日本の音楽界を牽引するプロデューサー、武部聡志の溢れる“ジブリ愛”から生まれたスタジオジブリトリビュートアルバム『ジブリをうたう』。今作の参加条件である“ジブリを愛していること”を満たした豪華なアーティストが集合したアルバムは、世代を問わず愛される名盤に仕上がった。そしてこの日、この曲たちを披露する、スペシャルな『武部聡志プロデュース 『ジブリをうたう』コンサート』が、東京国際フォーラム ホールAにて開催された。
開演時間と共にステージに武部聡志が登場し、今作がコロナ禍で「みんなを元気づけられることはできないだろうか」という想いから生まれたことを話し、「このコンサートが終わった後に、ジブリ映画を見直したり、参加したアーティストの他の曲を聴いてみようと思ってもらえたら嬉しいです」と話し、コンサートがスタート。
1曲目では、家入レオが登場し、ラピュタの絵をバックに「君をのせて」を披露。のびやかで気持ちのいい歌声が会場中を包み込むと一気に空気が変わり、彼女の歌声の力、そして何十年も愛され続けている名曲の力が広まっていく。曲が終わると、家入は「気持ちいいですね!」と笑顔で話し、「音とひとつになっている気がしました」と報告。武部は、「家入くんの少年っぽい声にピッタリだと思います」と彼女の歌声を絶賛した後、Wakanaを呼び込み、アルバムには未収録の「いつも何度でも」を家入とデュエット。Wakanaの透明感のある美しい歌声と、家入の強くて芯のあるタイプの異なる歌声はとても美しく重なり、武部が「この曲のためにコーラスアレンジを加えました」というアカペラで聴かせた一節はため息もの。家入が去った後は、Wakanaは「もののけ姫」を披露。武部いわく「天から降ってくる神々しさ」という通りの歌声が会場中に広まり、曲の世界に引き込まれて行く。
続いてLittle Glee Monsterが登場。アカペラからスタートした「テル―の唄」と「世界の約束」を披露。力強さと美しさ、どちらも表現ができる彼女たちの歌は、本当に素晴らしい。武部がジブリのエピソードを聞くと、かれんが「『崖の上のポニョ』を小学生の時に初めてひとりで映画館にみにいきました」と映画館デビューだったことを話し大盛り上がり。続いて武部が「僕の大好きな二人組ユニットです」と紹介しGLIM SPANKYが登場。「一番派手なパフォーマンスをしてくれるのではと期待しています」と言った後、「ひこうき雲」を演奏し、さらに『アーヤと魔女』の劇中バンド、EARWIGとして「DON’T DISTURB ME」を力強く、言葉通り派手にパフォーマンス。痺れるギターソロもしっかりと披露し会場の温度を上げた。
会場のスクリーンには、今回ジャケットを手掛けた宮崎吾朗が登場し、「カバーは成功例がないからやめた方がいいと思った」という秘話を話すも、「原曲を変えるのではなく、リスペクトがあって、なぞるようにカバーし、個性と相まって上手く行っている曲を聴き、あらためて力を見せつけられた」と絶賛。武部は嬉しそうに「温かいメッセージを頂きました」と嬉しそうに話した。
さらに、手嶌葵を呼び込み、「コクリコ坂メドレー」と題し、「夜明け」、「朝ごはんの歌」、「初恋の頃」、「さよならの夏」を披露。武部いわく「天からのギフト」という手嶌の歌声は、間違いなく唯一無二。ただ美しいのではなく、吐息交じりの歌声は心を癒やす力を持つのだ。そんな歌声を浴びた後、一転、明るく弾けるように登場したのは木村カエラ。大きな手拍子から始まり「みなさん! 元気ですか!」という掛け声から始まった「ルージュの伝言」で一気にテンションをあげ、彼女が小さな頃、家族でカラオケに行き、この曲を歌ったことで褒められ、歌手になりたいと強く願ったというエピソードも披露。さらに、「時には昔の話を」では、武部が「加藤登紀子さんが歌う原曲では、反戦の意味を色濃く持つ背景を感じさせるが、カエラ節だとどうなるか?」と期待を込め紹介。先ほどとは全く違う歌い方で訴えかけるように、しっとりと歌い上げ、その表現力の幅を感じさせた。
続いて、武部の熱いラブコールから、今回の出演が決まったというDa-iCEの大野雄大と花村想太が登場。花村は「びっくりするくらい緊張しています」といいつつも、間違いない実力で「いのちの名前」を歌い上げ、Little Glee Monsterとともに「カントリー・ロード」ではグループの垣根を超えて美しく声が重なり、さらに会場をひとつにまとめ上げた。
玉井詩織が登場すると、客席には彼女のメンバーカラーである黄色いペンライトがぽつぽつとつき、玉井は「すごく緊張していたんですけど、少し和らぎました」と笑顔。「風の谷のナウシカ」を歌い始めると、彼女の真っ直ぐで素直な歌声が気持ちよく響きわたる。さらに家入と共に「ひとりぼっちはやめた」を歌うと、驚くほど声が心地よく重なり、ふたりとも嬉しそうにアイコンタクトをしながら歌う姿が印象的だ。武部も「初のコラボとは思えない」と絶賛すると、家入も「声の相性がいいと思いました。またやりたいです!」と嬉しそうに話し、玉井も笑顔で頷いた。
