追加公演の舞台となったKアリーナ横浜は、超特急が昨年8月に9人体制となってからは最大キャパの会場だ。
開演が近づくにつれて、会場の隅々にまでペンライトの光が海のように広がっていく。そして、開演時間を5分ほど過ぎた18時35分。直前までSEで流れていた「BakaBakka」の音が止むと同時にステージと客席の間に張られていた斜幕が落ち、色とりどりの花々が映し出されたビジョンの奥から、それぞれのメンバーカラーを基調としたスーツに身を包んだメンバーが姿を見せた。満開の花をつけた木の下でポーズを決める9人に、この日集まった2万人の歓声、そしてペンライトの光が一瞬にしてステージに注がれるが、さらにメンバー一人ひとりがクローズアップされてビジョンに映ると、それらはより一層大きなうねりとなって会場を包み込んだ。
その光景を愛おしそうに見つめながら、9人は「Yell」を披露。愛する人との将来を誓うハッピーなミディアムナンバーで、これから始まるライブへの期待と興奮を高めていく。続く「シャンディ」では一転、シリアスな世界観をダンサー7人のタイトなパフォーマンスに加え、タカシとシューヤのエモーショナルな歌声で表現した。さらに、間髪入れず「Four Seasons」へと突入すると、伸びやかかつ軽やかなパフォーマンスで8号車を魅了。「Kアリーナ初日、みんな一緒に楽しんでいこうぜ!」というユーキの呼びかけから始まった「Magnifique」では、9人がステージの両端いっぱいに広がって8号車とともにライブを盛り立てる。その勢いのままセンターステージへと駆け出してきた9人は、さらにギアを上げるべく「a kind of love」を披露。コミカルさも含む振り付けだけでなく、途中タクヤがリョウガに向かってキス顔を見せるなど、メンバー同士の仲の良さが伝わってくるパフォーマンスに、見つめる8号車の顔にも笑顔が咲いた。
5曲を終えたところで設けられた最初のMCでは、メンバーが一人ひとり自己紹介。シューヤが「Kアリーナ、チャラチャラしてますか!?」と個性全開の呼びかけを8号車にしたかと思えば、リョウガは「KアリーナのKは何のKだか知ってる? そう、Ku(う)つくしいの、K!」とクールな口ぶりで断言し、会場をざわつかせる。また、「なにはともあれ、無事に開催できてよかった?!!!」と安堵の表情を浮かべたユーキに続き、アロハやハルも言葉にならない雄叫びを上げて無事の開催を喜んだ。自己紹介パートを締めくくるタカシは、このツアーで温めてきたという8号車との掛け合いを披露。「みんなの仕上がり具合によって本当の自己紹介ができるかどうかが変わってきてしまいます」というプレッシャーがかかるなか、タカシからの「Kアリーナと言えば?」「一家に一台?」「僕の名前は?」との問いかけに、テンポよく「タカシやで!」と答えていった8号車。その結果、最後は無事にタカシによる“本物の”「タカシや?で!」が飛び出した。
自己紹介を終えたメンバーが順にバックステージに去っていき、気付けば1人ステージに残されたユーキ。ここではユーキが一発ギャグを披露するのが本ツアーの恒例となっており、この日も「みんな引くなよ(笑)。温かく見守ってくれよ」と言ったのち、「ヨッシャ!」と静かに気合を入れて「最初は中華!じゃんけんぽん! あっち向いてホイコーロー。こっち向いてチョ(ショ)ウロンポー」と、渾身のフレーズを投下。直後にコーナーを終えようとするも、メンバーからイヤモニを通して「エビチリでひとネタ」というお題が出され、渋々ながらも振り切った様子で「エビチリ!エビチリ!エビチリ!」とエビのように腰を曲げた動きとともに披露し、会場を大いに沸かせた。その後、照れ隠しのように「Kアリーナと言えば?」「ユーキだよ!」「一家に一台?」「ユーキだよ!」と、先程のタカシの自己紹介を真似た口上で8号車とのコールを楽しんでいたところに、ピーピーピー!と笛を鳴らしながら車掌姿のシューヤが登場。まずはタカシの口上を「パクった」として「現行犯逮捕です!」とツッコミを入れたのち、「ここ、駅のホームですから!電車来ますから!」と注意していると、学ラン姿のリョウガ、タクヤ、マサヒロ、大学生のような普段着姿のカイ、アロハ、スーツ姿のハルが続々とステージならぬ“ホーム”に集結。その際、タクヤは先程ユーキが見せたエビの動きを模しながら登場し、8号車の笑いを誘った。
