アルバムからツアーにバトンが渡る“Wormhole”の旅。
時空を超えた音楽宇宙が拡がる、松任谷由実の『THE WORMHOLE TOUR』

53年にわたりシーンの第一線を走り続ける松任谷由実が、「私のキャリアの最高傑作です!」とまで言い切った、最新アルバム『Wormhole / Yumi AraI』。“AIと人間の共生”をテーマに制作され、過去の声〜現在の声をAIにラーニングさせて“第三の声=Yumi AraI”を生成、さらに今の生声をコラージュする試みから生まれた、40作目となるオリジナルアルバムだ。その作品を携え、全72公演におよぶ全国ホールツアー『THE WORMHOLE TOUR』がスタートする。

コンサートは「ジャコビニ彗星の日」で幕を開ける。ユーミン自身が1972年に実際にジャコビニ流星群を目撃した経験から生まれた曲だ。そして最初のMCで、異なる時空や多次元をつなぐトンネル“ワームホール”について説明し、今回のツアーのテーマは「私が私に逢いに行く夢」だと告げる。 

時空の意識を示唆する曲「不思議な体験」から、新たな衣裳でユーミンが中央に立ち、本題『Wormhole / Yumi AraI』の1曲目「DARK MOON」へと壮大に展開していく。ワームホールを想起させる円形の舞台装置も楽曲もプログレッシヴ・ロックの先駆者ピンク・フロイドを想起させ、しかも「不思議な体験」を収録した『VOYAGER』のアルバムジャケットを手掛けたのはピンク・フロイドの盟友ヒプノシスと、その縁までも浮かび上がる。“昔のままじゃない”と歌う「キャサリン」へ続くと、観客は現実と非現実の波間へと誘われていく。

次のMCで「我々は一体どんな世界に存在しているのでしょうか」と宇宙を語り、バブル期が懐かしくなる楽曲が登場。曲が終わるごとにユーミンがしばし静止して動かなくなる演出は、タイムワープ状態を象徴するかのようだ。MCやメンバー紹介を挟み、衣裳を変えつつ、懐かしい曲が続く。

中盤のMCでは、今回のアルバム制作の核心が語られる。レコーディングには“第三の声=Yumi AraI”が参加していたものの、
「残念ながら、ライブでそれを表現するには、今のテクノロジーでは間に合いません。だから今回はAIはなし」と、今回のコンサートツアーでは今の自分の声で歌うことを明かす。聞くところによれば、驚くべきことに、この制作過程でユーミンの音域は約1オクターブ半をカバーするまでに戻ったという。

90年代を意識して制作された「岩礁のきらめき」では、第三の声の部分をバッキングコーラスに委ねる部分もあるが、サビの高音部は自分の声でしっかりと歌って魅せる。一方、荒井由実時代を思わせるメロディが心地よい「天までとどけ」では、アルバムではAI+生歌が担う部分をコーラスと重ねながら、穏やかに歌い上げる。さらにはプロコル・ハルムを彷彿させるハモンドオルガンの音色が、時代のレイヤーを緩やかに超えて響く。

丁寧に語りかけるMCもユーミンのライブの魅力の一つだ。地球温暖化の話で現実を引き寄せつつ、1980年前後の夏と冬を彩るシティポップ感溢れるナンバーでタイムワープする。

「CINNAMON」では、アコーディオンやマンドリンも交えて東欧的オリエンタルな色合いを出し、“私はずっとあなたを探し続けている”と歌いながら、ユーミンは軽やかに踊る。続く「ベルベット・イースター」は、中学3年の頃から弾きはじめた原点の曲。先日の〈PREMIUM視聴会&トークライブ〉で彼女はこう語っていた。「(新たな声の使用で)曲を作りたいと思った10代の気持ちが蘇った」。そのため、このピアノの弾き語りはユーミンの初期衝動を象徴すると言っていい。イントロの音色は、まるで尊い光を放つように響いた。

続くMCでは、「私はあの頃、どんな少女だったのか」と、当時を回想しながら静かに語りはじめる。「私が私に逢いに行く夢」というテーマが示すように、ここでの言葉は会場の多くの観客に沁みたに違いない。センセーショナルだったデビュー時の代表曲「ひこうき雲」では、当時の荒井由実がスクリーンに映り、ハモンドオルガンの音色が過去の時間を柔らかく浮かび上がらせる。

終盤は会場の照明が一気に明るくなって手拍子が起こり、ユーミンの歌声が伸びやかに広がる。歌詞が次々と世界観をつなぎ、本編最後の「そして誰もいなくなった」で、ユーミンは宇宙の映像の中へと吸い込まれていった。「それでも私の魂は時間の扉を開けて、きっとあなたに逢いに行くのだと思う」というモノローグで幕を閉じた。

