エンターテインメントという言葉が大袈裟に聞こえるなら、パーティー……いや、THE BAWDIESが普段、言っているようにお祭りと言い換えてもいい。とまれ、それを何と呼ぶかはさておき、同じものを愛する者達が一堂に会して、声を出したり、踊ったり、笑ったりしながら楽しむ。3年ぶりに開催されたTHE BAWDIESと盟友のお笑いコンビ、ジャルジャルの異色タイバンが改めて我々に見せつけたのは、そんな至福の時間と空間を作ることに対するTHE BAWDIESとジャルジャルの飽くなき情熱だった。
2017年、2020年に続いて、3回目となる今回は「LAUGH 'n' ROLL TOUR ~ロックンロールとコント混ぜる奴~」とタイトルでも謳っているとおり、東京、大阪、名古屋を回るツアーにスケールアップ。その初日となった9月26日の東京・渋谷CLUB QUATTRO公演は、満員の観客の大歓声が迎える中、THE BAWDIESにロン毛にサングラスのボーカリストと金髪のギタリストの2人組、サンチョーズを加えた6人による「IT’S TOO LATE」から始まった。サンチョーズを演じるのは、もちろんジャルジャルの後藤淳平と福徳秀介。
一気に白熱していった演奏に観客全員が一斉にワイプで応え、スタンディングのフロアの盛り上がりはいきなり最高潮に! しかし、そこに笑い声が混じるところがいつもとは違う。なぜ笑い声が混じるのかと言えば、THE BAWDIESのメンバーと背中合わせにギターを弾いている福徳演じる金髪ギタリストは明らかにメンバーの背中に自分の背中をこすりつけているからだ。
「今日はいろいろなゲストが入れ代わり立ち代わり入ってくるので、もうフェスだと思って、楽しんでいただければと思います!」
ステージからハケるサンチョーズを見送りながら、これからどんなライブになるのか説明したROY(Vo, Ba)が「みなさん、準備はよろしいですか? 飛びあがれますか!? 声も出せますか!?」と声を上げ、バンドの演奏は、とびきりポップなTHE BAWDIESのロックンロール「SKIPPIN’ STONES」になだれこむ。ミラーボールが七色の光を放つ中、TAXMAN(Gt, Vo)がワウを踏んだファンキーなカッティングを閃かせ、JIM(Gt, Cho)がフリーキーなスライド・ソロをキメると、演奏がテンポアップ。そして、「飛び上がれますか!? 行くぞ!」というROYのシャウトを合図に観客がジャンプ!
「飛んでもらったんで、次は歌ってもらってもいいですか? 初めての人も安心してください。俺らの曲は1番聴いたら、2番3番歌える仕組みになってます」とROYが観客に語りかけてから演奏した「LET’S GO BACK」はMARCY(Dr, Cho)のドラムが跳ねるブリティッシュ・ビート・ナンバー。ROYの「1-2-3-Go!」を合図に観客がサビをシンガロング。フロアがさらに盛り上がったところで、「最初のゲストを呼びたいと思います」とROYが呼び込み、ステージに出てきたのが、福徳演じるリーゼントに革ジャンのギタリスト。代表曲の「もう何も言わないで」をTHE BAWDIESの演奏で歌うのかと思いきや、結局、音色がキラキラとしたインスト・ナンバーだったというオチのコントだったのだが、「ベテランから新人まで、新旧織りまぜたたくさんのゲストが出てきます。俺らも新旧織りまぜていろいろな曲をやりたいと思います」とROYが言ったとおり、そこからさまざまなゲストに扮したジャルジャルがTHE BAWDIESと入れ代わりに登場して、コントを繰り広げていく。
いつもは路上ライブで主にカバー曲を歌っているというフォーク・デュオは曲も曲間のエピソードトークもうろ覚えで、1曲も完奏できずにROYを驚かせたり、福徳演じるシンガー・ソングライターは客席から「バックコーラスをやらせてください。THE BAWDIESの曲も全曲、コーラスを付けることができました」と飛び入りしてきた後藤演じる漁師の「もっとちょうだいよ!」というコーラスに代表曲の「君と見た道」の見せ場を奪われてしまったり――。
ジャルジャルが確実に観客を笑わせていくその一方で、THE BAWDIESは音源のフィーチャリング・ゲスト、オカモトショウの代わりにTAXMANがROYと掛け合いで歌った最新曲の「GIMME GIMME」、メロディー作りのセンスが光るバラード「LEMONADE」他、新旧のレパートリーをエネルギッシュに繋げていった。そして、明らかに前述のコントを意識したROYが「もっとちょうだいよ!」と言いながら、観客とのコール&レスポンスでぐっと盛り上げた「T.Y.I.A.」から、MARCYのドラムで「JUST BE COOL」に繋げると、「お祭りですよ。お祭りに打ち上げ花火は欠かせません。みなさん、1人1人が打ち上げ花火になってください!」というROYの言葉に応え、再び観客がジャンプ!
