佐野元春の2CD+2BD豪華ボックス『The Circle 30th Anniversary Edition』の12月25日(水)発売を記念して、12月18日(水)に全国13都市18スクリーンにて一夜限定の上映会が開催された。それに先駆け12月15日(日)にプレミア上映として佐野元春も登壇、先行上映イベントがT・ジョイPRINCE品川にて開催された。チケット発売と同時に即日完売となったプレミアムイベントの模様をお届けする。

上映作品『The Circle Tour Final 日本武道館ライブ 1994.4.24』は『The Circle 30th Anniversary Edition』にもBDとしても収録。1995年発表のVHS・LD映像作品『They called the band 'THE HEARTLAND'』 vol.1に収録(2000年にはDVD再発)の9曲に未公開の17曲を新たに加え、全26曲・2時間40分におよぶ伝説のステージをほぼ完全な形で収録している。本映像は、当時の映像をアップコンバートして再編集、高画質で新たに生まれ変わった映像と、音源はマルチテープからリミックスし、劇場版マスタリングを施し、伝説のライブの全容をほぼ完全な形で収録した。15日当日は、18日からの全国上映と同じく劇場版5.1chマスタリングを施した音源を使用、圧倒的な迫力と臨場感で30年前の日本武道館の熱狂ステージの追体験が実現した。上映後はスクリーンに映し出された日本武道館のオーディエンスの映像と同機するかのようにT・ジョイPRINCE品川でも拍手喝采も止まない光景となった。

『The Circle Tour Final 日本武道館ライブ 1994.4.24』は、全国30都市47公演におよぶ<ザ・サークル・ツアー>の最終公演=1994年4月24日に行われた超満員の日本武道館公演だ。この日をもって1980年の結成から約14年活動を共にした佐野元春とザ・ハートランドは、最後のステージを迎えることになる。「レインボウ・イン・マイ・ソウル」の演奏を終え、佐野はザ・ハートランドのメンバー全員を紹介しツアーを支えたスタッフたちを次々とステージに呼び寄せ感謝を伝えた。佐野とザ・ハートランドのメンバーがステージを去ったあと、会場にアナウンスが流れ、この公演を最後にバンドが解散することが告げられる。翌日にはマスコミ各社にEPICソニーと佐野元春事務所の連名でFAXが送られ、ザ・ハートランドの解散を公式発表、そのニュースはその日のうちに音楽業界を駆けめぐった。

プレミア上映は贅沢に2スクリーンを使って開催された。スクリーン3には、佐野元春と音楽評論家の萩原健太氏が登壇し特別対談が行われた。萩原氏は80年代から長きにわたり佐野の音楽活動をレビューし続けてきたジャーナリストのひとりで、今回『The Circle 30th Anniversary Edition』ブックにも解説を寄稿している。軽快なBGM「カフェ・ボヘミアのテーマ」に乗ってステージに登場した佐野。5倍確率当選のプレミアチケットを手にした200人のファンがスタンディングの拍手・歓声で迎える。「この中で、実際に武道館の会場にいたことはどのくらいいますか?」。萩原氏の呼びかけに20人近くが誇らしげさに挙手。「すごいことだよね!」と佐野は最高の笑顔で客席を見渡していた。「だけど、この日がザ・ハートランドの解散ライブになることを知っていたファンはいないんですよね」(萩原)。

「僕はこれまで3つバンドをやってきました。ザ・ハートランド、ザ・ホーボー・キング・バンド、そして今のコヨーテ・バンド。今夜皆様に観てもらうのは僕の最初のバンド、ザ・ハートランドのファイナル・コンサートです。僕らは14年一緒にバンド活動していました。それこそ最初は『がんばれ!ベアーズ』のようなバンドだったと思うんだけど(笑)、小さなホールからスタートして、一緒にバンドとして成長して、ひとつの結論、たどり着いた場所、その答えが、あの日本武道館のステージでした。もちろん自分を含めてバンドのメンバー、スタッフはこれが最後ということを知っているから、10公演前からそれこそ凄まじく素晴らしい演奏の連続で、僕はそれを聴きながらステージ上でずっと感動していました。そしてこの武道館はやりきった感じを覚えています」(佐野)

解散発表にともない必然的にアルバム『ザ・サークル』が佐野元春 with ザ・ハートランドの最後のスタジオ・アルバムとなった。リスナーに対して「大人になることを教えてくれたアルバムでもありました」(萩原)。

