2023年、Ken Yokoyama は様々な挑戦をした。初の日比谷野外大音楽堂公演、初のホールツアー、そして初のシングルシリーズ。しかし、それも思い切ってトライしたわけではなく、自然と湧いてきたアイデアに従って動いたまで。バンドとして大きなトピックを提供しようとしたわけではない。言い換えると、彼らはミュージシャンとして、ライブバンドとしてまだまだ現在進行系で成長している最中なのである。

シングルシリーズ最終章となる今作『These Magic Words』は、3作の中で最もオーソドックスなつくりだと言える。8ビートでカラッと疾走する「These Magic Words」、2ビートで苦い現実を突きつける「Bitter Truth」、そしてよりテンポを落とした「Sorry Darling」というバランスのとれた構成。卑猥な日本語詞を英詞に置き換えた「Whatcha Gonna Do」を収める『Better Left Unsaid』や、木村カエラを迎えた「Tomorrow」を含む『My One Wish』のような飛び道具はない。その代わりというわけではないだろうが、今回はとにかく詞が沁みる。たとえば、Ken Yokoyama 流の<Everything’s gonna be alright>な「These Magic Words」のサビでは、<"オーイェー 大丈夫さ そのうち オッケーになる">(日本語訳)とシンプルに歌われているが、あまりにストレートな横山の表現にグッとくるのだ。まさに<魔法の言葉>である。今年リリースされた楽曲すべてに言えることだが、横山が書く詞はこれまで以上に彼の生身が感じられる内容になっている。

「These Magic Words」や「Bitter Truth」は自分よりも年下の人間に向けていることが読み取れるが、そのどれもが厳しくも温かい。これは今の横山だからこそ獲得し得た感覚だろう。こういったメッセージが、あいも変わらず強靭で渋みの増した演奏に乗ってくるのだから説得力しかない。

大人になったからKen Yokoyama の音楽なんて、パンクなんて聴かない――今の時代、そういう元パンクキッズはいるのかもしれない。しかし、それは間違えている。彼らは若さにしがみついてこの音楽を鳴らしているのではなく、平均年齢50 歳を優に超える現役バリバリのバンドのリアルを、シーンの最前線で、ライブハウスで、我々に堂々と見せつけているのだ。こんなバンド、過去にいない。むしろ、今のKen Yokoyama をきっかけにパンクに目覚める人がいてもなんら不思議ではない。それは10~20代の若者だけでなく、40 代だって。

今回のパッケージ盤には前作に続き、今作にも初回盤が存在する。付属DVD には前述の野音公演から5曲を抜粋したライブ映像が収められている。「Let The Beat Carry On」へとつながるMC からはじまる約22 分半のパンクロックショウを堪能してほしい。

今年の活動を振り返ってみると、シングル『Better Left Unsaid』(5 月8 日発売)と『My One Wish』(9 月20 日)は5 月に開催された野音公演や10 月からスタートしたホールツアーと上手く連動して発表されてきたことがわかる。自ら打ち出してはいないものの、しっかりとレコ発ライブ的なものは行われていたのである。ということで、今作のリリース後にも当然ライブがある。今回は12 月に集中的に行われるショートツアーだ。そして、このツアーが終わった後には、以前からバンドが公言しているように、フルアルバムのリリースが待ち受けている。

2023 年の活動の総まとめとなる作品のリリースまで、その予告編でもあり、シングルシリーズ最終章でもある本作をじっくり聴き込んでいてほしい。

Ken Yokoyama 6th シングル「These Magic Words」

11 月29 日(水) 発売
【初回盤】(CD+DVD) /1,980円(税込)
【通常盤】(CD) /1,320円(税込)

1.These Magic Words
2.Bitter Truth
3.Sorry Darling

【初回盤】Live from DEAD AT MEGA CITY(DVD 詳細)
1. Let The Beat Carry On
2. Better Left Unsaid
3. I Won’t Turn Off My Radio
4. Still I Got To Fight
5. Ricky Punks III

「These Magic Words」特設サイト

Ken Yokoyama 「These Magic Words Tour」

12/9(土)滋賀 U STONE
12/10(日)岐阜 Club Roots
12/12(火)浜松 窓枠
12/13(水)清水 SOUND SHOWER ark
12/22(金)横浜 Bay Hall

一覧へ戻る