ドラマ・アニメ・映画など映像の音楽活動やアーティストへの楽曲提供、SennaRinとNAQT VANEのプロデュースも手掛ける作曲家・澤野弘之。

そんな澤野弘之が展開するボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]のプロジェクト始動10周年を記念した単独公演「SawanoHiroyuki[nZk] 10th Anniversary LIVE “A=Z”」がパシフィコ横浜 国立大ホールにて開催された。本記事では、ライブの模様のオフィシャルレポートをお届けする。

作曲家・澤野弘之が、2025年5月31日(土)にワンマンライブ「SawanoHiroyuki[nZk] 10th Anniversary LIVE “A=Z”」を開催。澤野弘之のボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]の10周年を記念して行なわれたこの日のパシフィコ横浜 国立大ホールは、始まりから終わりまで、SawanoHiroyuki[nZk]の“すべて”が詰まったような圧巻のステージとなった。

ライブの幕を開けたのは、インストゥルメンタル楽曲「[nZk]o1」。徐々に広がるシーケンスとバンドサウンドが会場全体を包むと、澤野弘之とSennaRinが登場。音と光が緻密に絡み合う演出の中、SennaRinは攻撃的なラップを放ち、観客の期待感と高揚感を一気に引き上げた。

続く「NEXUS」「Hands Up to the Sky」「FAKEit」は、Laco(EOW)がパフォーマンス。鋭さとしなやかさを備えた歌声が、打ち込みと生演奏の狭間を縫うように響き、楽曲の世界観に奥行きを与える。Lacoは、ステージ上を左右に悠然と闊歩しながらクラップやコーラスをオーディエンスに求めて、冒頭から会場に見事な一体感を築き上げた。

mizuki(UNIDOTS)は、「aLIEz」、「A/Z」、「&Z」というSawanoHiroyuki[nZk]黎明期の楽曲をパフォーマンス。彼女のどこまでも澄んだ声は、楽曲に優美さと力強さを与え、美しいメロディにさらなる輝きを加えた。

その空気を受け継いだTielleは、「Into the Sky」、「gravityWall」を披露。どこか哀愁を帯びたハイトーンがドラマティックなアレンジと溶け合い、観客の感情をやさしく揺さぶる。特に「gravityWall」の中盤では、彼女のエモーショナルな表現が際立った。

ここでムードが一転。XAIが登場し、「DARK ARIA <LV2>」と「X.U.」を披露。ミステリアスなトーンで始まる「DARK ARIA <LV2>」では不穏さと静謐さが共存し、「X.U.」ではアグレッシブなビートが炸裂。ボーカルの緊張感とアンサンブルの緻密さが相まって、観客の感覚をじわじわと支配した。

その余韻を引き継ぐように、再びSennaRinが登場。澤野のピアノとともに「s-AVE」を届けると、シームレスにTM NETWORKの「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」のカバーへ。本公演のライブパンフレットには、小室哲哉との対談記事も掲載されており、澤野がリスペクトする小室への想いを乗せたパフォーマンスとなった。続く「B-Cuz」では、SennaRinは繊細な歌声で楽曲を包み込み、ポップさの中に確かな情緒を滲ませた。

ReoNaが姿を現すと、空気がピンと張り詰める。「time」「SACRA」と2曲を通して、儚げなトーンと抑制された感情の起伏を描き出す彼女のボーカルが、観客の心を深く揺さぶる。

たかはしほのか(リーガルリリー)は、「LilaS」と「Avid」で、一切の曇りがないような無垢な声で聴かせる。音数を絞ったオーガニックなアレンジが、彼女の声を際立たせ、余白の美しさが強く印象に残るパートとなった。

Rei(Newspeak)は、海外の最新ダンスナンバーのようなクールなサウンドを放つ「INERTIA」で、推進力に乗ったタフなボーカルを披露。「LEveL」のカバーではイントロから歓声が上がり、鮮やかなグルーヴで会場のテンションをグッと引き上げた。近年の澤野は、海外ポップスのようなコンパクトな楽曲構成と、かつてよりもシンプルなアレンジを志向する傾向にある。しかし、彼の真骨頂と言えるドラマティック性は健在。「INERTIA」と「LEveL」は、澤野の進化と深化を証明する2曲となった。

10周年ライブは、終盤に向かいまさに祝祭の時間へ。スキマスイッチが登場し、「never gonna change」でアッパーな極上ポップロックを届けると、続けて「地球という名の都」をカバー。2人のハーモニーとエモーショナルな演奏が、ホールいっぱいに幸福感を広げた。

続いて澤野のピアノソロから岡崎体育の「膏」へ。この曲のラストには、岡崎のパワフルなボーカルに引っ張られるように、観客もシンガロング。「COLORs」のカバーでも、その勢いのまま会場を揺らした。

