昨年9月22日、地元沖縄の那覇文化芸術劇場なはーとからスタートした『HY 25th Anniversary BEST!! Kary TOUR 2024-2025』は、年を跨いで今年9月21日の沖縄コンベンションセンター展示棟でファイナルを迎えた。
“Kary(嘉例)”=沖縄方言で“喜ばしいこと、めでたいこと”を意味するツアータイトルの通り、結成25周年を迎えるHYが、全国のシンカー(沖縄方言で“仲間”)のもとへ出向いて、一緒にお祝いをしたい!というメンバーの想いを実現した全44公演におよぶロングツアーだ。
今回はそのセミファイナル、9月7日に開催された東京Kanadevia Hallのライブのオフィシャルレポートを中心に、9月21日に開催された沖縄コンベンションセンターのライブの模様も一緒にお届けする。
筆者はツアー2公演目(東京・ひの煉瓦ホール)を観てからほぼ1年ぶり。全国のシンカーと共に嘉例を分かち合ってきたHYがどう成長進化しているのか、観てみたいと思った。
25周年をお祝いするケーキと25本のローソクの明かりをイメージしたステージが暗転すると、HYの25年をふり返る映像が流れる。この時間を共に歩んできたシンカーが、それぞれの記憶を辿るなか、「モノクロ」からライブはスタートした。
「セミファイナル、楽しんでいきましょう!」
新里のかけ声に、アリーナから3階のバルコニー席まで超満員の会場から歓声が湧き上がる。この瞬間を待っていた人たちの想いを映したように笑顔が広がっていく。
「モノクロ」を発表した2006年、まだ君に想いを届けきれずに“笑って歩くのは僕だけ”と感じていた主人公は、時を重ねた今、きっとこれほど多くの人たちの笑顔に囲まれていることをどう思うだろう。それは、今日までシンカーのみんなと築いてきた互いの“信頼(Confidence)”があったから、と思っているかもしれない。
続いて3rdアルバム『TRUNK』から「てがみ」、さらに新里が三線に持ち替えて歌う最新アルバム『TIME』の「大大大好き」へ。最後はカチャーシーを踊り、シーサーポーズで締めくくった。
「1年かけて25周年を祝わせてもらっています。この一瞬一瞬、今日という日を思い残すことなく、みなさん心を開いてHYを受け入れてください」という新里の呼びかけに、歓声に混じって、子どもたちの元気な声も聞こえる。子育て中なかなかライブに来れない人のために、このツアーでは親子席を設けたHYの優しさに応える可愛い声援だ。
次の曲は「風」。海中道路、浜比嘉島、赤瓦の家…うるま市を空中散歩する映像に誘われるようにポップな曲が心を軽くする。
続いても、“青い海 青い空 南の風に揺れる赤花”という歌詞が、彼らの生まれ島を連想させる軽快な「ワラッタラッタ」。いっせいにタオルが回る。
ツアーの間、休むことなく走り続けていたHY。週末は全国のステージに立ち、平日は沖縄に戻って沖縄のTVやFMのレギュラー番組の収録。その間に夏フェスやイベントで各地へ飛ぶ多忙な日々。そんな彼らのモチベーションになっているのは、生まれ島に戻った時に広がる海の色や海風の心地よさ、そしてライブ会場であたたかく迎えてくれるシンカーの歓声や笑顔だ。その想いが曲になり、ライブで歌うことで聴いた人たちの心も癒していく。「風」も「ワラッタラッタ」も、沖縄を愛するHYのあたたかい想いが伝わってくる曲だ。
メンバーがステージ前方に並びアコースティックセッションで歌われたのが「I JUST DO IT FOR YOU」。MCで仲宗根は、「当時付き合っていた彼に、あなたは一人じゃないよと伝えたくて書いた曲」というバラード。そばでそっと寄り添うように歌う彼女の優しい歌声が印象に残った。16年ぶりに歌うこの曲は、経験を重ねた今だからこそ歌に説得力が増した曲になっていた。
「あなたを想う風」の後は、仲宗根が監修する恒例の“イーズーコーナー”では、メンバーの熱演が笑いを誘う。楽しむところは全力で楽しみ、歌を聴かせるところは徹底して聴かせる。この自由な表現とオンオフ感がHYのライブの楽しみの一つ。それはこのツアーでも変わっていない。
