カーペンターズのヒット曲「雨の日と月曜日は (Rainy Days And Mondays)」や「愛のプレリュード (We've Only Just Begun)」はじめ数々のヒット曲を作曲したロジャー・ニコルス。残念なことに、5月17日の深夜に自宅で亡くなりました。84歳でした。
彼が1968年に発表したリーダー・アルバム『ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ』は、当時ヒットとは無縁でしたが、80年代に日本で初CD化され、やがて90年代に入ると、日本の多くのミュージシャンが敬愛する作曲家として彼の名を挙げたことから俄然注目を集め、その人気は日本から世界へと波及、“ロジャニコ”の愛称と共に、ソフトロック、サンシャイン・ポップを代表するアルバムとして、今やスタンダードな人気を誇っています。また、2007年には40年ぶりに2nd『フル・サークル』、2012年には3rd『マイ・ハート・イズ・ホーム』を発表、さらにCMやテレビでの仕事やデモで編んだ作品集『トレジャリー[デモ&CMトラックス]』と『トレジャリー・エクストラトラックス』が発表されました。
そんな彼のソングブックが8月6日(水)にソニー・ミュージックレーベルズからリリースされます。本作は、公私に渡って交流を持つアンソロジストの濱田髙志が8年前からロジャーと共に選曲を進めてきた日本独自の企画で、ロジャーが様々なアーティストに提供した楽曲で編んだ作品集になります。彼の楽曲を収録した作品集は過去に何度か編まれていますが、本作とそれらとの大きな違いは、本作は初の「ロジャー・ニコルス公認」のソングブックという点です。代表曲から隠れた名曲・名唱までをたっぷり収録した文字通り決定盤。世界初CD化、日本初CD化の音源も複数収録された、ファン垂涎のソングブックです。
『ロジャー・ニコルス ソングブック』 リリースに寄せて
素晴らしい!
この作品集が発売されることをとてもありがたいと思う。
トラックリストを眺めていると、とてもいい気分になるよ。
曲それぞれに、いろいろな想い出があるからね。
これまで一緒に仕事をした作詞家のなかで、
特に印象深いのはポール・ウィリアムスとビル・レーンのふたりだ。
そして、私が作曲した曲のなかで好きな曲を5つ挙げるなら
「We've Only Just Begun」「Rainy Days and Monday’s」
「Out in the Country」「Times of your Life」そして「Let Me Be the One」。
どれもヒットした曲なんだ。
ありがとう、ありがとう、ありがとう!
これを手にとってくれるあなたは、私の忠実なファンだと思う。
私の音楽に対する熱意に心から感謝します。
2025年5月5日
ロジャー・ニコルス
■収録曲(◉ 世界初CD化:* 国内初CD化)
CD1
01.Just Beyond Your Smile (ジャスト・ビヨンド・ユア・スマイル) / The Sunshine Company (ザ・サンシャイン・カンパニー)
02.Love So Fine (ラヴ・ソー・ファイン) / Nina Shaw (ニーナ・ショウ) *
03.Just What I've Been Looking For (ジャスト・ホワット・アイヴ・ビーン・ルッキング・フォー) / The Vogues (ザ・ヴォーグス)
04.Watching You (ウォッチング・ユー) / Marian Love (マリアン・ラブ) ◉
05.Can I Go (キャン・アイ・ゴー) / Danny Street (ダニー・ストリート)*
06.It's Hard To Say Goodbye (さよならはつらいもの) / Claudine Longet (クロディーヌ・ロンジェ)
07.To Put Up With You (可愛いおまえ) / The Sand Pipers (ザ・サンド・パイパーズ)
08.Bitter Honey (ビター・ハニー) / Holy Mackerel (ホリー・マッケラル)
09.She's Too Good To Me (シーズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー) / Jose Feliciano (ホセ・フェリシアーノ) ◉
10.I Can See Only You (アイ・キャン・シー・オンリー・ユー) / Al Martino (アル・マルティーノ) ◉
11.Poto Flavus (ポト・フレイヴァス) / John Andrews Tartaglia (ジョン・アンドリュース・タータグリア)
12.Let's Ride (レッツ・ライド) / Royalty (ロイヤリティー) ◉
13.Always You (オールウェイズ・ユー ) / Sundowners (サンダウナーズ)
14.The Drifter (ザ・ドリフター) / Kenny Lynch (ケニー・リンチ)
15.Don't Take Your Time (ドント・テイク・ユア・タイム) / The Match (ザ・マッチ)
16.Mornin' I'll Be Movin' On (モーニン・アイル・ビー・ムーヴィン・オン) / The Match (ザ・マッチ)
17.The Age Of Astrology - Part I (ジ・エイジ・オブ・アストロロジー パート1) / Johnny Magnus (ジョニー・マグナス) *
18.Trust (トラスト) / Paul Williams (ポール・ウィリアムス)
19.I Know You (アイ・ノウ・ユー) / Paul Williams (ポール・ウィリアムス)
20.Time (タイム) / The Match(ザ・マッチ)
21.Someday Man (サムデイ・マン) / Georgie Fame (ジョージィ・フェイム)
CD2
01.We've Only Just Begun (愛のプレリュード) / Andy Williams (アンディ・ウィリアムス)
02.When Love Is Near (朝やけの二人) / The Original Caste (オリジナル・キャスト)
03.Only Me (オンリー・ミー) / The New Doodletown Pipers (ザ・ニュー・ドゥードゥルタウン・パイパーズ ) *
