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2018.09.07

SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第14回のゲストはCYCLAS、The SECRETCLOSETの小野瀬慶子さん

Journal Cubocci編集長の久保雅裕がお届けするSMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。第14回のゲストは、CYCLAS、The SECRETCLOSETの小野瀬慶子さん。収録を終えてのアフタートークをお届けします。

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SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第14回のゲストはCYCLAS、The SECRETCLOSETの小野瀬慶子さん



――小野瀬さんのファッション業界でのキャリアは大変興味深いのですが、伊藤忠ファッションシステムを経て、ユナイテッドアローズへ転じてピンクレーベルの立ち上げに関わっておられたということですね。

小野瀬慶子「ユナイテッドアローズに入社して半年ぐらいたった頃からピンクレーベルに携わることになりました。現在はメンズのブルーレーベルと統合されてビューティー&ユース(BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS)になりましたが、1997年当時のUAには、まだウィメンズのカジュアルラインがなかったんです」

久保雅裕「大手のセレクトショップが競ってサブレーベルをスタートさせた時期でしたね。UAではメンズのブルーレーベルが先行して、グリーンレーベル(united arrows green label relaxing)はまだなかったかな」

小野瀬「グリーンレーベルもちょうど立ち上げの時期でしたね。UAはメンズが強かったので、メンズにはきちんとしたスーチング・スタイルとカジュアルというカテゴリーがあったんですが、重松さん(現名誉会長の重松 理氏)の号令で“ウィメンズはピンクレーベルで行くぞ!”って。最初はすごく小さな規模だったんですが、20ルックくらいかな……私が絵型を描き起こしてピンクレーベルがスタートしました」

――番組本編では、その時期のことをとても楽しかったと語っておられましたが。

小野瀬「すごくいい時代だったなと思います。作ったもの、仕入れたものが“売れなかった”という経験がないんですよ。最初に作ったジャケットだったり、パシュミナっていうストールを見つけてきて仕入れたり、それがすごく売れて、ちょっとしたブームになって“こんなに売れるのに何で全色やらないんだ!”って逆に叱られたりして(笑)。そういう時代でしたね」

――その後、独立してザ シークレットクロゼットを立ち上げることになるわけですが、会社名にはサンクチュアリという言葉を使っていて、近しいニュアンスが含まれていますよね。

小野瀬「そうですね。ザ シークレットクロゼットは隠れ家というコンセプトで、サンクチュアリは聖域ですから」

――僕はザ シークレットクロゼットという言葉から、小さな子どもがクロゼットで隠れんぼしているシーンをイメージするんですよ。

小野瀬「あ、可愛いらしいですね。今日撮影していただいた神宮前は小さなお店なので、お客様には、自分だけの空間だと思って贅沢なお買い物体験をしていただきたいですね。よくお越しいただくお客様のために、他の店舗からも提案したり、商品を集めて用意したりもしますし」

久保「リザーブドって感じ(笑)。本当にエクスクルーシブなお客様がいらっしゃるんですね」

小野瀬「神宮前は、ゆっくりお買い物したいというお客様が多いですし、よりパーソナルに特別なサービスを提供するというスタイルは、小売業を営まれているかた誰しもがやってみたいことだと思うんです。そういう意味では神宮前のお店がザ シークレットクロゼットの原点ですね」

――いまはザ シークレットクロゼットの品揃えに占めるシクラスブランドの割合はどれくらいですか?

小野瀬「シクラスが7、セレクトが3といったところですね。お客様が欲するものを提供するということを第一に考えてセレクトの仕方も変化してきて、いまはこのバランスですね。海外のラグジュアリーブランドも大型店が多くなってきて、本国と変わらない品揃えになっていたり、NET-A-PORTER(ネッタポルテ)やFarfetch(ファーフェッチ)といったECも日本に入ってきていますから、セレクトショップの役割をきちんと考えなくちゃいけない時期なんだと思います。たとえば、海外ブランドのコートとシクラスのトレンチコートを較べてみて、自分たちの製品が優れていると思ったらそれをお店に置く選択をします」

――将来的にはザ シークレットクロゼットとは別に、シクラスという屋号で出店するということもあるかもしれませんよね。

小野瀬「海外だとニューヨークにある百貨店のバーグドルフ・グッドマンでシクラスを扱っていただいているんですけど、ロエベのレディ・トゥ・ウェアやオルセン姉妹が手掛けたザ・ロウと隣り合ったラックにシクラスが置かれていたり、ソウルのブーン・ザ・ショップでもバレンチノ、セリーヌ、ザ・ロウとシクラスが並んでいるんですね。いままではザ シークレットクロゼットとして海外のブランドを買い付ける側だったわけですが、いまはシクラスが日本発のブランドとして海外に進出していますから」

久保「日本の消費者は、まだまだ海外ブランドに対してコンプレックスがあるように思いませんか?」

小野瀬「確かに海外ブランドに偏重している部分もありますよね。でも、私は、いままで買い付ける側で仕事をしていて、いろんなブランドの変遷を見てきましたし、海外のブランドでものづくりをしている人たちが、どうやって自分たちの個性を伝えて、価値を生み出して、そして自分たちのペースでそれを売っていくのかということを考えてきたかを知っていますから、私たちも同じことをできるはずだと思っているんですよ。シクラスで海外のブランドと同じ価値を生み出していきたいですね」

――これは知り合いの編集者が作っている「ファッション力(りょく)」というフリーペーパーなんですが(笑)、こちらのインタビューで、小野瀬さんは「大人が楽しい買い物ができる場所をつくること」がライフワークだと仰っていますが、ザ シークレットクロゼットはその理想に近づいていますか?

