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2018.06.08

SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第11回のゲストはアッシュ・ペー・フランスの村松孝尚さん

Journal Cubocci編集長の久保雅裕がお届けするSMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。第11回のゲストは、アッシュ・ペー・フランスの村松孝尚さん。収録を終えてのアフタートークをお届けします。

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SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第11回のゲストはアッシュ・ペー・フランスの村松孝尚さん



——村松さんは、ラフォーレ原宿にあった店舗を引き継いでLampをスタートさせた1984年当時の原宿や表参道界隈の風景を憶えていますか?

村松孝尚「なんとなく憶えていますよ。同潤会アパートは表参道ヒルズに、セントラルアパートは東急プラザになっているし、あの界隈の景色も一変してしまいましたね。でも僕にとっていちばん印象的なのは、ラフォーレ原宿ができる前の風景なんですよね」

——1970年代の中盤ですね。

村松「明治通りのあの道幅の広さだったり、表参道のケヤキ並木を抜けると交差点に東京教会があって……田舎から出てきたばかりで、そんな景色、見たことなかったですから」

——その頃の原宿といえば、若者文化の象徴的な存在だったと思いますが、デビュー前の舘ひろしさんとクールスの全盛期じゃないですか?

村松「そうですね。時代的にはちょうど同じ時期だったと思いますよ」

——村松さんは、スピン出版で雑誌「だぶだぼ」に携わっておられたということですが、いまググってみたら、目次に並んでいる顔ぶれがなかなか興味深いですね。寺山修司さん、なぎら健壱さん、内藤ちん(陳)さん、菊地武夫さんもいます。

村松「表紙のイラストレーションは湯村輝彦さんに描いてもらってました。おもしろい雑誌でしたね。僕は編集から営業までいろんな仕事をやらされていたんですが、知識欲を刺激されるというか、すごく楽しかったですね。25歳のときだったかな……初めての海外で、シアトルから入ってサンフランシスコまで、ヒッピーのコミュニティを追いかけて取材したんです。サンフランシスコみたいな都会を追われたヒッピーたちが、ルート1を北上して内陸部に入って野菜を作り始めたんですが、それが無農薬野菜のはしりみたいな感じでめずらしかったんです。いまでこそすごく大きくなっちゃいましたけど、ホールフーズ・マーケットなんて、それこそ当時ヒッピーだった若者が始めた店だったんですよね」

——昨年アマゾン・ドット・コムが買収して大きなニュースになっていましたね。

村松「当時は“無農薬で野菜を作るなんて何考えてるんだ?”って言われていましたけどね。ヒッピーの全盛期は1960年代で、やれドラッグだ、フリーセックスだってカルチャーがよくないものだって風潮になって、街を追われてだんだん衰退していくんですが、70年代、80年代の、いわゆるネオ・ヒッピーはそういうネガティブな要素が淘汰されて、自然派志向だったり、平和主義、シェアっていう考え方みたいな健全な部分が残ったんです。「だぶだぼ」は、当時のそういうカルチャーをいちはやく捉えていた雑誌だったと思いますね」

——ヒッピー文化の象徴的な出版物といえば、やはり「ホール・アース・カタログ」だと思いますが、日本にもその影響みたいなものは届いていたんでしょうか?

村松「おっしゃるとおりです。スティーブ・ジョブズも言っていましたが、「ホール・アース・カタログ」がヒッピー的な思想であるとか、そういうすべてのルーツになっているというか、すべてがあの雑誌のなかにあったと言ってもいいかもしれませんね。僕が「だぶだぼ」にいたころはもう廃刊していましたけど、会社にも「ホール・アース・カタログ」がごろごろ置いてありましたよ。編集者は、みんなあれを読んで研究してましたから」

——いまの、アッシュ・ペー・フランスでの松村さんのお仕事に、そうした編集者としての経験であるとか考え方は生かされていると思いますか?

