オフィシャルライブレポート (文:天野史彬 / 写真:エグマレイシ)
wacci × Omoinotake “Speech”
2025年7月11日(金) 東京・豊洲PIT
7月11日(金)東京・豊洲PITにて、 wacciとOmoinotakeによる初の2マンライブ『Speech』が開催された。
wacciの橋口洋平(Vo/Gt)が出演するラジオ番組『YOKOHAMA RADIO APARTMENT ドア開けてます!』(FMヨコハマ)にOmoinotakeのエモアキこと福島智朗(Ba)がゲスト出演した際のトークを発端に開催に至った今回の初2マン。『Speech』というライブタイトルはwacci橋口考案。「“わっち=私”の歌だと思ってほしい」という思いから付けられたバンド名「wacci」と「Omoinotake(思いの丈)」を掛け合わせ、「私の思いの丈」を表す言葉を考えた末に付けられたタイトルだ。wacci橋口とOmoinotakeエモアキのオープニングトークから、この日のライブはスタート。言質を取るように(?)、きっかけとなったラジオ出演時のエモアキの「対バンしたいです」発言の録音を会場で流したりしつつ、温かな空気で記念すべき2マンの幕は開けた。オープニングトークでエモアキは、「ずっと『仲がいいバンドは?』と聞かれるのが、答えに困るので嫌だったんですけど、今後、『wacciさんです』と答えられるような日になればいいなって思います」と、この日にかける思いを語った。
先攻はOmoinotake。1曲目「アイオライト」が始まった瞬間から会場全体でハンドクラップが起こるほどのチアフルな盛り上がりで演奏はスタート。レオこと藤井怜央(Vo/Key)、ドラゲこと冨田洋之進(Dr)、エモアキ、そしてサポートの後藤天太(Sax)が奏でる、しなかやでリズミカルなバンドのアンサンブル、圧倒的な存在感を持って響き渡るレオの歌声が、高揚感と没入感を同時に会場にもたらす。ちなみに、この日の2マンに向けてwacciはメンバーそれぞれOmoinotakeの推し曲を公開していたのだが、「アイオライト」は橋口の推し曲だ。続く、レオの奏でる深く美しい旋律から始まった「心音」は、wacci因幡始(Key)が推し曲に挙げていた1曲。愛し合うことの切なさと喜びが混ざり合うような、ロマンティックな世界観に会場は浸る。さらに静と動を激しく往還する「蕾」を披露し、MCでレオは「2マンをさせていただく機会が我々は結構あるんですけど、当日までに、こんなにヴァイブスを高め切った状態での2マンライブは初めてです。さっきエモアキも言っていたけど、『仲良しバンドはwacciです』と言えるようなライブにしたい」と語った。ラジオでの共演をきっかけに企画が立ち上がったこの2マンだが、ライブの数日前には2組の対談動画がwacciのYouTubeチャンネルにアップされるなど、単純に2組が順番に演奏して終わり、ではなく、両バンドがたくさんの親交を育みながらの開催となった。交わし合い、混ざり合う音と心が、この日の親密な空気を生んでいた。
レオの「僕たちもwacciさんも担当した、アニメ『薬屋のひとりごと』の曲です。きっとwacciさんもやるでしょう。『薬屋』の世界に浸っていただければと思います」という言葉に続き始まった「ひとりごと」を耽美に響かせると、続けてwacci横山祐介(Dr)の推し曲「Ruler」をドラマチックに披露。重厚なグルーヴと美麗なメロディのマリアージュで会場を魅了すると、さらに、真っ赤な照明に照らされながら「在りか」を情熱的に演奏。その幅広い音楽性を通して、バンドが持つたくさんの豊かな表情を見せつける。そして、レオの「今日の2マンに向けての仕込み第一弾です。wacciからギター、村中慧慈!」という呼び込みで、ステージにwacci村中が登場。Omoinotakeの3人と村中の4人編成で、村中の推し曲「Blessing」を披露した。なんと、Omoinotakeがサポートギターを迎えてライブをするのはこの日が初めて。村中は「責任重大だな」と言いつつ、見事なギタープレイで「Blessing」に鮮やかなファンクフィーリングを混ぜ込み、新たな色合いの楽曲へと昇華してみせた。そこから、サックスの響きもクールな、スムース&グルーヴィな新曲「フェイクショー」、吹き抜ける風のようにダイナミックで爽やかな「幾億光年」、そして「トニカ」の光を描くような壮大な演奏でライブを締め括った。