小野瀬「まだまだですよ。みんなで日々努力していかないと。でも、ちゃんと前に進んでいる感覚はありますね。これがザ シークレットクロゼットの接客のスタイル――大人のかたがたが、自分に似合うものを見つけてゆっくり買い物をする場所を提供する――ということは浸透しつつあるかなと思います」

――気持ちいい買い物体験ができるという意味で、たとえば東京に小野瀬さん、久保さんのお眼鏡に叶うお店ってありますか?

久保「僕はロンハーマン」

小野瀬「たくさんありますよ。大型店じゃなくても個人経営の気持ちいいお店が。でも私、面が割れちゃってるので、ふつうに接客してもらえないんですよ(笑)」

久保「面が割れると同業者同士の会話になっちゃいますよね(笑)。個店なら渋谷のデスペラードが面白いですよ。泉 英一さんの。あそこはオリジナルはやってなくて、全部オーナーバイヤーの目利きで仕入れるんです。ちゃんとあのテイストが好きなスタッフで固めて、目の前の公園みたいなスペースでお茶を飲みながら接客したり、アーティストのインスタレーションが飾ってあったり、商売商売していないところがいいよね」

小野瀬「仕入れ商品で個性を出すって大変だと思うし、ビジネスとしても難しいですよね。alphaの南 貴之さんが始めたギャラリーみたいなお店がすごいって聞きました。物が入ってくるなり全部売れちゃうって記事を読んだことがありますが、本当ですか?」

久保「ああ、グラフペーパーでしょ?うん、面白い店ですよ。こう、壁面に引き出しが埋め込まれていて、それをガラガラって引っ張ると商品が現れるんです」

――ちなみにロンハーマンが優れていると思うのはどういった部分ですか?

久保「そこで働いている人たちが、個店と同じように楽しんで仕事をしているってこと。それをいちばんに考えて、かつチェーンオペレーションできてるってことがすごいなと。まあ、三根さん(サザビーリーグ執行役員 三根弘毅氏)に聞いたら、やっぱり人ありきなのでそんなに店舗は増やせないって言ってましたけどね」

――ちょっと脱線してしまいましたね。話を引き戻しましょう。いま、小野瀬さんがいちばん時間を割いている仕事は?

小野瀬「企画チーム&パターンチームといっしょに洋服を立体化する作業ですね。シーチングして、モデルにトワルを着せて、それを直して仕上げていく工程にいちばん時間を費やしています。あとはシーズンの最初の時期に色のストーリーであるとかイメージを作って、それをスタッフに伝えるということも大切ですね。経営という意味ではやっぱり売り上げを作るということと、人と組織に関わる部分ですね」

――経営者としてもデザイナーとしても小野瀬さんのキャリアってすごいロールモデルだなと思うんですが、いまファッション業界を目指す人たちが真似しようと思っても難しいかもしれませんね。

久保「そうだね。いいお手本には違いないんだけれど、真似できるかっていうと、難しいんじゃない?」

小野瀬「でも、いまの時代だったら、なんとなく“この人がああしたから真似してみよう”ってタイプの人じゃないほうが成功するような気がするな。人生設計なんて計画してもそのとおりに運ばないことのほうが多いじゃないですか。私の場合は、目の前で起こった出来事を精一杯やって、それが次に繋がって……という繰り返しでここまでやってこれたと思っているので」

久保「“A rolling stone gathers no moss”だね。でも目の前の出来事をきちんとキャッチアップできる能力は必要だよね」

小野瀬「まさしく。私のUA時代はその実践だったかもしれません。会社の成長期だったこともあって、これやって!あれやって!次はこれ!半年後にはこれを立ち上げて!って感じだったんですよ。それに対して“えっ!私がやるんですか……”っていうリアクションはしませんでしたから」

久保「結局、新しいことにチャレンジしないと成長はないからね。シクラスでの海外進出も新しいチャレンジだったわけじゃないですか。よくそこに踏み切ったなと思うんですよ」

小野瀬「そうですね。海外進出って、ただ商品を持って行けばいいわけじゃないですし、売ってくれる人がいないと成立しない。そういう人たちとの出会いだったり、タイミングが大切だと思うんですよね。シクラスは、パリの展示会でバーグドルフ・グッドマンとの巡り合わせがあって最初のシーズンを迎えられたわけですが、ファッションの世界に飛び込もうという人たちも、そういうチャンスが訪れたときに、躊躇せずにぱっと手を出せる勇気を持って欲しいですね」


(おわり)

取材・文/encore編集部
写真/柴田ひろあき(撮影協力/The SECRETCLOSET jingumae)



■小野瀬慶子(おのせ けいこ) CYCLASクリエイティブディレクター、The SECRETCLOSETファウンダー。慶應義塾大学卒、文化服装学院ファッション工科アパレルデザイン科卒。伊藤忠ファッションシステム、ユナイテッドアローズを経て、2007年に独立。The SECRETCLOSET(ザ シークレットクロゼット)を神宮前にオープン。2016年、CYCLAS(シクラス)をスタート。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。







SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第14回のゲストはCYCLAS、The SECRETCLOSETの小野瀬慶子さん





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