101日、吉井和哉がソロデビュー20周年を迎えた。このアニバサーリー企画として、913日にベストアルバム「20」を発表。また、126日にはソロデビュー曲「TALI」をはじめ、「みらいのうた」や「◯か×」といった配信のみのリリースだった楽曲を含むすべてのシングル曲を網羅したキャリア初の7インチアナログ盤10枚組ボックスセット「20th Anniversary 7 INCH SINGLE COMPLETE BOX」が1,000セット完全生産限定として発売されることも決定している。

そして、930日、101日には東京・東京ガーデンシアターで吉井和哉の20年の歩みを楽しむための吉井和哉展「二◎」(ニジュウマル)が開催された。これは、吉井和哉が20年のあいだに発表してきたアルバム、シングル、映像作品といったリリースアイテム、それらのプロモーションとして発売ごとに制作してきた販売促進ポスターやアーティスト写真、吉井和哉が表紙を飾ったいくつもの雑誌、レコーディングやツアーで使用したギターといったさまざまな楽器をはじめとするイクイップメント、衣装などを展示し、ソロキャリアを多角的に紹介したもので、レコーディングを行うプライベートスタジオ、ライブの際の楽屋を再現したコーナーも設けられた。音楽活動とは直接的に関係のないロードバイク、スケートボード、プライベートで着用するシャツやスニーカーといった多くの私物も展示され、いくつもの釣り竿が並べられたその後ろにはなんと「レンジャーボート」。バス釣りのためのバスボートで、もちろん吉井和哉の私物。長さが6メートル以上ということもあって、展示物のなかではもっとも異彩を放つアイテムだったといえる。

また、会場ではこの展覧会のために制作されたスペシャル映像の上映も行われた。2日間それぞれまったく異なる内容のもので、1日目は、シングル、アルバムを発売順に紹介しながら吉井和哉のソロキャリアを振り返っていく「HISTORY SPECIAL」。尺は130分強、映画でいえばやや長めとなるのだが、ミュージックビデオを軸に、過去に行われたインタビュー、リハーサルやバックステージも交えたライブ映像など、膨大な素材をから選択、編集し、THE YELLOW MONKEYとしての吉井和哉でなく、ひとりのアーティストとしての独創性を追求、確立していく過程をていねいにまとめあげているので、吉井和哉のリスナーとしてまだキャリアの浅い人たちにとっても大変にわかりやすい作品となっている上、年代順に編集された映像ゆえに、吉井和哉のビジュアルの「変化」もじつにわかりやすい。それは年齢的なことでなく、不安いっぱいでスタートしたソロ活動が、(あくまでも)徐々に自信を持ったものになっていくことで変わっていく吉井和哉の目つき、顔つきのことで、過去のレコーディング風景も随所に盛り込まれているが、そのムードは2000年代と2010年代とではあきらかに違う。そこで本人が語っているように、新しいモチベーションで創作活動に取り組んでいる新しい吉井和哉がすでに存在しているからで、それがどのような作品となって登場するのかは、これからのお楽しみ。

なお「HISTORY SPECIAL」で触れておかなければならないのが、2011年、ダチョウ倶楽部の3人とコラボレートしたスペシャルユニット、masa-yumeのレコーディング現場がたっぷり見られるということ。笑いしかないといっていいほど楽しさと明るさに満ちたスタジオの風景は、それを見る側をもちろん笑顔にさせてくれるが、同時に、今となっては「マサユメ」の歌詞とあわせて、いたく感動的なものとして目に映るからである。

2日目に上映されたのは、今回が初公開となるものも含むライブ映像中心の「『二◎』DAY2 SPECIAL EDIT」。2日目の展覧会のチケットはファンクラブ会員限定で販売されたこともあり、リリース前の「恋の花」を菊地英昭のアコースティックギターだけをバックに歌い上げた20067月のパフォーマンスなど、レアな会員限定ライブの模様が次々と飛び出す構成に。他にも、伝説化されているといっていいミッシェル・ガン・エレファントの「世界の終わり」をカバーした2015年の「TRIAD ROCKS -Columbia vs Triad-」をはじめ、商品化されていないイベントやフェス出演時の映像、日下部“BURNY”正則、三浦淳悟、鶴谷崇、吉田佳史、生形真一、金子ノブアキ、根岸孝旨、そして菊地英昭と、吉井和哉のライブをサポートしてきたミュージシャンたちが吉井和哉とのライブの思い出や裏話を語る撮り下ろしインタビューなども登場した。

そして、2日目の上映終了直後には吉井和哉が登場。「どうも、お久しぶりです。吉井です。ステージに立つのも、ワイヤレスマイクを持つのも久しぶりです」と笑顔で挨拶し、ファンを大喜びさせた。それもそのはず、吉井和哉が公式の場に現れたのは、約18ヵ月ぶりのことだった。「ソロデビュー20周年、こんなにも素敵な場所を設けていただき、みなさんに貴重な休日に集まっていただき、ほんとうにどうもありがとうございます」と、スタッフに対しても感謝を述べると、上映映像の感想や出演ミュージシャンとのエピソード、展示内容にまつわる裏話を披露。最後には改めてファンへの感謝を笑顔で伝え、会場には大きな拍手が沸き起こった。

930日、101日の2日間にわたって上映されたスペシャル映像は各日、オンラインで同時配信も行われたが、DAY1107日、DAY2108日の2359分までアーカイブ配信されている(2日目のプログラムはファンクラブ会員限定で、登壇挨拶映像の特典付き)。ときにユーモアを交え、選りすぐりの映像と写真で構成した両映像作品は、いうまでもなく吉井和哉のソロキャリアをおさらいする内容なのだが、今だからこそ気づく、感じる「なにか」がファン歴にかかわらずあるはずで、それが、吉井和哉を楽しむ新しいきっかけになるかもしれない。

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