<PR>
音楽アプリ「SMART USEN」の今井美樹チャンネルは6月20日スタート!



――最新作の『Sky』において、布袋寅泰さんは、公開中の映画『終わった人』(監督:中田秀夫、原作:内館牧子、主演:舘ひろし、黒木 瞳)の主題歌である「あなたはあなたのままでいい」と、「私へ」を手掛けています。

「『終わった人』は、定年後のサラリーマンという、言わば人生の秋の季節を描いた素敵な映画です。オファーの際、中田監督から“布袋、今井コンビで主題歌を”とリクエストがあったそうです。歌詞は、今まで頑張ってきた人たちに、“これからも自分らしく歩いて行ってください”という静かなエールも込めて、布袋さんが書いてくれました。そしてもう1曲、「私へ」は、 同じく『終わった人』のために書き下ろされた曲だったんです。この曲の中には、かつての自分を微笑ましく見つめている現在の自分の姿があります。あの頃の自分にどんな言葉をかけられるか。また反対に、あの頃の自分は今の自分にどんな言葉をかけるのか。そんな思いを歌った曲です。いずれにせよ、“いろいろあったけど、現在はそんなに悪くないよ”と言える自分でいたいとは思います。この歌に限らずですが、私を通して、いろんな人の歌になってくれたらいいですね」

――布袋さんから詞曲が提供される際のコラボレーションは、もはや“阿吽の呼吸”なのですか?

「基本的に、布袋さんの曲は、私がリクエストすることはないですが、ただ、言葉の選び方や主人公の佇まいなどに意見を言ってお互いの思いを合わせていくことはあります」

――今井さんがご自身で作詞をされた「Beyond the World」はイギリスのジャズ・ポップの貴公子、ジェイミー・カラムの作曲ですね。これはどういった経緯で?

「布袋さんのアイデアでした。せっかくロンドンにいるんだから、ひらめいたアイデアは臆せずトライしようということで。実現してうれしかったですね。彼から寄せられたスケール感のあるメロディとアレンジを活かせるよう、空から大地を見つめる眼差しを歌詞にしてみました。ロンドンで生活していると、日々の苦労も社会情勢も、悲しいことも厳しいことも、日本とはまた違った角度から経験します。こうした曲を歌うと、自分の視野も、かつてより少しは広がっていたらいいなとは思いますね」

――今井さんはロンドンで暮らして6年になります。『Sky』を聴くと、リスナーと寄り添うような歌が増えたような気がしますし、今井さんのボーカルの表現力もよりセンシティブになり、感性のアンテナもより繊細になっているように感じられました。そこがとても興味深いのです。やはりロンドンでの生活からの影響が大きいのでしょうか?

「ロンドンで生活していることで、より自分の日本人らしさに気付き、向き合う機会が増えたことは確かですね。実はこの1年ぐらい、英国生活に重心を置くために、しばらく仕事モードから離れていたので、エンジンをかけようとしても今までのようにはなかなかスムーズにいかなかった。正直、今回のレコーディングも、もうひとつ本調子で波に乗れないまま船出をしてしまった感じがあったんです」

――最近ロンドンで感じたことは?

「たくさんありますよ。日々の出来事で映画が何本も撮れるんじゃないかと思うぐらい(笑)。例えばUBERを頼むと、移民や中東系など、イギリス人以外の外国人が多いんですね。そうしたコミュニケーションの中で、日本人だと告げると、大抵のかたに“いい国だよね”、“日本車は最高だよね”と言ってもらえる。もちろん社交辞令もありますけど(笑)、先人の恩恵をひしひしと感じます。でもその一方で、“日本はどうしてもっと多くの問題に声を上げないの?”と聞いてくるかたもいます。そこで本気の論議ができるほど私の英語は達者じゃないのですが、そういう時に初めて分かることも多々あるんですよね」

――今井さんが転居されてから、残念なことにロンドン、そして隣国のフランスもテロに見舞われました。

「この数年、世界では悲しいことがたくさん起きました。でもそれを忘れるのではなく、何らかの形で自分なりに残しておきたいと思いました 。私にとっては、やっぱりそれは音楽だったんですね。目線を上にあげてみると、空と地平線があるだけで、国と国との境の大地に線が描かれているわけじゃない。 でも実際には見えない線がたくさんあるわけですよね。そしてそこにたくさんの人々の営みがあり、笑顔がある。生きるということは、皆、平等であるはずなのに……。そんなことを政治的に声高に言うのではなくて、願いとして、想いとして、記録して残しておきたかった。この『Sky』はそうした想いがベースにあるアルバムなんです」

――思えば代表曲「PRIDE」から20年が経ちました。日々の記録としての『Sky』を完成させて、いまどんな想いを抱かれていますか?

「私はいま日本を離れています。そんな私がファンやリスナーのかたがたに対して“あなたたちのために作った”というのは嘘くさい。私は、まず自分のために音楽をやっています。それははっきりとしています。でも、私の音楽がどうか届いてほしい。そう強く願っています。私の曲が、皆さんの曲になってほしい。今までの曲がそうなったと知らされた時が、私にはこれまで何度もあったし、その感動に支えられてきた私がいたので。『Sky』を完成させて分かったことは、空はひとつで、私たちはいつも同じ空で繋がっているんだということでした。どんな時にも、気が付くと空はいつもそこにあった。それはファンやリスナーのかたがたにとっても、今回、楽曲を提供して下さったアーティストの皆さんにとっても同じだと思うんです。私には私の空がある。皆さんにも皆さんの空がある。でもそれは同じ空なんですね。それに気付いた時、青空と自分が繋がったように感じられた瞬間がありました。だから気恥ずかしいぐらい直球ですけど、アルバムタイトルは『Sky』の他にないと思ったんです」

――穏やかな眼差し、悲しみを経た上での慈しみ、そして明日を生きる勇気に満ちたアルバムだと思います。8月からは久々の全国ツアーですね。

「このアルバムには、6000ccの排気量を持った車で、80キロぐらいをキープしながら延々と走るような気持ち良さがあると思います。最近、ふと気付くと『Sky』の曲を口ずさんでいる自分がいるんです。これからツアーで歌い重ねていくことで、皆さんにとっても、私にとっても、より大切な曲になるよう、じっくりと育てていきたいですね」

(おわり)

取材・文/内田正樹







今井美樹『Sky』
2018年6月6日(水)発売
TYCT-60116/3,000円(税別)
Virgin




音楽アプリ「SMART USEN」の今井美樹チャンネルは6月20日スタート!



アプリのダウンロードはこちらから

Get it on Google Play
Get it on Google Play
一覧へ戻る