京都発の4人組ロックバンド・水平線。田嶋太一(Vo./Gt.)と安東瑞登(Vo./Gt.)によるダブルボーカルスタイル(=曲によってメインボーカルとリードギターが入れ替わる)という編成で活動している彼らは、昨年発表した初のフルアルバム『NEW HORIZON』が早耳な音楽リスナーの間で話題を集め、京都GROWLYで行なったワンマンライヴも超満員の大盛況で終えるなど、関西圏のライヴハウスを中心に支持を集めてきている。
そんな彼らは現在、今年2月にリリースしたEP『Howling』を掲げたツアー『旅するロックンロールツアー2025 “Howling”』を開催中。このレポートでは、3月15日(土)に下北沢BASEMENTBARで行なわれた東京公演の模様をお届けする。
共演のUlulUとグソクムズの熱演を受け、水平線の4人が登場。田嶋と安東が奏でるアルペジオが絡み合い、そこに2人だけでなく、水野龍之介(Ba.)と川島無限(Dr.)も声を重ね、4声のコーラスワークでサイケデリックな空間を作り上げると、フロアを埋め尽したオーディエンスの身体を大きく揺らしていく。
水平線の楽曲は、いつの時代も色褪せることのない普遍性を宿した、エヴァーグリーンなサウンドが特徴的。たとえば、同郷の先輩であるくるりや(水平線というバンド名は、くるりの「その線は水平線」から取っているとのこと)、瑞々しくもパワフルなアンサンブルはスピッツといった日本語ロックの先達であったり、曲ごとにボーカルを入れ替えるスタイルはThe Beatles、シンプルながらも骨太でスケール感のあるメロディやギターサウンドはOasisなど、それ以外にも様々なバンドからの影響が垣間見える。また、もれなくどの曲も耳に残る美しいメロディを擁しており、最新EP『Howling』は、その強度をさらに増してきた印象を受けた。平たく言えば、ポップスというフィールドを強く意識したものと言えるかもしれない。
しかし、ライヴという空間では、その楽曲たちはまた別の表情を見せる。『Howling』の収録曲を挙げるならば、重厚なアンサンブルを轟かせた「風の子のブルース」や、軽快な「selfish!」は川島が叩き上げるスネアの一撃一撃がパンチの効いたものになっていたり、「途中下車」は柔らかなアンサンブルや情熱的なギターソロがより胸に迫るものになっていたりと、どれもとてつもなくエモーショナル。そんな強烈な音塊を繰り出しながらも、「シリウス」や「メモリーズ」の美麗なメロディは揺らぐことなく、フロアをまっすぐに射抜くように力強く放たれていく。音源を聴いた時点でその予感は十二分にあったのだが、こちらの想像を大幅に上回るほど、ライヴで活き活きと奏でられる音達はとにかく凄まじいまでの熱に満ちていた。
曲によってはパフォーマンスもかなりアグレッシヴで、フロントに立つ3人が頭を振り乱しながら豪快に音を髙鳴らしたり、ベースの水野が持ち場から前に出てきて延々と飛び跳ね回れば、田嶋と安東がステージ中央で向かい合って情熱的にギターを轟かせたり。そんなサウンドをより爆発的なものしていく川島のドラミングもかなりダイナミックで、フロアを熱く揺らしていた。音源、ライヴパフォーマンス共に、現時点で多くのロックファンを確実に夢中にさせるバンドではあるのだが、ここからさらに多くの音楽リスナーの心をがっちりと掴む存在になることを確信させられるステージだった。
水平線は『旅するロックンロールツアー2025 “Howling”』のツアーファイナルを、3月23日(日)に京都磔磔で行なうことになっている。ゲストにKhakiを迎えるこの日のライヴも間違いなく最高の一夜になると思うが、その先──ここから果てしなく続いていく彼らの旅路は輝かしいものになるだろう。彼らのライヴを観たら、あなたもきっとそう思うはずだ。
(おわり)
取材・文/山口哲生
LIVE PHOTO/トヤマタクロウ
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

旅するロックンロールツアー2025 “Howling”
2025年3月2日(日) 名古屋 池下UPSET w/スーパー登山部、ハシリコミーズ
2025年3月8日(土) 大阪 心斎橋Pangea w/Nagakumo、Subway Daydream
2025年3月15日(土) 東京 下北沢BASEMENTBAR w/共演:UlulU、グソクムズ
2025年3月23日(日) 京都 京都磔磔 w/Khaki