アルバムではサイケデリックな宇宙観に聴き手を引き込むオーバーチュアで始まり、ディストピアの先の希望を歌った曲で最後を締めるが、このステージで松任谷由実が選んだのは“今の自分の声で歌い切る”という明確な意思だった。自らがワームホールとなったその姿は、むしろ未来に向かう光を象徴しているように見えた。

アンコールのMCで宣言する。「少しでも心に響いてもらえたら嬉しいです。……時間の中で変わらないということは変わり続けるということ、肉体は変わっても、私はユーミンのままであり続けます。そのためにはVRでも何でもやろうと思うけれど…。やっぱりライブのこの会場のこの瞬間は、毎回思うけど、宝物のようにいつまでも記憶に留めておきたいです。本当にありがとう」。その直後、会場はアンコール曲に合わせて総立ちとなって沸き立ち、ユーミンも観客も、“今この瞬間”を確かに共有し、記憶に揺るぎなく刻んだ夜となった。

『Wormhole / Yumi AraI』は、これまでのキャリアの総まとめではない。むしろ、ユーミンが歌で伝えてきた代々の“声”を自らの中に共生させ、今の松任谷由実と向き合わせることで生まれた、未来へ向かう作品だ。そして、それをステージ上で再解釈するこのツアーでも、新旧の楽曲に新たな生命が吹き込まれる。演出で自在に時空間を結ぶ松任谷正隆の手腕、プログレやシティポップの源流というべき“TOKYO”のロック、AORなど、変幻自在に色調を変える7人のバンドメンバーの磨かれた技術が、この超人ユーミンを支える。

ここから72公演、時空を超えた音楽宇宙がどのように拡がっていくのか、楽しみでならない。

                                                                           ライブレポート:伊藤なつみ
photo by 田中聖太郎

■アルバム購入者特典 

全形態共通封入特典、CDショップ別先着購入特典に加え、対象のCDショップ各店にて期間内にアルバムを予約購入すると同ツアーのチケット先行(抽選)に申込みできる早期予約特典施策も実施決定!
詳細はこちら。
https://yuming-wormhole.jp/serial-code-01/

■「Wormhole / Yumi AraI」CD 購入者抽選特典決定!

11/18発売の最新アルバム「Wormhole / Yumi AraI」の発売を記念して、荒井由実のポートレイトを"Wormholeヴァージョン"にアップデートしたスペシャルTシャツを、抽選で400名様にプレゼントいたします。

■作品概要


松任谷由実 40th Original Album「Wormhole / Yumi AraI」
発売日:2025年11月18日(火)
特設HP: https://yuming-wormhole.jp/

<収録予定曲> 
M1 「DARK MOON」
M2 「CINNAMON」  
M3 「星の物語」 ハウス北海道シチューCMソング(2025)
M4 「岩礁のきらめき」 テレビ朝日系 金曜ナイトドラマ「魔物(마물)」OST楽曲
M5 「天までとどけ」  フジテレビ木曜劇場 『小さい頃は、神様がいて』主題歌
M6 「烏揚羽」 TVアニメ「伊藤潤二『クリムゾン』」OP主題歌
M7 「小鳥曜日」 荒川ナッシュ医  ペインティングス・アー・ポップスターズ展 コラボレーション曲
M8 「LET’S GET IT STARTED!」 ニッポン放送開局70周年テーマソング
M9 「Let It Rain」 ハウス北海道シチューCMソング(2022)
M10 「文通」 -album version- (松任谷由実×imase)  BOSE60周年コラボソング
M11 「ひとちがい」
M12 「そして誰もいなくなった」
全12曲収録

■商品形態

〇オールメディア盤【1CD+アナログ2枚組+カセットテープ】 \22,000(税込)  UPCH-29498
※完全生産限定※
・1CD+アナログレコード(2枚組)+カセットテープ
・大型3Dジャケットパッケージ(レコードジャケットサイズ)
・大型ブックレット
※カセットテープ、アナログレコード、CDの収録内容は共通となります。

〇初回限定盤【2CD+ Blu-ray】 \7,700(税込)  UPCH-29499
【収録内容】
・2CD 
DISC 1:Wormhole / Yumi AraI
DISC 2:Wormhole Instrumental Version   ※初回限定盤のみ収録
・Blu-ray:特典映像 (Wormhole - Visual Version)  
・3Dジャケット三方背ケース・デジパック仕様・ブックレット