この日一番の盛り上がりを作りあげたところに突然、福徳演じる女流映画監督と後藤演じる主演俳優が乱入してきて、探偵映画の真犯人役のオーディションという設定の下、「(MARCYに)ネクタイを(シャツから)出しなさい。(演奏に邪魔なら)外しなさい。(JIMに)あなた、汗かきすぎ。(TAXMANに)あなたはもっと汗をかきなさい」とアドリブでメンバーをイジりなら、THE BAWDIESの4人をコントに巻き込んでいく。
「誰から行く?」と女流監督がTHE BAWDIESの4人に尋ねると、客席から「MARCY!」「MARCY!」という声が飛び、それならと手を挙げたROY、完全にやる気のないMARCY、「映画に出られるんですよね」と色気を見せるTAXMAN、そしてMARCY同様、やる気がないと思わせ、実はやる気満々のJIMの順番で挑んだ4人それぞれの演技とジャルジャルらしいシュールな展開に観客は爆笑とともに大歓び。
なるほど、THE BAWDIESとジャルジャルの異色タイバンは、ロックンロールとコントを交互に見せるだけに止まらないわけだ。
そして、再びサンチョーズの2人を迎え、ライブはいよいよ佳曲に突入する。オープニング同様、後藤による「みなさん、遅れないようについてきてください! 遅れるとこうなりますよ!」というTHE BAWDIESファンにはお馴染みの前フリから6人は「IT’S TOO LATE」をリプリーズ。福徳はここでも自分の背中を、メンバー4人の背中にこすりつけたのだが、山で背中が何かにかぶれ、痒くてしかたないというその理由がここでようやく明かされ、観客全員がスッキリした……に違いない。
THE BAWDIESの演奏でサンチョーズがバラードの「木漏れ日登山道」を歌って、本編は終了したが、アンコールにはさらなる見どころが待っていた。
「HOT DOG」を演奏する前にTHE BAWDIESがいつもやっている「HOT DOG劇場」――パンとソーセージが出会い、ホットドッグになる顛末をさまざまなストーリーで見せる寸劇を、自分の拙い台本でプロであるジャルジャルに演じてもらうのは申し訳ない。だから即興でやってほしいというROYの無茶ぶりにジャルジャルが芸人の意地とコント作りのセンスを見せつけるように見事に応え、「HOT DOG」に繋げると、THE BAWDIESのエネルギッシュな演奏が今一度炸裂!
そして、最後はジャルジャルのM-1グランプリネタ「国名分けっこ」で締めくくると思わせ、福徳と後藤が国名を連呼する最後のくだりにTHE BAWDIESがファンキーな演奏を重ね、ある意味、リズムネタ、あるいはちょっとしたコラボ・ソングに仕上げる展開に観客の拍手喝采が止まらなかった。前述した真犯人役のオーディションと並ぶ、今回の異色タイバンのハイライトになったことは言うまでもない。
最後は、TAXMANによる恒例の「わっしょい!」で、さまざまな化学反応を起こしたTHE BAWDIESとジャルジャルによる異色タイバンは大団円を迎えたのだったが、筆者の前にいた女の子2人の「音楽も良かったね」「うん」という会話もまた、そんな化学反応の1つなのだと思う。
来年、結成20周年、およびデビュー15周年を迎えるTHE BAWDIESは、来年1月14日と21日、それぞれ大阪と東京のBillboard LiveでROY曰く「今日とはちょっと違う(笑)」ゲストを呼んで、特別なライブ「20TH BIRTHDAY BASH」を行うことが決まっている。そこでは今日とはまた違う化学反応が起こるに違いない。大いに期待している。