――昨年11月にリリースしたデジタルアルバム『満身創意』に新曲4曲を追加したCDとしてリリースすることになりました。

「アルバムの反響が思ってる以上に良かったんです。“満身創意を聞いて元気になりました”とか、“活力になってます”というお声をいただくことが多くて。新曲やリミックスを配信でリリースすることも考えてはいたんですけど、デジタルではなくて、手に取って、残しておけるものとして出したいなと思って。最初は、アルバムのタイトルを変えようと考えたんですけど、『満身創意』にDX(デラックス)を付け加えた方が分かりやすいし、贅沢感もあるかなと思って、こういう形で出させていただきました」

――オリジナル盤に収録されていた7曲はご自身でセレクトされたプロデューサーを迎えています。

「1stアルバム『edhiii boi is here』は既存のデモをブラッシュアップして、レコーディングする形でした。言ってみれば、畑を用意してもらって、自分で苗付けて育てる感じだったんですけど、今回は、挑戦したい気持ちがあったので、プロデューサーの方と完全にゼロイチから作る初めてのやり方にして。畑どころか、土すらないところから、ビートをもらって作っていくのはすごい大変でした。最初は慣れなかったし、わからないことだらけだったんです。どういうのを作りたいのか?どういうテーマだったらみんなに響くのか?……ひとつひとつを考えながら制作するのはすごく大変だったし、なかなかしっくりくるものができなかったんですけど、模索しながら制作を進めて。最終的には、すごくいいアルバムになったと思います」

――アルバムに収録されていた「おともだち」がTikTokで総再生回数8億を超えるバズを巻き起こしたことはどう感じてますか?

「TikTokを開いて、自分の曲がおすすめに流れてきたときは、やっぱりびっくりしましたね。学校の友達が踊ってくれたり、地元の子から“当たり前に流れてきたけど、これ、(本名の内野)創太だったんだ!?”って言われたこともうれしかった。でも、友達がいちばん喜んでくれたのがうれしかったかな。何かに向かって一緒に頑張ってる友達だったんで、うれしいですよね、やっぱり。しかも、このアルバムの中でいちばん最初に作った曲だったんですよ。それが、こうして、たくさんの人に届いて、報われたなっていう気持ちがありますね」

――報われたっていうのは?

「去年の夏休み中はほとんどレコーディングをしてたからです(笑)」

――16歳の夏休みなんて青春の真っ只中なのに !?

「誘われたバーベキューも行かずに頑張ってました」

――それは可哀想だ(笑)。アルバムのタイトルはどうして『満身創意』だったんですか?

「初めてプロデューサーさん方とゼロイチから作ったので、本当に満身創痍だったんです。その本当の姿を見せたかったんですね。本名の創太の“創”も使いつつ、少しだけ漢字を変えたタイトルをつけました」

――傷だらけになりながらも、創意工夫で乗り越えてきたっていう姿勢が伝わってきます。

「このアルバムを聴いて、癒されてくれたらなっていう気持ちもありましたね」

――最初の7曲の中でこのアルバムを象徴する曲をあげるとすると?

「リード曲「GALAXY」と「Uiteru」「青い春」の3曲は、edhiii boiを色濃く出せた気がしますね。「GALAXY」は自分の名刺になるような曲を作りたいと思って作りました。自分は今どういう環境に置かれて、どういう音楽を作りたいか伝わったらいいなと思って。僕は、まだ新人なので、いろんな方に出会ったときに、“どういう曲作ってるの?1曲聴かせてよ”って言われる機会が多いんです。そのときに、紹介できる曲があるといいなと思って作りました」

――ヘヴィーでアグレッシブなラップと、オートチューンがかかったメロウなヴォーカル2曲分が1曲にまとまったような、まさにいいとこ取りの構成になってます。

「面白い曲になったかなと思います。「Uiteru」は対照的に、フロウや、韻の並べ方、言葉の積み方一つをとってもしっかりHIP HOPを意識している曲です。勢いで作りましたとかではなくて、本当に質の良いものを作ることを意識して、勝負だなと思って、すごく頑張ってラップしました」

――☆Taku Takahashi(m-flo)のプロデュースですが、トラックがハードなテクノで意外でした。

「SKY-HIフィーチャリングでTakuさんと初めて楽曲制作に関わらせていただいたときから、憧れを抱いていて。今回、ソロでご一緒できることになり、Takuさんも挑戦して、僕も挑戦するような曲を作りたいですってお願いした結果、すごい楽曲ができました。言い方が偉そうになってしまって申し訳ないんですけど(笑)」

――高速ラップのパートもありますが、リリックにはどんな思いを込めましたか?

