DEZERTが、主催イベント『DEZERT PARTY Vol.17 -EXTRA EDITION- DEZERT x DIAURA』を、5月3日に東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催した。

 

“DEZERT PARTY”は、DEZERTが活動初期から不定期開催しているイベントで、17回目の対バン相手に選ばれたのは、同世代としてシーンを牽引し続けているDIAURA。

また、サポートアクトとして、V系メタルコアバンドDEXCOREが参加した。

 

カラーや音楽性こそ異なるが、それぞれの方向に尖りきった3バンドが一堂に会し、ぶつかり合う一夜。

各々の確かな信念と、同じシーンを走る絆を感じさせてくれる良質な時間であった。

それと同時に、終盤は自由すぎる男の予測不能な展開に全員が巻き込まれることとなる。

そんなカオスで楽しい3時間半超えのロングパーティーの模様を、オフィシャルレポートでお届けする。

 

<DEXCORE>

フロアは超満員。開演前から熱気がムンムンと漂っていて、今日が間違いなく熱い夜になるという兆しを見せていた。

ほぼ定刻に暗転し、DEXCOREが登場。1曲目の「SKINDEEP」から、ビリビリと身体を震わせる爆音と咆哮で、手加減なしのパフォーマンスを叩きつける。

一瞬で高揚したオーディエンスも、架神 -kagami-(Vo)の先導で一斉に中指を立て、彼らの攻撃的なライブに加担していた。

 

“俺たちなりのヴィジュアル系メタルコアを証明する”という架神 -kagami-の宣言から始まったのは、「DRAGOUT.」。

梦斗 -yumeto-(Gt)の切れ味鋭いサウンドを放ちながら全身を使って暴れ回る姿や、澄 -TO-RU-(Ba)とMAKI(サポートDr)の息の合ったパワープレイ。

DEXCOREの信念に基づいた超ハードなステージは、フロアを圧倒的なパワーで巻き込んでいく。

 

主催のDEZERTに対して、「偉大なアーティストであり大好きな先輩。この場を設けてもらえて幸せです」と改めて感謝の思いを伝えつつ、ラストはバラードナンバー「Still alive」。

“もう少し生きてみよう”というシンプルなメッセージを、美しいメロディに乗せて力強く届ける。

オーディエンスのシンガロングも加わり、フロアは大きな感動に包まれた。余韻をたっぷりと残し、DEXCOREのパートは終了。

サポートアクトという立ち位置ながら完全に会場をホームの空気に変え、ドラマティックな展開まで作り上げた濃密な20分間であった。

 

<DIAURA>

2番手は、DIAURA。DEZERTとぶつかり合うのは、2020年2月の新宿BLAZEで行われたイベント公演以来、実に5年ぶりとなる。

崇高な雰囲気を纏うSEと共に、達也(Dr)、翔也(Ba)、佳衣(Gt)が登場。最後に登場したyo-ka(Vo)がお立ち台に上り、

「お前らのその狂った声……全部ちょうだい」と威厳に満ちた表情で命じたのを合図に、「倒錯症レジスタンス」でライブは幕開け。

反旗を翻すような攻撃的なサウンドと達也の刻むタイトなリズムに合わせて、「オイ! オイ!」という叫び声が上がり、力強い拳が掲げられる。フロアもすでに臨戦態勢だ。

 

間髪入れずに「胎動」が始まると、“待ってました”と言わんばかりのヘッドバンギングの嵐。

yo-kaの先導で会場の全員が一斉に十字を切る動きは、DIAURAのライブを象徴する圧巻の光景だ。

エレクトロなサウンドを混ぜ込んだ「THIS IS MY CULT.」でボルテージはさらに上昇し、オーディエンスが一斉にモッシュで左右に大移動。

渦巻く熱気のせいか、yo-kaは上着を脱ぎ棄てる。翔也と佳衣はフロアを煽りながら華麗なソロパートも披露し、会場をわかせた。

 

ここで、ミステリアスなピアノから始まる重厚なナンバー「SIRIUS」、切なくも温かい最新曲「Ephemeral」とバラードを続けて演奏。

yo-kaの力強く耽美な歌声と、流れるような優美なメロディが会場を包み込む。

落ち着いた空気も束の間、「Ephemeral」のカップリング曲「Optimal fiction」では、再び愚民(DIAURAファンの名称)たちが一糸乱れぬ振り付けを見せる。

こちらも最新曲だが、すでにライブのノリは完成しきっているようだ。一体感をそのままにキャッチーな「STARRY INFERNO」へ。

曲が終わると、yo-kaの「呼べ」という端的な命令により、会場は一瞬にして気合いの入ったメンバーコールで溢れかえる。圧倒的な統制力を見せつけられた瞬間だ。

 