そこに現れたカラフルな車両“Rail is Beautiful号”に乗客役の7人が乗り込み、もう1人の車掌役・タカシが安全確認、乗車確認、そして8号車の笑顔を確認すると、「出発進行!」と号令をかけて「Rush Hour」がスタート。吊り革を使ったコミカルな歌とダンスがクライマックスに差し掛かったところに突然、真っ赤なワンピース姿のユーキが登場。そのキュートさに心を奪われた様子のアロハは、続く「Pretty Girl」で恋のアプローチをかける。タカシとシューヤの軽やかな歌声に合わせて、カイ、ハルとともにステップを踏んだかと思えば、ロマンチックにユーキをお姫様抱っこ。ラストはアロハが差し出した一輪の赤い花をユーキが受け取り、想いは成就。
こうして恋人同士となった2人は、リョウガ、タクヤ、マサヒロがウェイター姿で待ち受ける“高級フレンチレストラン”と化したステージ上段へ。ここでは、ブラスが印象的な「Table Manners」、重低音の効いた「panipani」とクールなサウンドとは裏腹に、慣れないテーブルマナーや電車で一目惚れした女の子へのアプローチに狼狽する歌詞に合わせ、身振りや表情で慌てふためく様子を体現。アロハの見事なエンターテナーぶりが光る。
その勢いのままなだれ込んでいった「Kiss Me Baby」で、2人の愛はハッピーエンドを迎えるかと思いきや……ガラスが割れる不穏な音とともに姿を現したのは、オレンジ色のワンピースに身を包んだハル。そして、「本命の彼女がいるのに、何やってんのよー !!」と言ってアロハとユーキの間に割り込んでいった。
一触即発の緊張感が漂うなか、満を辞した様子で警官姿に扮したカイが現れると、「POLICEMEN」へ突入。序盤はカオスだったものの、<恋のポリスメン>による取り締まりの結果、最後はアロハが“本命彼女”のハルにキスを試みるまでに。その様子を見たカイが「恋の事件、一件落着!」と宣言し、その場を丸く収めることに成功。新旧織り交ぜた楽曲と、笑いアリ、修羅場アリ !?のパフォーマンスで8号車を楽しませたパートを締めくくったのは「ラキラキ」。明るくて爽やかなとびきりの<Lucky music>に、9人はもちろん、8号車も一緒になって歌い、踊り、会場をハッピーで包み込んだ。
タカシとシューヤが「まだまだ楽しい旅は続きます。それでは、出発進行!」と合図を送ると、ビジョンに映し出された列車が、さらに先を目指すように動き出した。その中で思い思いに過ごすメンバーの姿に、高速で前進しながらも自分たちらしさを失わない9人の姿勢を重ねていると、列車は真っ白い光のなかへと吸い込まれていき、ステージには純白の衣装に身を包んだメンバーが姿を現した。タクヤがその手の中に握っていた種を地に放った瞬間、「Cead Mile Failte」の特徴的なイントロが鳴り響く。力強いダンスと歌声で、この“Rail is Beautiful”がまた新たなフェーズへ進んだことを示すと、今度は会場中に雷鳴が轟き、ハードロックチューン「Beautiful Chaser」でさらにダークな世界へと観客を引き込む。光と影、そして燃え盛る炎を効果的に使った演出のなか、ユーキを中心に狂気すら漂わせるダンサーたちのパフォーマンスを、8号車たちは息をつめてじっと見つめていた。
「Beautiful Chaser」の激しさから一転、続くバラードの「霖雨」ではボーカル2人だけがステージに残り、美しくも切ない歌声を響かせる。「Thinking of You」に入ると再びダンサー7人が合流し、月明かりが照らす中、繊細な表現力で楽曲の世界観を紡いでいく。いつしか景色も夜明けへと変わり、一面に咲き誇る花々、そしてステージには一輪の赤い花が……それをタクヤがそっと摘み取り、優しく頬を添えたところで、1粒の種から始まった物語は幕を閉じた。