「嘘はつかないっていうテーマでした。珍しく、少し自分を大きく見せるようなリリックを書いてますけど、あくまで嘘はつかない。これを聞いた人が、edhiii boiってこういう人間なんだってわかるような曲を作りたかったんです」

――「メディア諸々の関係者の皆さま 俺を呼ぶなら今のうちにな」と煽ってましたが、これが現実になりました。

「まだ「おともだち」がバズる前に言ってて。そのときは、“ちょっと言い過ぎなんじゃない?”って思ってたけど、「おともだち」がバズって、いろんなメディアに出させていただくことが増えて。このリリックに攻撃的な気持ちは全くなかったですけど、いい意味でリアルに近づいたっていうか。もっと言いやすくなったし、アルバムを出して比較的すぐにテレビに呼んでもらったので、うれしかったですね。そして、「青い春」は真っ直ぐな青春ソングです」

――あははは!前につんのめるようなビートになってます。

「エモーショナルにギターだけで青春ソングを歌うのもいいんですけど、俺が言ってもちょっとくさいなと思って。たぶんファンの方は、エモいR&Bテイストのトラックの上で、こういう歌詞を歌っても感動してくれるかなと思ってました。でも、逆に、もう涙引っ込んだわ!ぐらいぶっ飛ばしていった方が、絶対響くだろうなと思って。僕の狙いとしては、フェスに来た人が初めて聴いて、“めっちゃいい曲だったな。でも、何て言ってんだろう?”と思って歌詞を見たら、“これ、青春ソングだったんだ !?"
と思わせるような曲をつくることでした」

――<大人になったら>というフレーズがありますが、17歳の今、大人になることはどう感じていますか。

「言ってしまえば年齢が上がっても全員が精神的に大人になれるわけではないじゃないですか。大人って自由ですけど、やっぱり責任が伴ってくるので、。そういう意味でも大人になるために何か1個けじめつける意味で、自分は「青い春」の歌詞にけじめをつけるみような言葉を入れました。10年後に振り返ったときに、この曲を聞いて、“このときはまだ大人じゃなかったんだ、俺”ってなれたらいいなと思って、その思いを残したくて作りました」

――同世代の人よりは先に社会に出てますよね。もう大人だなと感じたりますか?

「環境的にはそうですけど、まだ学生なので、学校に行ってるときは、いち学生として、みんなと同じ立場で10代を感じてます。少し失敗したとしても、怒られはするけど、“若いからね”で終わる。でも、edhiii boiになれば許されなかったりするので、逆に今、いい環境っていうか。僕にしか味わえない環境なのかなと思って今をかみしめてますね」

――早く大人になりたい?

「思いますね。年齢だけでいうと、まだお酒も飲めないですし――別に飲みたいわけではないんですけど(笑)――ライブが終わって、みんなでご飯に行けなかったり、変に気遣わせてしまうことがあるから。あとは、友達にクラブイベントに誘われても、“ごめんなさい。未成年だから出れないです”みたいなことも多いですよね」

――そして、デラックス盤の新曲「スーパーヒーロー」には<また一歩大人への階段>というフレーズがあります。

「実はこの曲、「みんなのうた」のお話をいただいて」

――そうなんですね!オファーが来たときはどう感じましたか?

「びっくりしました。世代的には、「みんなのうた」では「パプリカ」の印象がいちばん大きいです」

――東京オリンピックに向けて、「NHK 2020応援ソングプロジェクト」の楽曲として制作されて、初回放送は2018年8月から9月にかけてですが、2019年に入ってからロングヒットしました。

「僕が11歳から12歳の頃ですからね。みんなのうたを自分が作る立場になる怖さはありました(笑)。だから、何を書けば、みんなが覚えてくれるだろう?というところから始まって。17歳の今の気持ちを歌ってもいいんですけど、みんなのうたを聞いてくださる方に響かないかなと思ってしまって。けれどリアルを描きたかったので、中学生の時に作ったデモを探して聴いてみました」

――どう感じましたか?

「こんなにシンプルなことを、こんなにおもろく言ってたんだって思いました。そのデモを送ってみたら、すごく反響が良かったので、サビの歌詞はほぼ変えずに、そのままバースも作りました。ほぼデモに近いままですね」

――バンドサウンドですよね。

「バンドサウンドのイメージは、ロックというよりJ-POP的なサウンドが近かったんですよね。楽曲の尺が既に決まってたので、イントロを伸ばしたり、間奏を作ることはできなかったんですけど、ライブのことも考えながら作らせていただきました」

――歌詞を変えてないということは、当時から<スーパーヒーロー>っていうフレーズもあった?

