今年8月には大型フェス『SUMMER SONIC 2024』に出演するなど、その存在感をますます広く知らしめているCVLTE。今回は全国対バンツアーとして、11月14日の北海道公演を皮切りに、愛知・大阪・福岡・東京の全国5都市を周遊。本稿にて振り返るツアーファイナル公演では、coldrainをゲストに迎えたほか、メンバーのFuji(Ba)が12月8日をもってバンドを脱退したのは既報の通り。彼の姿をワンマンライブの舞台で見られる最後の機会となった。さて、“ホーム”といえるZepp Shinjukuで、CVLTEはどんな一夜に酔いしれさせてくれたのか。
<CVLTE ライブレポート>
coldrain、人の雪崩を巻き起こす熱狂のステージ 途中にはHALが急遽演奏する楽曲も
キャリアでいえば、coldrainが先輩、CVLTEが後輩となる彼らの間柄。だが、この日は後輩の成長を祝うべく、coldrainの方が先攻でステージに。全9曲を用意してきたなかで、CVLTEのファンからしたら大きなカルチャーショックを覚えたのでは?
というのも「NEW DAWN」「Cut Me」など、ステージ冒頭からラウドロックの骨あるサウンドにあわせて、フロア中央を開ける“お約束”が発生したのはまだ理解ができるとして、場面によっては“リフト”の上にさらなるリフトが生まれようとしていたり、彼らが自分の上を転がっていったり。とにかく人が雪崩のようで、関係者エリアから俯瞰していて、ライブ終盤には洋服や髪型などの特徴から、転がりの“常連”を覚えてしまえたくらいだ。
一方、前述の楽曲を演奏する際、RxYxOによるピック弾きのベースや、Katsumaの的確すぎるドラムなど、リズム隊は細かな、かつ重たいフレーズを打ち込みながらもほとんど上体を揺らさず。その不動の姿が、ゾンビ映画のようなフロアと対照的に映り、平凡な言い方だが、とても怖かったのを覚えている。
これについては、フロントマンのMasato(Vo)が後のMCで語った通りで、“上から人が降ってくる”状況は、一歩外に出ればあり得ないという自覚はあるらしい。が、彼らが育ってきたライブハウスとは、単純にそうした空間だった。
「これからもいっぱい人が降ってきますけど、大丈夫ですかね?」。この場面で“YES”以外の選択肢はないのだろう。そんな肯定への“ご褒美”か、あるいはひと足早くフロアの熱量を確認したくなってか。まだ出番前にも関わらず、CVLTEのHALが姿を見せて、なぜかドラムポジションに腰を下す。「本番でできるかわからない」と言いつつ、両バンドのドラマーたちが話し合って急遽、これから披露する「THE REVELATION」を、なんとHALに任せてしまうというのだ。
スティックの持ち方から、音のしなやかさなど、KatsumaとHALでスタイルは違うもの。だが、演奏してしまえばそんなことは関係ないし、なによりHALは普通にドラムを叩きこなしていた。その姿に途中、Sugi(Gt)やY.K.C(Gt)がドラムの方を向いて共鳴するシーンも。ツアーファイナルともなれば、こんなサプライズだってある。フロアのみならず、バンド全体のボルテージまでもが一気に上がり、そのままライブ終盤へと突入していった。
復讐心や救いを求める切ない想いを歌いながらも、ライブで聴くからか、そこになぜか“光”を見出すように、新たな解釈を感じてしまった「SEE YOU」「Vengeance」。そして締めくくりには「Final destination」が。Masatoは途中、こんな誓いをステージに託してくれた。この言葉が間違っていないことを、これから紹介する頼もしい後輩のパフォーマンスで、知らしめられることとなる。
「アイツらに刺激を受けて、アイツらに刺激を与えて」「日本のロックシーンをヤバいものにしていくんで、これからもよろしくお願いします!」。
CVLTE、ライブ前半の“穏やかさ”は洗練の表れ? 「save you.」ではMasatoの登場も
転換を終えて再び幕が開くと、ステージ後方のLEDには架空のゲームの待機画面が映されていた。開演後、画面上の「GAME START」がコマンドされると、モード選択で選ばれたのは最高難度の「グリーディーモード」。そのままプレイヤーボイス、スポットライトなどの設定に進んだのだが、音量調整をすればスピーカーから流れるBGMがぐんと大きくなったり。ライトのON / OFFを触れば、ステージ照明が前方から後方へと生き物のように動き出したり。いわゆる“4DX”ではないが、参加者がリアルな体験をする、没入型ライブ(もしくはゲーム?)のような作り込みに期待感を煽られる。
設定の最後は、生体認証とプレイヤーレベル測定のため、フロアのファン全員でステージに向けて歓声を発砲。いよいよ、ゲームスタートだ。
全18曲を披露したステージだが、ライブ前半の空気は“これまでのCVLTE”にあまりないものだったと思う。彼らの持ち味であるラウド・ハード・サイケデリックさを少し緩めてチル、というより、横揺れしていて気持ちがよい楽曲が続いていたからだ。これは、最新作『eepY.EXE』のなかでも、2曲目に披露した「smileY:)」の存在が大きいのかもしれない。
しかしながら、これは決して、いわゆるバンドの“トゲ”を失ったことを意味するのではなく、サウンドと演奏が洗練されたのだと言いたい。またライブ後半の「eepY.EXE (feat. iRis EXE)」にも、卓上ベルの“チン”という音や、あの“猫ミーム”をサンプリングした音声が入っているなど、新曲群にはこれまで以上にバラエティ豊かな音色を取り入れているわけだし。
映像の作り込みの側面でも、バンドのレベルが格段に上がっていることを実感させられた。彼らの魅力とする“映像美”の進化に頷かされる。
6曲目「kuromi. (feat. 4s4ki, sacha online)」で4s4ki、15曲目「eat acid, see god. (feat. Paledusk)」では、同バンドボーカルのKaitoが、それぞれサプライズで客演として登場。さらに11曲目「save you. (feat. Kaito Nagai)」では、まさかのMasatoがカバーする形で参加してくれるなど、驚きの展開が待ち受けていた。
この直前に一度、それまでのゲームデータを上書きセーブし、会場の空気がハードな空気にシフトしていた場面。後半を駆け抜けるべく、もうひと押しがほしいと思っていたところで、最高のボーカルが後押しをしてくれる形となった。Masatoの雄々しいデスボイスが入ることで、aviel kaei(Vo)の凛とした歌声の表情が際立つ形となり、改めてこの日の対バンに感謝を捧げたくなる。
ライブ後半はいかにもCVLTEらしい時間に。トランスやハードコアテクノなど、ドロップのたびにサウンドのジャンルが一変する「digital paranoia.」や、「eepY.EXE (feat. iRis EXE)」などを経て、ライブ人気曲でラストスパートを駆ける。「memento molly.」「tokyo insomnia.」「scorpion.」で見事、ゲームクリアとなった。
ステージ終盤。今回のゲーム模様を改めて上書きセーブしたわけだが、このデータを次に使えるのはいつになるのだろうか。あるいは、アップデートなどもあるのかも? 引き続き、あの待機画面を思い浮かべてはニヤける毎日を過ごしているが、CVLTEのメンバーよ、どうしてくれようか。
Text by 一条皓太