠(ROGUE)、中西圭三、ヤガミ・トール(BUCK-TICK)など、高崎に縁のあるアーティストが参加した。
まだまだ太陽がまぶしい午後16時10分、オープニングは、映画『キル・ビル』のメインテーマとしてお馴染みの世界的ヒット曲「Battle Without Honor or Humanity」でスタートした。ホーンセクションも参加するスペシャル・バンドとともに、芳醇でプロフェッショナルなサウンドが風の街に響きわたる。鳥肌が立つスリリングな瞬間だ。
バンド・メンバーには9名の精鋭が集結した。黒田晃年(G)、井上富雄(B)、河村"カースケ"智康(Dr)、奥野真哉(Key)、岸利之(Pro)、LOVE(cho)、村田陽一ホーンズ(3名)という、日本ロックシーンを彩ってきた最強の布陣だ。続く、2曲目のインストゥルメンタル・チューン「TRICK ATTACK -Theme of Lupin The Third-」では、軽やかにビートと呼応するギタープレイが昂揚感を煽ってくれる。オーディエンスの熱量の高さが、シーズナリーなロック・サウンドに溶け合うことで、会場が至福な雰囲気へと染まっていく。
間髪開けず、“カラダはあたたまったかい?”と言わんばかりに、3曲目に鳴り響いたリフレインは「BE MY BABY」。1989年、吉川晃司と結成したユニット、COMPLEXのヒット曲だ。日本を代表する伝説的なロックンロール・ナンバーのプレイに沸き起こる熱狂的な大歓声。今回は、会場に高崎市民限定スペースもあるがゆえに、布袋で初ライブを体験する子供たちも多いことだろう。もしかしたら、今日をきっかけに新たなロックスターの継承が起きていたかもしれない。
幾何学模様のHOTEIモデルにギターを持ち替え、BO?WY時代に1曲だけ布袋がリード・ヴォーカルを担当したダンス・チューン「DANCE CRAZE」をホーン・アレンジで披露。ソロ・デビュー・アルバム『GUITARHYTHM』のルーツともいえるノーウェイヴなビートは、音楽は絶対的に自由な存在であることを主張しているように感じた。ファンキーで印象的なギターリフは、どことなくベースラインのようなセンスも感じる。様々なバックボーンを血と肉としながらも、オリジナリティーが際立つ布袋らしいユニークなアプローチだ。後半、LOVEによる妖しく派手めなコーラスワークも絶品だったことも付け加えておこう。
ここで一瞬、布袋はクールダウン。地元高崎での思い出を、優しい口調で話しはじめた。
「この街で14歳の時にギターと出会って、いつかデヴィッド・ボウイの隣でギターを弾きたいなと夢見てました。それこそ、この辺に医療センターというホールがあって、アマチュア時代によくライブをやっていました。そして素晴らしい仲間と出会って、BO?WYというバンドを結成して日本一のバンドになりました。そして、ソロになってからも長い長い年月が経ちました。なかなか自分の人生、振り返ってばかりだと前に進めないし、時には、ほろ苦い思い出ばかり見つけてしまいそうで記憶の扉に鍵をかけてしまうこともありましたけど、30年?35年も経つと、ちょっと苦かった思い出もワインのように甘くなってくるものですね。次にお送りするのは最新のシングル『8 BEATのシルエット』です。この曲は、自分の人生を故郷の景色とともに歌った曲です。」。
前夜、会場隣の高崎市庁舎に向けて、布袋マークをデザインしたダイナミックなプロジェクション・マッピングがおこなわれた。巨大なビルへ向けて投影された最新曲『8 BEATのシルエット』への布袋の思い入れは深い。どこを切っても布袋サウンドというエネルギーの強さはもちろん、注目は35周年という節目で今までを振り返った歌詞だ。歌い出しの“One Day 風の街 夢を見つけた少年は”の“風の街”とは、空っ風が吹く街、高崎からはじまったHOTEIヒストリーをあらわしている。『8 BEATのシルエット』は、ライブで演奏を耳にするたびに進化を感じたナンバーだ。数年後には、布袋を代表する楽曲になっているかもしれない。そんな、抜きん出たポップセンスを再認識させてくれた楽曲だ。