「ありました。<逆転劇の僕は町のスーパーヒーロー>って書いてたんですよ。東京に出るとか、世界に出たいってことはずっと思ってたので、自分の地元に帰ってきたときに脚光浴びるスーパーヒーローってどんなんだろうと思ったまま綴ったんですよね。<町のスーパーヒーロー>っていう響きが好きです」

――「GALAXY」には<地元に帰る浴びる声援「いつもありがとう」>ともありますし、これも現実化してますよね。

「いや、わかんないですよ。帰ってくるなって言われるかもしれないですし(笑)。でも、今思い返すと、僕は友達が少ないと思ってたんですけど、自分から離れてたのかなって気がしますね。自分から壁を作って音楽に閉じこもってた気がするので、いつか地元に帰ったときに、こんなんなったんだよって言いながら、気軽に喋れる友達が残っていたらいいなっていう気持ちです」

――続く「StAR」では、自身の未来を自分に賭けて、<I’m a star>だと歌ってます。

「これは、全然歌詞も書けなくて、もう駄目だってなったときに、夜の散歩をしようと思って、缶のドクターペッパーとパソコンだけ持ってて、公園に行って。ベンチに座って、ビートを流したときに、サビのメロディが降ってきたんですけど、当時、少し気分が落ち込んでいたんですよね」

――何が原因で気分が落ち込んでいたんですか?

「どうしてもBE:FIRSTと比べてしまったりして。BE:FIRSTのメンバーは、自分よりも遥かに仕事の量があって、スケジュールもパンパンで。シンプルに羨ましかったですよね。僕が家にいる間、みんなはずっと仕事をしていて。やっぱり自分は向いてないのかなとか思ってたけど、BE:FIRSTのSHUNTOくんに相談しに行ったときに、話を聞いてくれて、すごく励ましてくれて。いろいろなことを話した後に散歩をしていて、このビートを聴いたときに、急にメロディと歌詞が出てきました」

――そういう意味でも満身創痍ではありますが、最終的にはこの曲でも朝を迎えて、家を出てますよね。「MY Way」も寂しさと孤独感を歌いながらも、前、明日、未来を見ていて。

「たまには自分を認めてあげようかな……みたいな(笑)。最初のラップなんて、もう本当にリアルですよね。5年後に振り返ったときに、この環境、大変だったなと思える曲を作りたくて、リアルのままを書きました。そういうのを描きたかった」

――そして、「おともだち」のズッ友remixでは、フィーチャリングアーティストとして、MANONさんを迎えてます。

「いろんなアーティストとのマイクリレーとか、いろいろ考えたんですけど、。MANONちゃんのキャラクターのインパクトの大きさと、MANONちゃんの書くリリックのファンでもあったし、MANONちゃんとは絶対にどこかで作りたいと思っていて、このタイミングで実現しました。本人が楽しそうにレコーディングしてくれたことがとてもうれしかったですね」

――レコーディングの様子を収めたMVには、録り終わって楽しそうに笑う声も入ってました。

「結果的にリアル友達とリミックスを作れたことが良かったです。超十代の日に初披露できましたが、またライブで一緒にできる機会があればいいなと思いますね」

――全11曲揃って、ご自身ではどんな感想を抱きましたか。

「とりあえず、上から順番に聴いてもらえば、3曲目ぐらいで僕のことが全部わかるアルバムになったなと思います。3曲目の「Non Fiction」で、あ、こういう人間なんだってわかると思う。その後に、1回ライブに来て生で「青い春」を聴いてもらって、ファンになってほしいですね(笑)。やっぱりライブに来て欲しいんですよね。ライブって、楽しいだけじゃなくて、ひとつのパフォーマンス作品として見れると思うので。僕のライブの空気感をぜひ味わってもらいたいですし、今年はいっぱいライブがしたいですね」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑慧嗣

LIVE INFO

2024年5月5日(日)
茨城ロボッツ 宇都宮ブレックス戦 LuckyFes Half Time Show@アダストリアみとアリーナ

2024年5月26日(日)
KOBE MELLOW CRUISE 2024@KOBE MELLOW CRUISE 特設会場(神戸メリケンパーク)
※BMSG POSSE名義の出演

2024年7月15日(月)
LuckyFes '24@茨城 国営ひたち海浜公園


DISC INFOedhiii boi『満身創意DX』

2024年4月10日(水)発売
初回生産限定盤(CD+Blu-ray)/POCS-23915/4,200円(税込)
通常盤(CD)/POCS-23043/2,200円(税込)
BMSG

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