一呼吸おいて始まったMCでは、改めて無事の開催を喜んだメンバーたち。台風10号の影響が心配されたが、リョウガから「うちには晴れ男アワードを受賞したメンバーもいますから」と話を振られたタカシは、「2020年(に受賞)やけど、まだ効力あるみたい(笑)」と笑顔で胸を張る。さらに、ペンライトの光で埋め尽くされた会場を見渡すと、その大きさを噛み締めるメンバー。
カイが担当した衣装や追加公演のタイミングで変化したステージセットについても和気あいあいと話していたところに、リョウガがおもむろに「この夏、夏っぽいことした?」と話題の転換を試みたのを機に、タクヤが思い出したように話し出した。普段から中心となってライブのMCを回しているカイとリョウガ。タクヤによると、ライブ前に2人が打ち合わせをするらしく、いつもは別室で行うところ、この日は楽屋で行われたと言い、その様子を見ていたのだが「どうする? どうする?って言うだけで、話が進まなかった」という。「だから、打ち合わせの意味あるのかな?って思った」と疑問を呈するタクヤに、カイとリョウガは「いやいやいや!」と反論しようとするも、カイから出てきた言葉は「打ち合わせした結果の、“なんか話そう”とか“最近どう?”なんだから!」と、やや劣勢。最後は「タクヤが言ったら本当になっちゃう。嘘、嘘、嘘!」と言いつつ、「で、最近どう?」としっかりオチを付け加え、8号車の笑いを誘った。
ダンサーメンバーが袖に消え、ステージに残ったボーカル2人はセンターステージに移動。そして、タカシが「今、目の前にいる大切な人をより大切に思える、そんな曲を用意してきました」と優しく告げ、壮大なバラードソング「Holtasoley」を8号車に向けまっすぐに届けた。
歌い終えたタカシとシューヤと入れ替わる形で始まったのは、ダンスブリッジ。ダイナミックなアクロバットを決めたユーキを皮切りに、マサヒロ、カイ、リョウガ、ハル、タクヤ、アロハと、それぞれの個性が光るダンスで8号車を魅了した。このパートから装いも新たにブラックのワントーンコーデとなった彼らは、タカシとシューヤも加え「Steal a Kiss」でライブ後半へとなだれ込んでいく。疾走感溢れるナンバーに乗せた挑発的なダンスに加え、アロハやタクヤ、ユーキの決め台詞に沸く8号車たち。さらに「MORA MORA」で緩急をつけた動き、ボーカル2人を含む9人で構成された複雑なフォーメーションを一糸乱れぬシンクロ率で見せつけたかと思えば、マサヒロのソロダンスから始まった「Body Rock」では、9脚のチェアを使ったクールかつセクシーなパフォーマンスを繰り広げ、8号車の視線を釘付けに。そこに「We Can Do it!」が続くと、会場の興奮は最高潮に到達。レザー光線が飛び交う中で確信犯的に8号車を挑発する9人の一挙手一投足に、8号車からは悲鳴にも似た歓声が上がり続けていた。
「Kアリーナ、まだまだ元気ですか !?」と呼びかけるシューヤをはじめ、メンバーが次々と8号車とのコール&レスポンスを繰り広げたのち、いよいよライブ終盤戦へ。新たにメンバーカラーのジャケットを羽織った9人は、「Call My Name」でステージの両端まで横一列に広がりって軽快なパフォーマンスを見せたほか、「My Buddy」「Secret Express」「超えてアバンチュール」を、8号車のコールを燃料にしながら一気に披露した。さらにリョウガを先頭にセンターステージへと移ってきた9人の勢いはまだまだ止まらず。タクヤの雄叫びで幕を開けた「SAY NO」では、シューヤ、マサヒロ、アロハ、ハルがアリーナフロアに飛び出しいき、続く「Burn!」ではカイ、リョウガ、タクヤ、ユーキ、タカシが客席へ。どんなに会場が大きくなろうとも、“8号車を近くに感じたい”という彼らの想いのこもった演出に、8号車も大きな声援とペンライトで応えた。