後攻は、この2マンライブの主催でもあるwacci。橋口、因幡、村中、横山、そして小野裕基(Ba)の5人がステージに登場すると、1曲目を飾ったのは、今年4月にリリースされたばかりの新曲「少年」。夕焼け空を思わせる照明に照らされながら、端正なバンドアンサンブルが映える。「少年」と言うタイトルは一見ノスタルジックだが、この曲が捉えているのは「今」という現実を生きる大人の姿だ。痛みから希望が生まれる瞬間が描かれている。人間の心の柔らかな部分を捉え続けてきた彼ららしい、切実な生々しさと美しさを持つ新たな名曲で、wacciのライブの幕は上がった。続く「君を好きな理由」では小野がシンセベースも駆使し、しなやかさとドープさ、リリカルさと軽快さが重なり合う、立体的なサウンドで会場を揺らす。MCでは橋口が、冒頭にも書いた『Speech』というこの日の2マンライブのタイトルの由来を明かす。さらに橋口は、「音楽を通して、いろいろなものを受け取ってもらって、笑顔になって帰ってもらえたらと思います」と、真っすぐに観客たちに伝えた。
続いて、wacciの名をさらに広い世界に轟かせた名曲「別の人の彼女になったよ」を情感豊かな歌とバンドサウンドで響かせると、この日のための「仕込み第二弾」として、ステージにOmoinotakeレオが呼び込まれる。ステージに並んだ橋口とレオはグータッチ。wacci+レオの6人編成で披露されたのは、Omoinotakeのカバー「So Far So Good」。橋口は「好きな曲が多過ぎて選ぶのが大変だったんですけど、この歌はすごく優しい歌で、しかも、みんなで踊れるし手拍子もできる、素敵な曲です」と曲紹介をすると、6人はその演奏で会場を幸福な空気感で包み込む。橋口のファルセットも響いた、ふたりのボーカリストのデュエットも素晴らしかった。続くMCで橋口は、「改めて、Omoinotakeのことが大好きになりました。『幾億光年』でOmoinotakeを知った人も多いと思うけど、『こんなにカッコいいバンドなんだ!』ということが、ライブに来ればもっと知れると思うんです。今日の対バン、異種のように見えて、実は歌っていることの『温かさ』みたいなところで、僕らは通じ合うところもあるのかなと思っているんです。でも、Omoinotakeは温かいけど冷たさもあるんですよね。体温の冷たさを感じられるから、逆に、温かさも感じられる」と、Omoinotakeの発する世界観に対しての賛辞を送った。
Omoinotakeのステージでレオが予言していたように、wacciも『薬屋のひとりごと』の第二クールエンディングテーマ曲「愛は薬」を披露。曲を披露する前、橋口は「生きていると、夢とか、欲とか、日々やらなきゃけないことで頭がいっぱいになってしまうけど、そのベースには、誰かからもらった愛や、家族に守られた経験がしっかりあると思うんです。でも、そのことを僕らは忘れがちになってしまう。ジェンガを一番下でずっと支えているもののように、大切な人からの愛って、普段気付かないけど、実は何よりも大事だったりする。そんなことを歌った歌です」と曲紹介をした。典雅なメロディが優しく雄大に響いた「愛は薬」のあとは、カラフルな照明に照らされて、勇壮なリズムと爽やかなメロディが響き渡る「最上級」を披露。会場全体を巻き込んだ合唱も巻き起こり、最高の熱気と盛り上がりが豊洲PITに浸透する。曲が終わり、「Omoinotakeを好きなみんなも、wacciを好きなみんなも、一緒に、あったかく、ひとつの空間を作れていることがすごく嬉しいです」と告げた橋口。続けて彼は、「アーティストはみんなそれぞれ、自分のカラーを信じてやっていると思います。自分の生み出した音楽、自分の信じた音楽を、胸を張ってやっていると思います。僕らも、その端くれだと思っています。僕らだからこそできる音楽や言葉を届けていきたい。その決意表明を込めて、最後に“恋だろ”という歌をやって終りたいと思います」と告げ、バンドは“恋だろ”を演奏。ライブ本編を締め括った。
▼ Omoinotake × wacci - 対バンライブ「Speech」対談
https://youtu.be/kx6VB-n_au0
▼公演情報
wacci × Omoinotake “Speech”
2025年7月11日(金) 東京・豊洲PIT
▼セットリスト
https://lnk.to/4jVxns
M01 アイオライト
M02 心音
M03 蕾
M04 ひとりごと
M05 Ruler
M06在りか
M07 Blessing w/村中慧慈(wacci)
M08 フェイクショー
M09 幾億光年
M10 トニカ
M01 少年
M02 君を好きな理由
M03 別の人の彼女になったよ
M04 So Far So Good w/藤井怜央(Omoinotake)
M05 愛は薬
M06 最上級
M07 恋だろ
En Ears w/ Omoinotake