「僕は37歳でした。ロックンロールは10代、20代の喜怒哀楽に寄り添う音楽ですから。多くのロックンロールのテーマは、成長するってどんなこと? 僕もキャリアをスタートしたころは、本当の真実がつかめるまで(「スターダストキッズ」)と歌っていたけれど、本当の真実はもうないのさ(「ザ・サークル」)と疑い始めるんですね。これはソングライターとしての僕の成長だったと思う。年齢に応じて自分に嘘をつきたくない。僕の目の前のことを正確にスケッチしようと思っている。だから『ザ・サークル』は自分と向きあって作った曲が多いですね。同時に僕たちの中では何回かクリエイティブなピークを経験して、『ザ・サークル』を創ったときにこれ以上のピークはもう作れないかもしれないなってバンドのメンバー誰もが感じていたと思う。」(佐野元春)

さらに時間差上映となったスクリーン5には、劇場ライブで興奮が冷め止まぬなか、まるでアンコールで出迎えるかのような拍手喝采のなか佐野元春本人が再び登壇し、NHK『SONGS』(2020年)でも共演のあるフリー・アナウンサーの武田真一氏とのスペシャルトークを行った。武田氏は、中学生のころから佐野元春の大ファンで、アナウンサーという「言葉」の仕事を選んだのも佐野元春の影響であることを公言している。武田はこの日のために聞きたい質問を21個用意してきたことを告白し会場は大きな拍手と期待に包まれた。

「どのような想いでこの映像を観ていたのでしょうか?」と、ファンを代表してストレートな質問から始まった。「つかれますよ(笑)。30年前のステージとはいえバンドの演奏のキメのところで(条件反射的に)身体がピクって動くんですよ。年齢というより、張り切ってるな!って感じですか」(佐野)。和やかな雰囲気で終止トークは展開されていった。佐野クラシックと呼ばれる黄金のロックンロールからスタートするセットリストに武田氏が触れると「1日目(4月23日公演)に飛ばしすぎて喉をからして(24日)当日の朝は声が出なかった。本番までどうにかしないといけないので、その日は誰とも話さないようにしていた。なんとか声が戻ってきたけれど3曲目くらいまでは心配の表情だったと思いますね」(佐野)。今だから明かされるステージ演出の裏事情が次々に露呈されるたびに会場は歓喜に包まれていく。

 佐野元春は、2025年にデビュー45周年を迎える。

「僕のファンはスゴい」と切り出す。「45年も実験的なことも含めて、好きなことをずっとやり続けて来られたのは、(会場を見渡しながら)ファンの応援があったからこそなんです。僕がやった実験を受け入れてくれて、いいよ!と言う(背中を押す)声が聞こえる。ファンの理解があったからこそ。本当にファンの皆様に感謝しています」。この日一番大きな盛大な拍手が起きる。「僕の45周年と一緒に、コヨーテ・バンドも来年20周年になります。良い意味でクリエイティブのピークに来ている。来年は今までの感謝の気持ちを全国のファンにお返しできればと思っています」(佐野)

 上映前登壇時にはコヨーテ・バンドのメンバーもこの会場に観に来てくれていることが本当に嬉しいと語っていた佐野元春。すでに今のバンドと展開する未来を見ているようだ。

シアター3&5同時終演後にT・ジョイPRINCE品川のロビーでファンの声を聞いた。その一部を抜粋する。

「圧倒されました! 勝手にイメージしていたライブ・フィルムとは違って、大きなスクリーンに映し出される武道館のステージ全景とド迫力のサウンドだったので佐野元春&ザ・ハートランドのコンサート会場にいるようでした。」(東京都・50代・男性)

「どこに座っていたのか覚えているのでスクリーンのなかに30年前の武道館の客席にいる自分を見つけしました(笑)。昔も今もこみ上げてくる感情のまま今日も一緒に歌い、泣いてしまいました。大きなスクリーンだったので、今日気づいたのですが、時おり佐野さんも目に涙を浮かべているようにシーンもありましたよね……?」(埼玉県・50代・女性)

「(上映前登壇で)萩原健太さんが言っていた<欲望>と<ロックンロール・ナイト>の不思議な同居、それに対してLIVEステージだからこそ交じり合える奇跡という佐野さんの言葉がスクリーンを観ていて納得というか、噛みしめていました」(神奈川県・40代・男性)

「ザ・ハートランドのファイナル・ステージということを知ったうえで観るとやはり感慨深いです。佐野さんも上映前の登壇でおっしゃっていましたが、この日のハートランドの素晴らしい演奏に鳥肌がやみません。80年代、90年代を代表する日本のロック・バンドの雄姿の映像記録をこうやって多くの仲間と共有できたことに感謝です。本当に素晴らしい夜でした!」(東京都・50代・男性)

