SHINeeのTAEMINがソロライブ『TAEMIN SOLO CONCERT : METAMORPH in Japan』を、3月8日(金)~10日(日)の3日間、日本武道館にて開催した。

photo by 田中聖太郎写真事務所 河村美貴

本公演は、最新作となる4thミニアルバム『Guilty』(2023年11月発売)を携えて、昨年12月に韓国で行われたライブの日本公演となり、TAEMINが日本でソロライブをするのは約4年3ヶ月ぶり。先月、SHINeeとして約6年ぶりの東京ドーム公演を成功させたばかりだが、ソロではSHINee とは異なる世界観を確立しているだけに、この瞬間を心待ちにしていた観客たちと“大切な思い出”を作った。

武道館の隅々まで埋め尽くした約1万人の観客が期待に胸を膨らませる中、ついにその時がやってきた。メインステージの前面を覆っていた大型ビジョンが、真ん中から2つに分かれて左右へ移動すると、その奥に、宙に釣られたステージに乗ったTAEMINの姿が目に入ってくる。最初、薄暗くてまるでそこに浮いているようにも見えたが、『Guilty』収録の「The Rizzness」を歌う声が聞こえてきて、改めてTAEMINの存在を確認。すると今度は徐々に足もとのステージが前方に向かって回転し、TAEMINは前傾姿勢から、床と並行になったのち、最終的に足から宙に釣られて逆さまになる。そんな状態にも関わらず、印象的な高音のヴァースが繰り返されるヒップホップナンバーを、息を乱すこともなく歌い続ける様子に観客の目は釘付け。破格の登場で一気に会場の空気を掌握した。

その後、表情を隠すかのように目深にかぶっていたキャップを取り、鋭いまなざしを観客に向けて、2曲目「Advice」へ。ここからはTAEMINの真骨頂でもある、ハイレベルなダンスで魅せていく。回転ステージを降りると、ダンサーを従え、歌詞の言葉を一音ずつ捉えたような細かなステップや、素早いターン、胸の下から腰までの位置が露わになった衣装を活かしたウエーブなど、技術力の高さで圧倒する。3曲目「Black Rose」ではそこへしなやかさも加え、誘惑的な表情も見せる。そして、4曲目「Criminal」では大人の魅力を爆発。両手首を紐で括り、それを口を使って外すという妖艶な雰囲気を作り、ダンスブレイクでは全身でダイナミックさを表現。さらに曲の後半では上着を脱いで鍛え抜かれた上半身を露わにする場面もあり、溢れる色気を存分に発揮した。

一方、MCになると、別人とも言えるような、かわいいTAEMINが顔をのぞかせる。パフォーマンス中は一度も見せることがなかった笑顔がこぼれ、「デビューして15年以上経ったのにまだ緊張している(笑)」と告白。また、実は開演前のスタンバイ中に、セットの隙間からステージ脇の観客の顔が見えてしまったため、挨拶をしてみたものの気づいてもらえなかったと拗ねてみせたり、甘辛のギャップで観客の心をわしづかみにしていた。

ライブは中盤に入るとTAEMINのより深いゾーンへ突入。「Heaven」、「Strings」の2曲は、傾斜をつけたステージの上でパフォーマンスを行なう。床面に映像が映し出され、そこに踊るTAEMINが溶け込み、一枚の絵のような美しい世界が広がった。

MCを挟んだ前後で披露された『Guilty』からの2曲は、大型ビジョンを使って歌うTAEMINにクローズアップ。「Not Over You」は目を閉じて歌に集中する表情を、「She Loves Me, She Loves Me Not」では、愛が終わっていく瞬間を枯れていく花びらに例えた楽曲を全身で表現する姿を捉えた。

ステージに寝転がった状態からパフォーマンスをスタートさせた「Light」では、TAEMIN自ら手拍子をして、観客を煽る一幕も。日本語での歌唱となった「Famous」では、より観客との距離を縮める。そして、その流れからの「WANT」、「Danger」では、このライブのハイライトの一つとも言える一体感が生まれる。「みんな知ってる曲ですよね、歌いましょう!」とTAEMINが叫ぶと、観客から“イ・テミン”コールが沸き起こり、韓国語でのコールも迷いなく入れていく。その声に応えるように、ダンスブレイクで踊るTAEMINからはより激しく、熱いものが感じられ、さらに観客の声を大きくさせる。これぞアーティストと観客がともに作るライブという空間だと実感させられた。

ダンサーのパフォーマンスを挟んで、後半戦がスタート。衣装をここまでのモノクロベースのものから、全身赤のタイトなスタイルのものへと着替え、TAEMINは再び、宙吊りのステージから登場する。今度は逆さまの状態から正位置に戻ってくるという動きで「Door」を日本語で歌い、徐々に客席側に顔が見えてくると、目隠しをしていることがわかる。曲中でステージの回転が止まると、その目隠しをしたまま踊り出すTAEMIN。2017年に行われた自身初のソロライブとなった武道館公演では、四方八方からロープで拘束されまま踊る姿に息をのんだが、今回のバージョンも強烈な印象を刻んだ。

そこから、ストリングスを使った荘厳なイントロでつないだ「Guilty」では、シャツの中に手を入れて服をまくりながら腹筋を見せていくインパクトのある振付も披露。炎が上がる演出も相まって、スローテンポな曲にも関わらずより会場のボルテージが上昇していく。イントロが一瞬流れただけで大きな歓声が上がった「MOVE」に、『Guilty』の楽曲の中では柔らかな雰囲気も与える「Night Away」、「Blue」と、最新モードも届けて、TAEMINにしかできない世界で構築された本編を締めくくった。

“イ・テミン”“大好き”と繰り返す観客からのコールを受け、「IDEA:理想」でアンコールのステージに戻ってきたTAEMINが、「僕を、また綺麗な言葉で呼んでくれましたね」と微笑むと客席から”大好きー!”という大歓声が送られ、TAEMINも「僕も皆さんが大好き」と軽やかに答えてみせた。
「素敵なこのコンサートは僕だけじゃなく、いろんなスタッフさん達と、ダンサーの皆さんと演出してくれた舞台監督さん、いろんな方達が一緒に準備してくれたから完成できたコンサートだと思います。もちろんファンの皆さんがいるからこそです。皆さんのエネルギー、この雰囲気、この愛、その全部があって完成したと思います。本当にこの3日間楽しかったですし、皆さんと大切な思い出を作ることができて嬉しかったです。これからも皆さんとずっと大切な思い出をTAEMINとして、そしてSHINeeとしても作っていきたいと思います。」と改めて観客に感謝の言葉を伝えた。

客席を笑顔で見つめると、その感謝の気持ちを込めたという日本オリジナル楽曲の「世界で一番愛した人」を歌唱。観客も大きな声を上げてともに歌い、ハンドマイクを握りしめて歌うTAEMINの目には涙がにじんでいるようにも見えた。続けて「I Think Itʼs Love」、「Identity」の2曲を情感豊かに歌い上げ、最後は歌いながらステージのビジョンの間に吸い込まれていくような幻想的な雰囲気で幕を下ろした。

MCでTAEMINは「TAEMINという人を表現したい」と話していたが、まさにTAEMINにしかできないものが詰まっていた。どの曲にも、どの瞬間にも“美しさ”が宿り、力強く荒々しい場面であっても、そこには“美しさ”が貫かれている。ここからまたTAEMINの審美眼によって新たに作られる楽曲、ステージに、否応なしに期待が高まるライブとなった。

photo by 田中聖太郎

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