村松「僕は、常にWhy?、How?、What?で物事を考えるようにしているんですが、まずWhy?に対する答えは“日本が豊かになっていくためのクリエーション”だと明確に思っているんです。次にHow?ですね。つまりそれをどうやって叶えるのか?って考えると、僕がやっていることって編集なんですよね。アクセサリーも、服も、インテリアもそうなんですが、出会ったものや才能を組み合わせて、組み立てて、お客さんに届けるということだから。それをどうやって具体的に表現するのか?というWhat?がお店なんですね。だから編集者としての経験は大いに生かされていると思います」

——思えば「ジュルナルクボッチ」には優れた編集者的視点やセンスを持ったゲストの方々が多く登場しますね。

久保雅裕「本当にそうですね。第1回の設楽さんをはじめ、いろんなものを見つけて、それを編集するということに秀でている方が多い。そういう目利き力や、設楽さんや村松さんというフィルターを通すことによって、お客さんはブランドやお店に親和性を見出すことができるわけですよね」

——番組本編にも登場していましたが、かつて仕入れに通われていたという馬喰町界隈は、いまでも行くことがありますか?

村松「いや、しばらく行っていないですね。昔あった問屋さんが畳んじゃったって話は結構聞きますけど」

——そうなんですよ。今日、写真を撮ってくれたカメラマンの柴田さんも小伝馬町にアトリエを構えているんですが、そんなふうに、廃業した問屋さんや古い商店の跡に、若い世代のアーティストたちがショップやギャラリーを開業していて、小伝馬町から馬喰町にかけてのエリアに面白いコミュニティができているんですよ。

村松「いいですね。今度行ってみますよ」

久保「蔵前あたりの倉庫街もリノベーション物件だらけで面白いですよ。1階はカフェで、上階は宿泊施設になっている倉庫だったり、ハウススタジオなんかもありますね。浅草や秋葉原も近いので、外国人のツーリストでにぎわっていて、ある意味ブルックリンみたいな雰囲気があります」

村松「知らなかったな。そういうのすごくいいですよね。神田の古書店街にはよく行くんですが、あのあたりの本屋さんも面白いセレクトをするようになってますよね。この前、古本屋さんで「だぶだぼ」を見つけてびっくりしましたけど(笑)」

——それはレアものですね。ちなみにネットで見ると、当時380円だった「だぶだぼ」に1,000円以上のプレミアが付いているようです。神田や下北沢あたりには、そういう優れたコンテンツに精通したブックセレクターさんがいますよね。

村松「思えばいい雑誌だったんです。そうやっていまでも大事にしてくれる人がいてくれて、ちょっとうれしいですね」

——さて、何の予備知識もない人に、アッシュ・ペー・フランスってどんな会社ですか?って聞かれたら、村松さんはどう説明しますか?

村松「何屋さんかと聞かれれば、洋服屋、家具屋、ってことなんでしょうけど……うーん、ひとことで説明するのは難しいですね(笑)。久保さんはどう思いますか?」

久保「確かに難しいですね。ひとつ言えるのは、マスを追いかけていない、クリエイティブな部分にフォーカスしている会社だってことじゃないですか。ビッグネームの商品には手を出さないし、そこが魅力でもあるわけですが、ある意味とても非効率なビジネスをやってらっしゃるなと」

村松「おっしゃるとおりです。僕自身がそういう方向を向いているせいか、“アッシュ・ペーらしさ”みたいなものを追いかけていると、どんどん非効率になっていくんですよね。そうですね……どんな会社かっていう意味では、フェミニンカンパニーという言葉になるかもしれませんね」

久保「ああ、番組本編で言っていた“SHEROS”というコンセプトですね。女性脳で考えようという」

村松「そうなんですよ。いまは、日本だけじゃなくて、世界的にもまだまだ男性社会だってことが言えると思うんですが、これから先の未来は、間違いなくそうじゃない方向に向かっているとも思うんですよね」

——確かに、アッシュ・ペー・フランスは、反体制というか、インディペンデントなカルチャーを持った会社ではあるけど、だからといって、攻撃的なニュアンスは感じられないですよね。

村松「それこそが女性脳で思考しようということなんです。たぶん男が威張っていられる時代はもうすぐ終わりますからね。そういう新しい時代に生きていく会社でありたいなと思います」


(おわり)

取材・文/encore編集部
写真/柴田ひろあき(撮影協力/H.P.DECO)



■村松孝尚(むらまつ たかなお)
1952年長野県生まれ。1984年、ラフォーレ原宿にLampを開業、原宿プロジェクト有限会社を設立。1989年、アッシュ・ペー・フランス株式会社を設立。ファッション、雑貨、家具の取り扱い、さらには「青参道アートフェア」の開催や、「rooms」や「BATOMA」といった展示会事業も行っている。現在はニューヨーク在住。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。







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