続いて歌われたのが、「366日」。この曲にインスパイアされたオリジナルストーリーでテレビドラマや映画化もされ、改めて多くの人の心を打った珠玉のラブソングが、新里とのオフィシャルデュエットバージョンで披露された。イントロが流れた瞬間、静かに拍手が湧き起こった。叶わぬ恋を歌ったこの切ないラブソングは、デュエットで歌われることで、男女の揺れる心の状態がより鮮明に映し出されていると思った。
エイサー太鼓集団「琉球國祭り太鼓」を招いて演奏したのが「帰る場所」。“人を愛し 時を愛して 愛に溢れてやまない歌を”と、ここでも故郷の島への感謝を歌う。力強い仲宗根の歌声に勇壮なエイサー太鼓の音が共鳴して、心に響く曲になった。恋のもどかしさを歌った「渚の恋は虹色模様」では、新里が歌詞を忘れるハプニングもあったが、メンバーの愛あるサポートで、さらにあたたかい曲に。ライブでの成長を感じる瞬間だった。
そして、「みんなの思い出の曲。みんなで歌っていきましょうねー」という新里の呼びかけで始まった「AM11:00」へと続いていく。自然と会場全体から大きな歌声が湧いてくる。新里から仲宗根、名嘉と歌い継ぐスイッチボーカルも圧巻だ。ライブを通してシンカーと絆を深めてきたこの曲は、毎回みんなと一緒に歌った時に会場が一つになる景色をここでも見ることができた。いつでも、どの会場でも瞬時に会場全体を一体化させるエネルギーを持った曲だ。
初期の「隆福丸」に続いて、映画『366日』の主題歌として仲宗根が書き下ろした「恋をして」が披露された。
「主題歌の依頼を受けた時、恋愛ソングではなくて、人生のことを描けたらいいなと思いました。私は実体験を書くことが多いので、自分の41年間の人生を落とし込もうと思って、今まであった出会いや別れを想いながら書きました。この曲が、少しでもみなさんの心の支えになるといいなと思っています。聴いてください…」
“どの道を選んでも どの答えにしても…あなたに向かって歩いてゆく”
出会いや別れは、人生にとっていつか必ず糧になる。大切な人のこと、家族のこと、この曲を聴きながら色々な想いが湧いてきて胸が熱くなった。
そこから「明日種?アシタネ?」ではシンカーと一緒になって踊り、ファイナル沖縄ではアニメのオープニングテーマにもなっていた「きのこいぬ」も追加で披露し、体を動かして楽しんだ。
そして「僕たちはこの曲で始まりました」と言って「ホワイトビーチ」が歌われる。途中、新里がステージを下りて、アリーナから3階のバルコニーまで会場を回りながら歌ったこともシンカーには嬉しいサプライズだ。2階席では、子どもにハイタッチも。
初期の曲から最新アルバム『TIME』に収録された曲まで、『25th Anniversary BEST!!』と名づけたツアーらしい、新旧幅広い、HYにとってもシンカーにとっても想い出に寄り添った選曲だった。HYの歌とともに紡いできた自身のストーリーを思い浮かべているのだろうか。会場の誰もが、一緒に笑顔で歌っている姿が印象に残った。
本編ラストの曲は、「LOVE」。沖縄の子ども達の未来を支援するプロジェクト「ハイ祭?子どもの居場所フェス?」のテーマソングとして、子ども達と一緒に曲作りをした曲。新里は、「HYから今日来てくれた一人一人に愛を届けたいと思います。みんな心開いて僕たちの想いを受けとめてください」と言って歌っていた。2階席から元気に手を振っていた9歳の女の子に新里は、会場のみんなを誘って、全員でその女の子に“LOVE”を届ける。あたたかい空気に包まれるなか、本編は終了。メンバーはステージを去った。
再びステージに現れたHYから嬉しいニュースが届けられる。来年2月23日に東京ガーデンシアターでHY 25th Anniversary『BEST!! Special TIME TRIP』の開催、さらにファイナル沖縄では来年6月から新里のソロツアーの開催が告げられた。
その後で仲宗根は、「25周年目にして初めてアンコールに相応しいバラードメドレーを作ってきました。ぜひみなさんにも一緒に歌って欲しい」と言って歌い始める。「Song for…」?「NAO」?「あなた」…永い間、女性の気持ちに寄り添う名バラードとして聴き継がれ、歌い継がれてきた曲に、会場全体が大合唱になった。
