ディズニー・ソングを、アカペラで歌う。言うのは簡単だが、そこで実際に繰り広げられていることは、ちょっと尋常ではない。男性メンバーのアントニオ・フェルナンデス(ヴォイス・パーカッション)、ジョー・サントーニ(ベース)、オーランド・ディクソン(バリトン)、RJ・ウェスナー(テノール)と、女性メンバーのモーガン・キーン(ソプラノ)、ケイレン・ケリー(メゾソプラノ)の計6人が、すべて自分たちの声のみで、メイン・メロディとコーラスを歌うことはもちろん、楽器の演奏まで表現してしまうのだ。

アカペラを標榜しているのだから、当然のことではある。しかし、百聞は一見&一聴にしかず。アントニオ・フェルナンデスがドラムのキック、スネア、タム、シンバル、ブラシの音色まで鳴らし分けたうえに、ヴァイオリンやフルートのフレーズまで繰り出し、ジョー・サントーニが時に重厚で時に軽快なベース・ラインを奏で、そこにまさに変幻自在の歌が乗るヴォイス・アンサンブルは、ライヴで体験すると、ただただ圧巻。正直なところ、僕は最初、何がどうなっているのかよくわからず、ぽかんとしてしまっていた。何らかの音源をバックに流して、6人が踊りながら口パクしているようにも見えたくらいだ。終盤にオーランド・ディクソンが、なんとエレキ・ギターのフレーズを重ねてきた時には、思わず二度見してしまった。

セットリストには、『アラジン』『美女と野獣』『ライオンキング』『リトル・マーメイド』といったお馴染みのディズニー映画や、ディズニーランドにフィーチャーされて親しまれている名曲の数々がズラリと並ぶ。今春、ディズニーの楽曲として29年ぶりとなる全米チャート1位&初の全英チャート1位という快挙を達成している、「秘密のブルーノ」(『ミラベルと魔法だらけの家』)も聴きものだ。とは言え9月までツアーが続くので、これ以上は『スター・ウォーズ/新たなる希望』や『アナと雪の女王2』などから、多数の楽曲が今回初披露されるということを伝えるのみにとどめておきたい。いや、もうひとつ、東京ディズニーシーの楽曲が取り上げられていることも付け加えておこう。

アニメーションと実写による、カラフルで物語性に富んだ映像をバックに、華やかな衣装を身にまとって、歌って演奏して踊る6人。ショート・フィルムを各キャラクターのセリフも含めて、すべて声で再現したり、ケイレン・ケリーがルーパーを駆使して、ひとり多重コーラスで1曲を完成させたりする場面もあり、多分にショウ的な要素が強いライヴなので、ディズニー短編ミュージカル集のような感覚で楽しむのも一興かもしれない。

実際にステージ上で行われていることを考えれば、すべてがハイライトと言えるかもしれないが、大きな目玉として“マッシュアップ”を挙げておきたい。ジェイ・Zとリンキン・パーク、あるいはメタリカとカニエ・ウェスト&ジェイ・Zなど、ロックやヒップホップ界隈でも試みられている、ふたつの楽曲を合体させる手法だ。ディカペラの来日記念盤『マジック・リイマジンド』を聴いた人はご承知の通り、『アナと雪の女王』の有名なあの曲と、あの曲をひとつにした鮮やかなハーモニーを聴かせてくれる。フィニッシュも実に見事。

休憩を挟んで、たっぷり2時間。声だけなのに飽きさせることがないアレンジの妙と、人間離れしたパフォーマンスに驚かされるばかりだった。寸分の音の外れもなく(あってもわからないと思うけど)、音楽表現としての完成度が極めて高いので、ディズニー・ファンならずとも、エンターテインメント・ショウとして楽しみながら新鮮な感動を味わえるに違いない。

(おわり)

取材・文/鈴木宏和
写真/Yoshika Horita

Live Informationディズニー・アカペラ・コンサート「ディカペラ」

■東京公演 85日(金)〜21日(日) 東急シアターオーブ
■大阪公演 825日(木)〜28日(日) オリックス劇場
■広島公演 830日(火) 広島文化学園HBGホール
■福岡公演 92日(金) 福岡サンパレス
■鹿児島公演 94日(日) 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
■名古屋公演 96日(火) 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
■札幌公演 99日(金) 札幌文化芸術劇場 hitaru


ディズニー・アカペラ・コンサート「ディカペラ」

Release Informationディカペラ 『マジック・リイマジンド』

好評発売・配信中
CD:UWCD-11003,000円(税込)
Walt Disney Records

ディカペラ 『マジック・リイマジンド』CD

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