6月22日に発売されたばかりの、未来を見据えたベスト・アルバム『51 Emotions -the best for the future-』。その1曲目に収録された、ラップとロカビリーの融合によって生み出された「バンビーナ」のイントロが鳴り響くとオーディエンスがざわめいた。一筋縄ではいかないギミッカブルなリリックと楽曲展開、なのにとことんポップ。ホーン隊がバンドサウンドに絡み合うことで生まれるエモーショナルな音の厚み。まさに布袋らしさ溢れる斬新な踊れるロックンロールに酔いしれる。
続けて響き渡る、河村"カースケ"智康のカウントから解き放たれる8ビート。聞き覚えのある派手めなシンセ・フレーズとともに国民的ヒット曲「スリル」が炸裂する。黒田晃年とのツインリードによるギターソロ、LOVEとのハーモニー、聴きどころ満載のヒットチューンだ。歌詞の一部を改変して、眼前で跳ねるオーディエンスをさらに煽ることも忘れない。どこまでも、どこまでも走り続けていく、そんな思いの強さを感じられたナンバーだ。
本編ラストは、ザ・ルースターズの井上富雄が引っ張るベースラインが痛快な、パンキッシュなモータウン・ビートが切ないリリックに絡み合う「POISON」。HOTEIヒストリーを凝縮したステージを締めくくるにふさわしい、グラマラスなヒット・チューンだ。オーディエンスによる熱狂が、至福な空気感を会場いっぱいに満たしていく。歌詞にもあるように、このまま時が止まればいいのに、そんなことを思ったワンシーンだ。
フリーライブであることによって、普段のライブとは違い、様々な世代の老若男女が集まったフェス会場。多様性ある人々がひとつの音楽で熱狂をする。こんなに胸が高鳴ることはないだろう。音楽にチカラを感じる瞬間だ。布袋は、野外フェスティバルが似合う。改めて確信したライブだった。
鳴り止まないアンコールに答えて、再びステージに登場する布袋。ここでまさかの「NO.NEW YORK」をプレイ。屋外で聴くとさらに喜びが120%増すBO?WYの人気チューンだ。ギターが2本、キーボード、ホーン隊の参加といえば初期アレンジを彷彿とさせながらも、強力な進化を感じさせてくれる最新型の「NO.NEW YORK」。間奏で、大きく右腕を振り回す布袋のシルエットが目に焼き付いてはなれない。こんなに絵になる、弾きながら歌うギタリストは他にはいないだろう。
ラストは「Dreamin'」。BO?WY時代のナンバーながら、実は作詞曲ともに布袋が手がけた楽曲だ。現在進行形である夢への挑戦。BO?WY時代、シングル・カットされた曲ではなかったが、ライブ定番曲であり、今もなお日本を代表するロックチューンとして継承されているビート・アンセム。ホーン隊が加わり、鉄壁のメンバーがサウンドを固めることで、あらためて浮き彫りとなるアヴァンギャルドなポップセンスがたまらない。そして、ステップし続ける布袋の華麗な足さばきが、音楽の旅に終わりがないことを教えてくれるのだ。
35周年を迎え躍進する、布袋の2016年はまだまだ熱い。引き続き『8 BEATのシルエット』シリーズとして、いわき・仙台・釜石をめぐる東北ツアー、アメリカ・ロサンゼルスとニューヨークでのライブ、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZOへ出演、全国24箇所26公演のホールツアーが続いていく。これ以上ないほどに、全力で駆け抜けていく35周年アニバーサリー・プロジェクトに注目していきたい。
文/ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
<セットリスト>
『【BEAT 3】~Power of Music~ FREE LIVE! 自由の音を聴け』
2016年7月3日(日)@群馬・高崎市もてなし広場
1. Battle Without Honor or Humanity
2. TRICK ATTACK -Theme of Lupin The Third-
3. BE MY BABY
4. DANCE CRAZE
5. 8 BEATのシルエット
6. バンビーナ
7. スリル
8. POISON
【アンコール】
9. NO.NEW YORK
10. Dreamin'
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