ラストを飾ったのは、西川貴教。「天叢雲剣-SKYBREAKER-」「Claymore」「NOISEofRAIN」で、ステージを“制圧”。これでもかと張り裂けんばかりの圧倒的な歌声、エネルギッシュな佇まいは、まるでステージに炎が上がっているのかと錯覚するほどの熱量のあるものとなった。

最後は、ステージにゲストアーティストたちが集結し、バンドメンバーを含めて全員で記念撮影。そして澤野が1人で本公演の感謝の挨拶をしていると、突如「膏」のトラックが鳴り響き、岡崎体育とバンドメンバーが再登場。澤野とバンドメンバー、さらに西川貴教も加わり、「膏」Music Video YouTube ver.のオリジナルダンスをコミカルに披露して、会場全体に笑顔の花を咲かせて終幕となった。

SawanoHiroyuki[nZk]の10年の軌跡を、多彩なボーカリストとミュージシャン、そして満場の観客とともに音で辿った一夜となったパシフィコ横浜 国立大ホール。作曲家として20年目の澤野弘之が、今後どんな音を紡ぐのか。今回のステージで生まれた心地よい熱を胸にしまって、今はその答えを静かに待ちたい。

なお今回のライブで、澤野弘之の作曲家活動20周年を記念して、「澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex」を開催することが発表された。本公演は、2025年9月23日(火・祝)に東京国際フォーラムAにて行われ、「俺だけレベルアップな件」「TO BE HERO X」「プロメア」など、澤野弘之がこれまでに手掛けてきた数々のアニプレックス作品の楽曲をアニメの名シーンにのせてオーケストラ+バンド編成でお届けする。

5月31日(土)21時よりアニプレックスオンラインにて、チケット最速先行抽選受付が実施されているので是非チェックして欲しい。

(ライブレポート:鈴木健也)

Photo by 西槇太一, Ryotaro Kawashima

SawanoHiroyuki[nZk] 10th Anniversary LIVE “A=Z”

開催日時:2025年5月31日(土) 開場 16:30 / 開演 17:30
会場:パシフィコ横浜 国立大ホール (神奈川県横浜市西区みなとみらい1丁目1−1)
GUEST VOCAL:岡崎体育, XAI, スキマスイッチ, SennaRin, たかはしほのか(リーガルリリー), Tielle, 西川貴教, mizuki, Laco, Rei(Newspeak), ReoNa (50音順)

【セットリスト】
[Introduction] [nZk]o1 Rap:SennaRin
01.NEXUS Vocal:Laco
02.Hands Up to the Sky Vocal:Laco
03.FAKEit Vocal:Laco
04.aLIEz Vocal:mizuki
05.A/Z Vocal:mizuki
06.&Z Vocal:mizuki
07.Into the Sky Vocal:Tielle
08.gravityWall Vocal:Tielle
09DARK ARIA <LV2> Vocal:XAI
10.X.U. Vocal:XAI (Cover)
11.s-AVE ~ BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて) Vocal:SennaRin (Cover)
12.B-Cuz Vocal:SennaRin
13.time Vocal:ReoNa
14.SACRA  Vocal:ReoNa
15.LilaS  Vocal:たかはしほのか
16.Avid  Vocal:たかはしほのか (Cover) 
17.INERTIA Vocal:Rei
18.LEveL Vocal:Rei (Cover) 
19.never gonna change feat. スキマスイッチ
20.地球という名の都 feat. スキマスイッチ (Cover)
21.膏 Vocal:岡崎体育
22.COLORs Vocal:岡崎体育 (Cover) 
23.天叢雲剣-SKYBREAKER- Vocal:西川貴教
24.Claymore Vocal:西川貴教
25.NOISEofRAIN Vocal:西川貴教

澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex

開催日時:2025年9月23日(火・祝) 開場 16:00 / 開演 17:00
会場:東京国際フォーラム ホールA(東京都千代田区丸の内3丁目5番1号)
演奏予定作品:青の祓魔師、ギルティクラウン、キルラキル、アルドノア・ゼロ、七つの大罪、甲鉄城のカバネリ、Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀、Re:CREATORS、86-エイティシックス-、プロメア、群青のファンファーレ、Fate/strange Fake、俺だけレベルアップな件、TO BE HERO X
GUEST VOCAL:Aimee Blackschleger、Eliana、mpi、XAI、SennaRin、Benjamin、mizuki、Laco (50音順)

【アニプレックスオンライン先行抽選受付】
受付期間:2025年5月31日(土)21:00〜2025年6月15日(日)23:59まで
https://online.aniplex.co.jp/itemJFPJCQhV.html

SawanoHiroyuki[nZk] 13th Single「INERTIA」

2025年6月11日(水) 発売
●通常盤(CD)
品番:VVCL-2696 金額:1,430円(税込)
●期間生産限定盤(CD+Blu-ray)
品番:VVCL-2697~8 金額:2,200円(税込)
※アニメ「TO BE HERO X」描きおろしイラストデジパック仕様

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