MCでは、yo-kaが「DEZERTとはお互いバンドが初期のころからよく対バンであたっていて、カラーも価値観も全然違う。

でもライブは熱くて楽しかったし、やっぱカッケーなと思わされた。

そういうのがあったから、DIAURAはDIAURAとしての音楽を、迷わず選んでこれたのかなと思います」とDEZERTに対する思いを吐露。

そして、「DIAURA、DEZERT、DEXCORE、厳ついじゃん。最高に厳ついパーティーやろうぜ、いいかい!」と全力でフロアを煽り、後半戦へ向けてエンジンをかけた。

 

「お前たちのマスターは誰だ!」「yo-ka!」というお決まりの応酬から、DIAURAの代表曲の一つである「MASTER」へ。

後方や端の方まで全てのオーディエンスが一斉に頭を振り、激しく美しいDIAURAの独裁の庭が完成する。

勢いをそのままに「赤い虚像」を投下。赤い照明が怪しい雰囲気を作り上げる中、

ステージ上ではメンバー同士がアイコンタクトを交わし、楽しそうな表情を浮かべていたのも印象的だった。

 

ラストは、もう一つの最新曲「Doomsday」。

ヘヴィなイントロから始まり、繊細に表現するパートや滑らかでメロディアスなパートなど、多彩な表情を見せる一曲で締めくくる。

変わらぬ様式美と、パワーアップした姿の両方を見せながら、DIAURAの確立した世界観を余すことなく提示し、4人はステージを去った。

 

<DEZERT>

最後は、今夜の首謀者であるDEZERT。怒声のようなメンバーコールと歓声に迎えられ、SORA(Dr)、Sacchan(Ba)、Miyako(Gt)が登場、

千秋(Vo/Gt)はポジションに着いて早々マイクスタンドを構えて前屈みになり、

ギラついた獣のような視線でフロアを射抜く。Miyakoが「「眩暈」」の緊張感漂うイントロを奏でると、

あちこちから歓喜の悲鳴が上がる。初っ端から狂気とエネルギーに満ちたヘヴィなサウンドを叩きつけた。

 

ここからさらにギアを上げていく……と思われたが、突如ベースが鳴らないというアクシデントが発生。

千秋は「お前らがベースしろよ! 声低くしろ」とフロアに無茶ぶりしつつも、ドラムとギターのみで場を盛り上げ、臨機応変に対応。

間もなくベースが復活すると「「死刑宣告」」で仕切り直しへ。

止まった流れを巻き返すよう、怒涛の勢いで煽り、オーディエンスもそれに応えるよう声を張り上げ、頭を振り倒す。

 

その後も復活したSacchanがスラップベースを繰り出すリズミカルな「匿名の神様」、

SORAの重量感のあるドラムが殺気を漂わせる「「絶蘭」」など、攻撃的の高いナンバーを続けて投下。

撮影OKのアナウンスをした「ミスターショットガンガール」では、

演奏前に「最初は恥ずかしかったけど今日はあなたたちのハートにバチっと撃つんで!」と宣言した通り、イントロで千秋が指で銃を撃つポーズをキメる場面も。

 

ここでゲストとして登場した架神 -kagami-が、千秋と共にフロアへ突入。

2人は会場中央付近のカウンターテーブルによじ登ると、なんとオーディエンスに360°囲まれた状態で「「変態」」を熱唱する。

勢いよく始まったWall of Deathでもみくちゃになったフロア。その中心で歌詞が書かれたカンペを掲げながら一つのマイクで一緒に歌う千秋と架神 -kagami-。

<やりたいようにやって死ねばいい>という歌詞の通り、生ライブならではの楽しさを肌で感じた、間違いなく今日のハイライトシーンである。

ちなみに「すげー盛り上がる一言よろしく」という千秋の振りで架神 -kagami-が言った「Cheers, everyone!」という煽りは、この後も延々擦られ続けることになる。

 

「あなた一人に歌います」という前振りから高らかに歌い上げた大切な一曲「僕等の夜について」、

そしてキラーチューン「「君の子宮を触る」」で暴れさせたあと、千秋は今の思いを真摯な言葉で伝える。

 

「DIAURAとは歩いてきた道は違えど、ふんばってきたバンドだと思う。俺らも去年武道館やって、もっと上に行けると思ったよ。

6月から47都道府県ツアーもあるし、また頑張らないと。でもDIAURAがふんばってるとき俺たちがふんばってるとは限らないし、

あなたが頑張らなあかんとき俺らは同じ境遇じゃない。人間は足並みが揃わないんです。

でも、どんなとき、どんな気持ちでいても、音楽を楽しみにライブに来たあなたが頑張ろうと思う、そんなバンドになりたい」。

 