家入が去り、続いてステージに登場したのは、くるりの岸田繁。岸田は「ずっと袖で見ていたんですけど、感動しました」と堪能していた様子。玉井とふたりで「崖の上のポニョ」を楽しそうに歌うと、楽しい空気が一気に広がり、会場中が笑顔になっていくのが伝わってくる。さらにLittle Glee Monster、家入、Wakanaも再登場して「さんぽ」をみんなで歌い上げ、クライマックスへ。
本編のラストでは、武部が「このアルバムを企画したときに最初にお声がけをしたのが岸田さんでした。繁ちゃんと呼んでくれといわれて…呼べないです(笑)」と笑いを誘うと、岸田は「となりのトトロ」を選んだ理由に「「崖の上のポニョ」と迷ったんですけど…」と笑顔で話し、「ジブリの映画で育ったんですが、ジブリ作品には眼鏡のおじさんもよく出ていて。サツキとメイのお父さんもメガネをかけていますし、メガネのおじさんの武部さんと、メガネのおじさんの僕で歌いたいと思います」と、バンドアレンジした「となりのトトロ」を披露。最高に楽しく、みんなが心の中で大合唱していたであろう、幸せな空間が広がった。
アンコールでは、この日の出演者全員が再登場し「やさしさに包まれたなら」を披露。思い思いにこの曲を歌い上げるアーティストたちが嬉しそうなのが印象的だ。大好きなものをみんなで共有する、スペシャルなステージを、この場にいた全員がかみしめていた。最後に武部は「帰りにジブリの映画や音楽を思い出してくれたら嬉しいです!」と笑顔で話し、幕を閉じた。
(おわり)
取材・文/吉田可奈
写真/田中聖太郎写真事務所
SET LIST
M0 MC/武部聡志
M1 君をのせて/家入レオ
M2 いつも何度でも/Wakana / 家入レオ
M3 もののけ姫/Wakana
M4 テルーの唄/Little Glee Monster
M5 世界の約束/Little Green Monster
M6 ひこうき雲/GLIM SPANKY
M7 DON'T DISTURB ME/GLIM SPANKY
M8 コクリコ坂からメドレー(夜明け/朝ごはんの歌/初恋の頃/さよならの夏~コクリコ坂から~)/武部聡志/手嶌葵
M9 ルージュの伝言/木村カエラ
M10 時には昔の話を/木村カエラ
M11 いのちの名前/大野雄大・花村想太(Da-iCE)
M12 カントリーロード/大野雄大・花村想太(Da-iCE)/Little Green Monster
M13 風の谷のナウシカ/玉井詩織
M14 ひとりぼっちはやめた/玉井詩織/家入レオ
M15 崖の上のポニョ/岸田繁/玉井詩織
M16 さんぽ岸田繁/玉井詩織/Little Green Monster/家入レオ/Wakana
M17 となりのトトロ/岸田繁
Ec やさしさに包まれたなら/ALL LINE UP
┗2024年3月27日(水)@東京国際フォーラム ホールA
U-NEXT
武部聡志プロデュース 『ジブリをうたう』 コンサート
配信詳細はこちら >>>
ライブ配信:2024年5月18日(土)16:00~ライブ終了まで
見逃し配信:配信準備完了次第~2024年6月2日(日)23:59まで
※視聴可能デバイスに関してはこちらをご確認ください
【会場】
東京国際フォーラム ホールA
■『ジブリをうたう』 コンサート出演アーティスト特集はこちら >>>
武部聡志インタビュー
スタジオジブリ トリビュートアルバム『ジブリをうたう』を徹底解剖!
『コクリコ坂から』や『アーヤと魔女』の音楽を手掛けた作・編曲家、音楽プロデューサー武部聡志プロデュースによるスタジオジブリ音楽のトリビュートアルバム『ジブリをうたう』が11月1日にリリースされた。その制作秘話を。そして、“アーティストファースト”なプロデュース極意を聞いた!
(2023年11月1日掲載)
RELEASE INFORMATION
スタジオジブリ トリビュートアルバム『ジブリをうたう』
2023年11月1日(水)発売
通常盤/VICL-65894/3,400円(税込)
2024年1月10日発売
アナログ盤/VIJL-60311〜VIJL-60312/5,500円(税込)
ビクター
スタジオジブリ トリビュートアルバム『ジブリをうたう』
2023年11月1日(水)発売
ジブリ関連ショップ限定盤/NCS-10284/3,400円(税込)
どんぐり共和国などジブリの関連ショップのみでのお取り扱いとなります
収録楽曲は通常盤と同じとなります