今回の公演のメインキャストは、プロジェクトの第1弾から参加している運上弘菜(HKT48)、山口綺羅(Girls²)、初参加となるSTU48の石田千穂と中村 舞の4人。

第1部は演劇パート、第2部はパフォーマンスパートという二部構成だ。演劇パートは、40年前に国民的オーディション番組で合格したものの、デビューすることが叶わずに姿を消した幻の4人組グループ、IDOLSがデビューを夢見ていたころのシーンからスタートした。彼女たちの掛け合いから、その仲の良さや全員が夢に向かって希望に満ちていることが伝わってくる。やがて舞台は暗転し、冒頭のシーンから40年後、現在のとある喫茶店へとシーンは大きく転換する。

喫茶店にはGirls²の菱田未渚美が演じる(8月25日昼公演と8月26日夜公演、8月25日夜公演と8月26日昼公演のキャストはGirls²の小田柚葉)ウェイトレス。。そこにポツリポツリと集ってくるのは、実名で、しかもアイドルとして活動しているという現実までも役柄に反映された、4人のメインキャストたちだ。同じグループに在籍している石田と中村以外は初対面という設定で、つまりは「初めまして。HKT48の運上弘菜です」、「こんにちは。Girls²の山口綺羅です」という状況になる。それに対して、例えば中村は「うわー!本物だ!いつも見てます!」とリアクションする。そんな不思議なシチュエーションに、見ている側もなんとも不思議な感覚になってくる。演じている4人も、リアルとフィクションの境界線を見つけるのがむずかしそうだが、その境目でせめぎあい、揺らぐ様こそが、この「IDOLS」プロジェクトの魅力なのだと思う。

そして、物語は進む。4人が集まった理由は、IDOLS結成40周年を記念したオフ会。4人は、40年前に姿を消したIDOLSを今も応援する熱心なファンだったのだ。ファンサイトを運営する中村、祖父がIDOLSファンだったという運上など、それぞれがIDOLSファンになったきっかけを話す。そして、話の中心はIDOLSが40年前に姿を消した真相に迫る。やがて4人とIDOLSとの関係が明らかになっていく。

プロジェクトの第1弾から参加している運上と山口が牽引する形で、4人は“実名だけど架空のアイドル”を懸命に演じていた。ストーリーテラー的な役割を担う、ウェイトレス役の菱田もいいスパイスになっていたと思う。メインキャスト4人の演技からは、冷静沈着な運上、ひたすらまっすぐな山口、強い意志を感じさせる石田、少し引っ込み思案な中村など、実際の本人たちのキャラクターも感じられた。まさにリアルとフィクションを物語の中で行き来するような面白さ。そんな「IDOLS」らしい魅力が、初の舞台公演にもかかわらず、第1部の演技パートでは見事に表現されていた。

プロジェクトの第1弾から参加している運上と山口が牽引する形で、4人は“実名だけど架空のアイドル”を懸命に演じていた。ストーリーテラー的な役割を担う、ウェイトレス役の菱田もいいスパイスになっていたと思う。メインキャスト4人の演技からは、冷静沈着な運上、ひたすらまっすぐな山口、強い意志を感じさせる石田、少し引っ込み思案な中村など、実際の本人たちのキャラクターも感じられた。まさにリアルとフィクションを物語の中で行き来するような面白さ。そんな「IDOLS」らしい魅力が、初の舞台公演にもかかわらず、第1部の演技パートでは見事に表現されていた。

続く第2部のパフォーマンスパートは、IDOLSファンの4人が音楽番組「ミュージックステージ」の5時間スペシャルに出演し、40年前に作られたIDOLSの幻のデビュー曲「Make a Wish」を披露するシーンからスタートした。番組のMC役を務めるのは、今年5月にAKB48を卒業した藤園 麗。コアなアイドルファンのハートを、しっかりとくすぐるキャスティングだ。「Make a Wish」は本公演のために書き下ろされた楽曲で、手がけたのは人気プロデューサー/DJのNight Tempo。日本のシティポップに精通する彼ならではのノスタルジーと、もう一方の彼の魅力であるクールで近未来的なサウンドが融合した、スタイリッシュなダンスナンバーだ。

モノトーンの衣装を纏って歌い、踊る4人。四者四様の歌とダンスの個性が伝わってくる。「Make a Wish」以降は、80年代を彩った名曲たちをソロやユニットでカバーしていく。山口はBaBeの「I don’t know」、久保田利伸の「TIMEシャワーに射たれて」でキレのあるダンスを見せる。運上は小泉今日子の「艶姿ナミダ娘」、松田聖子の「赤いスイートピー」と「天国のキッス」と王道のアイドルソングを歌唱。石田は工藤静香の「MUGO・ん…色っぽい」、小泉今日子の「あなたに会えてよかった」とやはりアイドルの名曲を披露しつつ、渡辺美里の「My Revolution」では力強い歌声を聴かせてくれた。そして、中村が歌ったのは、やはり80年代アイドルのメインストリームである。松田聖子の「青い珊瑚礁」、中山美穂の「CATCH ME」だ。

ユニットパフォーマンスのパートでは、山口/中村のWink「愛が止まらない~TURN IT INTO LOVE~」と運上/石田「淋しい熱帯魚」。過去を彩った名曲たちを、現役のアイドルたちが当時の振りも交えながら立て続けに歌うことで、心地良くも奇妙なトリップ感が感じられる。そして最後は、泰葉の「フライディ・チャイナタウン」、杏里の「悲しみがとまらない」、松原みきの「真夜中のドア~stay with me」を4人でパフォーマンス。笑顔で第2部を締めくくった。
 現役のアイドルが、実名で架空のアイドルを演じ、令和に作られたオリジナル曲と昭和~平成最初期のヒット曲を生の舞台でパフォーマンスする。そこには、紛れもなくそこに実在し、現在進行形で活躍する4人のアイドルが生きるもう1つの世界線──パラレルワールド――を見ているような楽しさがあった。そして、過去と現在が交差しながら音楽がつながっていくという、タイムリープ的かつクロニクルのような面白さもあった。キャストたちがリアルとフィクションを行き来したように、見る側もまたリアルとフィクションの狭間を味わえる。それが、この「IDOLS」プロジェクトの大きな魅力であり、ほかにはないオリジナリティなのだと、初の舞台公演であらためて感じた。

(おわり)

取材・文/大久保和則
写真/平野哲郎

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