DEZERT主催のツーマンツアー「DEZERT Presents【This Is The“FACT”】TOUR 2024」の大阪公演が10月20日、大阪・BIGCATで開催された。
本公演は東名阪3カ所で開催されるもので、東京公演にはMUCC、すでに終了している名古屋公演にはlynch.といった、
シーンの先輩バンドとの競演で、対バン相手の本拠地にDEZERTが乗り込む形で行われる。
12月27日(金)に開催される、キャリア初となる日本武道館でのワンマンライヴに向けての腕慣らしか、はたまたぶつかり稽古か。
何より、今回の大阪公演はボーカル・千秋にとって、人生で初めてライヴを観たバンド・Sadieとの対バン。
思い入れの強さはもちろん、先輩バンドとのツーマンツアーで彼らが何を想い、得ることができるのか。
この日の先にある日本武道館のステージにも思いを寄せつつ、ソールドアウトとなった会場には両雄のファンが数多く詰めかけた。
 
2015年の活動休止から、昨年6月に復活を宣言。今年春の東阪でのライヴで、約8年の時を経て完全復活を遂げたSadie。
復活とは言うものの、活動休止中にメンバーそれぞれが別のバンド活動を始めていたこともあり、Sadieとしてのライヴ活動はまだ数える程度。
しかも年内のライヴはこの日が最後と、このツーマンライヴが貴重なステージなのは言わずもがな。それもあってか、この日のセットリストは攻撃力高めのものばかり。
ファンを楽しませるのはもちろん、Sadieが生まれて初めてのライヴ体験だった学生時代の千秋少年に“憧れ”だけで終わらせない。
バンドの確実な進化を見せつけるため、1曲目に選んだのは「心眼」。「大阪! ひとつになろうか!全員でかかってこい!」、
真緒(Vo)の咆哮にも似たシャウトが響くなか、重低音が一気にフロアに降りかかる。
 
正直、彼らが活動を休止していた8年という年月は大きいだろう。シーンの動きにも変化があるし、DEZERTをはじめとした若手バンドの台頭も大きい。
この日も、Sadieのライヴを初めて観るという観客も少なくはなかった。ファーストインプレッションより、ファーストインパクトでその存在感を見せつけたい。
その思いからか、剣(Gt)、美月(Gt)、亜季(Ba)、景(Dr)の4人が打ち出すサウンドはとにかくタフで、初っ端から身体がヒリつく。
 
次曲「Grieving the dead soul」ではオーディエンスの高速で振り回されるヘッドバンキングに満足気な表情を見せたかと思えば、
「もっともっと首もってこい!」ととにかく煽る真緒。うねるように鳴り響く重低音に絡める華やかなメロ。
激しさのなかにも“魅せる”を意識したSadieらしさに溢れたナンバーに、誰もが歓喜の声を上げる。
続く「MAD-ROID」では真緒のハイトーンボイス、観客のテンションをアジテートしていく美月のギター、急展開していくサウンドに心踊らされる。
最初こそ様子見だったDEZERTファンが徐々にリズムを取り、頭を振りだす姿もあって、たった数曲で喰いつかせるのはさすがのひと言に尽きる。
 
 
「DEZERTのファンの皆様、初めまして。我々、8年振りの復活で、ある意味DEZERTの後輩バンドです」と謙遜しつつ、
武道館に向けて奮闘する後輩に向け、先輩として全力でライヴをすること、音楽でぶつかり合う機会があることに感謝の気持ちを伝える真緒。
先述した通り、Sadieは年内でのライヴ本数が少なく、バンドの復活をアナウンスした時には対バンのオファーが数多くあったらしい。
その中から唯一、DEZERTを選んだのはバンドの熱烈な想いがあったからこそ。
特に千秋からのアピールは凄まじかったらしく、この日のセットリストも千秋からの要望が色濃く反映されているらしい。
 
「under the chaos」がまさにそれ。曲が始まった途端、千秋“少年”がステージに乱入するどころか、
フロアの最前列でファンに交じってライヴを楽しんだりと、やりたい放題。
メンバーもやれやれといった感じで苦笑いしつつも、後輩とのステージを満喫。相思相愛ぶりを楽しんだところで、
ステージは後半に向けて再び、「Rosario-ロザリオ-」「Jealousy」と硬度の高いサウンドでオーディエンスにぶつかっていく。
美月、剣の2人が濃厚な世界観を生み出し、そこに景の芯を打つ怒濤のビート、
亜季のどっしりしつつもゆらぎのあるベースラインが観客を興奮の坩堝へと誘い込む。
観客の興奮度合いもヘッドバンキングの波の大きさでよくわかる。
 
