クリスマスを控えた2023年12月23日、九段下から北の丸公園へと向かう道すがら、月明かりに照らされた人影が、THE ALFEEの結成50周年、そして100回目の日本武道館公演という祝祭感に浮足立っているように見える。

開演前のざわめきのなか、10,000人のオーディエンスで埋め尽くされた客席を見渡すと、THE ALFEEというアーティストが実にさまざまな世代のファンに愛されていることがわかる。ツアーTシャツとリストバンドに身を固めた古参のファンがベーシックではあるが、母娘連れやティーンの女子もめずらしくない。そんな光景を自分事のようにうれしく思いつつ開演を待つ。

オープニングSEに導かれ、桜井 賢、坂崎幸之助、高見沢俊彦の姿が浮かび上がる。明滅する照明、ファイヤーボールの演出に歓声が上がる。1曲目はTHE ALFEE屈指のメタルナンバー「ジェネレーション・ダイナマイト」。武道館特有の不安定な音響特性をものともしない揺るぎないサウンドメイキング、輪郭のはっきりとした艶やかなボーカル、煌びやかなギターソロとアコギのアンサンブル……一切の妥協がない手練れの技に嘆息する。エンジェルギターの悶えるようなチョーキングに振り上げられた拳がそこかしこで揺れている。

続く「風の時代」。長大なイントロと饒舌な間奏にあわせてクラップが激しく打ち鳴らされる。イントロや間奏を排した楽曲が持て囃されるサブスク全盛の昨今だが、THE ALFEEのライブではむしろそれが会場の一体感を醸成する強力な武器になるのだ。

坂崎の「春よりも、夏よりも、秋よりも熱い声援を期待しております!」という声がけに歓声で応える武道館。ステージと客席のそんなコミュニケーションにコロナ禍からのリカバリーを実感する。

「AUBE~新しい夜明け」のイントロでアコギの奏でる優美なメロディに陶酔する。一転、アップリフティングな「英雄の詩」にギアが一段上がり、桜井の艶のあるリードボーカルに、高見沢のギターと坂崎のパーカッションが絡んでゆく。<強くあれ!強くなれ!英雄(ヒーロー)になれ!>というフレーズの残響が八角形の空間に浸透する。「THE AGES」の美しい三声のコーラスと、聴くものを励まし勇気付ける言葉、力強く凛としたアコギに心を奪われる。

「さて、結成50周年目の武道館……」と感慨深げな坂崎の言葉から始まったMCも、桜井が繰り出すミュージカルばりの美声と、さらにアリーナ席から登場した高見沢を迎える大歓声に掻き消される。おなじみの桜井営業部長によるツアーグッズの紹介では「50th Anniversaryアクリルクロック」や「日本武道館公演100回記念バッジ」といった特別なアイテムがお目見えし、大いに盛り上がる。

と、おもむろにクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング「自由の値」で美しいハーモニーを響かせ、「シュプレヒコールに耳を塞いで」へと繋ぐ。3人が学生だった1969年当時の情景を歌った「シュプレヒコールに耳を塞いで」と、1970年当時にベトナム戦争を憂えた「自由の値」が見事にオーバーラップする。ドロップDチューニングでリードを執る坂崎のD45と、猛々しく掻き鳴らされる高見沢のD45の応酬。固唾を呑んで聴き入る客席。ありったけの技巧とまっすぐな魂を乗せた歌声。THE ALFEEが最高のライブバンドであることを証明した瞬間だった。

ケルティックのエッセンスを散りばめつつも、どことなく和のテイストを纏った「鋼の騎士Q」、清洌なパイプオルガンの調べと、高見沢の気高く優しい声音が冬の陽射しのように柔らかな「GLORIOUS」に続いてMCへ。

「毎年恒例の武道館ということですが、今年から声援がOKになったんでね。すごいな!この圧が……やっぱりみんなの声が最高だな」と感嘆してみせる高見沢に万雷の拍手と歓声が湧き上がる。「1983年の8月に初めてやった武道館も、なんと今日で100回目です。こうやって続けてこれたのも、やっぱり皆さんが僕らの歌を見つけてくれたから、僕らのコンサートを選んでくれたからこそです。いよいよ来年はデビュー50周年という節目の年を迎えます。皆さんと共にどこまで行けるのか?バンド最長不倒距離を目指してまだまだこのままやっていこうと思っています」と力強く宣言して、風の時代ツアーが回を重ねるたびに存在感を高めてきた「組曲:時の方舟」へ。

音源のツインドラムを彷彿させる吉田太郎のパワフルなドラミングが冴えわたる「ARCADIA」。エスニックなフレーバーと<国境を越えろ!>という桜井の力強い歌声に、中東や東欧の国々の混乱に思いを馳せずにはいられない。こうしてわれわれが生きるいまの時代に寄り添い、問題提起するレパートリーがあったかと思えば、疾走感溢れるHR/HMナンバー、「COUNT DOWN 1999」で再点火しつつ、超絶技巧の「悲劇受胎 (50th Anniversary Ver.)」という怒涛のラストスパートで本編を閉じる。

