東京ドームの客席は、10代から20代と思しき女性が目立つものの、老若男女の幅広いファンが集結していた。開演時間が過ぎ、ほどなくすると「Shut Down」が爆音で流れ出す。ニコロ・パガニーニによる「ヴァイオリン協奏曲第2番」第3楽章のロンド「ラ・カンパネラ」をサンプリングしたこの印象的なフレーズに、ドームを埋め尽くすオーディエンスから大歓声が沸き上がる。いよいよ客電が落ち、BLINK(BLACKPINKのファンネーム)御用達のハンマー型ペンライトが灯る。客席がピンクに染める中、オープニングムービーのアンビエントかつトライバルなBGMが次第に「How You Like That」のイントロへと変わっていき、ステージ中央に4人のシルエットが大きく映し出された瞬間、早くも最初のピークが訪れた。

まずは2020年6月26日に配信され、ミュージックビデオが「もっとも早く1億回再生超えたYouTube動画」としてギネス世界記録を打ち立てた「How You Like That」からこの日のライブはスタート。彼女たちの主要ソングライターであるTEDDYを中心に制作されたこの曲は、あどけなさと妖しさの二面性を持つJENNIE、ルーズでハスキーなJISOO、伸びやかで独特の節回しを持つROSÉ、そして抜群のラップスキルを持つLISAという、ボーカリストとしての4人の声・歌の特徴を余すことなくフィーチャーした代表曲だ。2NE1やBIGBANGの時代から受け継げられた、鬼才TEDDYによるエキゾティックでケレン味溢れるトラックは、オマール・ドミニク(B)率いる専属サポートバンド、The Band Sixによってドーム仕様にバージョンアップ。その骨太なアンサンブルをバックに8人の女性ダンサーを従えときにダイナミックに、ときに繊細に踊る彼女たちにただただ圧倒されるばかり。曲の後半で地響きのようなキックと共に、テンポが倍になるとドームの床が文字通り波打った。

続く「Pretty Savage」も、「How You Like That」と同様2020年にリリースされた彼女たちのファーストアルバム『THE ALBUM』収録曲だ。セクションごとに目まぐるしく景色を変えていく緩急自在のリズム隊の上で、4人が代わる代わるリードボーカルを回していくと、そのたびに歓声が上がる。ここで一瞬、ボルテージを落として「Whistle」へ。音数を絞り込み、ドラムとベースを中心に構成されたシンプルなトラックの上で、JENNIEとLISAのクールなラップが交差する。かと思えば「Don't Know What To Do」では、ジャスティン・ライオンズ(Gt)のギターをフィーチャーしたポップな演奏に合わせ、ステージ上で可愛らしいジェスチャーで寸劇を披露したり、客席に向かって笑顔を振りまきながら両手でハートマークをかざしたり、さっきまでのガールクラッシュな雰囲気とはまた全然違う一面を見せて、観客を虜にしていく。

「Lovesick Girl」は、アフターコロナの今だからこそライブで体験したかった楽曲の一つである。JISOOとJENNIEも曲作りに参加したこのEDM要素を持つエレクトロチューンは、思わずシンガロングしたくなるフレーズが随所に散りばめられており、「声出し」が解禁になったドームで5万5千人の歌声が響きわたった。

モノトーンを基調としたスタイリッシュなムービーによるインターミッションを経て、けたたましいホーンセクションのイントロが鳴り響く。「KILL THIS LOVE」は、依存的な関係に自ら終止符を打つ決心を歌うガールエンパワメントなソウルチューン。無数のレーザー光線が飛び交い、ステージからは火柱が何度も上がる中、バックダンサーと共に一糸乱れぬ見事なフォーメーションダンスを繰り広げ、ソウルフルに歌い上げる4人はまるで鬼神のようだ。さらに、アラビックなイントロが印象的な「Crazy Over You」、ラテンビートをフィーチャーした「Playing With Fire」とエモーショナルな楽曲を矢継ぎ早に畳みかけてオーディエンスを魅了した。