「ほんとに千秋は厚かましい。勝手に出てきて、勝手に歌って…。ほんとに可愛くて仕方ない」と、真緒はさきほどの千秋とのステージを振り返りつつ、
これからのSadieを、最新のバンドの姿を楽しんでほしいと、改めて復活に懸けた想いを語る。
「もっともっとブチ込んだ姿を見せて! これじゃあDEZERTに顔見せできない。先輩の顔、立ててくれよ!かかってこい!」と、
「陽炎」からラストスパートへと駆けていく。突きあがる拳の数は増え、オーディエンスの声もますます大きくなるばかりで、
それをまだ足りないと言わんばかりに、なぎ倒すような勢いあるサウンドをぶつけていく5人。
メロウなギターサウンドと硬派なリズムが飴と鞭みたく降り注ぐ「クライモア」には観客も興奮を抑えきれず、
フロアの熱気はさらに上昇。ラストは「そんなもんじゃねーよな! 首を捧げにこい!」と、「迷彩」でトドメ! 先輩バンドの貫禄、気迫を見せつけつつ、
「DEZERT、Sadie、ひとつになれ!」とひと際大きなシャウトでフロアを圧倒し、ステージを後にした。
 
 
いつものループし続ける会場BGMが止まり、するりとメンバーがステージに入ってくる。
Sacchan(Ba)、Miyako(Gt)、SORA(Dr)はいつもの調子に見えたが、Sadieのライヴでの興奮が抜けきれないままか、千秋(Vo)のハイテンションぶりは目に見えて明らか。
かと思いきや、「虚構の真実へいこうか??」と「「眩暈」」ですっと心地よい緊張感がフロアを駆け抜け、SORAの硬質なビートがドロリとした詞世界を明確に描き出していく。
 
「お前らの心臓の音、聴かせてくれ!」の言葉から続くのは新曲「心臓に吠える」。沸き上がる衝動をビートに換え、それでも興奮を抑えきれず拳でシンバルを叩くSORA、
開放感あるサウンドなのに心の内側を抉るようなMiyakoのギターに目が離せない。
Sacchanの細やかなベースラインもオーディエンスのヘッドバンキングをより一層激しくさせる。
「生きてる? たくさん一緒に生きてくれます? SadieとかDEZERTのファンでも関係なく、全員でいこうぜ!」、
ステージの上では先輩も後輩も関係ない。魅せたもん勝ち、なのがよくわかる。千秋の腹の底からひり出すシャウトと、
芯の強さを感じる清廉とした歌声、交互に繰り出すギャップに夢中になって魅入ってしまう。
 
フロアがわっと波打った「MONSTER」では千秋が「BIG CAT、すでに最高やけどオレら次第で、あんたら次第でもっと最高に!」と貪欲な表情を見せ、
オーディエンスとの一体感、さらなる高揚感を求めていく。続く「匿名の神様」ではSacchanのご機嫌に躍れるベースで特大の横モッシュが発生。
千秋はポップなメロに乗せ、皮肉たっぷりなリリックをまくし立てるように合わせていく。
 
MCでは学生時代に初めて観たSadieのライヴを振り返った千秋。ライヴでのエピソードは明るいものだけど、学生時代は悲しい気持ちになることも多かったよう。
それでも「いま良い青春を送れているからいいんじゃないでしょうか!」と、この日のステージをポジティブ変換し、いろんな人に想いを届けたいと新曲「私の詩」へ繋ぐ。
輪郭のくっきりとしたビート、アグレッシブなベースラインが言葉に説得力を持たせていく。
ステージの照明はほの暗く、メンバーの表情がよく見えないからこそ、浸透率高く、楽曲の世界観に浸ることができるのもいい。
 
続く「神経と重力」、千秋の怪しげなギターリフが鳴った瞬間にぐぐっとフロアの集中度合いが高まる。
メンバー4人は緊張感を持ちながら、どこで爆ぜるか、互いにテンションを高めながら音を鳴らす。
セッションというよりも音のぶつかり合いみたいで、気の抜けない時間がむしろ心地よい。
千秋が吠えるたび、ギターがうなるたび、ぐっと空気が締まっていく。
 
ひりつく空気のなか、「暴れてやろう! 覚悟できてる?」と「「秘密」」からラストスパートへ。
「「遺書。」」、「「君の子宮を触る」」とキラーチューンを連投するなかでも、Sadieファンへの配慮も忘れない。
フロアを全方位眺めつつ、千秋は「みんなと作り上げた文化があるんです! ぜひSadieファンにも歌ってほしい。鍛え上げたオレとファンの歌唱力!」と、
シンガロングを求める。この2曲はライヴに欠かせない定番曲で、いつだって大盛り上がり必至だけれど、必至だからこそタフさが欠かせないのも事実。
学生時代の千秋少年がこの会場でSadieのライヴを体感し、感情を爆発させた時と同じような気持ちを誰かに与えることができるのか。
その手応えを感じたのか、ライヴ中「楽しい!!」と思わず声に出していた千秋はとても素敵な笑顔を見せていた。
 