ファイナルの沖縄ではこれに「Anser」も追加して披露された。
「この曲はライブでしかやらない特別な曲です」と言って最後の曲「フェイバリットソング」が歌われた。仲宗根が客席をまわりながらハイタッチ。ここまでメンバーがステージを下りて客席をまわるライブを今まで見たことがない。25周年をなるべくシンカーの近くで、一緒にお祝いしたい!という彼らの強い想いが伝わってくる。
“はーいや、いーやさっさ”のかけ声と共に、みんなでカチャーシーを踊る。“幸せをかき混ぜる踊り”がカチャーシーといわれるように、それはHYの25周年をシンカーたちとお祝いした、幸せに満ち溢れた空間であり、時間だった。
ライブを終えたステージでの新里の言葉が、このツアーの全てを物語っているように思った。
「25周年やってきたからこそ見える景色です!」
ファイナルの沖縄では最後の最後に「旅立ち」を披露したあと、全国のシンカーから『HY 25周年おめでとう たくさんの笑顔と涙を超えて 今日まで音楽を続けてくれてありがとう』と、25周年を祝うメッセージ動画が流れ、ハッピーバースデーソングと共にサプライズケーキが登場。涙するメンバーもいる中で、「皆様のおかげでここまで走ってこれました。ツアーは今日で終わりですけどまた新しくスタートしていきますのでこれからも応援よろしくお願いします!」(許田)「ここまで感謝しかないです。まずメンバー。メンバーたちがいないと俺はいないし、そして何よりもみんながいるから。そして家族だね。俺たち行けるところまで行きますから、付いてきて。俺たち変わらず好きな音楽やってるから。」(新里)「すごいいい仲間に支えられて出会ったなと思っています。これも皆さんが25年間応援してくれたおかげでもあるかと思いますので、自分自身にも拍手をお願いします」(仲宗根)「俺たちは明日からまた30周年に向けて色々と準備していきたいと思います。いろんなことが絶対あると思う、山あり谷あり人生だから。いろんな場所で出会いましょう。HY両手広げて待っています」(名嘉)と、それぞれが感謝して、30周年に向けてまた歩み出すことを宣言した。
26年目に向かうHYは、成長から更なる深化へと向かっていくだろう。
文・伊藤博伸(mahalo tokyo office)
カメラマンクレジット:Tetsuya Yamakawa
SET LIST
『HY 25th Anniversary BEST!! Kary TOUR 2024-2025』
9月7日(日)東京・Kanadevia Hall ※セミファイナル
1 モノクロ
2 てがみ
3 大大大好き
4 風
5 ワラッタラッタ
6 三月の陽炎
7 I JUST DO IT FOR YOU
8 あなたを想う風
―イーズーコーナー ―
9 君と未来を
10 366日(Official Duet ver.)
11 帰る場所
12 渚の恋は虹色模様
13 AM 11:00
14 隆福丸
15 恋をして
16 明日種~アシタネ~
17 ホワイトビーチ
18 LOVE
<ENCORE>
EN1 メドレー (Song for~NAO~あなた)
EN2 フェイバリットソング
カメラマンクレジット:G-KEN
SET LIST
9月21日(日)沖縄・コンベンションセンター展示棟 ※ファイナル
1 モノクロ
2 てがみ
3 大大大好き
4 風
5 ワラッタラッタ
6 三月の陽炎
7 I JUST DO IT FOR YOU
8 あなたを想う風
―イーズーコーナー ―
9 君と未来を
10 366日(Official Duet ver.)
11 帰る場所
12 渚の恋は虹色模様
13 AM 11:00
14 隆福丸
15 恋をして
16 明日種~アシタネ~
17 きのこいぬ
18 ホワイトビーチ
19 LOVE
<ENCORE>
EN1 メドレー (Song for~NAO~Anser~あなた)
EN2 フェイバリットソング
EN3 旅立ち
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