北山宏光が、全11カ所17公演を巡った全国ツアー『HIROMITSU KITAYAMA LIVE TOUR 2025「波紋-HAMON-」』のファイナル公演を、9月27日・28日の2日間にわたり、千葉/LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)で開催した。本稿では、27日の模様をレポートする。

開演前に流れていたダンスミュージックのBGMが大きくなり、カラフルなライティングが会場を彩る。ダンサー、バンドメンバーが次々と登場し、ステージを覆っていた紗幕には幾何学模様の映像が映し出される。

揺れる模様が波動のように広がっていく。紗幕が切って落とされる。ステージ中央の天空台に北山宏光の姿。

ドラムを叩き、「Drippin’」を歌い出す。EDMやヒップホップ、トレンドライクなメロディーなど、多彩な要素が詰まったダンサブルでクールな1曲だ。スティックで客席を指し、観客の視線を独り占めにする北山。かと思えば、顔の周りにスティックを持ってきてポーズ。ドラムスティックさえ、演出の小道具にしてしまう――これが北山宏光という表現者だ。

「始まりの螺旋」ではサングラスを外し、少し甘めの声をメインにした歌声を爽やかに響かせる。

ステージからアリーナに伸びた花道を駆け抜け、右手を頭上で回しながら「もっと、もっと!」と呼びかける。

自分のテンション、ダイナミックなサウンド、演出、ライティング、曲間の暗転の数秒間に別の場所に移動し、サプライズを繰り返す。ツアーを経て、そのタイミングが研磨されたことは間違いないが、その精度には驚きを隠せなかった。序盤のブロックだけでアリーナの観客をひとつにまとめ、テンションをマックスまでもっていく手腕は、本当にお見事だった。

MC。「Hey! 元気かい?」と第一声。「改めまして北山宏光です。ありがとね」と、客席を丁寧に見回していく。バンドメンバーとも軽妙なやり取りを見せ、和やかな空気を作り出した。

さらに、今回のツアーについて『波紋-HAMON-』をみなさんに受け取ってもらえるように準備してきました」と述べた後「今回のアルバムのリリックを書くために、自分と向き合った時、あの頃の若い時分を思い出した」と語り「LONER」へ。

ボサノヴァのようなバックトラックに、メロウなラップがのる洒脱なナンバーだ。続く「EYE Shadow」と、大人っぽい曲が続くブロック。艶やかさを漂わせ、繊細なファルセットやウィスパーボイスまで聞かせた。

北山のギターソロから「Never Say」へ。真っ直ぐな視線を観客に送りながら、ギターのピックスライドを決める。TRAINEEを率いてパフォーマンスしたのは、「OMG!!!」。

「JAM OUT」ではサイケデリックな映像の中、アリーナ中央の長い花道を、北山とTRAINEEで埋め尽くす演出。「NE:Ø era」では、花道からクレーンが立ち上がる。その先端に乗り、片足を柵にかけ「まだ、いけんだろ!」と観客のテンションに、さらにエネルギーを投下していく。

この日は、スペシャルゲストとしてISSEIも登場。北山はトークで、ゲストと観客をつなぐ架け橋の役割を果たしていた。

ライブは後半へ。今回のツアーのためにリアレンジしたピアノバージョンの「Just Like That」を披露した後、高低差のあるメロディーとポエトリーリーディングを織り交ぜた「Selfish」で安定したトーンを聴かせる。

暗転。ダークな和音を響かせる鍵盤。会場全体に漢字の羅列が映し出されていく。雷鳴。拍子木のようなリズム。重い石を引きずる音。曼荼羅を唱える声。様々な音が重なり、広がっていき、「奪還メラメラ」へ。

ボーカルにエフェクトをかけ、ラップとメロディーのメリハリを強調した「ADrenaline」では、険しい表情で曲を表現していく。

圧巻だったのは、本編ラストを飾った「波紋-HAMON-」だ。

ステージの中央に、ドラムセットが並ぶ。北山がドラムを叩き始める。力強く、和太鼓を彷彿させるアプローチを見せながら、バンドサウンドとセッションしていく。次の刹那、荒ぶる書風で「波紋」と書かれた紗幕が下りてくる様は、歌舞伎や舞台の演出を彷彿とさせた。

北山は「波紋-HAMON-」で、太めのローボイスを巧みに使い、ラウドなロックチューンを引っ張った。ステージから、アリーナ席に伸びた花道から、再びクレーンが登場し、北山がアリーナ上空から観客と一緒に「Hey! Hey!」とシャウトを繰り返す。北山は「波紋」の紗幕を荒々しく持ち上げ、その後ろに姿を消した。演奏の最後の一音と一緒に、紗幕に北山のシルエットが浮かび上がった。

アンコールでは「JOKER」「Flores STEP」でトロッコが登場。アリーナを1周するように動いていく。スタンド席はもちろん、移動中、何度も後ろにも手を振る。全方位に自分を届けようという気持ちが見えた。

ソロ作品でほとんどの作詞を手掛ける北山宏光は、アルバム『波紋-HAMON-』の制作を振り返り、こう言葉にした。

「詞を書いているときに、こうやって皆さんに会えることを思って。どう書いたら伝わってくれるのかな、と。皆さんがいなかったら、今日という日はなかったと思います。本当にありがとうございます」

バンドを携えたツアーであったこと。シンガロングやコールアンドレスポンスの多さ。観客と一緒に拳を振り上げ、叫ぶ一体感。サプライズの連続で、多面的なエンターテイナーとしての見せ場がいくつもあったが、最大の見せ場は、クレーンに乗りアリーナ上空を飛びながらも、ロックバンド然としたサウンドで、しっかり観客をひとつにしたことだ。

北山宏光が本ツアーで示したのは、観客との新しい共鳴を作り出すことだったのかもしれない。

セットリスト

01 Drippin’
02 乱心-RANSHIN-
03 COMIC
04 始まりの螺旋
05 LONER
06 EYE Shadow
07 BET
08 アマテラスヒカリ
09 Never Say
10 OMG!!!
11 JAM OUT
12 NE:Ø era
<ゲストコーナー>
9/27 18:00公演(ゲスト:ISSEI)
 サイレントミッドナイト
 GOTCHA

9/28 18:00公演(ゲスト:CLASS SEVEN)
 miss you

13 Starry sky(wink first(TRAINEE))
14 Just Like That 
15 Selfish
16 奪還メラメラ
17 ADrenaline
18 灰になる前に
19 小さな春
20 波紋-HAMON-

<ENCORE>
01 JOKER
02 Flores STEP
03 オズモシス

<W ENCORE>
01 逸れた流星群 ※9/28 18:00公演のみ

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