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2018.04.13

SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第9回のゲストはトランジットジェネラルオフィスの中村貞裕さん

SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」は、Journal Cubocci編集長の久保雅裕がお届けする“トークサロン”。第9回のゲストは、OFFFICE、Signで2000年代のカフェブームをけん引したトランジットジェネラルオフィスの中村貞裕さん。収録を終えてのアフタートークで久保さん、石田紗英子さんとともに語ってくれたファッションと飲食店ビジネスの共通項とは?

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SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第9回のゲストはトランジットジェネラルオフィスの中村貞裕さん



——個人的に、ずっとお聞きしたいとおもっていたことがありまして。トランジットジェネラルオフィスという社名の由来は?

中村貞裕「実は、あまり深い意味はなくて(笑)。伊勢丹を退社して、自分で会社を作ろうかというときに、自分で買ったか、人にもらったかした写真集があって。空港のバゲージクレームでスーツケースが流れてくる様子を収めた写真集だったんですが、そのタイトルが『TRANSIT』。スーツケースがトランジットしてゆく軽やかな感じがいいなあと思ってそのまま社名にしました」

石田紗英子「そういえば、先ほどお邪魔した本社のオフィスにもアンティークの大きなスーツケースがありましたね」

——中村さんと久保さんのファーストコンタクトは?

久保雅裕「中村さんに初めて会ったのは伊勢丹時代。例のアッシュブレーンの集まりに、藤巻幸大さんが“ウチの若いの連れてきたよ!”って。それが中村さん。その後、藤巻さん自身もそうだし、彼の薫陶を受けた伊勢丹出身の人たちがファッション業界の重要なポジションを占めるようになっていくわけですが、そのなかで唯一、ファッション業界じゃない世界に飛び出して成功を収めたのが中村さんなんですよ。中村さんが「OFFICE」を立ち上げて、そこでイベントをやらせてもらったり、取材や撮影でも使わせてもらって、もちろん「senken h(センケン アッシュ)」も置かせてもらって。トランジットがブランドのショウだったり、パーティーのケータリングを手掛けるようになると、ますますトランジットの名前を聞くようになって。むしろ中村さんがファッション業界を離れてから、より近くにその存在を感じるようになりましたね」

——ファッションをテーマにした「ジュルナルクボッチ」でフードビジネスを手掛けるトランジットジェネラルオフィス、そして中村貞裕というキーワードはなかなか興味深いですね。

久保「この番組の中でもよく言っていることですが、ファッションって世の中のトレンドがいちばん最初に現出する場所だし、ライフスタイルという捉え方をすると、ファッションと飲食って考え方に通底する部分があるからね。それをファッション業界の人たち、ファッション業界を目指している人たちに聞いて欲しかったんです」

中村「僕、今日は子どもの頃の話ばっかりしてた気がするけど、大丈夫ですか(笑)」

——ゲストの生い立ちを辿るというのもこの番組のテーマですから。

久保「就職活動をしていたときの、“新しいものを見つけてきて、それを広めるという意味では広告代理店も百貨店も同じ”という話も示唆的だったんじゃないかな。中村さんのそういうマインドっていまも変わっていないと思うし、それってある意味、編集者的な視点——奇しくもビームスの設楽さんも“僕らの仕事って編集だから”っておっしゃっていましたけど——だと思いますから」

——カフェで仕事するという消費行動は、OFFICEがトリガーになって、その後Wi-Fiとかモバイルコンセントのファシリティーが整備されるようになって一般化したと思うんです。最近ではテレワークという言葉も出てきましたが、中村さんからすると、やっと世間が追いついてきたと感じるのでは?

中村「よくそういうふうに言われます。僕らがOFFICEで仕掛けたことって、いまで言うところのノマドワーカーの走りみたいなものですから。同じように、シェアオフィスのビジネスもちょっとだけ早かった。この“ちょっと早い”っていう感覚が大切で、トランジットのビジネスって、必ずしもゼロからイチを生み出しているわけではなくて、新しいビジネスを見つけて、そのビジネスのトップ集団の中で競い合うコンペティターでありたいということなんです。2位集団以下にいるとトップにいる人たちの真似になってしまうので」

——なるほど、山本宇一さんのロータスやモントーク、そして中村さんのOFFICE、Signというトップ集団が競い合ったからこそ、90年代後半から2000年代にかけてのカフェブームが出現するわけですね。

中村「そうですね。たとえば、山本さんのバワリーキッチンがカフェブームの先駆けだったとしたら、そのブームのトップ集団の中で走っていたい。新しいものを見つける目利き力と、それを実行に移せる行動力とスピード感が重要なんです。トップ集団が出来上がってからじゃ遅いんです。トップ集団を作る側に回らないと。このちょっとした差が大きいと思いますね。この差って、当事者である僕らにしかわからないことかもしれませんね。たぶん、外からブームを眺めている人には同じように見えているかもしれないし」