04.Talk It Over In The Morning (トーク・イッツ・オーヴァー・イン・ザ・モーニング) / Engelbert Humperdinck (エンゲルベルト・フンパーディンク)
05.Do You Really Have A Heart (真心はどこに) / Gary Puckett (ゲイリー・パケット) ◉
06.So Many People (光ある世界へ) / Chase (チェイス)
07.Rainy Days And Mondays (雨の日と月曜日は) / Carol Burnette (キャロル・バーネット) ◉
08.I Won't Last A Day Without You (愛は夢の中に) / Silk (シルク) *
09.I Kept On Loving You (愛しつづけて) / Heaven Bound With Tony Scotti (ヘヴン・バウンド・ウィズ・トニー・スコッティ)
10.I'm Gonna Find Her (アイム・ゴナ・フィンド・ハー) / Steve Lawrence (スティーヴ・ローレンス) *
11.Somebody Waiting (サムバディ・ウェイティング) / Karen Wyman (カレン・ワイマン) *
12.Somethings Never Change (変わらぬ心) / Ryoko Moriyama (森山良子)
13.Traveling Boy (青春の旅路) / Art Garfunkel (アート・ガーファンクル)
14.Have You Heard The News (やすらぎの朝) / Vikki Carr (ヴィッキー・カー) ◉
15.I'm Coming To The Best Part Of My Life (アイム・カミング・トゥ・ザ・ベスト・パート・オブ・マイ・ライフ) / Cass Eliot (キャス・エリオット) ◉
16.Let Me Be The One (あなたの影になりたい) / Vikki Carr (ヴィッキー・カー) ◉
17.That's What Makes The Music Play (ザッツ・ホワット・メイクス・ザ・ミュージック・プレイ) / Johnny Mathis (ジョニー・マティス) *
18.No Love Today (二人の夕暮れ) / Michelle Phillips (ミシェル・フィリップス)
19.Times of Your Life (思い出よいつまでも) / Michel Legrand (ミシェル・ルグラン)
20.Soyo kaze to watashi (そよ風と私) / Toi et Moi (トワ・エ・モワ)
21.Look Around (ルック・アラウンド) / Roger Nichols & The Small Circle Of Friends (ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ)

【アルバム商品情報】
●タイトル:ロジャー・ニコルス・ソングブック (THE ROGER NICHOLS SONGBOOK)
●アーティスト:ヴァリアス (VARIOUS)
●品番:SICP 31776~7 (2CD)
●税込価格:¥2,860
●発売日:2025年8月6日(水)
●高音質Blu-spec CD2
●監修・解説:濱田髙志
●特別寄稿:朝妻一郎 、ポール・ウィリアムス
●歌詞、対訳付
●日本独自企画
【バイオグラフィー】
ロジャー・ニコルスは、1940年9月17日、音楽家の両親のもとに生まれた。父はジャズのサックス奏者、母はクラシックのピアニスト、さらに兄がトランペットを習っていたことから、物心がついた頃にはすでに音楽は身近な存在であったという。家ではクラシックやビッグ・バンドのレコードが流れ、その影響で彼も自然と楽器への興味を抱くようになる。幼い頃、最初に手解きを受けた楽器はピアノだったが、これは教師との相性が悪く、自ら練習を放棄。それ以後は独学で練習に励んでいる。そして、次に手にしたのがヴァイオリンで、こちらは個人教授を受け、高校ではオーケストラの一員として演奏に参加するなど本格的に取り組んだ。また、学生時代は並行してバスケットボール部にも在籍し、当時は“スター・プレイヤー”だった。ところが、ある時期から彼の心は音楽とスポーツの間で揺れ動くようになり、遅疑逡巡の末にオーケストラでの活動を断念することを決意。ヴァイオリンを下取りに入れるが、その場で手にしたギターが再び彼を音楽の道へと引き戻した。
彼が初めて組んだバンドは、中学の同級生マレイとその妹メリンダのマクレオド兄妹。1968年に発表した1stアルバム「Roger Nichols And The Small Circle Of Friends」は、当時、泣かず飛ばずだったが、87年に日本で世界初CD化され大きな話題となる。
一方、グループのアルバム完成直後にロジャーはポール・ウィリアムスと出会い、彼らは数多くのヒット曲を共作した。ふたりが書いて初めて世に出た曲はクロディーヌ・ロンジェが歌った「It’s Hard To Say Goodbye」で、以降、ニコルス=ウィルアムス名義では、カーペンターズ「We’ve Only Just Begun」「Rainy Days and Mondays」を始め数多くのヒットがある。ロジャーはほかにもビル・レーンら複数の作詞家と組んで共作、職業作曲家としてのキャリアを重ねるが、80年代半ば以降は音楽活動を中断。建築やアクセサリー販売などの仕事に従事し、時折、番組テーマやCM音楽のために作曲を続けている。そんな折、90年代に渋谷系界隈で彼がさまざまな歌手のために書いた楽曲が注目を集め、2007年には、世界に先駆け日本制作で約40年ぶりとなる“スモール・サークル・オブ・フレンズ”名義の2ndアルバム『フル・サークル』を、2012年には3rdアルバム『マイ・ハート・イズ・ホーム』を発表。その後、2016年にCMやテレビ/映画のために書かれた楽曲やデモ音源で編んだ『トレジャリー[デモ&CMトラックス]』を発表している。
『ロジャー・ニコルス ソングブック』の企画を立ち上げたのが2018年。しかし、翌年からのコロナ禍を受けて許諾作業が停滞、あわや頓挫と思われたが、2024年半ばから作業が再開。企画者の濱田髙志と共に選曲に関わり、生誕85周年記念盤となるはずだった。しかし、2025年5月、2年前に発症したパーキンソン病の療養中に呼吸器系疾患の悪化で体調を崩し、5月17日午後11時53分、オレゴン州の自宅で、家族が見守る中、天に召された(享年84)。