日本を代表するピアニスト、仲道郁代にとって4年ぶりとなる新録音「ザ・ラスト・モーツァルト」が5月28日に発売される。

仲道が満を持して取り組んだこのアルバムは、2024年12月をもって指揮活動を引退した名匠・井上道義氏との共演によるモーツァルトのピアノ協奏曲2曲。仲道はデビュー当時から長きにわたり井上氏と共演を重ね、特に2023年にオーケストラ・アンサンブル金沢、そして群馬交響楽団公演で共演したモーツァルト第20番と第23番は、その内容の密度の濃さ、表現の繊細さが音楽的な深い感動を生んだ。今回の録音に選ばれたのがその2曲である。

モーツァルトは仲道にとって大切な作曲家の一人だ。仲道は2013年に、2年半をかけてピアノ・ソナタ全集の録音を完成させ、モーツァルトのピアノ作品の本質に迫った。ピアノ協奏曲もデビュー当時から弾き続け、国内オーケストラとの共演のみならず、英国、チェコ、カナダ、ベルギーなど海外においてもイギリス室内管弦楽団、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ等のオーケストラと共演して好評を博し、高い評価を得てきた。

今回の録音に際して、井上氏が「アンサンブル・アミデオ」と名付けたオーケストラが編成された。イタリア語の「アミデオAmideo」は、モーツァルトの名前「アマデウス」のヴァリアントの一つ。また「アミAmi」にはフランス語で「友達」という意味もある。コンサートマスターの長原幸太氏をはじめとするオーケストラのメンバーは、井上氏が信頼を寄せ、また、井上氏との最後の音楽づくりをぜひ共にしたいと、親愛の気持ちを抱いて集まったプレーヤー達。参加メンバー表を見た仲道は「この方たちと一緒ならきっと成功する」と確信し、セッションではこれまでの経験から大きなシンパシーを感じている音楽仲間たちとの共演を心から喜んだ。

録音セッションは2024年12月、第一生命ホールにて2日間にわたって行われた。録音最終日は、井上氏の希望により奏者全員が白い服を着用し、独特な神聖さ、厳かさを帯びたなかでの演奏となった。録音で使用されたピアノはヤマハ CFX (特別モデル)で、仲道がたびたびコンサートで使用し「表現の可能性を広げてくれる」として全幅の信頼をおく楽器。オーケストラは、モーツァルトのスコアリングのアンティフォナルな効果を出せるよう第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを左右に振り分けて配置され、第20番ではクラシカル・ティンパニが採用されている。

 仲道は、このアルバムに寄せたメッセージで「過ぎ去り、消えていく定めである美しい瞬間を確かに手にとどめておきたい。音に心を委ね、でもそれは手のひらからこぼれ落ちてゆくのだと知りながら、そこにいる皆が、その瞬きを生きた記憶。それが、この録音です」と記している。かけがえのない瞬間が刻まれた仲道のモーツァルトに大きな期待が高まる。

ザ・ラスト・モーツァルト

■品番 SICC 19086 
■発売日:2025年5月28日 
■定価 3,630円(税込)
■収録曲
モーツァルト
ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K. 466
ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K. 488

仲道郁代 ピアノ 井上道義 指揮
アンサンブル・アミデオ

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