会場が尋常じゃないほどの熱気に包まれる中、「俺、話します」と言って口を開いたのは、12号車のマサヒロ。「僕たちは8月8日で新体制になって2周年が経ちました。(“Rail is Beautiful”ツアーの)追加公演をKアリーナで2日間できるということでずっと楽しみにしていて。正直埋まるのかな?って心配もあったんですけど、無事に満席となったのは本当にみなさんのおかげです」と感謝を述べたのち、「今日が初乗車って方も多かったですが、2回目以上の人も、ぜひまた乗車してもらえるように僕たちは引き続き頑張るので、これからもついて来てください」とメッセージを送った。そして、本編ラストの楽曲を前に気合を入れ直すかのように8号車の声を求めたマサヒロ。各階層、超特急メンバー、関係者、最後に全員の声が会場に響き渡る様子に満足すると、「それではラストの曲、楽しんでいきましょう」と言って「gr8est journey」へと誘った。
「gr8est journey」は、その名の通り“素晴らしい旅”の始まりを歌ったもの。高揚感溢れるサウンドとポジティブなメッセージの歌詞を、9人は全身全霊のパフォーマンスで届け、会場を多幸感で満たした。名残惜しそうに客席全体を眺め、口々に「ありがとう!」と繰り返しながら、最初に登場した場所へと戻っていくメンバーたち。そこに再び現れた満開の樹木は、その大きさを開演時の2倍にも3倍にも膨らませ、より一層美しく咲き誇っていた。
アンコールの声に応えて再びステージに登場した9人は、夏にぴったりの楽曲「Summer love」を披露。ステージを縦横無尽に動き回り、まだまだ夏は終わらない!と言わんばかりの熱気を8号車に届けた。
この日最後のMCでは、メンバー一人ひとりがこの日の感想と8号車へのメッセージを伝えていく。8号者への感謝とこの日の楽しさを口にするメンバーが多いなか、「ここにいらっしゃる約2万人の方々には2万通りの人生があって、その中の1日を預かっている身として、楽しい時間を過ごしていただけるように全力を尽くしたんですけれども、みなさん楽しんでいただけましたか?」と、公演にかける覚悟を述べたのはカイ。また、リョウガは「「シャンティ」のときに“あれ!?”って気づいたんですけど、股に500円玉?いや、カントリーマアムくらいの穴が開いてたんですよ」とカミングアウト。8号車のみならずメンバーをも驚きと笑いの渦に巻き込みつつ、小学校の恩師から聞いたという“失敗いっぱい大歓迎”というリョウガの言葉にカイがユニゾン!しつつ、「何を伝えたいかというと、こういうピンチのときや辛いときに助けになるというか、もたれかかってもいいような言葉だったり、存在だったりってものが僕たち超特急と言われるように、これからも頑張っていきたいと思います」とコメント。リーダーの頼もしい発言に8号車から温かい拍手が送られた。
その後は「ジョブナイラー」「fanfare」と続き、約2時間半に及ぶ公演もついにフィナーレ。最後の最後まで全力で駆け抜けた9人同様、ペンライトを振り続け、声を出し続けた8号車たちも充足の表情を浮かべている。その様子はアーティストとオーディエンスではなく、同じ目標に向かって進んでいく同志のようだ。そして、その道のりは、これまでも、これからも美しく光り輝いている――そう確信できるステージだった。
(おわり)
取材・文/片貝久美子
写真/米山三郎、笹森健一
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2025年1月4日(土)Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場) ホールA
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1月28日(火)横浜アリーナ
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超特急「Just like 超特急」DISC INFO
2024年4月17日(水)発売
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