2022年5月28日、再び日比谷野音に立ったGLIM SPANKY。そうか、あれはもう5年も前のことなんだ……亀本寛貴のMCであの日の記憶を反芻してみる。亀本のギターも、松尾レミの嗄れ声も、全然変わっていないと思うこともできるし、格段に深みを増したとも思える。なんだか幻影を見ているようだ。
2017年6月、GLIM SPANKYが初めて野音のステージに立ったあの日も今日と同じ快晴で、オープナーもやはり同じ「アイスタンドアローン」だった。深いリバーブを効かせた松尾レミの歌声が日比谷公園の新緑に溶けてゆく。バスドラが驚くほど重々しく腹に響く。「東京!」という松尾のシンプルなコールがとても心地よい。
リッケンバッカーを抱えて真っ赤なフレアスカートを翻しながら歌う松尾も、身を捩りながらギターを掻き鳴らす亀本も、ライブができていることの喜び、野音のステージに立てていることの喜びを隠しきれていない。
客席のハンドクラップと、音源よりもアグレッシブなアレンジのイントロが響きあった「褒めろよ」、サイケでドリーミーでビートニクな佇まいの「The Trip」、深いブレスからの歌いだしに物憂げなベースラインを纏わせた「闇に目を凝らせば」といった馴染みのナンバーが、GLIM SPANKYとオーディエンスの間に親密な空気を注ぎ込む。
途中のMCで、松尾が「いっしょに音楽で遊んでいきましょう!音楽が好きなひとりの人間として、今日は同じ趣味の皆さんにパワーをもらいにきましたよ」と語りかければ、亀本は客席を見渡し「こんな感じで客席を見るのはひさびさです。お酒飲みすぎて大騒ぎしないようにね」と嗜めたかと思えば「角ウイスキーもあるっぽいですよ」と匂わせると客席は拍手と歓声で応える。
序盤のセットで披露された「こんな夜更けは」のアコギに乗せた松尾の甘やかな声音だったり、mabanua流のR&Bマナーを効かせた「Up To Me」からは、アップデートされたGLIM SPANKYのスタイルを感じ取れた。
中盤のMCでは、GLIMのライブでは恒例行事化している松尾&亀本によるファッション&ロックTチェック。オーディエンスとコミュニケーションしつつ、亀本は「ロックを聴くヤツ減ってんな!ってすげえ思うんですけど、どうですか皆さん?でもやっぱ楽しいですよねロック!僕らもロックミュージックの看板を背負ってがんばりたいって気持ちすごいありますんで!」と表明して喝采を浴びる。
松尾レミいわく「野音でやったら気持ちいいなって持ってきた曲」という「All Of Us」がじわじわと身体を火照らせる。そして「E.V.I.」だ。ブーストが効いたベースラインとタイトなドラミングにBOOM BOOM SATELLITESの「INTERGALACTIC」を重ね合わせてしまったのは、ドラムセットのスツールに座っていたのが福田洋子だったからに違いない。
「大人になったら」の限りなくやさしく、そして感傷的な歌声とレイジーなギターが夜風に乗って都会の宵に紛れてゆく。この日のラストは、アルバム『Walking On Fire』でもラストを飾った「Circle Of Time」。格段にスケール感を増したサウンドに圧倒される。松尾レミの「ありがとう東京!」という声が拍手で包まれる。
ライブ終盤、6thアルバム『Into The Time Hole』の8月3日リリースと、そのタイトルツアーの開催を発表。アンコールでは5月29日先行配信の新曲「形ないもの」も披露したGLIM SPANKY。アンコールのラストで歌われた「ワイルド・サイドを行け」は、彼らがここからもう一度新たなスタート切るのだという意思表示のように思えた。そう、”仲間とこじ開ける未来は絶景さ”。
(おわり)
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/上飯坂 一
LIVE INFO Into The Time Hole Tour 2022
11月2日(水)横浜ベイホール
11月4日(金)福岡DRUM LOGOS
11月5日(土)広島CLUB QUATTRO
11月11日(金)NHK大阪ホール
11月23日(水)札幌ペニーレーン24
11月25日(金)仙台GIGS
11月27日(日)長野ホクト文化ホール
12月3日(土)名古屋市公会堂
12月11日(日)新潟LOTS
12月20日(火)昭和女子大学 人見記念講堂(東京)
12月21日(水)昭和女子大学 人見記念講堂(東京)
GLIM SPANKY『Into The Time Hole』
2022年8月3日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/TYCT-69242/5,170円(税込)
通常盤(CD)/TYCT-60198/2,970円(税込)
ユニバーサルミュージック