「こんな近くで佐野さんを見たことがなかったので今もドキドキしています。武田真一さんの佐野さんへの質問が私たちのファン代表のようで嬉しかったです。<ザ・サークル>の演奏時のペーパーを見ながら歌う演出の裏話を聞けたのは今日得した感じでした」(千葉県・50代・女性)

「佐野さんも登壇時に言っていましたがこんな素敵なフル映像を保管していて、今回アップコンバートしてくれたたソニー(ミュージック)さんにやはり感謝です。今日はこのまま家に帰って横浜スタジアムの<Land Ho!>の映像を観ます! 9.14もフル映像残ってないのでしょうか?」(神奈川県・50代・男性)


T・ジョイPRINCE品川

スクリーン3[上映前登壇]
登壇|佐野元春
特別ゲスト|萩原健太(音楽評論家)
司会|中谷佑介(ぴあ)


スクリーン5[上映後登壇]
登壇|佐野元春
特別ゲスト|武田真一(アナウンサー)
司会|中谷佑介(ぴあ)

佐野元春 ライブ・フィルム
『The Circle Tour Final 日本武道館ライブ 1994.4.24』プレミア上映
【2024年/日本/DCP/劇場版5.1ch/16:9/160分】

■演奏曲目
01|ナイトライフ ※
02|アンジェリーナ ※
03|ガラスのジェネレーション ※
04|スターダストキッズ
05|ダウンタウンボーイ ※
06|ハッピーマン ※
07|ストレンジデイズ
08|ニューエイジ ※
09|ハートビート ※
10|欲望 
11|トゥモロウ ※
12|新しいシャツ 
13|ザ・サークル
14|君を連れてゆく ※
15|レイン・ガール ※
16|99 ブルース ※
17|インディビジュアリスト ※
18|ワイルド・ハーツ ※
19|ロックンロール・ナイト
20|約束の橋
21|ヤングブラッズ ※
22|ソー・ヤング ※
23|サムデイ
24|新しい航海 ※
25|悲しきレディオ
26|レインボウ・イン・マイ・ソウル ※
収録 1994.4.24 日本武道館 ※|初公開曲

【作品情報】
■アーティスト:佐野元春 with ザ・ハートランド
■タイトル: 『The Circle 30th Anniversary Edition(完全生産限定盤)』
■発売予定日:2024年12月25日
■規格:BOXセット(2CD+2Blu-ray+140頁特別編集ブックレット+復刻コンサート・パンフレット+A2特製ポスター)
■完全生産限定盤
■価格:\24,200(税込)
■品番:MHCL 10170
■発売元:ソニー・ミュージックレーベルズ

★ご購入はこちら https://SanoMotoharu.lnk.to/TheCircle
★商品詳細はotonano PORTAL 「佐野元春 The Circle 30th Anniversary Edition」サイトをご覧ください。
https://www.110107.com/s/oto/news/detail/TP03436

【アルバム『The Circle』(1993)について】
ザ・ハートランドとの最後のセッションによるスタジオ録音盤。ロックンロールの直接的な表現にあふれていた『Sweet 16』に較べても、R&B的な色彩が強いのが特徴。90年代の初め、バブル経済の破綻によって混乱した社会を背景に、そこに生きる人々に思いを寄せた曲が並ぶ。
 アルバムを貫くシャッフル・ビート、ソウルやゴスペルの力強い節回し、そして説得力のある歌詞と熱意のこもったヴォーカル。“人間の無垢な感情(イノセンス)は、決して成長と引換えに失ってしまうものではなく、大きな円環(サークル)の中で受け継がれてゆくものなのだ”(佐野元春)。この言葉が本作のコンセプトでありタイトルにも反映されている。
 父親の死に伴う債務整理やプライベートでのトラブルに当たって活動を休止。様々な苦悩や経験で、詩はさらに哲学的な洞察力を増している。レコーディング前にプリプロダクションを入念に行い、メンバーの曲に対する理解を深めたというエピソードも。
 英国のベテラン・オルガン・プレーヤー、ジョージィ・フェイムが参加。トラックダウンはビデオ撮影・ダンスリミックスと並行してロンドンのAIR Studiosで行われた。
 オリジナル発売日:1993年11月10日。今回の30周年特別編集版にあたり、グラミー受賞など幾多の実績を残す世界屈指のエンジニア、テッド・ジェンセン氏がリマスタリング担当した音源を使用している。
 『THE CIRCLE』は佐野元春のキャリアのなかでも重要な作品のひとつであり、90年代国内ポップ・ロック作品の中でも屈指の名盤と言える作品である。[otonano PORTALサイトより引用]

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