誰かが日々を頑張る理由になる。そんな信念を丁寧に伝えてから届けたのは、集まった全ての人に寄り添う曲「TODAY」。

明るく照らされたフロアにはDEZERTの思いを受け止めるようたくさんの手が掲げられ、千秋もまたフロアに向かってまっすぐに手を伸ばす。

このかけがえのない美しい光景を残して、まるでジェットコースターのように激しくて優しいDEZERTのライブは幕を下ろした。

 

<セッションパート>

この時点で元のタイムスケジュールから大幅にオーバーしていたが、アンコールの声に応えてDEZERTメンバーとDIAURAからyo-ka、佳衣が登場。

これまでほとんど会話を交わしたことがないという彼らだが、この日はステージ上で和気あいあいと話す貴重な光景が見られた。

千秋が佳衣に「絶対(運転の)速度守りそうっすよね。駐車上手そう!」と言い放ち笑いを取ったかと思えば、

yo-kaが「お前らのマスターは誰だ」の煽りを関西バンドがやったら関西弁になるのかと言い出し天然っぷりを発揮。

また、Sacchanと佳衣が東北弁バージョンの「お前らのマスターは誰だ」を披露したりと、ツッコミどころ満載のトークに何度も爆笑が起こる。

 

絶妙な距離感を保っていた2バンドの仲がぐっと深まったところで、話題にも上がっていた「MASTER」を6人で演奏。

Sacchanのピアノによるイントロから始まる、この日限りの特別なステージを届ける。

yo-kaと千秋がお立ち台の上で肩を寄せ合ったり、佳衣とMiyakoが一緒にカメラに向かってピースサインをしたり、

yo-kaがSORAのシンバルを叩いたりと、着実に距離が近づいているのが演奏中にも感じられた。

 

会場は最高潮に盛り上がっていたが、ここで千秋が「お前らの愚民は誰だ!」と煽り、観客を一気に戸惑わせる。

「滑ったっす」と落ち込みつつも「千秋!」との声が返ってくると、「なんやそれ、ムカつくー死ねー」と言いながら「「殺意」」へなだれ込む。

架神 -kagami-も乱入し、ボーカリスト3人が向かい合ってデスボイスを繰り出す、迫力満点のステージを展開。

間奏で千秋がyo-kaに近づき「yo-kaくん、これはキスする流れや!」と言うも叶わず、

曲終わりに「次回DIAURAと対バンするとき、俺たちキスします」と勝手に宣言し、会場を沸かせた。

 

最後は出演者全員がステージに登場し、集合写真を撮影。これでお開きかと思いきや、始まったのは全員でのパフォーマンスが見たいオーディエンスからのアンコール。

そこで千秋が「世論なんでしかたないっす」と他のメンバーを説得し、打ち合わせなしの即興で「「秘密」」を投下。

いきなりマイクを渡された梦斗 -yumeto-は戸惑いつつも笑顔を見せ、達也とMAKIもシンバルを叩いてSORAと一緒にプレイするなど、セッションならではのお祭り状態に。

曲のブレイクのタイミングで、千秋はフロア後方を通って関係者席に座り、自分以外が揃っているステージを見て「この光景シュールすぎるな、めっちゃおもろい! 楽しかったね!」とご満悦。

また、横にいた筆者のパソコンを千秋が覗き込み、「レポっすか? いい風に書いといてくださいね」と絡んでくるという前代未聞の行動をしていたことも記しておこう。

 

着地点を見失い、収拾のつかない状況を見かねたSORAが、「よーし、みんな最後に頭振って帰ろ! ね、千秋。それでいい?」と優しく問いかけると、

千秋は「絶望!」となぜかシャウトで返答し、ようやく曲に復帰。12人の放つヘヴィなサウンドで、フロアは最後まで元気に暴れ狂った。

 

これで十分綺麗に締めくくられたように思えたが、まだ納得していないらしい千秋の提案で、なんと本日3度目の「MASTER」を演奏。

大喝采を浴びながら、狂騒の宴はようやく終わりを迎えた。千秋の「次はDEZERT PARTY Vol.18で会おう!」という言葉を最後に残して。

 

熱狂と混沌に満ちた超ボリュームのライブとなった、17回目のDEZERT PARTY。この3バンドにしか生み出せないエキサイティングな時間は、

オーディエンスの胸に“最高に楽しいライブの記憶”として深く刻み込まれたことだろう。

終演後の会場にあふれる笑顔と熱気が、その証拠である。そしてその記憶は、日常を頑張る糧として輝き続けるのだ。



カメラマンクレジット:Megumi Iritani

ライタークレジット:南 明歩

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