久保「そういう感覚って、やっぱり雑誌の編集に似ているね。雑誌の特集って、トレンドとかコンペティターが全くない事象って扱いづらいからね。ブランドでもお店でもひとつだけでは特集にならない。そういうときは、海外ではこんなものが流行っていますよっていうアプローチしたりするんだけど。それが日本に入ってきて流行るかもっていう……」

中村「僕も海外は常に見ていますね。シドニーでbillsを見つけて朝食ブームを仕掛けたりとか。あとはグルーピングができるかどうかっていうのもそのビジネスをやるかやらないかという判断基準になりますね。いまは小さな波だけど、やがて日本人のライフスタイルに影響を与えるようなトレンドになるかもしれないという判断ができれば飛び込んでいきますね」

石田「私は、ドミニクアンセルベーカリーだったり、マックスブレナーといったお店で差し入れとかお持たせを買うことが多いんですが、やっぱりちゃんとトレンドになっていて話題性があるから女子受けがいいんですよね。インスタ映えもしますし、本当に喜んでもらえますから」

——いま、中村さんのアンテナに引っかかっている最新のトレンドってどんなものですか?

中村「僕らはいま、インターナショナルフードっていう波を作ろうとしていて。フレンチ、イタリアン、中華ではなくて、ギリシャ料理、タイ料理とかちょっとニッチなエスニックフードのレストランをやってみて、それをグルーピングしようとしてるんです。今年はスペイン料理、来年はベトナム料理をやって……というふうに広げていくと、僕らで“いまインターナショナルフードの波が来てます”というトレンドを生み出すことができるんじゃないかと。これはいままでとは逆のアプローチですよね。トレンドに乗っかるのではなく、先にトレンドを作っちゃうという」

——なるほど、伊勢丹でファッション業界に身を置いていた中村さんですが、フードビジネスの世界でキャリアも長くなりましたし、新しいフェイズに進もうというタイミングでもあるわけですね。

中村「それは感じていますね。なぜかというと、20代、30代くらいの、若手のカフェ経営者の方とお話しする機会が結構あって、そういうときに“中村さんはカフェ業界のレジェンドですから”って言われたりして(笑)。そういうときに、僕もめちゃくちゃ歳をとったんだなと思いますね。でも、ということは、この業界で生き残って長くやってこれたということですね。思えば、僕がOFFICEとかSignを立ち上げたころ、すごい数のカフェがあったわけですが、いまトランジットみたいな規模に成長した会社とか、第一線でやれているカフェって数えるほどしかないですから。自分ではそんな意識はなかったんですが、そういうふうに見られているんだな、もっと現場でやれるところを見せなきゃなって思いますね」

久保「もしかしたら、いまの中村さんは、飲食店ビジネスの世界における藤巻さん的な立ち位置にいるんじゃないかな」

中村「それはそれでいいことだと思います。僕が若い頃、藤巻さんに接して教わったことを、同じように若い世代にも伝えていかなきゃいけないという責任感みたいなものも感じていますし」

——久保さんにお聞きしたいんですが、今日の中村さんのエピソードからファッション業界に引用できる要素って何でしょう?

久保「ファッション業界に限った話ではないんですが、子どものころコンプレックスだったことが、その人の力になることがあるってこと。誰にも人生の転機があって、そういうチャンスを逃さず掴み取るんだって意志を持つべきだってことかな」

中村「僕、基本的にスーパーポジティブなんですよ。だから、まわりでいっしょに仕事をしている人たちは大変だと思います。よく“中村さんポジティブ過ぎますよ!”って窘められるんで(笑)」

石田「でも、中村さんの身近にいる人たちってポジティブ思考の方が多いですよね。やっぱり、そういうポジティブなキャラクターが人を惹き付けるんじゃないですか。編集者タイプっていうか、さまざまなスキルを持った人たちが自然と集まってくる感じがありますから」

久保「そろそろ自分で雑誌を作っちゃいそうだもんね(笑)」

中村「あ、それはやってみたいですね。フードっていうと、日本だとお店の紹介をするガイド誌が多いじゃないですか。でも海外に行くと、アート的な視点だったり、食文化として扱うかっこいい雑誌がたくさんあるんですよ。そろそろ日本でもそういう雑誌が出てくるとおもしろいかもしれませんね」


(おわり)

取材・文/encore編集部
写真/柴田ひろあき(撮影協力/トランジットジェネラルオフィス)



■中村貞裕(なかむら さだひろ)
株式会社トランジットジェネラルオフィス代表取締役社長。1971年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、伊勢丹を経て、2001年、トランジットジェネラルオフィスを設立。OFFICE、Signをはじめとしたカフェやレストラン、NYをはじめ世界で人気を集めるチョコレートブランド、MAX BRENNERや、台湾発のかき氷、ICE MONSTERなどの海外ブランドから、シェアオフィス事業、イベントのプロデュース、ブランディングからケータリングまでさまざまなビジネスも手掛けている。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任准教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。







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