イントロにクランチギターを取り入れた「Tally」は、BLACKPINKにしては珍しくオルタナロックに寄せたミドルチューン。今年リリースされた通算2枚目のアルバム『Born Pink』から、ライブ中盤にきてようやく披露したのがこの曲だったのは少々意外だった。続く「Pink Venom」も『Born Pink』収録曲で、ヒップホップを下敷きに中近東やインドの楽器をフィーチャーするなど、「How You Like That」にも通じるエキゾティックな雰囲気がブルピンらしい。レーザーとストロボを駆使したこの曲のエンディングから、男女合わせて総勢16名のダンスパフォーマンスへと雪崩れ込み、The Band Sixによるジャムでライブ前半を締めくくった。

ライブ後半は、各メンバーのソロコーナーから。まずは、この日の公演の2日前にリリースされたばかりのJISOOによるソロ曲「Flower」。4人の中で、最後にソロデビューを果たした彼女のパフォーマンスを全世界に先駆けて目撃することになる。女性ダンサー6人、男性ダンサー4人の総勢10人を引き連れ繰り広げられる、ミュージックビデオの世界さながらのシアトリカルなステージに酔いしれた。さらに、JENNIEが未発表ソロ曲「I Love U & Me」を、シルエットを効果的に用いたロマンティックな演出で歌い上げる。ROSÉは『Born Pink』収録の「Hard To Love」(ショートバージョン)から、2021年リリースのソロ曲「ON THE GROUND」へ。フォーキーかつアーシーな曲調は、もともとシンガーソングライター指向でもあった彼女らしさが溢れている。そして、しんがりを務めるのはLISA。「Lalisa」ショートバージョンでのダイナミックかつ切れ味鋭いダンスばかりか、「Money」では艶やかかつしなやかなポールダンスまで披露すると、会場からは一際大きな歓声が上がっていた。
ライブ終盤では「Shut Down」「Type Girl」と再び『Born Pink』からの楽曲を繋ぎ、ライブの鉄板曲「DDU-DU DDU-DU」からの「Forever Young」にて本編は終了。ピンクのペンライトが揺らめく中、鳴り止まないアンコールがやがて「Stay」の大合唱となる。そんな感動的な光景に胸がいっぱいになっていると、トロッコに乗った4人がアリーナをゆっくりと巡回しつつ「Yeah Yeah Yeah」を歌い、続けて「STAY」を披露した。
「ショーケースから始まった長い道のりで、私たちは成長したと思います」とROSÉが挨拶。「最後の曲、ダンスする用意はできてますか?」と呼びかけた後、「As If It's Your Last」を総勢16名のダンサーと共に披露し「JISOO、LISA、ROSÉ、JENNIE、BLACKPINKでした。バイバーイ!」と全員で声を合わせてステージを後にした。
カンバックし作品をリリースするたび、そして日本を訪れるたびに一回りも二回りも進化を遂げるBLACKPINK。いまや同世代のロールモデル最高峰となった彼女たちの、これからの活動もますます見逃せない。
(おわり)
取材・文/黒田隆憲
あわせて読みたい関連記事
-
「JISOOの分まで」BLACKPINK、京セラドームで5万人熱狂
ライブ/イベント情報 -
BLACKPINK初の公式ゲーム「BLACKPINKザ・ゲーム」を本日グローバルリリース!BLACKPINKの新曲・Music Videoがゲーム内独占公開予定
リリース情報 -
BLACKPINKの過去のライブ映像がU-NEXT独占で配信スタート!プレゼントキャンペーンも実施!
USEN/U-NEXT関連 -
BLACKPINKがU-NEXTに登場!京セラドーム大阪で開催される3年ぶりの日本公演『BLACKPINK WORLD TOUR [BORN PINK] JAPAN』を見放題で独占ライブ配信決定!
USEN/U-NEXT関連