アンコールではヲタ芸アイドルユニットのまたさきトリオが登場。マラカスライト「アクエリアスの涙」が灯るなか、「天国のチンペイさんに届くように!」と10月に惜しまれつつこの世を去った谷村新司に「チャンピオン」を手向けた。「危険なリンゴ」「ヤングマン」と続けてまたさきトリオのパートを締める。

「LONG WAY TO FREEDOM」では高見沢がフライングを披露。ライトブルーに輝く衣装をなびかせて宙を舞う高見沢の姿に歓喜したかと思えば、「恋の炎」の煽情的な詞とディープパープルばりのギターリフに武道館が揺れる。その勢いのまま「星空のディスタンス」へ。高見沢と坂崎がステージ両袖から伸びるスロープを駆け抜け、2階席に届きそうな立ち位置でファンとアイコンタクトをかわす。客席のファンも、ステージの3人も――そしてドラムの吉田太郎とキーボードのただすけも――完全な自由を取り戻した武道館の一体感に喜びを隠し切れない。

その喜びの感情に引き寄せられるように、すぐさまダブルアンコールへと雪崩れ込む。「ALFEE史上最も恐ろしい曲を!」という高見沢の前振りに勘のいいファンが笑いを漏らす。そう、次のナンバーはもちろん「府中捕物控」だ。高見沢が掻き鳴らすマンドリンの調べが令和の武道館を昭和にタイムスリップさせる。わかっていたつもりだが、彼らの振り幅の広さに驚嘆するしかない。

「発売前日に発売中止なったこの曲を、まさか武道館100回目でやるとは思ってなかったよね。長くやるという事はこういう事なんだなと今しみじみ感じています」と高見沢。坂崎が「でも早かったよ100回。1回目は無我夢中だったけどね」と言えば、「やっぱり積み重ねですね。これはみんなの力だよね。どうもありがとう!いっしょに喜びましょう」と桜井。「まだまだみんなに伝えたい思いを歌にして、これからもTHE ALFEEはゆっくり自分たちだけの道を歩んで行こうと思います」と未来に思いを馳せる高見沢の言葉を受けて、ラストはライブアンセム「SWEAT&TEARS」を高らかに歌い上げる。高見沢が、ともに歩んできたファンと自分自身を鼓舞するようにギターを掲げる姿と、ウィングハートが舞うなかで少年のようにヘドバンしてみせる3人が実に誇らしげに映った。

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/上飯坂 一

THE ALFEE 50th Anniversary 風の時代・春 From The BeginningLIVE INFO

4月3日(水)サンシティ越谷市民ホール
4月6日(土)ロームシアター京都メインホール
4月7日(日)ロームシアター京都メインホール
4月15日(月)新潟テルサ
4月17日(水)富山オーバード・ホール
4月20日(土)宇都宮市文化会館
4月22日(月)相模女子大学グリーンホール
4月26日(金)札幌文化芸術劇場hitaru
4月27日(土)苫小牧市民会館
4月29日(月)アクトシティ浜松
5月4日(土)倉敷市民会館
5月6日(月)KDDI維新ホール(山口)
5月10日(金)仙台サンプラザホール
5月11日(土)やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)
5月18日(土) 福岡サンパレスホテル&ホール
5月19日(日)福岡サンパレスホテル&ホール
5月25日(土)NHKホール
5月26日(日)NHKホール
6月8日(土)フェスティバルホール(大阪)
6月9日(日)フェスティバルホール(大阪)
6月12日(水) 神奈川県民ホール
6月15日(土)美喜仁桐生文化会館シルクホール(桐生市市民文化会館)
6月19日(水)市川市文化会館
6月22日(土)広島上野学園ホール
6月23日(日)広島上野学園ホール
6月26日(水)大宮ソニックシティ
7月6日(土)名古屋国際会議場センチュリーホール
7月7日(日) 名古屋国際会議場センチュリーホール

THE ALFEEオフィシャルサイト

THE ALFEE『SINGLE CONNECTION&AGR - Metal&Acoustic - 』DISC INFO

2023年12月20日(水)発売
初回限定盤(2CD+DVD)/TYCT-69291/4,950円(税込)
ユニバーサル ミュージック

THE ALFEE(ユニバーサル ミュージック)

THE ALFEE『SINGLE CONNECTION&AGR - Metal&Acoustic - 』DISC INFO

2023年12月20日(水)発売
通常盤(2CD)/TYCT-60223/60224/3,850円(税込)
ユニバーサル ミュージック

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