「青春を回収するのではなく、戦うのではなく、繋がるって本気で思った。どっちのバンドが好きな人も、気持ちを通じ合おうよ」と、
改めて今回のツーマンツアーで感じた思いについて語り、集まった観客へ感謝の思いを伝える。「声が出なくなるまでDEZERTを続けていく。
最後までやりたい。今年一年、(ファンから)ありがとうって言われたけど、オレらがありがとうって言える、そんなバンドになりたいし、武道館でも言いたい。
13年作ってきた看板を叩きつける日が武道館。良かったら遊びに来て」と、武道館公演に懸ける思いを熱弁。
 
「お前らが特別だって言えるように、最後まで4人でかき鳴らす。いつだってありがとうって言ってあげるから。
今日が良い日だって言ってあげるから。伸ばしてくれたら、特別な手繋ぐから」、ファンへ、そしてライヴへの思いを込め、ラストは「TODAY」へ。
心の内側から照らし出すような言葉を受け止め、最後の音の瞬間まで漏らすまいと、
より高く手を掲げるオーディエンスに向け、渾身の音を鳴らす4人の姿はなんとも頼もしかった。
 
「10月20日、SadieとDEZERTが繋がった最初の夜。覚えておいて」と、アンコールは前回の名古屋公演と同じくセッションへ。
ライヴ前のMCでは、千秋のSadieへの溢れる愛が止まらず、思わず真緒が「あとで飲みながら話そう」と制するシーンも。
それでも「千秋の青春を回収、ということで大好きな曲をやらせてもらっていいですか」と披露したのは「サイコカルチャー」。
DEZERT+真緒と美月、スペシャルバンドでのステージに思わずガッツポーズを見せる千秋がなんとも愛おしい。
興奮を抑えきれない千秋がフロア最後方まで突き進んだと思ったら、それにつられて真緒までフロアに降り立ったり。
無邪気にはしゃぐ後輩たちの姿に魅かれてか、剣も乱入して和気あいあいとした雰囲気に。
さらに千秋少年が初Sadieライヴで体験したという“思い出の水吹きかけ”も再現。最後には水かけ祭りになってステージはもはやカオス状態に…。
それでもキメるところはばっちりと決めるのがさすがで、真緒と千秋のシャウトのぶつかり合いは圧巻!
 
「今日、関西で一番ヤバイ場所にしようや!オレたちのラブソング!」と、DEZERTでの「「殺意」」では慣れあいではなく、
ヒリヒリしたぶつかり合いを求めていた千秋の思いが伝わるボーカル同士のセッションにオーディエンスは大興奮。
最後は手を握り合い、真緒がキスしたところで黄色い歓声が沸き起こるなか、ステージは終了。
と、思ったら千秋少年の興奮は止まらない!
千秋がギターを弾き、予定外のアンコールとしてSadieの「迷彩」を披露。
まさかの展開にSadieメンバーも戸惑いつつも、可愛い後輩の無茶ぶりにもしっかり応えるところが頼もしい。
 
戦うのではなく、繋がることを意識したというツーマンライヴだったが、名古屋公演でのlynch.とのステージとはまた違う、“愛”の繋がりを感じるステージ。
次の東京公演、MUCCとのステージではどんな“繋がり”を見せるのか。
そして繋がりの先に、日本武道館でどんなステージを見せてくれるのか期待が高まる。

ライター:黒田 奈保子

カメラマン:Satoki Demoto

DEZERT Presents 【This Is The “FACT”】 TOUR 2024 VS Sadie
2024年10月20日(日)大阪BIGCAT

SETLIST
 
<Sadie>
1.心眼
2.Grieving the dead soul
3.MAD-ROID
4.under the chaos
5.Ice Romancer
6.Rosario-ロザリオ-
7.Jealousy
8.陽炎
9.クライモア
10.迷彩
 
<DEZERT>
1.「眩暈」
2.心臓に吠える
3.MONSTER
4.匿名の神様
5.私の詩
6.神経と重力
7.「秘密」
8.「遺書。」
9.「君の子宮を触る」
10.TODAY
 
EN1 サイコカルチャー w/真緒・美月・剣 (Sadie)
EN2 「殺意」w/真緒・美月 (Sadie)
EN3 迷彩 w/真緒・美月・剣 (Sadie)

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