〇通常盤【1CD】 \3,600(税込)  UPCH-20710

■FORUM8 presents 松任谷由実THE WORMHOLE TOUR 2025-26


【第一期】
11月17日(月)東京 府中の森芸術劇場 どりーむホール
11月18日(火)東京 府中の森芸術劇場 どりーむホール
11月22日(土)茨城 水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)
11月28日(金)大阪 フェスティバルホール
11月29日(土)大阪 フェスティバルホール
12月6日(土)兵庫 神戸国際会館 こくさいホール
12月7日(日)兵庫 神戸国際会館 こくさいホール
12月13日(土)石川 本多の森 北電ホール
12月14日(日)石川 本多の森 北電ホール
12月16日(火)石川 本多の森 北電ホール
12月23日(火)鹿児島 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第一ホール
12月26日(金)福岡 福岡サンパレス
12月27日(土)福岡 福岡サンパレス

【第二期】
2026年
3月6日(金) 京都 ロームシアター京都
3月7日(土) 京都 ロームシアター京都
3月14日(土) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
3月15日(日) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
3月25日(水) 東京 東京国際フォーラム ホールA
3月26日(木) 東京 東京国際フォーラム ホールA
4月4日(土) 大阪 フェスティバルホール
4月5日(日) 大阪 フェスティバルホール
4月8日(水) 鳥取 とりぎん文化会館(鳥取県立県民文化会館) 梨花ホール
4月16日(木) 東京 東京国際フォーラム ホールA
4月17日(金) 東京 東京国際フォーラム ホールA
4月22日(水) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
4月23日(木) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
5月12日(火) 熊本 熊本城ホール メインホール
5月16日(土) 沖縄 沖縄コンベンションセンター 劇場棟
5月17日(日) 沖縄 沖縄コンベンションセンター 劇場棟
5月25日(月) 神奈川 カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)
5月26日(火) 神奈川 カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)
6月1日(月) 東京 東京国際フォーラム ホールA 
6月2日(火) 東京 東京国際フォーラム ホールA
6月10日(水) 愛媛 愛媛県民文化会館 メインホール
6月13日(土) 高知 高知県立県民文化ホール オレンジホール
6月14日(日) 高知 高知県立県民文化ホール オレンジホール
6月25日(木) 福井 フェニックス・プラザ エルピス大ホール
6月27日(土) 長野 ホクト文化ホール 大ホール
7月1日(水) 東京 東京国際フォーラム ホールA
7月2日(木) 東京 東京国際フォーラム ホールA
7月11日(土) 岩手 トーサイクラシックホール岩手大ホール
7月12日(日) 岩手 トーサイクラシックホール岩手大ホール
7月15日(水) 秋田 あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
7月28日(火) 群馬 高崎芸術劇場 大劇場

【第三期】
8月18日(火) 青森 リンクステーションホール青森
8月21日(金) 山形 やまぎん県民ホール
8月22日(土) 山形 やまぎん県民ホール
8月29日(土) 北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
8月30日(日) 北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
9月2日(水) 北海道 帯広市民文化ホール 大ホール
9月9日(水) 長崎 ベネックス長崎ブリックホール 大ホール
9月12日(土) 福岡 福岡サンパレス
9月13日(日) 福岡 福岡サンパレス
9月16日(水) 大分 iichikoグランシアタ
10月8日(木) 埼玉 ソニックシティ 大ホール
10月9日(金) 埼玉 ソニックシティ 大ホール
10月20日(火) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
10月21日(水) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
10月28日(水) 大阪 フェスティバルホール
10月29日(木) 大阪 フェスティバルホール
11月16日(月)岡山 倉敷市民会館
11月19日(木)広島 広島文化学園HBGホール
11月24日(火)栃木 宇都宮市文化会館
11月26日(木)福島 けんしん郡山文化センター
12月8日(火) 大阪 フェスティバルホール
12月9日(水) 大阪 フェスティバルホール
12月14日(月) 東京 東京国際フォーラム ホールA
12月15日(火) 東京 東京国際フォーラム ホールA
12月20日(日) 静岡 アクトシティ浜松 大ホール
12月23日(水) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
12月24日(木) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール

※第3期の予定公演:倉敷、広島、宇都宮、郡山。
※第2~3期の公演日程、開場/開演時間は変更になる場合があります。

〇チケット料金:SS席¥15,500(税込)/ S席¥11,000(税込)
ツアー情報の詳細はこちら。
 https://yuming.co.jp/information/wormhole-tour/
〇チケットについてのお問い合わせ
びあ: https://pia.jp/info/ticket_support/ (営業時間 10:00~18:00土日祝・年末年始除く)

松任谷由実 HP

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